鬼怒川 カスミ
ゲヘナ学園に所属する温泉開発部の部長。
彼女を端的に表すのなら短絡的で思考も浅い……とは真逆の、計算高い策士といえるだろう。
極めて剛胆な性格であり、狡猾で聡明な人物。愚者を演じる賢者ほど厄介なものはない。
交渉事に優れ、人心の掌握にも長けた知能犯。
ゲヘナにおいて、温泉開発部はテロリスト扱いされており、彼女自身も指名手配犯として追われる身となっている。
しかし、この状況にもまるで動じず、むしろ楽しんでいるようにすら見える姿は狂人といって差し支えないだろう。
源泉を求め、建築物ごと爆破し、周囲を更地に変える所業。
当然、そんな彼女に対し、被害を被った多くの住人が怒りや恨みを抱いているのは当然だ。
少なくとも、復讐代行者である私に依頼が来た事が、何よりの証拠なのだから。
カスミに関する依頼を受けた私は、彼女の身辺調査や行動パターンを徹底的に精査した。
不良生徒からの聞き出しや、風紀委員会の生徒達が零す情報を逐一拾い集め、彼女の性格、嗜好、そして行動パターンを分析。
それらを調べ上げ、精査し、そして彼女の性格と本質を見極める。
依頼主からすれば、時間がかかりすぎているとか効率が悪いとかインテリぶるな忍者かぶれとか、名前が安直すぎないかとか、なんだ『ござる』って、キャラ付けかと笑われたりと散々な言われようだが関係ない。どんな暴言を吐かれようと、私は悪口に膝を折ろうと、依頼にかける情熱が冷めることなど決してないのだから。
そうして、あらゆる要素を吟味し、私は今回の依頼に臨む。
そう、復讐代行者である私こと、風魔 シノブが
相手は悪名高い温泉開発部の部長だ。
故に、私としては穏便に済ませられるものなら済ませたい、というのが本音だった。
なにせ私の目的は彼女の暗殺ではない。寧ろ暗殺なんて依頼を受ける筈がない。あくまで依頼は彼女が起こした温泉開発の被害を減らす事にある。
説得に応じないのであれば、それなりの手段を取る必要があるだろうが、出来る限り争いは避けたい。
なんて考えながらも、私は必要な道具を懐に忍ばせる。
温和な性格の私といえど、依頼が来れば容赦なく遂行する。それが私のやり方だからだ。
あらゆる事態に備え、準備は怠らない。愛用の武器を懐に忍ばせておきながら、争いを避けるとは矛盾しているようにも見えるが。兎にも角にも、私は依頼を遂行する為に動き始めた。
彼女は普段、温泉開発部のメンバーとは別行動をとり、単独で行動することが多いらしい。
当初は単独で行動する彼女の足取りを把握する事は困難を極めたが、彼女がよく足を運ぶ場所や時間帯、そして彼女が好む場所や物などを調べ上げ、私はその場所に先回りする事にした。
現在、彼女が身を隠している場所は廃ビルが並ぶゲヘナ自治区のとある郊外。
その廃ビル群の中に、彼女の隠れ家として使っている場所があるらしい。
此処は人通りも少なく、身を隠すにはうってつけの場所だろう。
私は地図を頼りに、彼女の隠れ家へと歩みを進める。
そうして辿り着いたのは廃ビルに偽装した建物。表向きにはごく普通の錆びれた廃ビルにしか見えないが、入り口付近には複数のブービートラップが仕掛けてある。
どうやら此処で間違いなさそうだ。
周囲に人の気配がないことを確認してから、私は建物内に侵入するのではなく、気配を殺しながら物陰に潜み、様子を伺う事にした。
建物内がどうなっているかは未知数だ。それこそ、あからさまに仕掛けられている罠が囮で、本命は建物内部に仕掛けられている可能性がある。
それを踏まえた上で、態々敵の懐に忍び込むのは悪手と判断。私は建物から少し離れた場所で身を潜め、様子を伺う事にしたのだ。
そして……
時間にして数時間経過しただろうか。廃ビルの中から彼女が姿を現した。
周囲を警戒しつつ、入口に仕掛けていたトラップに変化がないか確認している。
それ以外にも、遠目からは視認しにくい罠も複数あったらしく、彼女は手慣れた様子で一つ一つ解除していく。
流石は悪名高いテロリストと称される温泉開発部の部長と言うべきか。
トラップを解除する手際の良さは、不良生徒などとは比べものにならない。
そうして罠を解除した後で、周囲に他の気配がない事を確認しながら、彼女の意識が廃ビルへと向けられた瞬間。
「っ!!」
その一瞬の隙を逃す事なく、私は懐に忍ばせておいたスタングレネードを彼女の足元目掛けて投擲。
光と音を伴い、炸裂するスタングレネード。
突然の事態に彼女は対応しきれず、その身を閃光と爆音に包まれてしまう。
そんな隙だらけの彼女の懐へ飛び込むように接近した私は、そのままHGを取り出し、至近距離から銃口を向け、躊躇いなくトリガーを引いた。
「これで、依頼完了でござるな」
失神したカスミを無事に依頼主に送り届けた私は、報酬を受け取り、そのままゲヘナ自治区を後にする。
依頼は無事に遂行した。散々私をバカにした依頼主達の鼻を明かす事が出来ただろう。
これで少しは溜飲も下がるというものだろう、と私は満足感に浸りながら帰路につく。
しかし、大丈夫だろうか?
武器を隠し持っていないか徹底的に調べ上げ、衣服も、彼女の私服ではなく、此方で用意したものに着替えさせたが、それでも不安は残る。彼女の性格上、武器や衣服を没収されても尚、抵抗しないとはとても思えないからだ。
とはいえ、あの状態で何か出来るとも思えないが。
なんて事を考えながら、ふと脳裏に浮かぶのは拘束され気絶した状態のカスミを見る依頼主の表情。
険しい表情からカスミを見た瞬間の彼等の表情に背筋がゾクリと感じたが、依頼以上の事に干渉する事はない。
それが、私なりの仕事の流儀だ。
気持ちを切り替えるべく、今日は奮発して美味しい物でも食べよう。
依頼主からは報酬としてかなりの金額を貰っている為、懐は温かい。
そんな事を考えつつ、私はそのまま帰路についたのだった。
頭から水を被り、私は意識を取り戻す。
どうやら気を失っていたらしい。
胸の辺りが痛い。
確か、急な光と音で視覚と聴覚が機能しなくなり、身動きできない状態で、何者かに至近距離から銃で撃たれたような……
そこまで思考を巡らせた私は、自分の置かれている状況に気付き、驚愕する。
身体が縛られて身動きが出来ない。服装も、普段着ているものではない。
加えて、薬品を嗅がされたのか、頭が少しぼんやりしている。
まずい、と私は焦りを感じながら、身体を動かそうとするのだが、やはり思うように動かない。
どうにかして現状を把握しようと周囲を見回す私に声がかけられる。
見覚えのない……いや、あのオートマタは以前、源泉を掘り出す為に爆破した建築物のオーナーだった者だ。
他にも、見知った顔がちらほらと見える。
皆、温泉開発部の活動により、家を失った者や職を失った者達なのだろう。彼等は皆、怒りの眼差しで私を見ている。
「漸く目を覚ましたか」
「……起こすにしても、もう少し優しく起こしても良かったんじゃないかい?」
隠し持っていた筈の爆弾もない。相当念入りに調べられたのだろう。
着用している服が違う事から、本当に隅々まで調べられたのだと思うと、願わくば、此処にいる者達ではなく、私を捕らえた者であってほしいものだと、胸の中で願うばかりだ。
そんな態度が気に食わなかったのだろう。男は私の胸倉を掴むと、そのまま壁に向かって叩き付け、壁を凹ませる勢いで押し付ける。
その衝撃は凄まじく、身体に激痛が走るが、それでもオートマタは手を放す事はなかった。
これは拙いな。
何とか言葉を紡ごうとするが、私の口から出るのは掠れた呻き声だけで言葉として成立しない。
それでも、私は必死に言葉を紡ごうと口を開くが、それすらも許さないと言わんばかりに、オートマタは私を壁に押し当てる力を強めていく。
このままでは窒息してしまう。
そう思った矢先に解放されたのだが、身体はそのまま床に倒れ込みそうになり、寸での所で髪を掴んで引き上げられる。
「少しは自分の立場を弁える事だな」
髪を掴まれたまま、今度は頬を殴られる。口内が切れたのだろう、血の味が口の中に広がっていくのを感じながら、私はオートマタを睨む。だが、そんな私の態度が気に食わなかったのか、オートマタは再び拳を振り上げると、それを容赦なく振り下ろした。
何度も、何度も何度も。まるで鬱憤を晴らすように殴り続けるオートマタに抵抗しようにも身体が動かない為、されるがままになるしかない私だったが、それを別の獣人が静止し、オートマタを下がらせる。
助かった……と、思ったのも束の間、今度は獣人の蹴りが腹部に叩き込まれた。
胃の中の物が吐き出されそうな衝撃と痛みに耐えながら蹲る私だったが、獣人は容赦なく蹴り続ける。
まるでサンドバックのようだ、と他人事のように思いながらも、酸素を求めて荒い呼吸を繰り返すだけになってしまう。此方の話に聞く耳を持っていない相手に、交渉の余地はない。飛びかける意識の中、ただ耐えるしかなかった。
そうして、どれ程の時間が経過しただろうか?
もう時間の感覚すら曖昧になりつつある中、漸く獣人の蹴りが止まり、私は解放された。
だが、休む暇などなかった。今度は別の獣人に腕を抑え付けられると、仰向けの状態で固定されてしまう。
そして、別の獣人が注射器を取り出すと、私の腕に針を突き立てた。
刺された事による刺痛と、何を注射されたのか分からない恐怖。
それが次第に身体の奥から熱が広がっていく感覚に襲われる中、私は抵抗も出来ずにただされるがままになるしかなかった。
「何を注射されたか、気になるか?」
私を見下ろすようにしながら、獣人はそう問いかける。
その問いに対して、私は何も答えなかったが、それを肯定と受け取ったのだろう。
獣人は私の顎を掴むようにして掴むと、そのまま言葉を続ける。
どうやらこの獣人も私の言葉に耳を傾ける気も毛頭ないらしい。
そんな相手に抵抗しようものなら、また殴られるだけだと判断した私は大人しく従う事にしたのだが、獣人の口から出た言葉は予想通りのものだった。
獣人が打ったのは媚薬の類。依存性は少ないが、暫くは身体が火照り続けるという代物。
それを注射されたという事は、これから何をされるかなど考えるまでもないだろう。
そうか、このまま穢されてしまうのか。と、私は心の中で呟いた。
獣人やオートマタの口からは、やれ『温泉開発の被害』だ『心を入れ替えるなら』と、様々な言葉が飛び交っていたが、そんなものはどうでもいい。ただの大義名分を掲げただけの戯言だ。
結局の所、彼等は無抵抗な私をいいように蹂躙し、性欲の捌け口にしようとしているだけなのだ。
その証拠に、彼等(オートマタは除く)は、下卑た表情を浮かべているし、何より彼等の下半身の一部が硬くなっているのが何よりの証拠だろう。
だが、私は抵抗しなかった。
どうせ、この状態では何をされても抵抗できない。
嫌悪と絶望が入り混じりながらも抵抗出来ないまま衣服を剥ぎ取られていく中、私は覚悟を決めるしかなかった。
そして、私の裸体が露わになると、彼等は一斉に襲いかかってきた。
全身をくまなく愛撫され、舐められ、噛まれる。
まるで性処理の道具のように扱われながら、私はただ耐える事しか出来ない。
だが、そんな私に対して彼等は容赦なかった。
胸や尻といった部位に手を伸ばし、乱暴に揉みしだき始めたのだ。
痛みの中に、媚薬によって強制的に快楽を同時に与えられながらも、私は必死に耐え続けるしかない。
そんな私を嘲笑うかのようにして行われる行為はエスカレートしていき、ついには秘部にまで伸ばされた。
乱暴な手付きにより、無理やり弄られ、それでも彼等の手が止まる事はない。
何度も何度も繰り返し行われる快楽に意識を失いかけるも、それすらも許されないまま行為は続けられていく。
そして遂に、彼等は私の秘部へと肉棒をあてがった。その瞬間、恐怖と絶望が入り混じりながらも、私は彼等を睨み付ける。だが、それが気に入らなかったのか、獣人は私の頬を力の限り殴りつけると、そのまま覆い被さってきた。
次の瞬間、私の膣内に熱いものが侵入してくる感覚に襲われる。
痛みと異物感。そして初めてを奪われた喪失感に耐えながら歯を食い縛っている間にも行為は続いていく。
やがて限界を迎えたのか、身体の内側に熱いものが放たれた。
延々と注がれる間隔。犬の射精時間は長いと聞いていたが、まさか自分が経験する羽目になるとは思わなかった。
そんな事を考えつつ、私はただ耐えるしかない。
そうして漸く引き抜かれた時には、既に抵抗する気力などなくしていた。
しかし、彼等はまだ満足していなかったらしく、今度は別の獣人が私の上に跨ると、再び挿入してきた。
先程よりも激しい動きに翻弄されつつも、それでも私は必死に声を押し殺し続けた。
だが、そんな私の抵抗すら楽しむようにしながら行為を続ける彼等はやがて限界を迎えようとしていたのだろう。
一際大きな声を上げたかと思うと同時に膣内へ熱いものが放たれた。
そしてその後も休む暇なく続けられる陵辱に、私はただ耐え続けるしか出来なかった。
何度も何度も繰り返される陵辱と快楽に、次第に頭の中が真っ白になっていく。
もう何も考えられない。考えたくない。そんな思いすら抱きつつ、私は意識を失ったのだった。
気が付くと、私は何処かの廃墟にいた。
周囲には誰もいないようで、静寂だけが辺りを包み込んでいる中、私はゆっくりと身体を起こすと周囲を見回した。どうやらここは廃ビルの中らしく、割れたガラス窓から差し込む光が唯一の光源だった。
そんな状況下において、私の格好は酷いものだった。
着ていた服はボロボロになっており、下着すらも身に付けていない状態だ。
そんな自分を見た瞬間に思わず目を背けてしまうが、それでも現状を把握する為にはそうせざるを得なかった。
そして、改めて自分の状態を確認した私は、思わず言葉を失った。
全身に刻まれた無数の傷と痣。
そして、下腹部は不自然に膨らんでおり、そこから漂う悪臭が何なのかを認識すると同時に、私は全てを理解してしまった。
あぁ、やはりそういう事だったのか……と、私は心の中で呟く。
あのオートマタや獣人達は最初から私が改心する事などなど気にもとめていなかったのだ。彼等はただ己の欲望を満たす為に行動していただけであり、そこに私という人間は存在しないのだろう。
いや、もしかしたら私自身も彼等にとってはただの性処理の道具でしかなかったのかもしれない。
そう考えると納得出来る点も多いし、何より私が今こうして解放されたのが何よりの証拠だ。
私の言葉など、誰も信じる筈がない。それだけの事をしてきたと自負はあるし、何よりこの事を誰かに話すつもりもない。
だから、私は諦めるしかないのだ。全てを諦めて受け入れるしかない。
きっとそれが一番正しい選択の筈なのだからと、私は自分に言い聞かせるようにしながら目を閉じる事にしたのだった。
目頭が熱い。目尻から涙が溢れ出す。
止めどなく溢れて止まらないそれを拭う事も出来ず、私はただ泣き続けたのだった。