「あああっ、ほんっと私何してるのよっ!!」
全ては自分がネタ元になっているドラマへの不満を後輩である石上優にこぼしたことが始まりだった。
『だったらネタを先生に提供した後輩と会ってみますか』と言われて、つい、『いいじゃない、言いたいこと言わせてもらうわ』と会うことにしたのだ。
会ってみたら相手はなんと俳優の姫川大輝である。
これでも財閥の令嬢である。
パーティには有名人も多く参加するし、俳優に会う機会もないでもない。
別に見た目のいい男にも俳優にもそれなりに慣れている。
でも、石上の後輩として紹介されたこともあって気安いスタートであったのは確かだ。
一緒にゲームをやったり体を動かしたり。
そんな中、大輝も20歳になったのだから、お酒を飲もうと石上がいいだしたのが始まりだっただろう。
大学に入ってアルコールを嗜む機会がなかったかといえばあったし、それなりに酔ったこともあったと思う。
だが、周りの人間も自分の家柄にあった付き合いというか、お硬い家の人間で、それなり以上の貞操観念の持ち主たちでまとまっている。
大学生活で漬け込まれて体を許したなんて話は高校以上によく話を聞いたし警戒心はあった。
私は合コンバリバリ一期一会でだらしなく股を開くような人間ではないのだ。
けど、気のおける相手である石上と一緒であることもあって、結構遠慮なく飲んでしまった。
姫川大輝もドラマでの彼と違って結構普通にみえるというか、気安くしてくれて優や御行のようにいい友達ができた喜びがあったのだ。
それなりにアルコールを楽しみ、いい気分で解散しようとなったのがさっきで、タクシーに乗った石上と別れて駅まで二人で歩いているときにここで別れるのがこのいい気分の中ちょっと惜しい気持ちになって、『せっかくだしもうちょっと飲まない?』と声をかけたのが間違いだった。
実際、彼は聞き上手で話し上手だった。
私のアイツへの後悔とか思いとかを全部吐き出した。
それに、失恋で自分自身の魅力にちょっと自信がなかったところもだいぶ気持ちよく慰めてもらった気がする
そのせいだろうか?
だいぶ酔っ払ってきて次に行くか解散するかと『タクシー呼びますね』と言われたときに、つい魔が差したのだ。
自分が女と見てもらえてないような悔しさがあって、『はんっ、何もせずに返すのにぇ! 結局色々言ってたくせに意気地がないのねっ!』
多分そんなことを言った。
言ってしまった。
──気づいたら今、自分はラブホテルでシャワーを浴びている。
今、私は全裸だ。
シャワーを浴びているんだからそりゃそうだろうという話だが、全裸の私のドアひとつ先に男がいるってやばくない?
なにこれ、なにこれ。
どういうことなんだろうか。
やってしまった……。
つまりはそういうことだ。
ああ、ほんと、なにシャワー浴びてんのよ。
その前になんとか断って帰ればよかったじゃない、
そんなつもりじゃなかった、ごめんなさい。
それを伝えれば、多分こうはならなかった気がする。
でも、ラブホテルに入ったあとにちょ、ちょっとそのナマナマしいそういうことをする場所って感じに、ちょっとビビったというか、気圧されたというか、そんな私にあれ、怖いですか? じゃあやっぱり、みたいに言われて、『見てなさいよ!』とずんずん進んで自らシャワーを浴びに来たのだ。
温かいシャワーを体にうけていると、アルコールが一気に抜けていく気がする。
やってしまった。
まじでこれである。
世の中の人達もこうやって過ちを犯すんだろうか。
酒でやらかす輩をホント脳が詰まってない人間は大変ね、なんて軽く見てたのに、こうである。
まさかこれほど馬鹿なことを自分がしてしまうなんて。
一夜の過ちとやらはこうやって生まれるのかと初めて理解した。
……でも、
いや、経験どころか子どもまで生んでんのよね。
それどころかなぜか私の名前つけてんのよね。
べっ、別に経験くらい、一度くらい……してもいいのでは?
自慢されるたびにちょっとぐぬってたところもあるし、婚約者もいなくてそろそろ大学卒業するのに清いままなんですか? このまま死ぬまで独り身貫く気なんですかと心配してるみたいに煽りに来る叔母様を思い出す。
あいつ以外とすることに興味がなかっただけで行為自体にはきょ、興味がないわけではないし!
……。
……き、汚いところないわよね……?
備え付けの安いボディソープで体を洗い出す。
行為前ってどのくらい洗うものなのかしら……。
いつもの二倍くらいは時間をかけて体を洗う。
たぶん……汚いところはない、ないはずだ。そうよね?
……頭は洗っても良いものなのかしら。
いやでも乾かしたりするのに時間かかるし、ホテルに90分とか二時間とかあったし、なら髪は濡らさないわよね……?
なんで頭は洗わなかったのかと指摘されてしまわないかとドキドキしながらシャワーを終える。
バスタオルをぎゅっと体に巻き付けて入るが、世界で一番の痴女になった気分だ。
「あ、上がったわよっ……!」
「じゃあ俺も……」
「いっ、いいわよっ! そのままで! さ、さっさとしなさいよ! 終電無くなったらどうするつもり!?」
あああ、なぜこの口はこうも言うことを聞かないんだろうか。
シャワーを浴びてもらえばそれだけ時間の猶予ができたのに。
憎い! この勝手に動く口がニクい!
「そう?」
大して気にしてないような素振り。
きっと彼は経験がある……のよね? 慣れている感じがある。
大学でたまにいる女慣れしているやつに近いところを感じる。
どうしていいかわからず、ベッドに横になり……体を隠してしまうが、目は彼のことを見ていた。
そうして彼を見て気づくこともある。
(なにあれ、くっそ、エッチな体してるじゃない……)
上着を脱ぐ彼の体が目に入ったのだ。
それがもう、たまらなく扇情的だったのだ。
ストリップという服を脱ぐだけの動作が商売になるというのを感覚的に理解してしまった。
いや、テレビで見たことはある。
友達とも話題に出たことがあるし、彼女にしてほしい! なんてこと言っていた子も周りにいた気はする。
──でも、あれ、やらしすぎるでしょ!
男にもエロい体って言うのがあるのを初めて知った。
あれは確かに売り物だわ。
魅せるプロの体というのを知ってしまった……。
優も御行も顔は良い部類になるが、あれと比べるとジャンルが違う。
豹のような肉食獣の研ぎ澄まされた体の美しさのような物があった。
恥ずかしくて顔を隠してしまうが指の間から目を離せない。
服を脱いていく動きの一つ一つがいやらしい。
漫画だったら鼻血を吹いてしまいそうだった。
「眞妃さん」
「はひっ!」
じっと見てたらいつの間にか相手は全裸である。
……弟のと大きさが全然違うじゃないっ……!?
二人の夜が始まりだした。