※この作品はR-18です。

歓楽異人街 ~絶滅の危機に瀕した魔族が人間相手に風俗店を経営した結果~   作:うた野

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キャスト3 マーチヘアの場合 ~逆転お仕置きセックス~

 ─OPEN─

 

 

 

 いらっしゃい、ようこそ九重(ここのえ)(ねぐら)へ。……おや、あんたさん。

 少し驚きだ。もう来ないと思っていたからサ。それともあれかい? やっぱりお代を返そうか? あの時はつっぱねていったけど、あんたさんの代金は売り上げ立てずに取ってあるよ。

 

 違う? ……くくくっ、成る程ねえ。いや何でもないよ。ただ随分な負けず嫌いもいたもんだと思っただけサ。

 いやいや、勿論歓迎するよ。それにあんたさんみたいなのはうちも好みだ。

 あの娘に一泡吹かせてやってもらいたいしね。あんたさんにならこっちからお願いしたいくらいだよ。

 

 そういう事ならこれを飲んでいきな。心配しなくとも害はない──って、うちが言うのもなんだが少しは警戒しないかい? 異人の出す薬だよ?

 ……ああ。人間の体にも害はない。知っての通りあの娘は少しやり過ぎるからね。お仕置きしてやるにはこれで丁度良いのサ。

 

 今日の代金はいらないよ。前回の詫びと思っておくれ。

 部屋は前と変わってない。その扉の奥、階段を下りた先だ。頼んだよ。

 ──それじゃあいってらっしゃい。今度は男らしいところを見せつけてあげな。

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 迷いのない足取りで通路を進む、がっちりとした体つきの男。

 男がこの九重(ここのえ)(ねぐら)を訪れるのはこれが二度目だった。

 世間で騒がれているような異人に対して特に偏見は抱いてない。そもそもが自分には関係ない、テレビの向こう側の話でしかなかったがある時、日雇いのバイト先で聞いたこの異人街の噂に興味を引かれ、どうにか紹介を受けて訪れた。

 その結果は男にとって受付嬢が考えているほど悪いものではなかった。この店にもキャストに対しても憤りはない。人相手では満足できなくなる。触れ込み通りの至上の快楽を味わえたのだから。

 けれど男の性格上、やられっぱなしのまま終わった事がどうにも気になる。

 異人を嫌悪しているわけでも、女を見下しているわけでもない男はその借りを返す為、一ヶ月の禁欲を経て男は再びやってきた。

 階段を下りた先に目的の部屋はある。一度経験したからだろう、男の嗅覚が微かに漂う甘い香りを捉える。

 目を閉じて集中すれば耳と体で感じる、部屋の中の僅かな振動。

 以前は何の警戒もなしに部屋に足を踏み入れ、出鼻を挫かれた。同じ轍は二度は踏まんと鋭い目つきでドアノブに手を掛ける。

 ガチャリと音を立ててノブが回る。建て付けの問題か、独りでに扉が内側へと開いていく。

 

「いらっしゃーい♥ 今日はご指名ありがとー♥」

 

 開け放たれた部屋の中心。木製の四つ脚椅子に反対に腰掛け、背もたれに顎を乗せながら『ウサギ』はひらひらと男に手を振った。

 男がこの一ヶ月、毎日思い出していた顔。

 初めて此処で会った時と変わらない、マイクロビキニで申し訳程度に要所だけを隠した、赤い瞳と白い異人の耳を持つ少女だった。

 

「ってぇ、あれー? おにーさん、どっか見た顔ですねえ? うーん、何かに似てるのかなー? あっ、もしかして生き方が蛆虫に似てるーとか言われませんかぁ?」

 

 再会した少女の口から二言目に突いて出たのは痛烈な罵声。

 

「ああ。以前、君にそう言われた」

 

 表情を崩す事なく、男は生真面目にそう返す。最初は面食らったものだが、二度目となれば流すのは容易い。

 

「あー、やっぱりぃ? そうだと思ったぁ。なんか前も今も死体とかに湧いてそうだなーって思ったんだよねぇ」

「そうか。君の気のせいだろう。その経験も予定もない」

 

 お前は冗談が通じない、と仲間内でよく言われた男の態度は『ウサギ』にとっては面白くないものだったのか、ぷくりと頬を膨らませた。

 

「つまらない反応。せっかくイディちゃんが覚えてたんだからもっと感謝してほしいなぁ」

「嬉しいぞ」

「ふんっ、まあいいけどぉ。ほらぁ、突っ立ってないで座ったらどうです? 時間はたっぷりあるしぃ、まずはティータイムしましょ?」

 

 イディと名乗った彼女に以前にもされたその申し出に頷き、男は丸テーブルを挟んだ対面の椅子に腰掛ける。

 近づけば近づく程、イディから漂う甘い香りをより濃密に感じた。頭がぼんやりとする、人を惑わす酔い香りだ。

 

「それにしてもぉ、またわたしを指名するなんておにーさん、本当に変態さんですねぇ」

 

 テーブルの上に用意されていたティーポッドから紅茶をカップに注ぎ、イディはニヤニヤとした笑みを貼り付けて男へと差し出した。

 普通なら躊躇するであろうそれを男は感謝の言葉と共に一息に飲み干す。それを見てイディはさらに笑みを深める。

 

「あはっ、やっぱり変態さんだぁ。分かってて飲みましたよねぇ、おにーさん♥」

「……さて、どうだろうな」

「んふっ♥」

 

 立ち上がったイディは乱暴にテーブルを横倒しにし、まだ中身の入ったポッドが床に転がる。割れて破片が散らばる事はなかったが、まだ十分に残っていた中身はフローリングの床に水溜まりを作った。

 二人共にそれを気にする事もなく、男は自身の膝に対面で跨がり、己を見下ろすイディを見上げていた。

 

「隠さなくていいんだよぉ? またわたしにイジめられにきたんだよねぇ?」

 

 耳元で嗜虐的に囁かれる言葉。そういう趣味の者なら背筋が震える、ぞくぞくとした感覚に襲われるだろう。

 

「忘れられないよねぇ。そうだよねぇ? 当然だよぉ、わたしとの、『マーチヘア』とのエッチを味わったら人間にも他の娘たちにだって満足出来るはずないもん」

 

 マーチヘア。

 その名は魔界でも有名だ。ただし悪名としてだが。

 魔界に生息するマーチヘアのほとんどはサキュバスの反乱によって魔王の下を離れ、淫魔王側についた。

 彼女たちは性欲の強い魔物娘の中でも一際強い性欲を持ち、さらにそれを制御する方法を持たない、或いは制御する気がない。

 常に発情状態であり、他種族であっても男を見ればすぐに襲いかかる性格だが弱肉強食の魔界において彼女たちは弱肉側だ。よって襲われる男は傷つき、死にかけの者がほとんど。それはそれで問題ではあるが。

 

「わたしの匂いに包まれたキメセク、忘れられなかったんだよねぇ♥」

 

 彼女たちの発情は弱者に伝播する。発する匂い、触れたもの、薬物のように彼女たちに関わった者は酩酊にも似た症状に襲われ、性欲を刺激される。

 ほとんどの魔族は影響を受けない。しかし、それでも時折影響を受ける者はいる。

 魔王によって森の奥深くに隔離されて生活していたマーチヘアたちだが、サキュバスのおこぼれに預かり、力を増して今はその性欲を無差別にバラまいている。

 問題視されているのは男がサキュバスたちに精を搾り取られ、残された女はそれを解消する術を持たない事。

 魔王城でも影響を受けた者たちが四六時中延々と自慰に励むせいで政務が滞ると魔王が嘆いていた。

 そんな中でイディは魔王側に残り、異人街設立の際に自ら手を上げた数少ないマーチヘアだ。

 

「あっ、でも前はセックス出来なかったんだっけー。おにーさんってば無様だったよねぇ。もうちょっと我慢すればわたしのおまんこに入れられたのに、情けなくびゅーびゅーしちゃったから♥」

 

 イディの言う通り、男は前回の来店時は本番ともいえるセックスまで辿り着かなかった。

 部屋に入るとすぐに唇を奪われ、たっぷりと唾液を流し込まれた後で今のように紅茶を勧められ、それを飲んでいる間に椅子に拘束されて発情状態のまま嬲られた。

 挑発的な笑みで乳首を晒し、陰唇を開いて男の興奮を煽りながら、イディはぷにぷにとした足で男の肉棒を刺激し、屈辱を与えながら二度も射精に導く。

 三度目の射精は背後から耳と乳首を責められながら。どろりと男の精で汚れた手を舐め取る仕草はその幼い見た目にそぐわず、酷く淫猥だった。

 四度目の射精は素股。今日一番の射精を見せてくれたなら挿入させてあげると(うそぶ)いたが、結局その後も挿入できないまま二回の計六回、精を搾られて終わった。

 

「それがたまらなく気持ちよかったんだよねぇ? イディのぷにまんを眺めながら、精液の無駄打ち♪ イディみたいな小さな女の子にイジめられるのが大好きな変態ロリコンおにーさん♥」

「ああ、気持ちは良かった」

「だからまた来たんだもんねぇ。ほら、今日もまた椅子に縛り付けてぇ……いっぱいイジめてあげる♥ ふーっ♥」

 

 薄い胸を顔に当てられながら後ろ手に荒縄で拘束された後、耳元に甘い吐息が吹きかけられる。

 次に両足まで椅子に固定され、男は完全に手足の自由を封じられた。

 

「んふっ、もうおっきくなってるぅ。さっきからズボン越しにわたしのおまんこを押し上げてる♥ よしよし、苦しいよねー♪」

 

 ベルトを外し、ズボンを下ろすと既に男の下着には染みが出来ていた。

 部屋に漂う甘い香りを塗り潰す強烈な雄の臭いが溢れてくる。

 

「こんなにしちゃってぇ、おにーさん変態過ぎぃ。さ、ご開帳……きゃっ♥」

 

 勃起した肉棒に引っかかるボクサーパンツを脱がすと、男の剛直が露わになる。

 イディの腕と同じ程の太さを持つ、魔族の男とは比べるべくもない、人間の中でも平均以上のサイズの肉棒が眼前に飛び出した。

 

「やっぱりすっごい大きさ……♥ 人間さんがこんなに影響受けやすいなんて知らなかったなぁ♥」

 

 男の胸に背を預け、膝に跨がった状態でイディは笑う。

 

「影響?」

「そうだよぉ? わたしたちマーチヘアは男も女も発情させる力がある。こっちの媚薬みたいにね。でーもぉ、よわーい人間さんには強すぎるみたい♥ こんなにおっきくなっちゃったら頭に血が回らないんじゃなぁい?」

 

 イディの勘違いと受付嬢に渡された薬の効果に気付き、男は知らず口角をつり上げた。

 男が飲んだ薬は性欲を増進させるものでも勃起力を高めるものでもなく、単純にマーチヘアの能力の影響を防ぐものでしかない。

 イディが九重(ここのえ)(ねぐら)で働くと決まった際に魔王の力で製造された貴重な薬でまだ魔界にも流通しておらず、その存在を知る者もいない。故にイディは男が正気を保っている事に気づかなかった。単なるやせ我慢でしかないと決めつけていた。

 

「随分冷静だから耐性でも出来たのかと思ったけどぉ……このおちんぽ♥ 前回よりも効いてる♥ マーチヘアとのキメセクの味にもう病みつきぃ♥」

 

 勃起した肉棒に目を奪われたイディはそれが禁欲生活によるものだと気付かないまま、男が彼女を上回る嗜虐的な表情を浮かべている事に気づかないまま、太股で肉棒を挟み、からかうように擦り上げる。

 

「おにーさんのおちんぽ、あっつくて火傷しちゃいそぉ♥ かわいそーなおちんぽさん、人間さんじゃなくて異人相手にこんなに勃起しちゃうなんて♥ せめて今回はわたしの中にお射精出来るといいねー♥」

「可哀想などと、そんな事はない」

「はぁ? おにーさん、何言ってるのぉ?」

 

 挑発的なイディに男は淡々と告げた。

 

「オレにとって君は今まで見たどの女よりもいい女だ。だからまた此処に来た」

「ぷっふー! なにそれぇ? 下手な口説き文句ぅ、そんな事言ってただイジめられるのが好きなだけでしょ? わたしみたいな生意気な女の子に好き勝手されるのが好きな変態さん♥」

「……そうだな。確かにオレは変態かもしれない。君の外見はとても幼い。人の世では一緒に歩いているだけでも犯罪だろう」

「そ♥ だけどこの街じゃ人の法律なんて関係ない。合法ロリのイディちゃんにえっちな事されたくてぇ、わたしに会いに来たんでしょ? ほらほらぁ♥」

「む……っ」

 

 手の平で亀頭をぐりぐりと乱暴に擦られる、快感よりも疼痛にも似た感覚。耐えきれず呻く男の顔を見上げて、イディは生意気な笑みを浮かべた。

 

「そんな面倒くさい外の柵の事なんて考えないでぇ、おにーさんはわたしに遊ばれてればい、い、の♥ 気持ちいい事、したいんでしょ?」

「……そうだな」

 

 男は考える事が得意ではない。異人に対して偏見がないのもどんな姿であれ言葉が通じるのであれば人となんら変わらないからだ。

 そんな男がイディと出会った時からずっと考えていた。いかに至上の快楽だったとはいえ愛し合った関係というわけではない商売女に何故こうも拘り、再訪するに至ったのか。

 下手な口説き文句と切り捨てられたいい女、という思いに嘘はない。だが本当にそれだけだろうか。

 ぐるぐると思考は巡り、答えは出ない。

 拘束から脱するのは容易い。正気を失っていたに等しい前回と違い、興奮こそしていても冷静さを失っては居ない男からすればこの程度は拘束の内には入らない。

 けれど答えが出ないまま、ただ興奮のままにイディを抱く事を男は躊躇った。

 

「そうそう♥ 素直にしてればいーの♥ 可愛がってあげるから……ほらお口あーんして♥ んーっ♥」

 

 肉棒を太股で擦りながら、イディは男の唇を奪う。段階を踏まない、貪るようなキスだった。

 

「んちゅっ♥ ちゅっ♥ じゅるるる♥」

 

 イディの舌が男の口内を犯し、舌を翻弄しながら歯一本一本の隙間に至るまでを丹念に蹂躙していく。

 以前もこの口づけに、この口同士のセックスに男はやられた。意識が朦朧となり、ただ女を犯したいという欲望に支配されながらも拘束を抜け出せずにされるがまま弄ばれた。

 マーチヘアの能力を防いでいても男と女。高まる興奮は抑えられない。

 

「じゅるっ♥ んっ♥ っ、はぁ……♥ あはっ、すごーいまたおっきくなったぁ♥」

 

 男がいくら思考を巡らせようと体は正直に反応する。男の肉棒は今すぐにでもメスを犯したいと血管を脈打たせていた。

 

「……」

「なにその不満そうな顔? 生意気っ♥ ほらっ、ほらぁ♥ おちんぽぐりぐり気持ちいいでしょっ♥」

「っ……」

「わたしにはぜーったいに勝てないんだからぁ♥ もっと悔しそうにしてぇ、おちんぽ気持ち良くしてくださーいってお願いしてよ♥」

「…………ああ、そうか」

 

 ……簡単な事だった、とイディの言葉にあっさりと男は納得する。

 同時に受付嬢の顔を思いだし、彼女は自分のこの欲望を見抜いていたのかと後ろめたさに襲われるが、男の背を押したのもまた彼女だ。

 この店が人間に至上の快楽を与える場所だと言うのなら、この欲望を受け入れよう。男はそう決めて、イディに告げる。

 

「イディ」

「なーに? どんな風にしてもらいたいか決まったぁ?」

「今日、オレは君に犯されにやって来たのではない」

 

 ごつごつとした岩のように不動の男の表情から何の感情も読み取れない。

 しかし男の様子が前回と明らかに違う事にイディは気付く。おかしい、いくらなんでもこれだけ直接触れ合っているのに、ここまでしっかりとした受け答えが出来るはずがないと。

 

「オレが君を犯したい」

「はぁ……? 何を言うのかと思ったら……おにーさぁん? 自分の状況って分かってますぅ? 縛られてなーんにも出来ないのに言う事とおちんぽだけは立派だねぇ♥」

 

 異変に気付いたからといってイディは態度を改めるつもりはない。

 気付いてもただそれだけ。発情ウサギに殊勝さを期待する方が間違いだ。

 ──故に男は両手の拘束から容易く抜け出してみせた。

 

「えっ──?」

「君こそ、いや……お前こそ状況が分かっていないな、イディ」

 

 男は自由となった腕を抱きしめるというよりは裸締めのようにイディの首に回し、意趣返しとして耳元で低い声で囁く。

 

「ぁう゛っ、なっ、なん゛て゛、ぇっ……!?」

「こんな程度で男を止められると本気で思ってたのか。可愛いな、お前は」

 

 前例があったのだからそれも仕方ない。男の腕力だけでは破壊出来ない程の丈夫さはあっても、不意打ちの拘束だった前回と違って縛られる事は予測出来ていた。縛られる際に捻っていた手首を戻せばその分の空いた隙間から簡単に手は抜け出せる。

 

「や゛っ、ばりぃ……わたしの力っ、効いてなッ……」

「ああ、そうだとも。お前程度の力は今のオレには通じない。お前のようなメスではオレという男に、オスには勝てない」

「ぐ、ぐるじっ……ぃ」

「む、悪い。力加減が分からなくてな。それ程力を入れたつもりはないが……やはり弱いな、お前は」

 

 嘲りを含んだ男の声に涙を滲ませながらもイディは反抗した。

 爪を腕に突き立て、足をばたつかせてどうにか逃れようとするが、無駄な抵抗でしかない。

 

「そうじゃれつくな」

 

 片手で足の縄を外し、完全に自由となった男がイディを持ち上げたまま立ち上がる。

 男の腕の中で宙づりとなったイディは懸命にもがくがそんな抵抗を男は意に介さない。このままベッドの上で、と考えたが床に出来た水溜まりを見てふと思いつく。

 

「っ、えほっ! げほっ! っぅぅううう……!」

 

 べしゃりと水溜まりに落とされ、息も絶え絶えに男を睨み上げるがそれは男の興奮を煽るだけだ。

 

「えうっ゛!?」

 

 髪を掴まれ、イディは水溜まりの中に倒れ伏す。犬のような、土下座のような、どちらにしても人であれば屈辱でしかない体勢。

 

「こっ、のぉ……!」

「マーチヘアというのは常に発情していると聞いたが、お前はまだ理性が残っているな。以前もオレをいたぶるだけで精を味わう事もしなかった」

「人間なんかの精を有り難がるわけないでしょ……! わたしはただ遊べればそれでいいの……っ! だから離せっ……離してよぉ!」

「舐めろ」

「……は……?」

 

 床にイディを押しつけた男は有無を言わさぬ口調でそう命令した。

 

「お前も味わってみるといい。理性なんて吹き飛ぶ。交わる事しか考えられなくなって、病みつきになるぞ」

「ふざけ──」

「命令だ」

「ッ──!」

 

 膝立ちでイディを見下ろす男の瞳は冷たかった。完全にイディを見下した視線。抗う事はイディには出来なかった。

 その瞳はイディ自身と同じだった。何を言っても止まらない。自分こそが上位者であり、他者は這いつくばっていればいい。そんな身勝手で自己中心的な思考を宿した瞳。

 

「っ……ちゅ……れろっ…………」

 

 皿の上のミルクを舐める子猫のように、イディは静かに床にぶちまけられた紅茶を舐め取り始める。

 当然、イディの能力はイディ自身には効力がない。今は従い、隙を見て逆転してやる。そんな思いで屈辱を受け入れた。

 

「上品だな。もっと無様に、もっと音を立てて啜れ」

「くっ……じゅっ、ずずっ……じゅるるるるっ!」

 

 眼下で惨めに床を舐め取るイディの姿に男の気分は高揚する。

 生意気だったあのイディが今、幼き肢体を恐怖と屈辱に震わせながら這いつくばっている。

 ぴちゃぴちゃという水音、ぴょこぴょこと揺れる耳、垂れた尾。その全てが男を昂ぶらせる。

 

「もういいぞ。顔を上げろ」

「……ひっ……!?」

 

 そのまま時間を掛け、ほぼ全ての零れた紅茶を舐め取り、言われるがままに顔を上げたイディの目に飛び込んできたのは勃起したままの肉棒。

 それを見て、今更にイディは気付く。自分の能力が効いていない。理屈は分からないがそれは確かだ。では、この魔族と比べものにならないサイズのおちんぽはどういう事だ、と。

 

「いい顔だ」

「ちょ……っ、やめっ……」

 

 男は勃起し肉棒をイディの顔に押しつけ、マーキングのように我慢汁を擦りつけた。

 その熱さを直に顔面で感じ、濃厚なオスの臭いを吸い込み、イディの意識は混濁していく。

 

「おちんぽでっ、おちんぽさんで叩くなぁ……っ」

 

 それはイディの中に僅かに残る理性が叫ぶ本心だった。

 やめろ。これはだめだ。こんな事をされたら。

 こんなにも近くでオスを感じてしまったら、こんなにもあからさまにオスを示されてしまったら。

 

「くっ……♥ ふーっ♥ ……ふーっ♥」

 

 メスになる。メスになってしまう。

 理性なんて捨てて、発情して、マーチヘアとしての本能に負けてしまう。

 

「どうした? お前が馬鹿にしていた人間のちんぽだ。いくらお前が非力でも、噛みつきでもすればオレに勝てるかもしれないぞ?」

「噛む……口に……」

 

 男の言葉に想像しただけで涎が溢れる。口がだらしなく半開きになり、舌は何かを求めて口内で彷徨い出す。

 

「……」

「今のお前には無理か」

「ぇうっ♥」

 

 無造作にイディの口の中に指を突っ込み、ぐちゅぐちゅ、ねちゃねちゃと唾液の海を掻き回す。

 

「ひゃめ、へ……♥」

「指では不満か。これならどうだ。噛みつく気概はなくともしゃぶる事は出来るだろう」

 

 口内と共に意識まで掻き回され、もう一度突きつけられた肉棒にはもう、抗う理性は残っていない。

 

「しゃぶれ」

「……はぃ♥」

 

 両手をぺたりと床に落とし、イディは小さな口を最大まで開いて男の肉棒にしゃぶりついた。白い耳を揺らして、お預けを続けられた犬のように、この時をずっと待ちわびていたようにして。

 

「んあ……ぐぽっ! んじゅっ、じゅぶっ、ぐじゅるるるっ!」

 

 頬に亀頭の形が浮かび上がる。まるで歯磨きでもするように、肉棒を少しでも深くまでくわえようと角度を何度も変える。理性をなくしたイディのがむしゃらな肉棒への奉仕。

 技術という点では以前とは比べるべくもないが男が見たかったのはその姿だ。

 

「ぷはっ♥ んぐっ、じゅるぅぅう! じゅぷっ、がぽっ、お゛っ、ぶぢゅるるるっ!」

 

 時折息継ぎに口を離し、すぐにまたしゃぶりつく。徐々に息継ぎすらおぼつかなくなって、涙と鼻水と唾液を垂れ流してもイディは止まらない。

 

「はっ♥ はっ♥ はっ♥ すぅー……」

「待て」

「いぎぃっ!?」

 

 何度目かに口を離した時、男がイディの耳を乱暴に掴んで阻む。同時に上がる不細工なイディの悲鳴に口元を緩めた。

 

「なんでぇ!? もっと、もっとぉ♥ しゃぶりたいのぉ♥」

「すっかりただのメスだな」

「うるしゃいっ! いいからおちんぽよこせぇ! おにーさんのせいなんだからぁ! 我慢してたのにっ、してたのにぃ!」

 

 見た目通りの子どもじみた癇癪。もう以前の面影は見えない。

 男が初めて九重(ここのえ)(ねぐら)を訪れた時、イディを勧めたあの受付嬢が言っていた。

 せっかく此処まで来たのだから普段とはまるで違う女を相手にするのもいい、と。

 その見た目と性格から男からも女からも頼られ、慕ってくれた者たちをリードして来た男にとってイディは初めての女だった。

 大抵、男を初めて見る女はその屈強な図体に驚き、怯える。親交を深めれば男の優しさとリーダーシップに惹かれていく。

 しかしイディは違う。最初から男を見下し、男の内面など見ようともしなかった。

 人間の男など等しく自らに傅く弱いオスで、自分の能力に踊らせる獣でしかない。

 ……理性を失った獣となって虐げられる快感に晒され、夢心地で異人街を出た後からずっとイディの事が頭から離れなかった。

 異人が与える快楽に、虐げられる快感に己がはまり込んでしまったのかとも考えた。

 だがこうしてイディと再会して、今の姿を見て男は悟った。

 

「オレはその顔が見たかった。築いてきたプライドを捨てて無様に喚く、”君”の姿を」

「なんでもいいからぁ! はやくおちんぽぉ!」

 

 一人の男として、オスとして、女の仮面を剥がしたい。メスの素顔を晒してやりたい。

 ……誰でもなく、ただ一人自分を求めて欲しい。そんな欲望が男の中で目覚めていた。

 

「ああ。くれてやる。お前が今一番欲しい所にな」

「ぁ……♥」

 

 理性は既にない。イディが男の言葉に反応を示したのはメスとしての本能からだった。

 ぺたりと白い耳と体を伏せて、無言で男に自らの尻を差し出した。

 

「はーっ♥ はーっ♥ きゅうんっ♥」

 

 男は落ち着きなくふりふりと揺れるイディの尻に手の平を打ち付けるが、今のイディにとってはそれすら快感だった。

 マイクロビキニの腰ヒモを解けば重力に従い、イディの秘部が晒される。剃られた痕跡もない毛の生えていない秘部は未成熟で、とても男を受け入れられるとは思えない。

 しかし濡れてひくつく秘部は今か今かと男を、オスを待っている。

 醜悪な笑みを浮かべて男は秘部を一息に、容赦なく自らの肉棒で貫いた。

 

「んぎぃ、ひぐっ──!!」

 

 髪を鷲掴みにし、イディを下に敷くような寝バックの体勢。

 大人と子ども程の体格差、決してメスが逃れられない、オスにただ犯されるだけの体勢でのセックス。

 

「あっ、ぎっ、ぐぅぅぅうう♥ おちんぽぉ、っ、奥までぇ、きたぁぁあああ゛あ゛♥」

 

 男と床の板挟み、床に押しつけられた顔が歪み、それでもイディの表情に苦痛は浮かばない。

 あるのは快感と、納得だった。

 

「やっ、ばりぃ♥ 駄目だって分かってっ、だのにぃ♥ オスが本気になった゛、らっ♥ わたしたちがっ、メスウサギが勝てるわけないのにぃ♥ みんな、オカシ゛イっ、よっ、お゛ぉ!」

 

 どうして魔王に反旗を翻したマーチヘアたちの中でイディたち一部の者が魔王側に残ったのか。それを残ったマーチヘアたちが語る事はなかった。

 ──彼女たちの本能か、或いは眠っていた理性か、彼女たちは知っていた、覚えていたのだ。サキュバスに寄生してオスを貪り、快楽に(ふけ)ようともそれは真の快楽には程遠いと。

 

「あ゛っ♥ キタっ♥ きたきだきたきだぁ♥ んお゛っ♥ んひゅっ♥ えっへへへへぇぇ♥」

 

 何故、自分たちが常に発情状態にあるのか。何故、それを伝播させる能力を持っているのか。

 オスの性欲が薄く、その上そもそも自分たちの能力が通じるようなオスがほとんどいない魔界においてその特性、性質はあまりに歪だ。

 能力の本質、マーチヘアの本懐。

 それは強者を誘惑し、堕とす事にはない。

 その真逆。弱者を唆し、堕とされる為の力である。

 

「んお゛お゛お゛ぉん♥ ぷぎゅ♥ ぷぎぃ♥」

「汚い声だな」

 

 短く、しかし強烈な男の罵声を浴びてイディの胸の奥が高鳴る。

 喘ぎ声の合間、声を絞り出して勝手に言葉が紡がれる。

 

「お゛んっ♥ ごめっ♥ ごべんなひゃ♥ わたしぃ♥ ばかっ、ばかでひたぁ♥ クソ生意気に♥ 人間のオスにっ、ひぃ♥ 逆らっへ♥ かんちがいっ♥ ひてまひたっ♥ 勝てるわへないのっ♥ にぃ゛♥ こんなっ♥ ふうにっ♥ 押しつぶされへっ♥ すぐに抵抗出来なくなる雑魚ウサギなのにぃ♥」

「そうだ。お前のようなメスが、オスに勝てるはずがない。どれだけオスをいたぶっても、こうしてしまえばすぐに汁を垂れ流して屈服する。それがお前だ」

「そうっ♥ そうへふっ♥ わたひっ♥ わたしはぁ! 散々煽ったおちんぽにすぐ負けへっ♥ 食べられりゅ♥ 間抜けなウサギでひたぁ♥」

 

 男の肉棒は容赦なくイディの肉壺を抉る。開発は必要ない。一突きごとに潮を吹きながら喘ぐイディに必要なのは拡張だ。

 入りきらない肉棒を全て受け止める為の、自らを犯すオスの専用の形になる為の、拡張交尾。

 幼い容姿もそうだ。無垢なる姿をオスの色に染め上げられる為にある。

 能力も容姿もその生意気な性格までも、その全てがオスを煽り、猛ったオスをぶつけられる為のもの。

 マーチヘアとは本来、自らが作り出したオス(オオカミ)に食われる者たち。

 骨の髄にまで染みついた、生粋の敗北種族だった。

 

「あ゛っ♥ あっ♥ えぅっ♥ おちんぽしゅごっ♥ オスの力でっ♥ 押さえつけられへっ♥ 逃げ場ないっ♥ お゛んっ♥ おちんぽでおまんこ改造されへるっ♥」

 

 今の魔界では決して果たされるはずのなかった待望が果たされた時、オスに自らを染め上げられる時こそがマーチヘアにとっては最高のクスリとなる。

 

「あ゛ー♥ あ゛ー♥ あたまっ、おかひくなりゅ♥ ぐちゃぐひゃでぇ♥ ぐるぐるでぇっ♥ おちんぽの事しか考えられなひっ♥ 考えたくにゃいのぉ♥」

「そうだ。オレとオレのモノの事だけ考えろ……! お前はオレの事だけ考えていればそれでいい……ッ!」

「うん♥ うんっ♥ むずかしーことっ、わかんなひ♥ きもちいいことしかわかりたくなひっ♥ わたしのぜんぶっ、おにーさんにあげるから♥ もっとっ、もっとぉ♥ きもちいいのちょーらい♥ オスの臭いに包まれたさいこーのキメセク♥ おっほぉ♥ だいしゅきなメスウサギにぃぃぃいいいっ♥ んっ、んっ♥ んにゅううううう♥」

 

 イディの告白に男は強引に顔を上げさせて、唇を押しつける事で応えた。

 首の可動限界ギリギリで鼻水を垂らしながらもイディは男の舌を舐め回した。

 

「しゅき♥ だいしゅき♥ 淫乱メスウサギのお仕置きキメセックス♥ 馬鹿メスウサギの立場分からセックス♥ オスの自由に使えるメスウサギになって、生意気メスウサギ卒業しゅる♥ おにーさんの肉便器に永久就職しゅる♥ ありがっ、とぉ♥ わたひ、メスっ♥ オスに逆らえない雑魚メスぅ♥ 自覚しまひたっ♥ よーやくわかりまひたっ♥」

 

 ガツンガツンと骨盤が歪みそうな勢いで腰が打ち付けられる度、イディを構成していたもの全てが変質する。

 男を見下していた瞳は快楽に蕩け、小生意気な物言いばかりの口は唾液を垂れ流し、男を足蹴にまでした下半身はビクビクと痙攣を繰り返し、オスを悦ばせる為だけに肉棒を締め付ける事だけに注力する。

 これが、この敗北こそがイディの求めていたものだった。

 態度も言葉も格好も、全てはオスを逆上させる為だけに。このどうしようもない敗北を思い知らされる為だけに用意された上位者としての人生。

 弱者としか生きられない魔界では決して味わえない、逆転敗北に身を晒す為だった。

 

「ああ゛っ♥ おちんぽぉ♥ 震えてりゅ♥ わたしの子宮に狙い定めへっ♥ とどめの一撃狙ってるぅ♥ だめっ、だめだよぉ! それ出されたらぁ! 奥で出して♥ ぜったいにだめぇ! ぜんぶ終わらせて♥」

 

 もう建前としての拒絶を貫く事も出来ない。いや、そもそも今の醜態、痴態ではそんな虚言は通じない。

 これは不器用なイディの精一杯の懇願なのだ。オスを煽り、徹底的に未だに減らず口を叩くメスを完全に終わらせてほしいという、いじらしくいやらしい媚び売りだ。

 

射精()るぞ……っ、お前の一番奥でッ、お前の子宮の全部をオレの精液で犯してやる……! もう二度と勘違いしないようにッ、今までのお前を終わらせてやる……!」

「やだぁ! やったぁ♥ そんな事したら殺すぅ! わたしを殺してぇ♥ 絶対に後悔させてやるんだからぁ! 絶対に逆らえないようにしてぇ♥ ──わたしをおにーさんのメスにしてぇええええええええ♥」

「…………射精()すぞッ! 孕めッ、オレのモノになって、オレの子を産んで、クソ生意気なメスウサギからっ……オレのメスになれッ!!」

「んお゛お゛お゛お゛ぉぉぉお♥」

 

 最後の一突きにイディの体が跳ね上がろうとするが、男の屈強な体に押し返され、潰れたカエルのように手足を限界まで伸ばして咆哮する事しか出来ない。

 そして一瞬の間を置いて、男の肉棒から精液が膣壁を跳ねながら子宮の中へと殺到した。

 

「────あっ、あっ♥ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ! んっきひぃぃぃいいい♥ き゛たぁぁぁぁ♥ レイプ精子ぃ♥ 寄ってたかってわたしの卵子にぶっこまれてるぅぅうううんっ♥ イグッ♥ イグッ♥ んほォォ゛ォ゛ォ゛♥ お゛っ♥ お゛っ……♥ お゛……♥ お゛……♥♥♥」

 

 射精の瞬間、体がへし折れそうな程に強く抱きしめていた男の腕が、イディの腹が精液にぽこりと膨れあがるのを感じた。

 目に見える場所全てを犯し尽くしたイディの内部までが自分の精液で犯されていく、目に見えない所まで全てに自分というオスを刻み込んだという達成感と満足感に男も満たされていく。

 この瞬間を男もまた、あの日からずっと待ち望んでいた。

 

「ぉ……ほひっ♥ えぶぅ……♥」

 

 意識を手放し白目を剥いたイディは男の僅かな身動ぎに反応して声を漏らす。

 膨らんだお腹を一撫でし、男は名残惜しげに肉棒をゆっくりと引き抜く。

 ──だがそれは終わりではない。

 

「んごぉぉぉお!? お゛っ♥ んほぉぉお♥」

 

 男はイディを仰向けに横たえると再び彼女を押しつぶしながら、肉棒を秘部へと宛がった。

 

「お゛っ♥ おにーさっ♥ だめっ♥ そそいでもらったせーえき♥ 全部出ちゃうから♥ せーえき無駄にする駄目ウサギにしないで♥ ぜんぶたいせつにするから♥ 一滴も無駄にしないでもらうからぁ♥」

「気にするな。何度だって注いでやる。……もうお仕置きは終わった。此処からは、オレがただ気持ち良くなる為だけにお前を使うだけだ。お前は余計な事を気にせず、オレを楽しませればいい」

「んぎひぃぃ!? またおちんぽき゛たぁぁぁ♥ い゛っ、いいのォ゛!? わたひっ♥ また気持ち良くなっへいいのぉ!? お゛ひぃ♥ んぐひぃ♥」

「そうだ。これからのお前の仕事はただオレに犯されて、気持ち良くなる、それだけだッ……!」

「ふへっ♥ わかった♥ わかったぁ♥ する♥ そーするぅ♥ いっぱいいっぱい気持ち良くなりゅ♥ おにーさん専用のメスウサギとして一生働くぅ♥ 働かせてくだひゃいぃぃぃいん♥」

 

 陵辱(愛の営み)は終わらない。

 男の精が尽きるまで。二人の愛が消えるまで。

 きっと、永遠に。

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 やあ、お疲れ様。流石に長かったねえ。

 ……くくっ、なんだい、随分としおらしい様子じゃないか、イディ?

 男の影に隠れるなんてあんたらしくもない。そんなにぴったりと引っ付いて……いや、それともそれが本来のあんたなのかねぇ。

 人界のウサギは寂しいと死んじまうんだろう? らしくていいじゃないか。

 

 はっ、憎まれ口も可愛らしく聞こえるよ。

 だがお客さんに感謝する事だね。あんた目当てにこうして来てくれなきゃ、いくらあんたが他のお客を拒んだ所で意味なかったんだからサ。

 

 おやおや、そういや口止めされてたかい? それは悪い事をしたね。だがもう言っちまったものは仕方ない。

 

 ああ、そうサ。

 イディはあんたさんを最初に相手にした時からずーっとあんたさんを待っていた。

 人間相手だ、そんなに虐めがいがある奴を見つけたのかと思ってたが……成る程ねえ。

 マーチヘアってのも因果な種族だ。こんな場所でもなけりゃ一生満たされずに飢え続けるってわけかい。

 

 そう睨まなくてもいいだろう? ろくでもない発情ウサギだと思ってたがあんたは賢かった。他の馬鹿なマーチヘア共と違って目先の餌に飛びつかなかった。そのおかげでこうして満たしてくれる相手を見つけられたんだからサ。

 

 ……さて、色々と考えてみたんだがね。

 うちは客商売、お客の信用第一だ。しかも酷い目を見ながらこうしてまた来てくれたあんたさんだ。たかが一回のサービスで詫びが済んだなんて勘違いしちゃいないよ。

 だけど次もまた、っていうのはうちとしても厳しいものがある。すまないね。

 だから、どうだい?

 

 その素直になれないメスウサギ一羽で手打ちにしちゃあくれないかい?

 

 

 

 ─CLOSE─

 




小話④
マーチヘアとは人界においてとある童話に登場する。
これは偶然の一致なのか、それとも或いは彼の作家は魔界へと迷い込んだ経験があったのかもしれない。
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