(ネタバレ)赤ずきんちゃんがひどい目に遭います。
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赤ずきん
僕は『DX絵本入りこみぐつ』を手に入れた。
これは絵本だけじゃなく本なら何でも、二次元の世界に入れるうえに、その世界ではなんでも思い通りにできるひみつ道具だ。今日は何をしようかな。
「今日はこれにしよう」
僕は『赤ずきん』を置くと、『DX絵本入りこみぐつ』を履いて、物語の中に入りこんだ。
「赤ずきん、おばあさんが病気になってしまったからおみまいに行ってきなさい」
「わかったわお母さん」
「くれぐれも、道草しちゃダメですからね」
「もう、わかってるってば! 」
「じゃあ僕が一緒に行きますよお母さん」
「あら、あなたは――――ああ、野比さん。そうね、野比さんが一緒についていってくれるなら安心だわ。赤ずきんの事、よろしくお願いしますね」
「え? お母さん、このおじさん誰? 誰なの? 」
「まぁ、この子ったら! ごめんなさい野比さん。この子ったらきっと照れてるのよ」
「お母さん! お母さん! 私照れてなんてないわ! この人知らない! 知らない人よ! 」
「いい加減にしなさい! いくらなんでも失礼よ!
この人は野比さん、あなたの恋人でしょう?! 」
「恋人……? お母さん何を言っているの? 私に恋人なんていないわ! 知らない知らない! 恋人なんて嘘よ! 」
赤ずきんのお母さんが流石に許せないといった表情で手を振り上げた。
「まぁまぁお母さん。この年代の女の子にはよくあることですよ。それよりもほら、そろそろ行かないと帰りが遅くなってしまいますから」
「……そうですか? まぁ、野比さんが気にしていないのでしたら……良いのですけれど。
本当にごめんなさいね? 帰って来たら、この子にちゃんと言い聞かせておきますから」
「お母さん……ッ」
自分の訴えがみじんも届いていないことに、絶望したような表情の赤ずきん。
「じゃあ行こうか赤ずきんちゃん♪ 」
「…………はい」
すっかり元気を失ってしまった赤ずきんちゃん。可愛い。
「行ってらっしゃい。野比さんの言うことをよく聞くんですよ。おばあさんによろしくね」
「うん……行ってきます……」
とぼとぼと歩き出す赤ずきん。どんなに嫌でもストーリーの流れは変わらない。僕以外には変えることはできない。
「赤ずきんちゃん、ほら」
歩き出してしばらく、森に入ったので手を差し出してみる。
「え……? 」
それに対して赤ずきんちゃんは、意味が分からないというか、いやそうな表情で僕のほうを見てきた。
「ほら、手を繋ごうって、こと。ね? 手を繋ごうよ」
「い、イヤです……」
完全に不審者を見る目。
というか、彼女からすれば誰だかわからない謎の男――というだけじゃなく、母親に取り入って自分の恋人思わせてた怪人物だから、そういう反応になるのもそりゃそうだ。
「イヤだ、じゃないよ。お母さんも言っていただろう? 僕の言うこと聞かなきゃだめだよ~」
にんまり、笑顔で言い聞かせると、赤ずきんちゃんは心底恐ろしいといった表情でぶるりと震え、恐る恐る手を伸ばしてきた。
「あ、今思いついた。ほら、森ではぐれたら危ないからね」
「…………」
無口になってしまった。つないだ手からかすかな震えが伝わってくる。
小さな手だ。
小さくてスベスベで柔らかくて、女の子の手。
「…………っ! 」
さわさわ、赤ずきんの手の甲を舐るように擦ると、びくりと反応が返ってくる。
怖気が走っているのか、反射的に手を放そうと引っ張られるが、強く握って抑え込む。
俯きながら足がもつれそうになっている。
可愛そうに。
「おっと、大丈夫かい? 赤ずきん。駄目だろ、手を放そうとしちゃ」
「――イヤッ! もういやっ! 離してッ! どっかへ行って! 私に触らないでッッッ!! 」
暴れる赤ずきんちゃん。可愛い。
このままだと転んでしまうかもしれないので抱っこする。
「イヤ! イヤッ! やだっ! 離して! お母さん! おばあちゃん! 助けて! 助けて!助けて! 」
「こらこら、暴れるなって。可愛いなぁ。まったく」
じたばたじたばた、暴れる赤ずきんを腕の中に抱きかかえながら、彼女の体のいろんなところを触る。
当然不可抗力。
僕の手が彼女の未発達な胸に触れても、プリンプリンのお尻を撫でても、それは不可抗力なので仕方がない。
「誰か! 誰かー! お願い! 誰か助けて――ッ! 」
「誰も来ないよ、来るとしたら」
赤ずきんの助けを求める声に反応したのか、森の木の陰からオオカミさんが現れた。
「おや、赤ずきんと野比さん。こんにちは」
赤ずきんが一層腕の中で暴れ始め、
「オオカミさん! 助けて!! この人知らない人なの! お願い助けて! 」
と必死で助けを求めた。
「やぁ、オオカミさん。ご覧の通りでね、赤ずきんにぼくは嫌われちゃったみたいだ」
「なんだ、それは大変だね野比さん。
駄目じゃないか、赤ずきん。オオカミの私でも君と野比さんが恋人同士なのは知っている。大切な人に迷惑をかけるのは良くないことだよ」
オオカミさんのその言葉を聞いて、赤ずきんは絶望した表情を見せ、力を抜いた。
「そんなことより、二人はどこかに行くのかい? 」
「ああ、二人でおばあさんの家にお見舞いに行くんだよ。なぁ、赤ずきんちゃん? 」
「…………」
返事がない。
「そうかいそうかい。お土産は? 」
「ケーキと葡萄酒さ。だよね? 赤ずきんちゃん? 」
「…………」
返事がない。
「お見舞いなら花も必要じゃないか?近くにきれいな花が咲いているところを知っているんだ。お花を摘んでいくといいよ。きっとおばあさんもそのほうが喜ぶさ」
「そうかい? でもなー、道草食っちゃいけないって言われてるからなー。どうする?赤ずきんちゃん」
「……オオカミさんありがとう。私、お花を摘んでからおばあちゃんの家に行くことにするわ」
「まったくもう、赤ずきんちゃんったらいけない子なんだから。仕方ない仕方ない。僕も一緒に行こう。一緒に行こうねー」
「…………ッ! 」
そうして僕と赤ずきんは花を摘みに、オオカミさんはおばあさんを食べに行った。
「ほらほら、赤ずきんちゃん。綺麗なお花だねぇ」
「……ええ、とってもきれい……っあ」
「もちろんお花より赤ずきんちゃんのほうが綺麗で可愛いよ」
「っ……! ううっ……」
僕は変わらず赤ずきんを抱きかかえたまま彼女に花を見せる。
赤ずきんちゃんの服がめくれていたりするのは彼女が暴れたから。それ以外にないよ?
「んふふ……。どのお花がいいかな? 」
「っひ……、や……ぁ……」
ドクンドクンと赤ずきんちゃんの心臓の鼓動が掌に伝わってくる。
嫌悪と恐怖で心は冷え切っているだろうに、彼女の体はどんどん熱を帯びて汗ばんできている。
ああ大変だ!汗を拭かないと風邪をひいてしまう!
ああでもハンカチもないしタオルもない! これは僕が手づから汗を拭い取ってあげないと!
「……そこはだめっ! 駄目って、お母さんが! 」
「駄目じゃないさ。ほら、恋人同士なんだから、駄目じゃないんだよ」
「やだぁ! やだぁっ! やぁっ! 」
「可愛いね、可愛いね、赤ずきん。ここも本当に可愛いよ」
「離して! 触らないで! どっか行って!
嫌い! 嫌い! 嫌い! 大っ嫌い! 」
「僕は可愛い君が大好きだよ、赤ずきんちゃん」
僕はお見舞い用の花を摘んで、赤ずきんと一緒におばあさんの家に再び歩き始めた。
赤ずきんが顔を涙でぐしゃぐしゃにしてなんだか歩けないようだったので、再びの抱っこ体勢だ。
可愛いね。
赤ずきんは今もひっくひっくとしゃくりあげて声も出せないみたい。
可愛そうに。
そんなこんなでおばあさんの家に到着。
「おばあさん、赤ずきんと付き添いの野比ですけど、お見舞いに来ました」
「はいはい、鍵は開いているから入ってらっしゃい」
家の中からしわがれた声が聞こえる。
「変だね、おばあさんの声じゃないみたいだ」
僕は家の戸を開けると中に入って、おばあさんがおばあさんになりすましたオオカミだと直感。
「くたばれオオカミ! 」
「ぎゃあああ! 」
僕は赤ずきんを抱いたままオオカミをやっつけて、オオカミのお腹からおばあさんを救出!
「よっこらしょ、ああひどい目にあった」
「おばあさん、怪我はありませんか? 」
「ああ野比さん、大丈夫。どこも怪我していませんわ。
赤ずきんも、ありがとう」
「……おばあちゃん、おばあちゃんもこの人を知ってるの? 」
「ええ、野比さんでしょ? あなたの恋人じゃない」
「…………ふふふ、そうね。そうなのよね。野比さんは私の恋人、なのね」
「ええ、そうよ。ふふ、野比さんごめんなさいね。この子ったらきっとあなたと恋人でいることが夢のようなのよ」
「いえ、自分も赤ずきんちゃんと恋人なんて夢みたいですから」
「夢、夢みたいだわ。ふふふ、ええ本当に夢みたい。
あれもこれも、きっと夢なんだわ」
赤ずきんは笑っている。
おばあさんも笑っている。
オオカミは死んでいる。
そして僕はというと、
「あら、野比さん。さっきあれだけしたのに……。
ふふ、元気なんだから」
「あらあら、若いっていいわね」
「ははは、面目ない」
めでたしめでたし。
一つ目のお話はこんな感じで。
書いてて楽しかった。
感想とかくれると狂喜乱舞で喜びます。
あと、活動報告の方にリクエスト作ったのでそっちもくれると嬉しいです。
次回も見てね。