歓楽異人街 ~絶滅の危機に瀕した魔族が人間相手に風俗店を経営した結果~ 作:うた野
九重荘──都内にひっそりと佇む集合住宅。
いつからあったのか誰も知らない、誰が住んでいるのかも分からない。
ただ其処には異人が棲まうという噂だけがまことしやかに囁かれていた。
一部屋目 マーチヘア イディ ~いつものお約束~
「うげぇっ♥ ごめんなざぃっ♥ ごべんなざいぃ♥ お゛っ、お゛こ゛ぉお゛♥」
「何の事だ? 何についての謝罪か分からなければ許す事もできん」
「お隣さんッ、に゛ぃ! おにーさんっ、がっ♥ ロリコンの変態だって嘘吐いてごめんな゛さ゛い゛っ♥」
日課の早朝のジョギングから戻った男を憎まれ口で迎える間もなくイディは背後から組み伏せられ、剛直をねじ込まれていた。
うちの子が井戸端会議であることないことを吹き込まれていたよ、と隣の住人から苦笑交じりに聞かされ、普段は温厚な男もこれはお灸を据えてやらねばと怒りと劣情に燃えていたのだった。
「そうか。言ってしまったものは仕方ない。だがしっかりと訂正しておくんだ」
心を鬼にして、或いは心に正直に、男は容赦なく平手を小さなお尻に叩きつける。
響く軽快な音に笑みを浮かべ、激しいピストンは終わらない。
「あい゛っ♥ 変態はッ、わたしの方です♥ 雑魚ウサギがデタラメ言ってごめんなさいッ♥ おにーさんはっ、こんな変態メスウサギを愛してくれるっ、最高の旦那様ですぅ♥」
「……」
が、イディの嬌声と共に吐き出した謝罪に思わず男の動きが止まる。
無表情ながらもばつが悪そうに頬をかく。
「嬉しいが……それは惚気が過ぎる。恥ずかしいぞ」
「はぇ……? ッ、ばっ、本当に言うわけないでしょ!? 交尾してる時の言葉を本気にしないでよっ」
「では嘘なのか……?」
振り向くと目に入る悲しげな男の瞳に一気に現実に戻され、快感によらない熱に頬が紅潮する。
図体は大きいくせに変なところで気が小さい。いい加減に察して欲しい、というのはイディの身勝手か。
「嘘だったらおにーさんについてきてない……って、こんなこと素面で言わせるな、ばかぁ……おにーさんのおちんぽ突っ込まれるとおかしくなるのっ。言いたくもない本音を全部伝えたくなっちゃうの!」
「そうか」
「お゛う゛っ♥」
満足げに頷き、再びピストンが始まる。先ほどよりも激しく、深く。
快感に滲むイディの視界では男の表情は伺えない。肉体的にも精神的にもイディを辱めることで満たされた嗜虐心から来る笑みにイディは気付かない。
「やはり可愛いな、お前は」
「おちんぽ深っ♥ 一気に゛っ、奥ぅ♥」
「好きだろう? 自分では絶対に届かない深くまで突き入れられるのが」
「うんっ♥ おにーさんのちんぽじゃなきゃ駄目なの♥ 生意気なメスウサギを懲らしめる極太おちんぽさんじゃないと満足できないっ♥ おにーさんから一生離れられなくなってるのぉ♥」
子宮を押し潰すように全体重がイディの尻にのし掛かる。強い痛みと苦しみ、それを越える快感に悶えながらイディが叫ぶ。
「ふきゅうぅ♥ ロリマンコにガチピストン♥ 大人げないお仕置きセックス♥ ま、負けないぃ♥ 固くて太くて強いだけのおちんぽになんかぁ、絶対にぃ♥」
「もっと反省……しろッ!」
「ひぐぅ♥ うっ、あっ……♥ おっ、ほぉぉぉおお♥ ま、またお尻叩いたぁ♥ それ痛いっ、痛いだけだからぁ! 本当に痛いのやだぁ♥ んっ、ぎぃ……♥」
言葉とは裏腹にイディのおまんこは男の肉棒をキツく締めつけ、声を上げまいと閉じられた唇の端からは涎を垂れ流して全身で悦びを表している。
「嘘だな。お前はオレの事を良く分かっている。そういう姿がオレを興奮させるのだと知って、期待しているんだろう? 期待に応えてやろう」
イディの腰を持ち上げられる。上半身だけが床に転がった姿勢、這ってでも逃げられない、完全に男に支配され、抵抗できない体位。
両腕の間から覗く肉棒が浮き出たお腹とずっぷりと肉棒を呑み込んだおまんこ。
自分の身体であるにも関わらず下半身に自由はない。下半身はただのオナホールとして、無様にのたうつ上半身は男の目を楽しませる遊具として存在している事を強く思い知らされる。
「あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ♥ わたしのおまんこッ、おにーさんに乱暴されて悦んでる゛ぅ゛♥ 心も゛っ♥ 体も゛ぉ゛♥ やっぱりこのおちんぽとおにーさんには勝てないぃ♥ 勝てないってわかっへるのにぃ♥ 学習しないメスウサギなのぉ♥」
「違う。お前はこうされたくてわざとしてるんだ。何度も何度も、馬鹿の一つ覚えのように愚行を繰り返す。そうする度にこうしてオレに分からせられる為に」
「んぎぃぃぃいいい♥ そうッ♥ そうですぅ♥ おにーさんにッ♥ 強いオスにメスだって事を分からせてもらいたくてッ、嫌われるのは嫌だけどッ、やめられないのぉ♥ 嫌いにならないで♥ 本当は大好きなのぉ♥ おちんぽ好きぃ♥ おにーさん好きぃ♥ おにーさんに犯されるのが一番幸せぇ♥ もっとエグい角度で子宮懲らしめてぇ♥」
「ああ……!」
イディの喘ぎ声が今日も
二部屋目 アルラウネ エリン ~朝の栄養補給~
「むぅ……うるさいー」
「あはは……朝からお盛んだね、イディさんのところは」
「今日は旦那さんもお休みだからもっと寝てたかったのにー、近所迷惑を考えろー」
「まあまあ、今日は俺もずっと家にいるから、ね?」
「ったくもー、まったくもー。目が覚めたら小腹が空いちゃったぞー」
ベッドの上、腕の中で生まれたままの姿のエリンは物欲しげに青年を見上げる。
「い、いやっ、今日は休みだし、俺が朝ご飯作るよっ。だから少しだけ我慢しよっ、なっ?」
「だーめー。旦那さんは休んでろー。栄養ほきゅーしたらー、エリンがおいしーの作ってやるからなー」
相変わらずの間延びした口調で、しかし休む事を強調してくる。
引っ越しと同時に青年は以前務めていた会社をやめ、随分と穏やかな生活を送れるようになったが、それでも頑張りすぎるきらいがある。それをエリンは快く思っていないようだった。
「ほれほれー、旦那さんも溜まってるだろー? いい加減に慣れてー、観念してー、出すもの出せー?」
「うぅ……分かったよ……」
渋々と頷いた青年にうんうんと頷き、エリンは布団の中に潜り込み、青年のボクサーパンツを下ろした。
半勃ち状態の男性器を小さな両手で包み込むと手の内でむくむくと熱を持ち、勃起を始める。
「おー、朝から旦那さんは元気だなー? 昨日の夜も頑張り屋さんだったからー、朝は別に頑張らなくてもいいんだぞー?」
「ご、ごめんなさい……」
ひんやりとした手で包まれてしまえば反射的にこうなってしまう。毎朝の事だった。
「今日はお休みだからなー、エリンが頑張ってやるかー」
間延びした口調はそのままに、エリンの口元が緩む。
青年と暮らし始めて数週間、使われる事を悦びとしていたエリンは奉仕する悦びに目覚めていた。
その変化はエリン自身にとっても意外で、不可解で、奇妙な感覚だ。
物臭な性格は変わらない。出来ることなら
けれど、何故だか。
(この旦那さんの為なら、少しはエリンも頑張らないとなー、ってかー? 不思議だなー?)
不思議で、しかし悪い気はしなかった。
少しは近所付き合いをしましょう、とキキーモラのメイドに井戸端会議に引っ張り出された時には気まぐれから家事について尋ねもした。全部は無理だと早々に諦めたが、それでも少しずつやれる事が増えていく。やれる事が増えればやりたい事も増えていく。
というのも全ては大した事もしていないのに、目ざとくそれに気づいて大げさに褒めちぎる彼が悪い。
「なー、どうしてほしー? 幸せでふにゃふにゃになったお口でじゅぷじゅぷするかー? それともやわらかお手々でしーこしーこするかー?」
肩と頬に勃起した男性器を挟み、その熱をうっとりと感じながらエリンが楽しげに問う。
男性器を相手するにはあまりに小さな手と口だ。どちらも疲れる事には変わりないが、そのどちらを選ばれても嬉しいのだろうな、とぼんやりと思う。彼がして欲しい事をしてあげたかった。
「じゃあ……」
青年が恥ずかしげに、か細い声で希望を告げた。そのどちらでもなかった。
「はぁー……別にいいけどー、いいのかー? お布団の中だから汚れちゃうぞ-?」
「今日は良い天気だし、布団も洗濯して干しちゃおう。だからその前にやって欲しくて」
「りょーかいー。変態な旦那さんを持つと苦労するなー」
横たわる青年の脇腹の上下に手を差し込み、腰の後ろで両手を組むとエリンはお腹を男性器に押しつけた。
肉の薄い、しかし柔らかな感触が男性器に伝わり、青年は思わず呻く。
「お腹でずりずりしてもらいたいとかー、マニアックだなー。ほれー、お臍でうりうりー」
早くも分泌された我慢汁が臍とお腹の上を往復する度に広がり、エリンの体にまぶされていく。
擦る音がぐちょぐちょ、ぬちょぬちょとした淫靡なものに変わるのに時間は掛からなかった。
「んっ、ふっ……なんだかー、おへそにちんぽが当たると、変な感じだなー……痛くはないけどー、エッチほど気持ち良くはないなー……っ。でもー、お腹の奥が疼いてくるー……っ。エリンが動いてるのに焦らされてる気分だー」
「あ、ごめん……入れちゃおうか?」
「んー? いやいいぞー。今エッチしちゃったらー、それに満足していろいろやる気がなくなっちゃうからなー。旦那さんが気持ち良くなってくれたならー、エリンの心は大満足ー」
欲情した青年の、しかし気遣いの含まれた提案を断ったのはエリンにとって既に性交は生活の一部となっているからだ。
魔界とは違う。発情した体を持て余す心配はない。青年と居れば、絶対に彼は自分を抱いてくれるという信頼があった。
「今は旦那さんが気持ち良くなってくれればー、それでいいぞー。でもー、夜になったらその分、エリンを使ってくれよなー?」
「分かった……っ」
そのいじらしさとエリンの体を自分の体液で汚しているという背徳が青年の興奮をより一層高める。
アルラウネとしては成熟した、人としては未成熟な肉体を思うがままに陵辱できる。それを本人が望んでいる。それを認識して興奮しないはずがない。
「旦那さんのちんぽー、いっつもこんな所まで入ってるんだなー。お腹にぽっこり浮き出るくらいのビックサイズー、エリンじゃ届かない奥の奥にー。そりゃー気持ちいいよなー」
エリンもそれを認識しているのか、青年を煽るように、マーキングのようにちんぽをお腹に合わせて動き続ける。
布団の中で漏れ出る吐息と水音、見えない事が余計に想像をかき立てた。
「だけどー、このままだとエリンが我慢できなくなるからー、その前にイッてもらうぞー?」
「っ!?」
肉が擦れる快感に加えて、別の快感が青年の男性器を襲う。
お腹とも、手とも足とも、性交とも違う、別種の感触。
まるで蠢く触手に突っ込んでいるような、そんな感覚。
「旦那さんが毎日たくさんせーえきをくれてるおかげで、こういうのも出来るようになったんだぞー?」
布団をめくりあげると、モスグリーンの髪の一部が明らかな意思を持って男性器に絡みついていた。
「魔界に居た頃はなー、アルラウネはこーして獲物を狙ってたんだぞー? あまーい香りで誘ってー、ツタを伸ばしてぱくーってなー。今は旦那さんちんぽコキ専用だー。まあエリンの全部は旦那さん専用だけどなー」
恥ずかしげもなくエリンはそう口にする。青年の射精を助ける為だけではない。自分に言い聞かせ、その事実を確かめる。その幸福を再確認する為に。
「カリの裏側をなぞったりー、鈴口をくすぐったりー、玉袋をまるっと包み込んだりー。向こうのアルラウネたちは獲物を逃さないようにエッチを楽しむ余裕なんてないからなー、気持ちいいところを一気に責めてー、せーえきをぴゅっぴゅーって急いで絞り出すんだー。これは新感覚だろー?」
「っ、くっ、ぁ……!」
「ほれほれー、イけイけー、観念してー、エリンにせーえきお恵みしろー」
限界はすぐに訪れた。呻きと共に腰が跳ね、エリンを抱きしめ、男性器を押しつけながら青年が精を吐き出す。
「ぐっ、あぁっ!」
「んくぅ♪ あはー、出た出たー……♥ 包み込んだツタの隙間からせーえき滲んできてるー。朝からすごい量だー」
ツタから直接精液を吸収し、外に滲んだ精液もツタと自らの手ですくい、口に運ぶ。
何度味わっても甘美なその味にエリンの顔がほころぶ。
「っ、はぁっ、はぁ……すごかった……こんなすぐにイカされるなんて……」
「今まではやらなかったからなー。エリンは物臭でー、時短大好きだけどー、旦那さんとのエッチはずーっとしてたいからなー。特別だー」
「エリン……」
そんな事を言われてしまえば、すぐにまた男性器が勃起してしまう。今度は気遣いなしにエリンを抱いて、滅茶苦茶にしまいたくなってしまう。
だがそれよりも早く、エリンががばっと布団を吹き飛ばした。
「さー、濃いーの一発出したところでー、今朝のお勤めだぞー」
ぐいぐいと青年の手を引っ張り起こし、自身はベッドの上に両手を垂れて大きく口を開く。
いつもの待ちの体勢だった。
「ぅ、分かった、分かったよ……」
気後れしながらも青年は膝立ちになり、まだ勃起しきる前の半萎えの男性器をエリンの口に宛がう。
無防備に裸体を晒すエリンを見て勃起してしまわないように天井を仰ぎ、男性器から力を抜けば朝という事も重なってそれはすぐにやって来た。
「っ、出るよ……」
「んあー、ふぁっちふぉーい」
ぶるりと青年の体が震える。射精とは違う震え。
即ち、放尿から来る震えだった。
最初は少しずつちょろちょろとした細い尿がエリンの舌を滑り、数瞬もすれば勢いよく色づいた尿がエリンの喉奥へと向けて排泄されていく。
「んぶっ、んぐっ、んっ、んくっ……んっ、んっ、んーっ……♥」
そこまで出してしまえばもう止められない。
視線を下ろし、エリンへと向ければ彼女の表情は性交の快感とはまた別の恍惚に染まっていた。
「んぼっ、んっ、っ、ふっ……んっ、くっ……ちゅっ…………はふぅ……♥」
描く放物線が小さくなるのに合わせてエリンが男性器に迫り、放尿が終わると共に鈴口への口づけで青年の朝のお勤めが終わる。
「はー……ごちそーさまー。すっきりしたかー?」
「ああ、うん……」
精液だけでなく尿も栄養になるから、というエリンのお願いから始まったお勤めだが、それが真実なのか、それともエリンの嗜好なのかは未だはっきりとしない。
けれど徐々に抵抗感がなくなってくる自分自身に青年はもう戻れないな、と諦めに似た感覚に襲われるのだった。
三部屋目 キキーモラ ソシエ ~一般的なメイド業務~
「おはようございますっ、ご主人様!」
ご主人様が起床する頃には既に朝食の用意は万全だった。
寝ぼけ眼を擦りながら席に着くと同時にトースターからトーストが飛び出る音が響く。
起床時刻には毎回十分程度はズレがあるというのに、毎度の事ながらソシエのスキルには驚かされる。
「良くお休みになれましたか?」
「うん。おかげさまでぐっすり」
「それは何よりです♪ そうそう、前の職場から連絡がありまして、管理人さんご夫婦が今日いらっしゃるそうですよ?」
「へえ。それじゃあソシエも楽になるね。代理を任されたのに俺は全然手伝えなくてごめん」
九重塒からの紹介で
異人との交流を推進する日本政府高官の密かな協力の下、建設された
その為の手続きを行うのが主な業務だったが、正式な管理人が決まれば制約も少しは緩まる……という話だ。
「お気になさらないで下さい。ご迷惑をおかけしているのは私たち異人の側ですから」
「迷惑なんてそんな。俺はソシエのおかげで毎日が充実してるし、返って申し訳ないくらいだよ」
「見てて♥ メスウサギの敗北アクメ見ててぇぇええええ♥」
「おほぉぉぉ♥ まんことケツ穴でちんぽ生け花出来上がりぃぃいいい♥」
「……まあ近所迷惑はお互い様だよな」
毎朝は誰かしらの嬌声が、毎晩は全部屋で嬌声が響き渡る
「皆様ボキャブラリーが豊富で勉強になりますね」
「いや流石にあれじゃあ立つものも立たないような……いやソシエならいけるか」
「まあ♪ でしたら今晩も精一杯ご奉仕させていただきますね!」
ソシエは今すぐにでもしなだれかかってご主人様のベルトに手を掛けたい衝動を抑える。良いメイドは我慢ができるメイドだ。
トーストを頬張るご主人様をうっとりと眺めていたが、朝食を疎かにしてこの後の奉仕に支障があってはいけないとソシエもトーストを手に取った。
(そうだ、今晩はお祝いに奮発してステーキにしましょうか。熱々のステーキを食べるご主人様の足下で床に落とされたお肉を食べるのとか素敵です!)
ぶんぶんと機嫌良く振るわれるソシエの尻尾を眺め、幸せな朝の一時だな、とご主人様は感慨に耽りながら朝食終えた、までは良かったのだが。
「それではご主人様、腹ごなしにお散歩はいかがですか?」
「……ソシエが行きたいだけだよね」
ブンブンと揺れる尻尾と差し出された首輪、期待に満ちたソシエの瞳を見てご主人様は観念して微笑んだ。
「仕方ない。それじゃあ行こうか」
「はい♪」
キスを待つように瞳を閉じたソシエの首元に手渡された首輪をはめる。
気乗りしない風を装っていても、この瞬間はどうしようもなく支配欲が満たされ、高ぶってしまう。
「くぅん……♥」
「……ほら、さっさと脱げよ」
ソシエが望むように、少しだけ口調を荒げる。彼女を見下し、リードを引っ張り催促した。
逆らう理由もなく、ソシエは着慣れたメイド服を脱ぎ捨て、両手を床につく。
その姿はまるで、いやまさにメス犬だった。
(大丈夫と分かっていてもやっぱり不安になるな……)
けれど彼らに朝の散歩を見咎められたことはない。周囲一帯にそういう結界が張られているのだと聞いていた。
「軽く一周するだけだぞ」
「わぅん♪」
待ちきれずリードを引き先導するソシエの四つん這いの背中にそう投げかける。
従順に頷く姿を見て、良しとご主人様も歩みを進めた。
汚れ一つないメイド服を脱いだソシエの体にも染み一つない。
その美しい裸体がコンクリートの地面を四肢で踏み進める度に汚れていく姿は何度見ても飽きない。
プラモデルにあえて汚しを入れる事で完成度が増すようなものだろうか、などと的を射ているようで、的外れな感想を抱きつつ、ご主人様が命令を発する。
「ソシエ、伏せ」
「わふん♪」
ラグもなくお腹を地面につけると顔だけを振り向き、小首を傾げる。これでいいですか、とちゃんと命令を聞けるメイド──ペットですよ、と表情が語っていた。
地面に触れた髪が、頬が、砂埃に汚れる。
「良く出来ました」
頭を撫でてやれば瞳を細め、それを続ければやがて耐えきれずに地面に全身を投げだし、仰向けの体勢になる。
それがソシエたちキキーモラにとって服従のポーズ、屈服の証である事は知っている。
出会った時のベッドの上だけでなく、外であっても少し構ってやればすぐにソシエはこの体勢を取るようになった。
ゾクゾクと背筋を走る感覚。常識と良識を持つご主人様はいつも後悔する。後悔して、それでも繰り返してしまう。
「……舐めろ」
片足のサンダルを脱ぎ、お腹をなぞりながら豊満な胸を踏み、立ち上がった乳首を弾いて、ソシエの口元へと足裏を近づけた。
気持ちよさそうに悶え、足裏に頬を擦りつけた後でソシエはやはり躊躇なくご主人様の足へと舌を伸ばす。
「わんっ、あうんっ♪」
足裏全体を舐め回し、指の一本一本を口に含んで舐めしゃぶる。
じっくり、ねっとりと。好物を許される限り心行くまで味わう。
唾液に濡れた足をソシエの体で拭き、次はもう片足だ。
跳ねる体と愛液で濡れ出した秘部を見下ろすご主人様の瞳は冷たく、優しい。
「わぅん……♥」
足が終わった後はズボンの下で膨れあがったモノを眼前に突き出してやろうか。それともひと思いに穴に突き入れてやろうか。自慰をさせてそれを眺めるのも良い、と一層の興が乗り始めたご主人様だったが、その思考は第三者によって打ち切られる。
「もし、少しお尋ね致します」
「へっ……? はい……はいっ!?」
いつの間にか背後に立っていた男女二人組。白髪の生気の薄い女とあらぬ方向に目線を向ける男。
男は明らかだが、女はソシエの痴態が見えていないのか、まるで眼下のソシエを意に介していない様子だった。
「あちらに見えるのが
「あっ、のっ、はい、そうです……?」
「ありがとうございます。──どうですマスター、サラのナビゲーションに間違いはなかったでしょう」
「いやそうだけどなっ!? あの、すいません、何も見てませんのでぇ!」
状況に混乱したまま、反射的に質問に答えるとサラと呼ばれた女が心なしかドヤ顔気味な表情を男に向けた。
向けられた男は冷や汗を流しながら慌ててサラの手を引き、
「…………」
「わうっ? くぅーん……」
いつまでも残った片足が差し出されない事が不満だったのか、悲しげな鳴き声をソシエが上げたが、先ほどの男以上に冷や汗を垂れ流すご主人様には届かなかった。
四部屋目 天才ウィッチ ダリア ~才能は留まる事を知らず~
「出来たぞ弟子! ちんぽを増やす薬だ!」
「どうしてこうなった」
憮然とした態度で弟子と呼ばれた男は掲げられたフラスコに満ちた薬品を眺めて呟く。
魔界の、異人の存続の為、ひいては二つの世界の為の研究に心血を注いでいたはずなのに、どうしてこうなるのだと。
「精力増強剤を開発していたのでは……?」
「そもそも薬で性欲、精力を高める事が出来てもいずれ限界は来る。その場しのぎにしかならんからな。そこでアプローチを変えてみた。性欲ではなく生殖器そのものを増やす事で眠っていた性欲を高めるのだ」
「はあ……?」
「一本のちんぽは容易く中折れするだろう。だがこれが三本のちんぽならば……!」
この人馬鹿なんじゃないだろうか。
疑念が湧くが、弟子がこれまで出会ってきた天才というのは得てしてそういうものだった。馬鹿と天才は紙一重という奴だ。
「というわけで弟子、ぐいっといってしまえ」
「……分かりましたよ」
遠慮願いたいというのが本音だが彼女、ダリアの才は本物だ。マッド気質ではあるが命に関わる事はないだろう。研究者としてもパートナーとしても信頼を置いている。
これも未来の為ならば、と弟子は一息で薬品を飲み干した。臭いは無臭。味は無味であった。
「それで効果はどれほどで現れて、どれぐらい持続するんです?」
「即効性だ。すぐに現れ、永久的に続く」
「ぶほっ!? ちょっ、なんてもん飲ませるんですか!?」
「やかましい! 二回戦に入ろうとしても中々ちんぽが立たんお前が悪い! その度に薬を飲ませる私の気持ちにもなれ! その……ちょっと自信なくすだろうが!」
なんとも可愛らしい私情だが、飲んでしまった当人としては溜まったものではない。
そもそも年齢の割に頑張っている方だと思う。
慌てふためく間に変化は現れる。一瞬、股間に違和感を覚えたかと思えば弟子のズボンが90年代のバトルアニメのようにはち切れ、三本のちんぽがその姿を現した!
「いやぁ!?」
「ええいっ、何を隠しているか! 悲鳴を上げるな生娘でもあるまいし! 両手は腰の後ろ! 腰を突き出せ、胸を張れ! これぞTHE ちんぽ! という所を見せろ!」
「いっそ殺して……」
両手で顔を覆い、さめざめとする弟子を余所にダリアは根元から三つ叉に分かれたちんぽをじっくりと観察し、はたと気付く。
「袋は共通、金玉も増えていない……これでは意味がないな失敗か」
「こんな体にしておいてですか!?」
「まあ落ち着け」
「ひぃん!」
「ふむ、感度は変わっていないようだな。性感帯が三倍になったと思えば悪くはない。むしろそっち方面を推して売り出すか? 時間がない朝でも感度三倍で素早い絶頂を! みたいなキャッチーなコピーでどうだ?」
「……う、ぁ」
左右のちんぽを両手で、真ん中のちんぽを胸の谷間に納めて上下に動かすダリアは弟子の変化に気付かない。
固さを増してきたちんぽに、朝一番に精液シャワーを浴びせられるというのも優雅で良いな、などと考えるばかりだ。
「うぉぉおおお!」
「おわぁぁ!? なんだびっくりし、たぁ!?」
突然の咆哮に体を跳ね、思わず飛び退いたダリアだがもう遅い。
三つ叉のちんぽがまるで触手のように伸び、ダリアの両手を拘束していた。
「う、ぉ……オ……オ、オンナ、オカス……オレ、オマエ、オカス」
「Oh……」
薬の予想外の効果に怯えた声を上げるが、その口元は期待に歪み、既にショーツには染みが浮き出ている。
「ふははっ、ちんぽが三倍に増えたくらいで調子に乗るなよ弟子ぃ! 雌には元々穴が三つある! これでようやく互角になったに過ぎんのだ! さあ、どこからでもかかってあひぃん♪」
威勢はそのまま嬌声に変わり、
それが此処での日常だった……が、ダリアが
たとえばマーチヘア。彼女の体から無意識に発せられる媚薬を無効化する薬も彼女の手製だ。
加えて家事をするにも不便だろうと媚薬成分を完全に遮断する手袋も一晩で作り上げ、イディを喜ばせた。
たとえばキキーモラ。首輪が望まぬ苦痛を与えないようにと彼女の主に頼まれ、これも一晩で作り上げた。
そのどれもがダリアにとっては片手間で作れるものだが、
そんなダリアを動かしたのはやはり、弟子である男の存在だ。彼がダリアを想うように、ダリアが彼を想うように、他の住人たちも互いを想い合っている。ならばやらなければならない、と。
「んひぃぃ♥ 天才頭脳がおかひくなってしまぅぅううう♥」
……天才の名は伊達ではないのだ。決して。
五部屋目 ゴーレム サラ ~共に生きるという事~
「目的地に到着しました。案内を終了します。──コンビニまで徒歩五分、駅まで徒歩十五分。駐車場あり。築年数計測……不能。見た目通りの建物ではないようです」
手を引いた男が
男の耳には届いていなかった。住人とのファーストコンタクトがあれだ、逃げ出したくもなるというもの。
先日の
元々在宅業だった男は二人で暮らすには手狭だった部屋をあっさりと引き払い、荷物をまとめて
だが僅かに後悔の念が湧く。
此処に向かう途中で聞いた街頭演説やそこかしこに張られた張り紙。その多くが異人を否定するものだった。
サラのマスターとなり、異人に寄る立場となった男からすればそれは酷く不快で、彼女たちを知りもせずに言えた事かと憤りを感じた。
けれど、と。異人の事情を詳しく知らないのは男も同じで、しかも先ほどの二人組を見てしまった時に思ってしまった。
もしも国として異人を受け入れたとして、あんな光景が街に広がるのか。
国が受け入れても人々全てが受け入れられるはずもない。老人たちが時代の変化を受け入れられず、最近の若者はと声を荒げるように、それ以上に声を上げる人は多いはずだ。
今の男がその声を聞いて抱くのは時代は変わったんだよ、という冷淡な感想だけではないだろう。
完全に受け入れるのではなく、棲み分けが必要なのではないか。受け入れるのではなく、望む者が魔界に移り住むべきではないのか、そんな事を考えてしまう。
「マスター、どうかされましたか?」
「いや……何でもない。とりあえず部屋に行くか」
後ろめたさを感じながら
一階は管理人室と食堂だけ、住民たちの部屋があるのは二階、三階。
共用玄関と小窓で繋がっている管理人室は六畳ほどだが、生活空間はその隣に用意されている。和室に洋室、寝室の三部屋にキッチンとバス、トイレ。二人で暮らすには十分すぎる広さだった。
先んじて配送しておいた私物の詰め込まれた段ボールも部屋の隅に積まれている。滞りなく新生活自体は始められる。
「流石に疲れた……挨拶回りは少し休んでからでいいだろ」
体を投げ出した男の頭が持ち上げられ、畳とは違うやわらかく、暖かい感触が間に差し込まれた。
見上げればサラの顔がある。相変わらず無表情で、だが少し和らいでいる気がする。
「お疲れ様です、マスター」
「お前は疲れてないのか?」
「サラはゴーレムですので。機械と同じ、疲れはありません」
「バッカ、機械だって使い続けりゃ疲れるんだぞ。日々のメンテだったり使い方だったりで愛情を注いでやらんとすぐにガタが来るんだよ」
「成る程。なら尚更問題ありません。やはりサラは疲れていませんから。……これはマスターの愛情を常に感じているという意味です」
「恥ずかしいから言わんでもっ……良くないな。思った事はどんどん言ってけ」
「はい。それでは……思考を整理。最も相応しい言葉を選択。伝達開始」
沈黙の後、サラは両手で男の頬に触れ、顔を近づけた。
「マスターに心からの感謝を。当機体にサラという名称をくれた事。サラをお側に置いてくれた事。サラを含めた異人たちとの未来を思案してくれている事。不安と不審を隠そうとしている事。サラを愛してくれている事」
「ちょっと待て待て待て」
「愛しています、マスター。──心拍数の増大を確認。サラの告白にドキドキしている事への感謝も加えます。好きですマスター。愛していますマスター。マスターがどうしようもなく愛おしいのです。好きで好きで堪らなくなるのです。以前であればバグとして削除するこのノイズを胸の内に抱えていたいのです、マスター。本当に……愛しているのです、マスター」
「……」
潤む瞳と目が合う。男は何も言えなかった。
「マスター?」
「……あー、そうだよな」
考えなければならない事は山ほどある。無視できない問題はいくらでもある。
脳裏に過ぎるのは先ほどの二人組。人の世界では一般的ではない嗜好だろう。けれど幸せそうだった。
隠れ住むべきなのかもしれない。閉じた世界でも幸せなのかもしれない。
「でもなあ……こんな嫁を貰っちまったら、見せびらかしたくなるよな」
そう思ってしまう。自分勝手な欲望が顔を出してしまう。
そしてその欲望には与えられた名文がある。理由がある。
その欲望を満たしたいのなら世界を変えてみせろ。異人たちを受け入れられる世界を作り上げろ。二人で歩ける花道を敷いてみせろ、と。
「少しずつ、ぼちぼちやっていくかぁ……お前と一緒にさ」
「はい、マスター」
影が重なる。唇が重なる。体が重なる。
──
─Welcome you!─