歓楽異人街 ~絶滅の危機に瀕した魔族が人間相手に風俗店を経営した結果~ 作:うた野
─OPEN─
やあ、いらっしゃい。
ようこそ
あんたさんはどんな娘が好みだい? 誰を選ぶも自由の選り取り見取りだよ?
ここではどんな欲望も許される。ここではどんな柵からも解放される。
さあ、あんたさんの望みを教えておくれ。
おや、希望表とは用意がいいね。それだけ楽しみにしてくれているのなら応えてみせるサ。
ふむ……ああ、いや、そんな緊張しないでいいよ。
どんな癖を持ってどんな業があっても、うちらがそれを咎めることも顔を顰めることもしない。
うん、あんたさんが求めるのにぴったりなキャストはいる。
けれども一つ気になるね。
これに書かれてる条件は随分と事細かい。
まるで特定の誰かを指してるようだ。
あんたさん、この街に来るのは初めてだろう?
どうしてこの娘を探しているんだい?
ほう? 成程ねえ。
うん、分かった。事情はどうあれ、払うもの払ってくれればうちから何も言う事はないサ。
部屋で何をしようと何を交わそうと、好きにすればいい。
それはあんたさんとキャストの勝手だ。
はい、毎度あり。
ただ一つ忠告するとすれば、ここは歓楽異人街。
キャストは全員例外なく異人だ。それを頭に入れておきな。
それじゃあごゆっくり。
◇◆◇◆
指定された部屋の前で男は深呼吸を繰り返す。
この扉の向こうで待っているであろう人を思うと手汗が滲み、心臓は早鐘を打つ。
彼がこの九重塒を訪れたのは偶然ではない。
祖父が神主を務める神社の境内を掃除していた時、声を聞いた。
鈴の鳴るような声だった。
鈴の鳴るような声で、しかし平坦に、もうそんなことはしなくてもいい、と声が言った。
その姿なき声の主を追って、彼はここに辿り着いた。
「この向こうに神様が……」
幼き頃に見た、祀られた神。
彼女が神社を、周囲の土地を守護しているのだと肌で感じられた。
けれどここ数年、その感覚が急に失せたのだ。
不作が起きることも土地が枯れることもなかったが、確かに居たはずの彼女が消えた、そんな喪失感をずっと覚えてきた。
それを埋める為、失せた理由を問う為に彼は此処にやってきた。
(こういう店って初めてだな……)
噂として聞いたことはあったが、まさか自分がこうして訪れることになるとは思わなかった。
何かの聞き間違いだったのかもしれないと、少しだけ落胆し、最後に大きく息を吐いて扉を開いた。
「よーうこそ参ったぁ! ワシが
白と紅、巫女服を思わせる装いに、しかし足と腋に大胆なスリットがあるそれを男は巫女服とは認めることは出来なかった。
狐の尾をぶんぶんと振り、狐の耳をぴくぴくとこちらに向ける金の幼き子。
その姿は薄れた記憶の中に残った彼女とよく似ていた。
「ふむぅ? なんじゃ、主、どこぞで
「え、あ、あの……」
「まあ良いわ! むしろ既知の娘を手籠めにするというのも
訝しげに首を傾げるがそれも一瞬。彼女は陽気な笑みを浮かべてベッドへと上がり、男を手招いた。
想像していたものとは違う彼女の姿に困惑しつつ、それに従う。
「なんじゃなんじゃ、浮かない顔じゃのう? 指名と聞いたが、主の好みには合わなかったかの?」
ベッドへと腰かけた男の腕に両手を絡ませ、肩に頭を預ける彼女に男は身を縮こませた。
「ち、違くて……俺は、神様に戻って来てほしくて……っ?」
こんなことをしてもらいたくて来たわけじゃない、そんな下心を抱くつもりはない、そう口にしようとして、人差し指で口を押さえられる。
「柏じゃ。そう呼んでおくれ?」
「っ、は、い……。俺は柏様に、神社に帰ってきてほしくて……俺たちに至らない所があったなら直しますっ。じいさんたちも、俺も精一杯柏様にお仕えします! だから……ってぇ!?」
「ん、良いぞ。続けて続けて」
男の話を聞いているのか、いないのか。柏は巫女服の白衣を半分はだけさせ、男のベルトへと手を掛けた。
下着を着けていない柏の片方の慎ましい乳房が露わになる。
幼き体、神の肢体を前に期待と罪悪、相半ばする感情を抱きながら、それでも男は目を逸らす事が出来ない。
「どっ、どうして柏様は俺たちの前から姿を消して、このような場所に……!?」
両手で目を覆い、ちらちらと隙間から柏の肌を盗み見つつ、何よりも訊きたかった問いを口にする。
「もう人の営みを見守る時代でもないしのう……おっ♡」
「ひゃう!?」
ベルトが外れ、ずり落ちたジーンズ。トランクスパンツの右足口から柏の手が侵入し、男は悲鳴を上げた。
「どこもみーんな撤収して好き勝手やっておるようじゃし、ワシも身の振り方考えんとな―と思っておったら、異邦人が妙な街を作り商いを始めたと聞いてな? しかも客商売となればそれは面白そうじゃと思ったわけじゃ。それにワシ、豊穣神の端くれじゃし? 夜の方の豊作も任せておけと売り込んでみればあれよあれよときゃすとの仲間入り! いやぁ新しいことやって上手くいくのは面白いのう!」
手にしたイチモツを擦りあげながら、なんてことのないように柏は語る。
その口調には悲壮さもなければ不満、人間に対する恨み辛みも感じさせない。
「しかし嬉しいものじゃ。こうして前職の知り合いがわざわざ訪ねてきてくれるとは……これはたっぷりさーびすせねばな?」
「い、いや、だから、ちょっと、手をっ、止めてぇ……っ」
「何を今更♡ ぶっちゃけ期待しておったのじゃろう? ふふっ、乳首の方もだんだんと立ってきおったわ♡」
シャツをまくり上げ、残る片手の爪先でなぶる様に乳首を弾いて柏は愉快そうな笑みを浮かべる。
恐れ多いと思っていても、体の反応は素直なものだ。
「じゃから主は小難しいことは考えんと、ワシに、快楽に身を委ねておればよい♡ ほれ、御開帳じゃ♡」
抵抗も出来ずパンツをずり落とされ、男のイチモツが晒される。愛おしそうに撫でまわされる内に半勃ち状態のそれはみるみる内に完全な勃起状態へと変貌する。
「むふっ、これはこれは。大人しそうな風貌をして凶悪なものを持っておるではないか♡ ドクンドクンと脈打って、とてもワシの手に収まり切らぬぞ♡」
「か、柏様……」
「想像してみよ。崇めた神を組み敷いて、己の猛りをぶつけて雌の肉体を貪る。此処での出来事は一夜の夢。誰も咎める者はおらん。誰に憚ることもない。己の欲に素直になるがよい♡
悪魔の如き囁き。つい従ってしまいそうになる魔性。
床に膝を着き、股の間に顔を埋める柏の姿に、己のイチモツに吹きかけられる吐息に、短く声を漏らして、男は――。
「すんすんっ♡ 汗と先走りが混じった雄の匂いじゃ♡ そこらの
「ああ、柏様ぁ……」
柏の瑞々しい唇がイチモツに触れ、開き、口内へと呑み込まれていく。
舌が男を歓待し、唾液の湯がとろけるような快楽を与えてくる。
「はむっ、じゅるっ、じゅるるるっ、ずるっ♡ ずずっ、ちゅっ、んむっ、はっ♡ あむっ♡ ちゅるっ、じゅずずずっ♡ んはっ♡ 堪らんのう。主の匂いが口の中で涎に混ざって和らいで、ワシの中に溶けていくこの感覚。鈴口を突けばまた先走りを吐き出し、むせ返るような精臭でワシの口を犯してきよるわ♡」
腰が浮くような極楽。まるで漏らしてしまっているような快感。
身を委ねてしまっても仕方ない、そう男に言い訳を与えるには十分すぎた。
「んむっ♡ ふぉれふぉれ♡ わひゃるか? ぬしのがうひででふぉるわ♡」
再び含んだイチモツを寄せて、頬に浮き出た亀頭を指でつつく。
視覚を襲う煽情的な姿に体が震えた。
「じゅぷっ、ずるるるっ♡ っぷはぁ♡ ……目の色が変わったのう? 今にも飛び掛からんとする獣の目じゃ。そうこなくてはのう♡」
男をベッドへと押し倒し、その上に跨った柏は完全に白衣をはだけさせ、惜しむことなく上半身を晒け出す。
薄く小さな体。男の手で横から鷲掴みに出来てしまうほどに華奢な肉体は、しかし魅力に欠けてはいない。
ありとあらゆる要素が男の劣情を煽り、獣へと変える妖美さと楚々とした可憐さに満ちていた。
「どうやらワシはその目に弱いらしくてのう♡ 以前までは人の目に映ることなど滅多になかったものだから、熱烈な視線を向けられるとそれだけで気をやってしまいそうになる♡ 良いか? これよりはワシから一瞬たりとも目を離すでないぞ? ワシの痴態を存分に焼き付けよ♡」
柏は行灯型の袴をたくし上げ、毛の生えていない秘裂へとイチモツの先端を宛がう。その最中も釘付けとなった男の目から目を離す事はない。
(ああ、見られておる♡ 人の子に、穴が開く程に♡ 幼子の中にマラが入っていく様を、自ら男を迎え入れる姿を見られておるぅ♡)
興奮から秘裂が亀頭に吸い付いているような錯覚すら覚えた。
今か今かと、早く早くとあさましく求める己の雌に、じらすことなく求めるものを与える。
「んっはぁ……♡ ほーれ、見えるじゃろ? 主のがワシの中をかき分け、貫いていくの、がぁ……♡」
「あっ、あぁ……」
「心配せんでもきちんと根本まで呑み込んでやる♡ 内臓を押し上げてでも、主の精を一滴も逃さぬようにみっちりと締め付けて、くわえこんでやるとも♡ ふっ、ふぅっ♡」
言葉通りに男の物を奥まで呑み込み、柏は笑みを浮かべた。明かりの逆光で出来た影の中、赤い舌を出して得意げに。
「ふふっ、見た目通り、やはり大した物じゃ……♡ これはひょっとするとワシ、壊れてしまうかもしれんのう……どうじゃ? ワシの身を案じるのならここまでにしておくか?」
「……」
男は無言で柏の腰に手を当てた。
恐れ多いと知りながら、己の猛り切った欲は決して止められない。
「……♡ 素直で良いぞ♡ では、全力で奉仕させてもらうとするかの♡」
男の手に片手を重ね、柏は腰を上げる。必死に呑み込んだイチモツがずるりと抜け落ちていく。
解放感よりも喪失感を覚え、それを埋めるように腰を再び下ろす。
「んふっ♡ はっ、あはっ♡ ふぅ♡ ひぐっ♡ えうっ♡ ああっ、くっ♡」
繋がる姿が見えるようにと片手は袴から離さない。
人の目に映る事が許されなかった自身が人の目に焼き付けるように痴態を晒す。その背徳の快楽に柏は酔い痴れていた。
「ほれっ♡ どうじゃっ? 憧れた神の肉体じゃ♡ 天にも昇る快楽じゃろう♡ おふっ♡ ひうっ♡ っはぁ♡ あっ♡ ふぁああっ♡」
(見るがよい♡ 体をくねらせ淫行に耽るあさましき姿を♡ これがワシじゃ♡ もっと♡ もっとワシを見て♡)
腰の動きは止まらない。体の疼きもどんどんと高ぶるばかりで止まることはない。
男の視線をじっと見つめて、彼が確かに自分を認め、感じてくれていることが何より柏を興奮させた。
「ああっ♡ はぁっ♡ あっ、あっ♡ んひっ♡ えうっ♡ あああっ♡ こ、このデカマラめぇ♡ ワシの奥を抉っ、てぇ♡ ワシの指では届かぬ所まで♡ 快楽を教え込んでくるわっ♡ はっ、ひっ、あぁんっ♡」
自動的に送られてくる快楽を味わいながら、男は柏を食い入るように見つめ続ける。
「はっ♡ あはっ♡ ふぅ♡ ふぅっ♡ くぅっ♡ あっ、はあっ♡」
まるで夢を見ているようで、その光景を覚めても忘れないように焼き付ける。
「遠慮などせず、ワシの中を堪能して♡ いひっ♡ 思うままに精を吐き出すが良い♡ 主は客、お客様は神様なんじゃろ♡ んあっ♡ ならば主にはそれが許されておる♡ ふくっ♡ くぅん♡ もっとワシを感じさせて♡ よがらせておくれ♡ あっ、はあっ♡」
「かし、わ、さま……っ!」
「ほっ、ほぉ♡ 主もノッてきおったな♡ ほれほれ♡ 良いぞ♡ ワシに合わせて腰を振るがいいっ♡ んふっ♡ っはぁ♡ 蜜壺を掻き回してっ♡ ワシに雌を感じさせて♡ んっ、ふぅ♡ はっ、はっ、ああっ♡」
互いに互いを求め合い、腰を動かす。
限界が来るのにそう時間は掛からなかった。
「ふっ♡ そろっ、そろぉ♡ 気をっ、やってしまいそうじゃ♡ 主はどうじゃ♡ ワシに合わせて、んっ♡ 共にイケるっ、か♡」
「ああっ、柏様っ、柏様っ!」
「んふぅ♡ そうか、そうかっ♡ では共に、達しような♡ 手を重ねて♡ 決して離れぬように♡ 共にっ、共にぃ……♡」
「はいっ、はい……!」
腰の動きと共に激しくなる水音を響かせながら、二人の男女は絶頂へと向かう。
絡み合った手を強く握り、瞳を潤ませ、それでも目は離さない。
見ていてあげるから安心して、そう言うように、熱の籠った視線を交わし合った。
「はぁっ♡ はあっ♡ んっ、くうっ♡ イっ、く♡ イクぞ♡ 主も、一緒にぃ♡ はっ、あはっ、はあっ♡ イクっ♡ くるっ♡ あっ、ああっ♡ はっ――あっ、はああああああっ♡」
「うくっ……ッ!」
柏の背が反り返り、男の腰が跳ねる。
膣内が収縮を繰り返し、イチモツが脈打つ。
吐き出された精が染み込むように広がり、快感で満たされる。
明滅する視界、朦朧とする意識。
繋がった部分の熱と重ねた手の温もりが、互いが確かに此処に在るのだと教えてくれた。
「あっ♡ はっ……♡ はぁっ、はぁっ……はぁ……♡」
どれほど絶頂の余韻に浸っていただろうか。
柏は息を整えて微笑むとゆっくりと腰を上げた。
「ふぅっ、ふぅ……♡ こ、濃くて重い精液……これが若さか……♡ ふふっ、役目は終えたとばかりにぽっかりと空いた
「はぁ……はぁ……」
袴が汚れることにも構わず、柏は男の胸に体重を預けた。
未だ激しい鼓動と荒い息遣いを感じ、愛おしげに頬へと触れる。
「どうじゃ……? ワシの
「柏、様……」
「ふふっ、いや言わずとも良い。その顔を見れば分かる。どうやら期待には応えられたようじゃ。むふっ、これは天職かもしれんのう」
満足気に笑う柏だが、男の心は索漠としていた。
肉体的な繋がりが断たれたから、だけではない。
柏の心が既にあの神社にはないのだと、その表情から思い知らされてしまったからだ。
けれど。
それを良しと出来るのならば、男は此処へは辿り着いてはいない。
「柏様……戻ってきてはくれませんか」
「まだそんなことを言っておるのか。ワシに縛られる必要はない。見ての通りワシは自由にのびのびとやっておる。主も好きにすればよい」
「……俺は柏様に戻ってきてほしいんです。確かにもう姿も見えなかったし、声だって聞いたのは此処に来る前の一度切りです。けど、柏様がいなくなってからずっと、心に穴が空いたみたいで、言葉にならない寂しさでいっぱいで……」
男の言葉に顔を上げ、腰をベッドへと落ち着けて、曖昧な表情で柏は口淀んだ。
「むぅ……主の気持ちは嬉しいがのう……。気儘さはそのままに人と触れ合える此処での暮らしには代え難いというか……そうじゃっ、ワシが話をつけてやるから、主が此処に通うのはどうじゃ? 主ならば安くさーびすしてやるぞ?」
……その提案は悪手だ。
既により強く、男の心は柏に向いている。
そんな男にその提案は、あまりに惨い。
「……嫌、です」
「そう、か……ならば仕方ない。これを機にワシのことは忘れよ。心配せんでもワシがいなくとも世界は回り、主にもその周りにも不便はない。これまでは狐に化かされていたとでも思え」
もふもふとした自慢の尾を男の顔に押し付けて、優しい口調で告げる。
その方が互いに幸せだろう、と。
「嫌です……嫌だ……ッ」
「やれやれ、童でもあるまいし、駄々を捏ねてもどうにもならぬぞ?」
呆れた口調だが、表情は優しいものだ。
それこそ懐いた童に言い聞かせるように、ぽん、ぽん、と尾で撫でるように顔を打つ。
「こうして久方ぶりに雄と交わって、ワシの中の雌もすっかり目覚めてしもうた。一度起きてしまえばもう治まりがつかん。以前のような生活を送るのは御免じゃ。すまんのう」
「ッ……なら、だったらッ」
「む?」
尾を跳ね除け、起き上がった男は柏の肩に両手を置き、顔を突き合わせる。
その瞳は諦観に染まるどころか、より熱い光を宿している。
「俺が柏様を満足させてみせます! 他の客が来るのが待ちきれなくなるくらいっ、俺が全力で柏様を満たして、俺を求めさせてみせます!」
「ほう。ただの人が、一人でこのワシを? ……くくっ、それは随分と大きく出たのう?」
「俺は本気です! こんな形になってしまったけど、流されるままこんなことになってしまったけど……やっぱり俺は柏様に帰って来てほしいんです!」
「その寂寥をワシ以外で埋めようとは思わんのか? ワシの姿など幼心に
男は無言で首を振り、柏は肩を竦めた。
言って聞かせても分からぬと認めたのだろう。ならそれに付き合うのも年長者の役割であり、立つ
そして指名を受けたキャストの仕事だと。
「うむ、それも良かろ。では存分にワシに溺れるが良い、客人よ。最後の夢を堪能せよ」
それが引き金だった。
「んむっ♡ んっ♡ ふっ、んっ、んちゅっ♡ ちゅっ♡」
乱暴に唇を重ねられ、しかし動じることなく舌で迎え入れた。
顎を掴まれ、唾液を流し込まれ、首元が濡れることも気にせず、そのままに受け入れる。
「ふっ♡ んっ♡ くっ、ちゅっ♡ ……っぷはぁ……♡ 熱烈な接吻じゃのう♡ 先程よりも強く、主の猛りが伝わってくるわ♡」
「柏様……」
「そら、何を遠慮しておるか。無抵抗の雌を相手に手をこまねいていてはワシを満足させるなど夢のまた夢。男らしくりーどしてみせよ♡」
柏は自らベッドに背を預け、袴をたくし上げて開脚する。
蜜壺に溢れていた男の精はしとどに流れ出る新たな蜜で既に染みへと変わっていた。
「ッ!」
「ふふっ、めんこいめんこい」
乳首に吸い付く男の頭を撫で、柏は余裕を崩さない。
「これでは雌が寝て母が起きてしまいそうじゃのう」
男の耳に響く柏の鼓動に乱れはなく、己を撫でる手付きから慈しみが抜けることはない。
ああ、男が柏の言う通りの童だったのなら、それに癒されていたはずだ。
けれど男は雄だ。それは男の神経を、獣性を、プライドを逆撫でする。
「ッ♡ これこれ、そう齧るものではない、ぞ……♡ まったく悪い子じゃのう……」
乳首を歯で挟み、舌でつつくように
痕が残るように、己を刻み込むように強く、執拗に。
童が甘えるのではなく、雄が躾けるように。
「んっ♡ ふぅ……♡ なんじゃ、もう乳には満足したのか? くくっ、いや乳離れはとうに済ませていたのであったなぁ」
「……柏様」
「ほう、今度はこうしてワシを犯したいというのじゃな? よいよい。主の望むままにじゃ」
体勢を反転させ、楽しげに尾を揺らして柏が男の方を振り向く。
俯く男の視線を感じられないことを少しだけ惜しく思いながら、再び固さを取り戻したイチモツを受け入れる時を待ちわびる。
「さあ、『らしく』、犯しておくれ?」
此処は歓楽異人街。
柏は人の世に永く在りながら、人を知らなすぎた。
「お゛っ♡ ほっ、ぉ……♡ くふっ♡ 先よりも、太っ、くぅ……♡」
一息で突き入れられたイチモツはほぐれた柏の蜜壺をより深く抉った。
呼吸を忘れたように口を開閉させ、強く雄を感じる。
「ほっ♡ んほっ♡ あぐっ♡ ふぅっ♡ これっ♡ はっ、中々♡ 奥まで♡ 響い、てっ♡ んひっ♡ そ、その意気じゃ♡ たし、かにッ♡ これを続けられれば♡ えうっ♡ ワシも満足出来そうじゃぞ♡」
後ろ手に腕を引かれ、引き絞った弓のように体を逸らせ、激しい腰使いの衝撃を余すことなくその幼き身で受け止める。
足は張り、尾もまた組み敷く男の体に沿って張り詰めている。
「お゛うっ♡ ふっ♡ ふぐっ♡ ぐうぅっ♡ まさに獣じゃの♡ ワシが相手でなければ
「でも柏様なら大丈夫っ、ですよね!」
「んお゛っ♡ そうっ♡ そうじゃな♡ ワシだからっ、大丈、夫ぅ♡ おお゛っほぉ♡」
腰の動きに合わせて体を引かれ、声にならない叫びを漏らすのは弓というよりはさながら楽器の如く。
小さな体の半身は既にベッドから浮き、逃げ場もなく軋み、揺れる。
「ひぎっ♡ ぐっ、くぅっ♡ おっ♡ おおっ♡ ひっ♡ ひっ♡ あくっ♡ くっ♡ んひっ♡ はっ♡ はっ♡ んああっ♡ はっ、あっ……ふぅ……う゛っ♡ ぬ、主っ♡ そ、こっ、はっ♡」
声の質が変わる。単なる快楽から、困惑と焦りを孕んだ上擦り声。
原因は片手を外し、前触れもなく尻穴へ差し込まれた男の指だった。
「物欲しそうに引くついてましたから」
なんてことのないように。冷ややかに、空々しく。
「不浄の♡ 穴までっ、とはぁ♡ 業の深いっ、主様じゃ……ああっ♡ そんなっ、ほじくるでないっ♡ こんなっ♡ 妙な……っ、怖気がぁ♡」
「初めてのはずの尻穴でまで気持ち良くなれるなんて、流石は柏様です」
「きっ、気持ち良くッ、など♡ あっ♡ あまり調子に乗るでっ♡ なっ、はぁぁ♡」
堪らず振り向き、抗議の視線を向けた柏は繋がってからようやく男の顔を見ることができた。
そして絶頂した。
「んっ、なっ♡ あっ、あっ♡ はああああんっ♡」
(そ、そんな食い入るほどにっ♡ ワシの尻穴をっ♡ 不浄のっ、ケツ穴ぁ♡)
「み、見るな♡ 不敬でっ♡ 悪趣味、んなぁ♡」
「俺が柏様を満足させます。体全部、ありとあらゆる感じる場所全部を見て、触れて、弄り回して」
片手で柏の両手を束ね、引き上げたままに指の第二関節までを尻穴へと呑み込ませる。
そこまで呑み込めば尻穴の方から求めるように指に吸い付いて来る。
(そんなっ、嘘じゃ♡ ワシが♡ ケツ穴で求めるなどぉ♡ 位を下りてもこの身は変わらずっ、人の上に立つ者であるのに♡ こんなっ♡ いくらなんでもっ♡ それは浅ましすぎる♡)
「前にはお腹いっぱいに俺のモノをくわえこんでいるのに、後ろはまだまだ満たされてないみたいですね」
「くっ、くぅ♡ 好き勝手言ってくれるっ、のほ゛ぉ♡ ゆびぃ♡ ひっ、引っ掻き回すなっ♡ ほじくるなぁ♡ まるで捻りだしているような♡ くあぁ♡」
「嫌です。こうして触れられるのだから、柏様の全部に触れたい。綺麗な所も、汚い所も、全部」
「き、汚い所などワシにはないっ♡」
「だったら尚更問題ないですね」
「お゛っほぉ♡ ほっ♡ ほぉ♡ ふっ♡ あうっ♡ ふぅ♡ ぐっ、ぐぐぅ♡ こ、のようなっ♡ 間抜けな声など出しとうない♡ んほぉ♡ た、頼む♡ ほじほじ堪忍しておくれぇ♡」
「じゃあこっちはどうですか」
手を返し、人指し指は突き入れたまま、親指と中指で掴んだのは尾の付け根。
臀部から伸びる尾のその生え際をコリコリとほぐすように揉む。
「ふにゃああああ♡ ひゃ、あっ♡ ひゃめっ♡ そっ、そこぉ♡ にゃ♡ あにゃあ♡ ふしゅ♡ ふぁっ♡ はふぅっ♡」
反応は顕著。人間が陰核を責められるよりもさらに強い快感が柏に襲い掛かる。
平時であれば乱雑なその手付きは痛みしかもたらさないが、今の興奮し、発情しきった柏にとっては何よりも強く、激しい快感となる。
「あひゅ♡ にゃっ♡ はにゃ♡ ふぅっ♡ くぅん♡ ふにゅ♡ にゅあっ♡」
甘えた鳴き声を発しながら、尾が、体がくねる。
目じりが垂れ下がり、耳は倒れ、力が抜け、イチモツが出し入れされる度に強制的に弛緩と硬直を繰り返す。
「それ♡ やめ♡ ほんとに♡ ほんとにぃ♡ やめて♡ やめておくれ♡ わけわかんにゃくなるっ♡ 頭ばかになる♡ にゃうぅん♡ ばかになってぇ♡
ひゃん♡ はぅん♡」
「本当にやめてもいいんですか?」
「じゃから♡ そう言っ、てぇ♡ はやく♡ 指とめっ♡ ふにゃ♡ あはぁ♡」
「ここまで来て中途半端でやめたら、きっと満足できないですよ?」
「にゃ、にゃにっ、を゛ぉ♡」
「まだ上があると分かってるのにここで止めたら、もう二度とこれより先には進めない。怖くて止めてしまう。自分では絶対にイケないですよ?」
「くっ……♡ くぅん♡ そ、そんなっ、ことっ♡」
「俺の好きにしていいんですよね? だったら俺に任せてください。柏様には絶対に出来ない、絶対に辿り着けない絶頂を、俺が柏様に捧げますから」
「そ、それは……♡」
少しだけ動きが緩む。それでも十分すぎるほどの快楽が送り込まれてきているのに、決して満たされない、昇り切らない。
「くぅ……♡ こ、今回だけっ♡ 今だけじゃ♡ 今だけは許そう♡ 特別じゃ♡ 主の望みならっ♡ ワシはっ、ワシはぁ♡ 仕事♡ 仕事じゃからぁ♡」
「今回だけでいいんですね?」
「そ、そう言っておる♡ これ以上言わせるな♡ 今だけは全てを許すから♡ じゃから……ほれぇ♡」
柏は尾を腕に巻きつかせ、恥を忍んで男を誘う。
男の言う通り、ほんの少し緩められただけで、体が切なく疼いていた。
「分かりました。今回だけですね」
「うむっ、うむぅ♡ そうっ♡ 今回だけ♡ 特別じゃあ♡ はっ、あっ♡ はよっ、はよぅ♡」
「では次からはどうしますか?」
「つっ、つぎぃ? ほっ♡ ああっ♡ こりこり、しゅきぃ♡」
「これ以上を知って、その次です。きっと満足できませんよね」
「それっ、はぁ♡」
「また次の客にもおねだりしますか? 初めて会う客に、恥を忍んでケツをほじって、尻尾こりこりして下さいって」
「そ、そんな真似♡ あっ、ぐぅ♡ わ、ワシにはぁ♡ で、出来るわけ♡ にゃあん♡」
ついには自ら腰を押し付けて、柏は痴れた頭で想像する。
今のようなあさましい姿を、また。知らぬ客に、また知らぬ客に。
あさましく、尾を振り、媚びを売り、ねだる。
そんなこと、出来るはずはない。いやたとえ出来たとしても、それはしてはいけない。
あってはならない。認めてはならないことだ。
「む、むりじゃあ♡ できるわけない♡ こんな真似っ、何度も何度もぉ♡」
「でも俺になら? 俺は柏様の初めての客です。初めて晒した俺になら、どうです?」
「ふっ♡ ふうぅ♡ あひっ♡ ひぃん♡」
「恥ずかしいかもしれません。でも俺はもう知ってるんです。我慢なんてしなくてもいい。いいや、柏様に我慢なんてさせません」
「おっ♡ んお゛っ♡ ああっ♡ はぁっ♡ あああっ♡」
「言い出せなくても、言うまでもなくこうして同じようにしてあげますよ」
だがこの男にならば。
既に一度はねだったこの男にならば。
ねだる自分を、あさましい自分を、許せるかもしれない。
「おっ……♡」
「だから柏様、俺と一緒に来てください。俺と一緒に帰りましょう?」
「おっ、おっ……♡ んっ、ぐぅ♡ いっ♡ イっ、イク゛ッ♡ イク゛からっ♡ もっとして゛ぇ゛♡」
「本当ですか!? 嘘じゃないですよねっ、一緒に帰ってくれるんですね!?」
「うん、うんっ♡ イク♡ イきたい、イかされたいの゛ぉ♡ んお゛ぉっ♡」
「よかった……! 約束ですよ!」
喜色満面の笑みを浮かべ、男は力強く腰を打ち付け、容赦なく指を突き動かす。
「う゛ぅん♡ き゛たぁ♡ すごいのきた゛ぁ♡ イクっ♡ イクッ♡」
「はい、行きましょうッ、俺と一緒にっ、故郷に!」
絶頂を求める柏と帰郷を求める男。
熱に魘されているのは男も同じだった。
それでも当初の目的に執心しているそれは真なる願いには違いない。
そうしてすれ違った願いを抱いたまま、柏は昇り詰める。
「お゛っ♡ ほぉ♡ んひっ♡ ひっ♡ ひぃ♡ あっ、あっ、おっ、ほっ♡ ほぉっ――んおおお゛お゛お゛お゛んっ♡♡♡」
男の胸元にまで達するのではないかというほどに背を逸らせ、汗と涙を零し、獣の声で高らかに快楽を告げながら、柏は絶頂する。
痴態というよりは狂態に近いその姿を、男は美しいと見惚れていた。
「はぁっ……はぁっ……あっ……はっ……はぁ……はっ……♡」
「柏様……」
男は息も絶え絶えに絶頂の余韻に浸る柏を微笑んで眺める。
本懐は果たした。後はまだ高ぶったままの己の雄を、獣性を満たすだけ。
晴れやかな気持ちで柏の腰を鷲掴むと男は腰をさらに強く深く打ち付けた。
「お゛っ……お゛っほぉ♡ なん、て゛ぇ!? イッた♡ ワシ、もうイッた゛か゛ら゛ぁ゛!」
泣き言めいた柏の困惑の
「何言ってるんですかッ、帰ってきてくれるって言ったの、やっぱり嘘だったんですか!」
それを聞き咎めた男は爪先で尻穴を強く引っ掻きながら怒りの声を上げた。
もし共に絶頂出来ていたなら、男もこんな馬鹿らしい問答はしなかっただろうに。
「腰、止めて゛ぇ♡ イキすぎる♡ イキすぎておかしくなってしまう♡ お゛っ♡ お゛ほっ♡ んお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛♡♡♡」
「一緒に来てくれるまでやめません! 俺は絶対に柏様と一緒に帰りますからねッ!」
悔やむべきは男の手技の巧さか。
人にはない柏の快楽部位を的確に探り当て、執拗に責めれば柏が先に達して当然だ。
「ひっ、ひぃ♡ ひぃん♡ イクって言ってるのに♡ 主と一緒にイク゛ってぇ♡ ゆっ、ゆるひっ♡ ほんとに♡ もうっ♡ イクからイク゛のやだっ♡ イクのゆるしてぇ♡」
「そうやって誤魔化すようなことを言って……! 約束してくれるまで、絶対に離しませんからね!」
一度交わした約束を反故にするのなら、それは柏相手でも我慢ならない。
いいや尊敬し、何よりも求めた柏だからこそ許せるものではない。
「そっ、そんな゛ぁ♡ もうイクって、あっ゛ また゛イ゛ッてるぅ♡ こ、こわれる♡ ほんとにこわれてっ♡ 気をやりすぎて♡ あたまばかになってしまう♡ ほらまた゛イク゛ぅ♡ ずっと♡ もうずっとイキっぱなしなんじゃ♡ イってイってイき重ねぇ♡ 死んでしまうっ♡ イキ死んでしまう♡ いひ゛っ♡ ほ゛ぉぉおおおお゛お゛お゛っ♡」
男の怒りと行き違いは柏が呻き声しか漏らさないようになるまで止まらなかった。
「お゛っほぉぉぉお゛お゛お゛んっ♡♡♡」
◇◆◇◆
やあ、お疲れ様。どうだい? 納得行くまで、心行くまで堪能できたかい?
ん? どうしたね、柏。お客様の見送り、という風ではないようだけど。
……ほう、うちを出て行くと?
自分から押し掛けておいて、それはまた随分と都合の良い話だ。
くくっ、冗談サ。
うちとしてもあんたの扱いには困り果てていたんだ。
これ以上あんたにお客が流れるくらいなら、出て行ってもらった方がマシというもんサ。
あんたさん、どうやらものに出来たようじゃないか。
その娘は決して神ではない……そう怖い顔をしないでおくれよ。
うちは事実を言ったまで。
それともなにかい? あんたさんは神を手籠めにした気でいるのかい?
見てご覧よ、あんたさんの裾を掴むその娘を。
あんたさんが掴んだ手は神かい?
うちにはそうは見えないが。
……うん、それでいい。
ありのままを受け入れておやり。
全てとは言わない。けれども張らなくて良い見栄くらいはあんたさんが脱がしてやりな。
はははっ、よしておくれよ。
うちらも同じサ。神でもなければ人でもない、ただの異人。
そう呼んだのはあんたさんたちだよ。
ましてやキューピッドなんて柄じゃないっての。
さあさ行った行った。
精々達者で。末永くね。
─CLOSE─
ここまでです。