「……ん、ぅ……?」
重い頭が段々と覚醒していく。頭だけじゃない、身体も重い……腰痛いし……なんかすごい匂う……全身濡れてる……
……、……
「っ……!」
昨夜の情事が思い出され、瞬く間に顔が熱くなる。気怠い疲労感も、体液まみれの身体も、わたしの側であどけない寝顔を晒して眠るしずくちゃんとせつ菜ちゃんも。全てが現実だったという証拠でしかない。
壁にある時計が示す時間は午前二時……寝直したいけど、その前にシャワーを――
「きゃむっ!?」
浴びようと思いベッドから出ようとして、シーツにスライディングしてしまった。足腰に力が入らなくて、思ったように動けない。
「んんー……」
「っ! ……歩夢さん!? 大丈夫ですか!?」
どうしよう、2人とも起きちゃった……せつ菜ちゃんはまだ寝ぼけてるけど、しずくちゃんは完全に覚醒してわたしの心配をさせてしまった。
「うん、目が覚めたんだけど思うように動けなくて……起こしちゃってごめんね」
「いえ……それで、どこに行こうとしていたんですか?」
「えっと、シャワー浴びたいなって」
「でしたら私が案内します。支える必要もありそうですし。服は……すみません、戻るときにバスローブお貸ししますね」
「ううん、それで十分だよ。ありがとう」
しずくちゃんの手を取って、ベッドから出ようとすると。
「待ってください……私も、行きます……」
いつもよりローテンションで、声が低めのせつ菜ちゃんに止められた。いつも明るくてしっかりしてるせつ菜ちゃんだから、こういう姿を見れるのは恋人の特権って考えると嬉しくなっちゃう。一緒に住めばもっと見られるのかな、なんて。
「大丈夫ですか? 寝ていてもいいんですよ?」
単なる気遣いか、それともわたしへの独占欲か。分からないけど、後者だとちょっと嬉しいなって思ってしまう。
「んー……やです……私も一緒がいい……」
「っ……! 分かりました、一緒に行きましょうね。手を……あっ」
うとうと状態のかわいすぎるせつ菜ちゃんにやられたしずくちゃんだけど、片手では私を支えられないことに気付いたのか、差し出した手が止まってしまった。
「……大丈夫、わたしなら一人で歩けるから」
「また歩夢さんはそうやって……だめです、せめて片手は持ってください。ゆっくり進めば大丈夫ですから」
そう言ってしずくちゃんは、わたしたちの手を持って先導する。
「っ……」
目の前を歩くしずくちゃんの後ろ姿に、目を奪われて息を呑む。
艶やかな長髪が汗で背中に張り付いて、今まで見ることのなかった姿に胸が高鳴る。少し視線を下げれば、大きめながら無駄なお肉のないおしりが脚の動きに合わせて揺れて、わたしの官能を刺激していく。
極めつけに、先ほどまでわたしたちと交じり合っていた愛の証が身体中に付着していて……いくらあれだけ求め合ったといっても、意識しないなんて無理なわけで。
「……綺麗ですよね、しずくさんの後ろ姿」
「えっ!? うううん、そうだねっ!」
なんて見惚れていたらせつ菜ちゃんが突然見透かしたかのように言うものだから、みっともなく動揺してしまった。
「ちょっ、歩夢さん声大きいですっ……!」
「あっ、ごっ、ごめんねっ……」
まさかせつ菜ちゃんにそう言われるなんて……
それから浴室に辿り着くまで、誰も何も話さなかった。せつ菜ちゃんの言葉が聞こえていたはずのしずくちゃんも。
奇妙に思って問いかけようとしたけれど、振り返ったしずくちゃんの「どうでしたか? 3人でしてみて」という言葉に阻まれた。そんなの、答えは決まってる。
「すっごく良かった……一対一に拘ってたのが無駄だったんじゃないかって思うくらい」
「無駄なんてことはありません。そのおかげでいっぱい歩夢さんを気持ちよくできましたし、私だって歩夢さんとしたかったですから」
「しずくちゃん……でもどうして?」
「んー……聞き方を変えますね。歩夢さんは満たされましたか?」
「そんなの当たり前だよっ。心も身体も、これ以上ないってくらい。こんなに満たされていいのかなって思うくらいだよ」
「そうですか? ではどうして、まだ私を見て欲情したんですか?♡」
揶揄うようなその瞳は、確実にバレてる。私がしずくちゃんに見惚れてたって。だけど認めたくない。バレたくない。
「なっ……! そ、それはそうだよ、だって好きな人の裸なんて、意識しない方がおかしいもん! いくら見たって慣れないよっ」
「では、私はせつ菜さんに意識されていないと?」
せつ菜ちゃんの方を見てしずくちゃんが問いかける。
「意識してるからこそ、あの言葉が出てきたんです。ですが歩夢さん、流石に動揺しすぎですよ?」
うぅ、せつ菜ちゃんまで……これ以上話しててもぼろが出るだけだよね。さっさとシャワーを浴びよう。そして寝よう。
「もう知らないっ。先に行くねっ、っわわっ……!」
繋がれていたしずくちゃんの手を離して足を踏み出すも、未だに力が入らなくて大きくよろめいた。
「歩夢さんっ!」
傍にいたせつ菜ちゃんに腕を引かれ、そのまましずくちゃんに抱きとめられて事なきを得た、けれど別の懸案事項が発生してる。
しずくちゃんとせつ菜ちゃんと肌が直接触れ合って、混ざり合った匂いも直接鼻を刺激して、こんなの、もう――
「やだよっ、やなのにっ……!」
勝手に身体がぎゅうっと2人を抱きしめて、自分でも分かるほどに呼吸が荒くなって。
「まともに歩けないくらい身体にきてるのに、2人の裸見てるだけで、くっついてるだけで、ドキドキして身体の奥がまた熱くなってっ……そうだよ、さっきしずくちゃんの後ろ姿見て、意識するなんて次元じゃなくて、思いっきりえっちな目で見てた。……ごめんね、あんなにしたのに……」
普通はあんなにした後なら、どんなにえっちな恋人の姿を見ても興奮しないのかな……2人以外にいたことないから分かんないよ……
「ごめんなさい、意地悪が過ぎました。それを言ったら……いえ、これ以上は身体が冷えます。行きましょう」
しずくちゃんに先導され、2人に支えられたまま、シャワー室へと向かう。
湿度の高い空間へ足を踏み入れ、そのまましずくちゃんの手がシャワーのノズルを捻り、固定されたシャワーから温水が流れていく。付着した体液は洗い流されていくけれど、胸の鼓動は増すばかり。
「……私は見てきた映画の影響で、小学校を卒業する頃には、えっと……ひとりですることを覚えていました。せつ菜さんは最初こそそういった知識はありませんでしたが、私の影響でえっちなことにのめり込んでいきました」
わたしにくっついて少量のお湯を浴びつつ、言い難かっただろうことを告白してくれたしずくちゃん。
わたしは高校に入ってすぐくらいだったから、思ったより早くて意外だった。でもわたしの場合、回数が多い気がしないでもないけれど……個人差だよね、うん。
「待ってください、言い方……! いやまあ間違ってはいませんが……しずくさんに、そして歩夢さんに今までの価値観を変えられました。いいじゃないですか、私たちの前でなら。求められて悪い気はしませんし」
「あ、そういうスタンスとります? 1度火がついたらせつ菜さんの方が性欲ありますからね?」
「なっ……! ……まあ今はいいです。とにかく、遠慮せずに求めてください。今も、これからも」
「3人でできるなら1番ですが、さっきみたいに交代しながらするのもアリですね♡ ……私も、身体洗わせてください♡」
流水を中心で浴びるわたしに身体を擦り付ける動きからは、明らかに言外の目的を感じる。
吐息や視線に熱がこもって、否応なくその気にさせられて、せつ菜ちゃんにもその雰囲気が伝播して、気付けばわたしたちはぎゅうっと密着し合い互いの身体を押し付け合う。
互いの吐息がかかる距離まで密着し、ふと目が合って――
「……お部屋、戻ろ?」
浴室から出て、大きな1つのタオルで3人の身体を軽く拭き合った後、生乾きのまましずくちゃんの部屋へと戻る。
今度は2人に支えられることなく自力で。時間が経ったからか、欲求が疲労を上回ったからかは、分からないけれど。今はどうでもいい。
「っ……!♡」
部屋に戻れば、ベッドからむせかえるような性臭が漂ってきて、大きく胸が高鳴って、動けずその場で立ち尽くす。あの場所に戻れば、また見境なく発情してしまうだろうから。
そんなわたしの葛藤を知ってか知らずか、2人に手を引かれて誘われる。先ほど混ざり合った濡れ地の上へと。
「ふぅっ……はあぁ……♡」
呼吸をするたびに淫気が体内に循環し、思考が性欲で満たされていく。
「歩夢さんは特にお疲れでしょうから、横になっていてください♡ 私たちがっ、んっ、先導、しますからぁっ♡」
ベッドの中心に寝かせられ、しずくちゃんに右側から身体を寄せられ、そのまま右手を自らの秘部へと押し当てられる。
先ほど洗い流したとは思えない程に濡れていて、わたし同様にそういう気分になっていることが分かり、安堵しそして興奮し、半ば無意識に手が動く。
「あっ♡ 歩夢さっ、んっ……♡」
「しずくちゃんっ……♡」
あれだけ繰り返しても、やっぱり慣れない。
わたしの指に触れるぐちょぐちょでぐにぐにな感触も、指を動かす度に発せられる艶めかしい声も。
わたしの側で乱れる一糸纏わぬ姿のしずくちゃんも。きっとこれからも胸が高鳴る。
「歩夢さん、私もっ……!♡」
左側からせつ菜ちゃんも同じように、わたしの手を取って蜜壺へと導かれる。
同じように本能のままに指を動かすも、しずくちゃんと同時にはさすがに難しくて、きっと上手くはできてない。
「はぁんっ!♡ 歩夢さんっ、歩夢さぁんっ……!♡」
「せつ菜ちゃんっ……♡」
だけどせつ菜ちゃんは指を自らの気持ちいい所へと押し当て、身体をくねらせつつわたしへと密着させて、求めるようにわたしの名前を呼んでくれる。
その姿が、声が、たまらなくいじらしくて愛おしい。
きっとこれからも慣れることなく、永遠にわたしの心を搔き乱すのだろう。
だからわたしも、もっと欲しい。渇望が渦巻き、ねだるようにふたりを見つめる。
「ふふっ、いいですよ♡ 混ざり合いましょう?♡ 3人で、飽きるまでずっと♡」
しずくちゃんの片手が胸に添えられ、もう片手が膣内とクリトリスを弄る。
――飽きることなんてないよ、きっとさっきみたいに、意識を失うまで求めると思うから。現に今も、軽く触れられただけで求めるように身体が跳ねて腰が浮いているから。
「ずっとこうしていたいです♡ しずくさんと、歩夢さんと……♡」
せつ菜ちゃんもわたしの胸と秘所に手を添えて、しずくちゃんに顔を近づけ、次いでゆっくりとわたしへも。
「んっ、んむっ♡ ちゅるっ♡ だいすきっ♡ もっと、もっとぉっ♡♡」
全身で2人を感じ、2人で満たされていく。気持ちいいと大好きで満たされていく。
性感が高まれば高まるほど鋭敏に2人の存在を感じ、更に深く欲しくなって、反対に意識は薄らいでいって。
自分がいつ達しているのか判別がつかないほどに、何度も何度も満たされて、本能のままに交わり続けた。