歓楽異人街 ~絶滅の危機に瀕した魔族が人間相手に風俗店を経営した結果~ 作:うた野
─OPEN─
やあ、いらっしゃい。これまた随分と可愛らしいお客様だね。
おっと気を悪くしたならごめんよ。別にからかうつもりはないサ。
そも人の年齢なんてのはうちらからすれば上も下も大差ない。
門を潜ってやってきたのならそれが誰であれこの異人街の客人で、
訪れた者には誰分け隔てなく至上の快楽を提供する、それが出来るキャストを紹介する。それがうちの役割だ。
さあさ、どの娘がいい? どの娘も癖こそあれ、メスとしては申し分ないと言っておくよ。
うん? うちが相手だと言うのが恥ずかしいかい?
はははっ、嬉しい事を言ってくれるねえ。あんたさんにはうちも魅力的に映ってるってことだろう?
けど恥ずかしがる事はない。それなりに勇気を出して此処まで来たんだろう? なのに此処で尻込みしてしまったんじゃ勿体ない。
あんたさんが良いと思ったキャストを、あんたさんが犯したいと思えるキャストを指名すればいい。
ふむ……成る程ね。経験がないから不安なのかい。
それならお節介かもしれないが、この娘なんてどうだい?
くくっ、そうか、気に入ったかい。
口に出てたよ。けどそれは本人に言ってあげることだね。きっと喜ぶ。
だけど覚悟しておきなよ? 人の女を知る前にこの娘を知ってしまったら、もう戻れなくなることは請け合いだ。
きっと逃れられない。逃したくなくなる。それでもいいんだね?
脅かすつもりはないんだよ。ただあんたさんぐらい若いのなら、もっと人相手にも遊んでおいた方がいいんじゃないかと思ってね。
──あい承った。すぐに支度をさせるよ。
代金は……はい、確かに。
その扉を潜った先、階段を一番下まで下りた地下の奥。そこでキャストが待ってる。
どうぞごゆっくりと。
……しっかり励みなよ、無垢なる坊や。あんたさんはその欲望を醜いものと思うかも知れないが、恥じることはない。
無垢な欲望なんてただの可愛いワガママさ。そうでなければあの娘の相手は務まらない。
◇◆◇◆
少年と言って差し支えない容姿の彼は受付嬢に背中を押され、告げられた部屋の前に立つ。
階段を下りる道すがらに見えた他の部屋と違い、冷たい石壁に囲まれた其処は部屋というよりは牢獄のような外観だったが、今の少年にとっては些末な事だ。
今までにないほど心臓がばくばくと激しく高鳴る。
本当に来てしまったという後戻り出来ない焦燥感と隠しきれない期待感が少年の体を汗で濡らす。
この扉を開ければ見せられた写真の彼女が待っている。
その彼女とする事が出来る。
人ではない異人に対して恐怖心がないと言えば嘘になる。けれど人よりもマシだ、そんな思いで迷い込んだ歓楽異人街を巡り、
生唾を呑み込み、汗を拭い、意を決して少年は扉を叩く。
「……?」
けれど反応はない。恐る恐るとドアノブを捻り、僅かに開いて中の様子を覗く。
中は真っ暗で暗闇に慣れていない目では詳細は窺えない。
部屋を間違えたか、と背後を振り返り、下りてきた階段の方から視線を辿っても間違いはない。
一度フロントに戻るべきかと再び視線を部屋に向けた時、それと目が合った。
「ひっ……!」
暗闇の中で煌々とする二つの瞳。
悲鳴を喉を通り過ぎるよりも先に少年は腕を掴まれ、部屋の中へと引き込まれる。
外見通りの軽さとはいえ、少年の体はあっさりと宙を舞う。およそ日常生活を送る限りでは感じ得ない浮遊感に理解が追いつかない。
落下。
痛みはほとんどない。ふわふわとした感触。体が沈み込む感覚。狙ったのか、落ちたのは部屋に設置された上質なベッドの上だった。
「なん……っ」
上半身を起こそうとした途端、さらなる衝撃。
再び腕を掴まれ、今度は両腕をベッドに押しつけ、拘束される。
先ほど見たのと同じ瞳が目の前に居た。
「ハーッ、ハーッ」
荒い息遣いが耳に届く。遅れてぽつぽつと肌に生暖かい水が落ちる。
それが自分を拘束した者の唾液なのだと理解した瞬間、少年の心を一気に恐怖が襲う。
「やっ、やだ! 離せっ、離せよぉ!」
興奮は後悔へと変わる。やはり異人の街に迷い込んだ時、すぐに踵を返すべきだった。
なけなしの勇気など振り絞るべきじゃなかった。
ついさっきまでは下着の中で雄々しく自己主張していた男根は縮こまり、気付かぬ内に下着とベッドに染みを作っていた。
「ハァー……ッ」
耳元にまで近づいた息遣いと共に、部屋の内部に揺らめく明かりが灯る。
部屋の壁に設置されていた燭台が独りでに発火したのだった。
そして少年はついに自らを捕らえた獣の全容を目にすることになる。
「ァ……ァ……」
黒い髪。手入れがされていないことが一目で分かる程に乱雑に長く伸びているのに、不潔さは感じられない。
金の瞳。縦に伸びた瞳孔。人にはない、吸い込まれてしまうような魔性の金色。
白の牙。口元から覗く鋭く、血に飢えた刃。
獣の体。人の体毛とは明らかに違う毛皮に覆われた手足。オオカミを思わせる耳。太く巨大な尾。
衣服は纏っていない。しかしその代用なのか胸と陰部には肉塊のようなナニカが張り付き、蠢いている。まるで寄生するように。
異人の姿は種族によって様々だ。人間の人種などよりも遙かにそれぞれの差異は大きい。
ニュースなどで目にした異人たちの姿とは一致しない。だから彼女の種族が何であるかは分からない。だが彼女が人ではない者──異人であることは明らかだった。
彼女を一目見た時に浮かんだのは『猟犬』。獲物に飢えた猟犬のようだと、漠然と思い浮かんだ。
「助け……」
震えて声が上手く出ない。出た所で厚い壁に覆われた、地下の部屋の外には届かない。
「ウ、ァ……ヒトの、子、か……それも、まだ、幼い……」
彼女から少年に理解出来る形で発せられた掠れた、乾ききった声。
どこか苦しげだった。
「ヒトの子が何故、こんな所に来た……? 失せるが、いい……」
「は、離して、ください……っ」
出来ることなら今すぐにでも逃げ出したい。けれど逃れようともがいても掴まれた両腕はビクともしない。
「私を蹴り飛ばして、振り向かずに走れ……ッ。私は、この部屋からは出られない……今ならまだ、間に合う……ッ」
「な、なんでそんなこと……」
まるで少年を拘束しているのが自分の意思ではないように、彼女は苦しげに呻きながら告げる。
腕の力が緩むことはないが、髪の隙間から覗く鋭い瞳の中には獣とは違う理性の光が辛うじて宿っていた。
「早く、しろ……ッ。私が正気でいられる内に、早く……! ああ、体が熱い……今すぐにでもお前を貪り喰らってしまいたくなる……! だが駄目だ。それは嫌なのだ……ッ」
今にも泣き出しそうな声。少なくとも少年にはそう聞こえた。
僅かに少年の心にゆとりが生まれる。彼女が一体何に苦しんでいるのか、本当に見た目通りの、メディアが喚起しているような存在なのか、そんな疑問が生じる。
「だから、早く──ひっ、ぐぅぅぅ♥」
彼女の口から艶めかしい声が上がる。陰部に張り付いた肉塊が激しく蠢いていた。
よく見れば肉塊からは触手が伸びており、その触手が彼女の内部に突き刺さって固定されているようだった。
「あっ、あ……雄の、臭いぃ……♥ 駄目だ、駄目なのだ……今、これを嗅いでしまったらぁ……ッ」
腕を拘束したまま、彼女の顔が少年の下半身へと向かっていく。
命の危険と彼女の嬌声が合わさり、一度は萎えていた男根が漏らした尿に濡れながらも勃起を始めていた。
「フーッ、フーッ♥ ああ、これだ……この臭いがっ……♥ 頼むっ……早く、私から離れ、ろッ……♥ ふァあッ♥」
「い、一体どうしたのっ? 苦しいの? その変な触手のせい……?」
彼女の身に意思に反した何かが起きていることを察し、生来の優しさから少年は彼女を気遣う。
単純かもしれない、だが彼女が恐ろしいだけの異人にはとても思えなかった。
「ふーッ、ふーッ……この触手、は、私を縛る戒めだ……ッ。趣味の悪い王の……この身をさっさと滅ぼせば良いもの、をぉ♥ ……ぐッ、ゥ……この戒めは私では解けない……抗うことすら、長くは保たない……だから、早く……! 無垢なるヒトの子を、不浄な私で穢したくないのだ……っ」
「……僕は無垢なんかじゃないよ」
首を捩り、彼女の腕に頬を預ける。獣の毛に覆われた彼女の腕は少しくすぐったく、けれど温もりがあって、少し安心できた。
「僕は昔からこんな見た目のままだから、よくからかわれて、女の人からも相手にされなくて、それが嫌で……人じゃない異人なら僕を見てくれる、僕も負い目を感じなくて済む、そんな風に思って此処に来たんだ」
だから無垢なんかじゃない。幼い見た目とは違う。醜い欲望と汚い願望が内には渦巻いている。
穢れてしまうなんて考える必要はない。それでも彼女が己を所業を罪だと嘆くのなら、それは僕にとっては罰だと、少年は語った。恐怖はもうなかった。
「だから、いいよ」
少年の言葉と共に、お預けが終わった犬のように彼女は少年の肉棒にズボンの上から鼻先を擦りつけた。
「おッ、おお゛……っ♥ 尿塗れの雄の臭い……♥ はぁっ、堪らないぃ……♥」
言葉にされ、流石に恥ずかしさに身をよじるがその程度で逃れられるはずもなく、彼女は乱雑に口だけを使って下着ごとズボンをズリ下ろす。
露わになった肉棒はまだ半勃ちだが、しっかりとそり立った形容を彼女の眼前に表した。
乾いているはずもない尿に汚れることも構わず、彼女は恍惚とした表情で玉袋から竿の先までを鼻先でなぞる。
「はぁっ、はぁ……♥ もう止められんぞ……己の不運を、不浄の獣に遭った不幸を呪え……はぁっ♥ 可愛いヒトの子よ、恐怖で失禁してしまったのだな……? 今、綺麗にしてやろう……♥」
鋭い牙が覗く口に少年の肉棒が根元まで一気に呑み込まれる。
牙が当たる痛みはない。ただ温かく、ただ気持ちの良い刺激だけが少年を襲った。
「じゅるるるっ♥ じゅぷっ、んふっ、ずずずずずずっ♥」
舐め取るというより染みついた尿を吸い出すようなディープスロート。
舌先は雄の味を味わい尽くすようにカリ首を
思わず少年の腰が跳ねるが、彼女の動きは止まらない。射精するよりも早く玉袋から精液を吸い出されてしまうのではないかと思ってしまうほどだった。
「ずるるっ、んぐっぷっ、んんんんんッ♥ ……っはぁ……♥ いくら吸っても雄の臭いはキツいままだな……♥ この身は奴らと同じに作り替えられてしまった。雄に発情し、淫らに媚びるメスへと変わってしまった。お前のちんぽから味がなくなるまで、味わい尽くさせてもらうぞ……?」
「ぁ、はっ……はぁっ、はぁっ……」
口が離れ、肉棒が再び外気に晒された時にはもう、部屋に入る直前の完全に勃起した姿を取り戻していた。
彼女の声が届いているのか、少年は初めての快感に放心しながら荒い息を上げるばかりだった。
「欲望に従った途端に剥がれ落ちたか……これでお前のちんぽを内に迎え入れられる……♥」
言葉通り、彼女に寄生していた触手はあっさりと剥がれ落ち、煙のように霧散して消えていた。
触手の消えた彼女の裸体には獣の如きしなやかさと女神の如き美しさがあった。そして何より、見る者の視線を決して離さない魔性の魅力に溢れている。
首を振り、長髪を後ろに回せば隠れた素顔もまた露わになる。獰猛さを感じさせる、切れ長な獣の瞳と目が合った。
拘束していた両腕が離れるが、逃げ出す気などもう起きない。
豊満な胸を揺らして彼女は少年に跨がり、肉棒の先を自身の入り口へとあてがう。
「よく見ておけ、お前のちんぽが私に喰われる姿を。本来決して起こるはずのないヒトとバケモノが交わる冒涜をな……♥」
ゆっくりと肉棒の先端が呑み込まれていく。キツい膣内、それだけで言いようのない快感。ヒダの一つ一つが肉棒の形を確かめるように波立ち、口内以上の快楽に少年は包まれていた。
「んっ、ふぅ♥ そう肩に力を入れるな……♥ どうせもう逃れられんのだ。力を抜け……息を吸って、吐き出せ。その方がお前も楽しめるぞ……♥」
「っ、うっ、うん……すーっ……はーっ……」
「そう、その調子だ。快感がよりはっきりと感じられるだろう……?」
「うん……すーっ……はーっ……すーっ」
完全に発情しながらも少年を労る彼女に素直に従い、大きく深呼吸を繰り返す。
繋がった部分に意識が集中し、さらに強い快感が伝わってくる。
「……♥」
「はーっ……すーっ……」
けれど、それは獣の前ではあまりに無防備というもの。
「そぉ、らぁ♥ んくぅぅぅん♥」
「ひぁあああん!?」
少年が息を吸い込んだのを見て、容赦なく彼女は腰を深くまで下ろす。
吸い込むように脈動する膣壁が肉棒を根元までを擦り下ろし、膣の最奥、子宮口まで一気に到達する。
不意打ちの凶悪な快感に少年の肉棒が震え、漏らすように精液を吐き出した。
「あっ、あうっ、くぁ……はっ、はぁ……っ」
声を上げ、腰がビクビクと揺れる。何が起きたのか実感の湧かない、浮遊感にも似た絶頂のない吐精だった。
「あっ、はぁ……♥ お前の精が私の中に染みていく……♥ あまりの快感に漏らしてしまったのだな……♥ 可愛い奴……♥」
「うっ、ふっ、くぅ……っ」
上半身を抱き起こし、少年の頭を胸の内に抱え込みながら髪を撫でる。母性の象徴に包まれた安心感と情けなさから少年の目に涙が浮かぶ。
「このバケモノに貴重な精を捧げてしまったな……♥ だがまだ許さんぞ。精も根も尽き果てるまで、喰らい尽くすまでもう止まらんのだから……♥」
少年を抱きしめながら、二度目の射精を求めて彼女は腰を浮かす。
尻肉がぶつかり合う音と共に少年の口から喘ぎ声が漏れ出した。
「ふぅっ♥ ふぅっ♥ そらそら、もっと、もっとだ♥ もしもヒトの身で私を満足させられたならっ、お前の子を孕んでやろう♥ たとえ望まなくともっ、強き雄の精であればな♥ くふふっ、このバケモノを孕ませてみせろ♥」
「うっ、ぁ、くぅっ……!」
「くははっ、また少し出たなっ♥ 堪え性のないちんぽめっ♥ 絶頂まで待てんのかっ♥ これは射精とは言えんぞっ♥ ヒトであれ雄ならばメスを犯し、孕ませる気概を見せてみろ♥」
彼女の言う通り、少年の精は勢いもなく漏らすように吐き出されていく。
胸の中で悶えるしかない少年はこのまま搾り取られるばかりだ。
それは彼女の優しさと美しさに魅了された少年の落ち度。けれど、彼女にもまた落ち度が一つあった。
本来であれば意思を持たぬ、一種の装置のような機構の一つであった彼女は魔王の手に堕ち、そのシステムを書き換えられた。
他の異人たちと同じように意思を持ち、欲を持ち、精を求めるメスとしての形を与えられてしまった。
──己の中の雌を、彼女はまだ自覚していなかった。
「ふっ、くぅっ♥ いいっ、いいぞ♥ もっと吐き出せ♥ 情けなく腰を震わせてちんぽから精を漏らせ♥ くぁああんっ♥ くふっ、お前の精で満ちていく♥ そうか、これが満ちるということか♥ 飢えた獣の私がっ、こんな感覚を知るとはな♥」
変化は急激に訪れる。
いや、兆候はあった。ただ彼女がそれが何であるかを理解出来なかっただけで。
「ほぉら♥ これでまた漏らしてしまえっ♥」
一際甲高い音と共に、腰が打ち付けられる。精が漏れる。
勿論、それでは止まらない。もっと、もっとと心の命じるままに再び腰を持ち上げようとして、出来なかった。
「ぁ、ぇ……?」
腰に力が入らない。少年を抱きしめる腕から力が抜ける。
足が震えていた。体が震えていた。触手に戒められたいた時とは別の、意思に反した反応だった。
「なんっ、これ──♥ お゛っ♥ んお゛お゛おォ゛おおおおおお゛んッ♥♥♥」
爪先から走る甘い震えを自覚し、追いかけていったそれが頭頂部にまで達した時、震えは爆発し、絶頂へと昇華する。
獣の咆哮。しかしそれは威嚇でも、威容でもない。
絶頂を知らない一匹の獣の精一杯の、快感に溺れた叫びだった。
「お゛っ♥ ひぐっ♥ お、お゛ォ♥」
背筋を仰け反らせ絶頂を迎えた彼女を少年はぼんやりとした意識で見上げていた。
そしてぼんやりとしたまま思考する。
もっと彼女を啼かせたい、と。
「ぁ……」
「あぐっ♥ くぅんっ、なにっ、をっ♥」
緩慢な動作で体を起こした少年は体勢を入れ替え、彼女をベッドへと押し倒した。
長髪が髪に散らばり、自身に何が起きたのか分からず、瞳に涙を浮かべる彼女の姿は少年の欲望を刺激する。
「やめっ、ちんっ、ぽっ♥ 動かすっ、なぁ♥ 抜くのも駄目だっ♥ まだ満足してないっ♥ まだお前を犯し尽くしていな──ひゃあぁぁあん!?」
肉棒をぎりぎりまで引き抜き、愛液に濡れた竿と寂しげにひくつく入り口を眺めた後、先ほどとは逆、少年が容赦なく最奥にまで肉棒を突き入れた。
彼女が絶叫する。揺れる乳房へと手を伸ばし、揉みしだき、押さえつけながら少年は今度は自らの意思で腰を振る。
さらなる快感を得るため、さらなる艶姿を見るために。
「まっ、待へぇ♥ おかひっ、体おかひぃ♥ 私の体なのにっ、動かない♥ 快感が止まらない♥ ちんぽに支配されてるっ、アぅッ♥ みたいでぇっ♥ なんなのだこれはッ♥ 声が漏れるっ、奥が疼くっ、胸の奥が切なくなるっ♥」
「はっ、はっ、はッ……!」
少年を押さえつけていた腕力は発揮されず、僅かばかりの抵抗として胸を叩くばかりだったが、やがてその手も止まり、少年の背へと回る。
漏れる声を抑えようと首筋に口元を押し当てるが、それは逆に少年の雄をより近くで感じ、心と体を発情させるばかりだった。
「ちんぽがっ♥ 奥っ、ゴリゴリってぇ♥ 腹を裏側からっ、持ち上げてっ、子宮を押し潰してくるぅ♥ お前の精に濡れた膣を掻き回してっ、塗り込んでくる♥ マ、マーキングされへる♥ わ、私をお前のモノにするつも、りぃ!? おお゛っ♥ そこグリグリするなぁ♥」
口では拒絶しながら、臀部から伸びた尾は甘えるように少年の足に巻き付いている。
気付かぬ内に両足も少年の腰に回っていた。
「に、人間にっ、私がっ♥ こんなっ♥ ありえなっ、私はっ、ティンダ──ん゛ほぉぉ♥」
彼女が何者であるか、など関係ない。此処に在るのはただ二人の男女、二匹の獣。
個体の名に意味はない。総体の名も意味を為さない。それに意味を見いだすのは後でいい。
今はただ生まれ持った本能と、獲得した本能の命じるままに犯し、犯されるだけだ。
「あ゛あ゛っ♥ ちんぽっ、ちんぽっ、ちんぽぉ! あたまこわれるっ♥ おかしくなるぅ♥ やめへっ、やめろぉ♥ こんなっ、のぉ♥ 覚えてしまうっ、お前のちんぽの形もっ♥ お前の熱もっ♥ お前の味を゛ぉ♥ 刻み込まれてっ、忘れられなくなってしまうんひぃ♥」
「いいよっ、覚えてよっ! 僕のことを忘れたりしないでよっ!」
「んお゛ほっ♥ だめっ、駄目だっ♥ わたしはっ、わたしではっ、お前を不幸にしてしまふっ♥ お前から幸せを奪ってしまうっ♥ だからそんなこと言うなぁ♥」
「君に忘れられる方がずっと嫌だ! 優しくてっ、こんなに可愛い君にっ、忘れられるなんて嫌だ! 嫌だよぉ!」
荒々しくもたどたどしい腰使い。当然だ、童貞でなくなったばかりの少年には技術はない。
ただ性欲と気持ちだけが暴走し、言葉では伝えきれない想いを吐き出しているだけ。
どうしていいかも分からず、ただただがむしゃらに少年は腰を打ち付けていた。
だけどそれは快感として、或いは言葉にはならない願いとして、彼女にも伝わっていた。
「お゛っ♥ んほっ♥ んお゛ォおおお゛♥ あ゛っ♥ ああ゛っ♥ 腹の精液が染みこんでっ、体熱くなるぅ♥ ヒトの熱が私の体を犯してくるぅ♥ はっ、孕む♥ これっ、本気で孕まされるぅ♥」
「うっ、うぅ! 赤ちゃん、僕の赤ちゃん産んでっ! ねっ、お父さんとお母さんになろっ! そしたら置いていかないでしょ! 僕のことっ、忘れないでくれるでしょ!?」
「そっ、それっ、はぁ!? ま、まてっ♥ やめろ♥ ちんぽ太くぅ♥
「僕ッ、本気だからっ、だからこのっ、ままぁ!」
あまりの快楽に天井を、虚空を仰ぐばかりだった彼女の瞳が初めて少年を捉える。
半べそになりながら、まっすぐに彼女を見詰める少年と目が合う。
その瞬間、彼女は快楽を忘れ、少年の瞳から目を離せなくなった。胸がどうしようもなく切なかった。
「っ、くっ……このっ、愚か者……っ。どうしてそんな目をしている……っ」
「あうっ」
耐えきれず少年の背に縋り付くように回っていた両手を首と頭の後ろに回して抱きしめた。
手に感じた粘り気に彼女は無意識に爪を立て、少年の背中から血が流れていることに気付く。
大きなものではない、けれど決して浅くはない傷だ。その痛みを忘れるほど、少年は彼女に心を奪われていた。
「ああ、ヒトはどうしてこんなに愚かなのだ。いつの時代も、どこの世界でも……本当に、愚かだ。……バケモノに心奪われるなど……」
それを愚かと断じることは出来ても、突き放すことは今の彼女には出来そうになかった。
「後悔してもしらないぞ……私は捉えた獲物は絶対に逃さない。地の果てまで追い詰め、喰らいつく……その覚悟があるのなら、もう止めはしない──」
一度だけ口ごもり、それでも耐えきれず、彼女はそれを口にした。
「──私を孕ませてみろ、ヒトの子よ」
「うっ、うぅぅぅぅうう!」
それが合図だった。彼女を押し倒してから一度も止まることのなかった肉音がやむ。
一番奥、一番深く、決して逃さないように、腰が突き入れられ、同時に射精が始まった。
「ん゛っ♥ ふっ、ふぅっ、ふぅーッ♥ おっ、おおッ、入ってくるっ、お前の子種がっ、精がっ、私の奥に注がれている……っ♥ くっ、ふっ、ふうぅぅぅッ♥」
今日一番の勢いと量で流れ込んでくる精液の一滴一滴を感じ取る。
最高の快感。だが今は幸福感の方が勝っていた。
射精という目に見える絶頂に至ってくれたこと、それが自身をバケモノと自嘲する彼女にとってはどんな言葉よりも分かりやすく、信じられる証だったからだ。
疼きは止まっていた。果たしてそれがあの触手による体の疼きだったのか、それとも心を得てしまったが故の、心の孔だったのかはもう分からない。
幸福感と充足感、今まで感じたことのない満ち足りた感覚に包まれながら、射精が終わるまで彼女は優しく少年の頭を撫で続けた。
「……ん、もう
「うん……」
どこかぼんやりとした返事に彼女はくすりと笑う。性欲が満たされた後だ、眠くなってしまったのだろう。やはりまだ幼く、無垢なる子だと。
腹に宿ったであろう新たな命よりも、まずは胸に抱く子の母としても在ろう、と彼女は少年を寝かしつけることに決めた。
「ほら、一度抜け。疲れただろう、心配せずとも私はこれから先、お前と共に在る。今は休め」
まずは挿入されたままの男根を抜こうと少年を横倒しにし、腕を枕に布団へと体を移させる。
動いた拍子にごぷっと泡立った精液が音を立てた。
「ふふっ、本当にすごい量……こんなバケモノ相手によくやるものだ。けれど、ああ……悪くない気分だ」
名残惜しげに、ゆっくりと男根を引き抜いていく。やってくる大きな喪失感に子宮が寂しさを訴えるが、それを無視する。
しかし、だ。
そもそも”大きな喪失感”を覚えること自体がおかしいのだと、彼女は気付いていなかった。
通った血管の一本一本を、ぷっくりと張ったエラを、はっきりと感じ取れる勃起状態を男根が維持している、その意味に。
「ん゛お゛っ♥ ……お゛っ、ほっ、ぉ……?」
喪失感が消える。
少年が彼女の腕を引き寄せ、再び男根を突き入れた為だ。
気を許し、無防備となっていた彼女の心と体は意識の外からの一突きに一瞬意識を失う。
そして震える声と体を自覚しながら、少年へと視線を落とす。
「ごめん……僕、まだ……っ」
「おまっ、えっ……ま、まだ、こんっ、なにぃ……♥」
意識が追いついてくるのを感じる。
ゆっくりと絶頂が迫ってくるのを感じる。
母であろうなどと、未だ眼下の雄を侮っていた自身が単なる雌へと堕ちていくのを感じる。
甘えるように、縋るように見上げる
「んっひぃぃいいいいい♥♥♥」
「ごめっ、ごめんねっ、気持ちいいから、好きで好きで堪らないからっ、もう一回だけ……!」
「んひっ、ふっ、あひっ♥ あっ、謝ることはっ、ないぃ♥ 私はもうっ、お前のモノだっ♥ お前は私のモノっ、だぁ♥ お前が欲しがるのならいくらでも私を貪れっ♥ 私が欲したっ、あっ♥ ならっ、お前を貪らせろっ♥ それっ、がぁ♥ 私とっ、お前の契約だ♥ あっ♥ あっ、くぁああんっ♥」
「うんっ、うん……!」
「お前のちんぽならっ♥ お前の精ならっ♥ いくらでも受け止めてやるっ、くっふぅぅぅぅううん♥」
──それから、都合三度の射精を受け、二人は泥のような眠りについた。
手を繋ぎ、尾を絡ませ、決して離さぬように、決して離れぬように体を重ねて。
◇◆◇◆
やあお疲れ様。結果は──訊くまでもないね。
随分と懐かれたみたいじゃないか。
かつて魔王ですら手を焼いた異界の猟犬がようやく退治されたってわけだ。
ん、ああ気にしないでいい。今となっちゃあんたさんには関係のない話だ。
相手が誰であれ、何であれ、そうだろう?
おっと、そう睨まないでおくれよ。
王は群れからはぐれたお前を捕らえ、魔族としての形を与えた。
名前のない怪物が名無しの異人となったわけだ。
それは魔界を混乱に陥れたお前の罰でもあるが、慈悲でもある。
飢えた獣のお前に自分を重ねたのかは知らない。けど、今となってはその体も悪くはないだろう?
お前の居場所は魔界にもなく、今更群れに、或いは親の元にも戻れない。
だったら他者を狩る猟犬より、誰かに寄り添う番犬としての生き方を選んだ方が利口さね。
まあ、うちとしては体の良い厄介払いというわけだけどサ。
けど、お前も今はそれを望んでいるんだろう?
どうだい、お客さん。
今の人の世には名無しの異人には生き辛い。繋ぎ止める楔が必要だ。
貰い手のない子犬を一匹、引き受けてくれるかい?
名を授け、愛を与え、生を預かる。その覚悟があんたさんにあるかい?
──そう。
なら、この娘を頼むよ
─CLOSE─
小噺⑦
異人、というのはそもそもが人と異なるとして人がつけた名である。
そういう意味では彼女も異人には違いないが、その発生は根本から他の魔族とは異なる存在だ。
小噺⑧
かくして名前のない怪物は名無しの異人となり、やがては名を持つ番犬となりて彼に寄り添うことだろう。英雄譚というにはみっともない、ただのおとぎ話。