※この作品はR-18です。

蜜愛桜桃ポリアモリー   作:ユリミナ

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雨の帳

 何とか雨が降る前に自宅に着いて、せつ菜さんと共に洗面所で手と顔を洗い、自室へと案内する。

 お母さんは出かけているみたいで、泣き腫らした目を見られずに済んだ。

 けれど出迎えてくれたオフィーリアには見られてしまい、心配そうな表情をさせてしまった。ごめんね、やっぱり分かっちゃうよね。

 ――やっぱり、まだ足りないや。

「わっ……まだ甘えんぼさんですか?」

 再びせつ菜さんを抱きしめる。今度は人の目も時間も気にする必要がないから、思いっきり。

 さっきはそれどころじゃなかったけど、せつ菜さんの温もり、身体や髪の毛の香り、細やかな息遣いまで感じられる。

 安心して身を委ねられて、でもドキドキして、相反する感情に頭がふわふわする。

「ごめんなさい、せつ菜さんも不安なのに……」

「嫌だなんて言ってませんよ。むしろそれだけ心を許してくれてるってことですから、嬉しいです」

「っ……」

 優しすぎる、嬉しすぎる。

 背中に腕が回され、2、3回ぽんぽんと優しく叩かれ、ぎゅっと力が籠められると、また心身の奥がときめく。

「それに、不安以上に抱えている感情だってあるんですよ?」

「ぇ、っ、んっ……!」

 真意を確かめる問いかけは、キスによって霧散した。

「んっ……最初に、言いましたよね。ずっとこうしたかったって……!」

 再び強く抱きしめられる。さっきよりは控えめだけど、それでも力強く。

「んぅ、ぁっ……!」

 ――再度確かに感じる、せつ菜さんの温もり、身体や髪の香り、細やかな息遣い。そして人目を気にする必要がない場所での抱擁に、気付けば吐息が漏れていた。

「せつ菜さ、んっ……!」

 名前を呼び終わる前に、唇を重ねられる。今度はお互いすぐに離さず、温もりをしんしんと感じ合う。

 何十秒か過ぎ、呼吸のために離れると、見たことのないせつ菜さんがそこにいた。

 顔を赤らめ、瞳を潤ませ、頬は上気し、艶のある声色で――

「しずくさん、もっとっ……」

 ――耳元で囁かれて、止まれるわけがない。

 だけど、どのくらい進んでいいのかな。舌を入れても大丈夫? ちょっと胸やお尻に触れるくらいならいい? 本能のままに触れてせつ菜さんを傷つけたくない、けれど求められている以上は私も深く触れたいって思う。

「はっ、はぁっ……!」

 荒くなる呼吸と込み上げる欲求に反し、どうしていいか分からなくなる。

「っ……!」

 だけど触れたい、その一心でせつ菜さんを強く抱きしめれば「ふぁあっ」と漏れるせつ菜さんの声に後押しされて服の中に手を――伸ばそうとしたその時、オフィーリアの上機嫌な鳴き声と床を駆ける音が耳に入る。……これは、きっと。

 

「……お母さん、帰ってきちゃったみたい」

「……そう、ですか……っ、す、すみません、私、また……!」

「い、いえっ、嬉しかったですから、ほんとに……! じゃあえっと……映画! 準備しますね!」

「は、はいっ!」

 うぅ、せっかく良い雰囲気だったのに……タイミング悪いんだから……

 ……本当に? もう少し遅かったら今以上に気まずくならなかった? またさっきみたいな雰囲気にならないとは限らないから、せつ菜さんと話し合って……ううん、さっきのことを蒸し返すなんて無理……

 

「しずくさん?」

「っ、す、すみませんっ、動揺しちゃって……」

「あ、で、ですよね、分かり切ったことを……こちらこそすみません……」

 うぅ、更に気まずくなっちゃった……いったん映画見て仕切り直そう、うん。内容は何度も見てるから頭に入ってるし、その隙にどうするかを考えよう。

 依然として早鐘を打つ心臓から意識を逸らしつつ、視聴の準備を始める。といってもPCの電源を付けてDVDをセットするのみだけど。

 リビングにいけば大きなテレビで見られるけれど、せっかくのデートなんだからせつ菜さんと2人きりでいたい。

 電源ボタンを押し、画面の前で待機する――と。

「っ……すみません、お手洗いに行ってきますね」

「はい、いってらっしゃい」

 気付かなかった尿意に襲われ、断りを入れて席を立つ。

 

 ゆっくりと部屋を出て、小走りでトイレへと向かい、ドアを閉めてスカートを下す。

「ふぁあっ……」

 ジュイッ、シュイィーと迸る水音と共に、解放感からか思わず吐息が零れる。思えば2杯もドリンク飲んだし、相当溜まっていたのかも。

「はぅ……んっ……」

 中々勢いは収まらず、先ほどの行為が頭をよぎり、心音も中々落ち着いてくれない。

「はっ、はぁっ……」

 それでも水量には限りがあるので少しずつ収束へと向かい、止まる。出し切ったことを確認してからトイレットペーパーを手に取り、出口へと――

「ひぅっ!?」

 当てがった瞬間、そこに甘美な刺激が走った。まさかと思いそこを確認すると、おしっことは全く別の粘性のある液体が、トイレットペーパーと秘所とを繋いでいた。

「っ……!」

 一瞬愕然とするも、あんなに激しく求められて、興奮しないわけがない。

「んっ……」

 刺激しないよう慎重にふき取り、素早く下着を履き直す。

 一瞬だけ、ほんの一瞬だけ触りたい気持ちが湧きあがるけど首を振って追い払う。こんなところで、しかもせつ菜さんを待たせてるのにできるはずない。

 手を洗い、深呼吸をしてから部屋へと戻る――と。

 

「あっ、わ、私もお手洗い行ってきます……!」

「は、はいっ」

 入れ替わるように出ていったせつ菜さんだけど、何だか顔が赤かったような……って、あんなことあって平常心でいられるわけないよね。

 私にとっては自分の家だけど、せつ菜さんにとっては他人の家なんだから落ち着けるわけもないし。それか私と同じように、ある程度落ち着いたら急に催したのかもしれない。

 ……考えてても仕方ないし、映画の準備の続きをしないと。PCにディスクを入れて……よし、後は再生ボタンを押すだけ。

 楽しみだな、どんな感想言ってくれるかな、なんて考えているとせつ菜さんが戻ってきた。

「お待たせ、しました」

 あれ、元気がない……というよりは、申し訳なさそう……? 気になるけど、もしもさっきの私と似た感じだったら……聞いても気まずくなる未来しか見えない。ここはそっとしておいた方がいいかも。

「では、再生しますね」

「はいっ」

 

 ソファーに二人並んで座り、パソコンの画面を見つめる。

 見慣れた画面、聞き慣れた音楽、見慣れた俳優さんに、聞きなれた台詞。だけど隣には大切な人かいて。

 気付けば初めて見た時のように、物語へと引き込まれる。

 

―――

 

 約二時間の、人間と人魚の物語。

 溺れる主人公と、彼女を助けた人魚は、惹かれ合い逢瀬を繰り返す。だが2人の住む世界は違う。

「今度は私があなたを助ける番だから」

 主人公は海で暮らす決意をする。

「ありがとうございます。でもそれはなりません。何故なら……っ!? どうして、いつもより早いっ……!?」

 突如頭を押さえ苦しみだし、やがて人魚は倒れ意識を失う。狼狽する主人公だが、すぐに人魚は意識を取り戻した。

「最近行動が変わったと思ったら……あなたが姉さんの入れ込んでる人間だったのね。お願いだからもう関わらないで」

 人魚は1つの肉体に2つの人格を宿していた。妹の彼女も姉と同じく人間を助けたことがあるが、その人間は人魚を怪物として扱う漁師の村の出身で、周囲の村民から毒の矢で殺され、姉だけが心残りだった彼女の魂は姉の中へと吸い込まれていった。

 普段は夜間のみ活動する妹だが、これ以上人と関わってほしくないことを主人公に伝える。

「それなら、あなたのことも救いたい。いい人間とは思われなくていい、でもあなたの身体も魂も、絶対に救ってみせるから」

 やがて認識を改めた妹は、主人公に惹かれていき、水中で暮らすことを許可した。

 主人公は2つの人格を共に大切にすることを誓い、陸の生活を全て捨て、海の世界へと沈むのだった。

 

―――

 

 やっぱり、何度見ても良い。気付けばせつ菜さんが隣にいることも忘れて見入っていた。隣を見れば、せつ菜さんは画面をじっと見つめていた。今流れているのはシンプルなエンドロールで、見る場面もないのに。私の視線にも気付かないほど余韻に浸っているのかな。だとしたら勧めたかいがあったというもの。

 やがて画面は暗転し、完全な黒へ。そこでようやく、せつ菜さんがハッと我に返った。

「……しずくさん、あの……」

「どうでした?」

「えっと……すごく良かったです! 冒頭で既に引き込まれましたし、主人公が熱弁するシーンが本当にかっこよくて、それに――」

 ああ、嬉しいな。本当に嬉しい。今まで趣味を共有できたことはなかったけど、自分が好きな作品を気に入ってもらえることがこんなに嬉しいなんて思わなかった。

「ですよね! あのシーン、見習いたいくらいに感情が籠っていてすごいです! 人魚の方も、別の人格も同じ役者さんとは思えないくらいに演じ分けがすごくて――」

 

 そこからは夢中で語り合った。

 印象に残った場面、心に響いた台詞、序盤にあった伏線の意味、等々。

 せつ菜さんにこの映画を通して伝えたいことがあったけれど、それすら忘れてしまうくらいに。

「それでですね、私としてはラストでようやく主人公が報われたって思うんですっ! 2人から愛されて、本当によかったです……!」 

 だけどそう言ったところで、せつ菜さんの反応は止まった。

「す、すみません、話し過ぎましたか……?」

「いえ、しずくさんがカフェでしずくさんが言っていたことを思い出しまして。この主人公、報われたと思っていいんですかね……?」

「そこは世間でも意見が分かれているところですね。でも私はあれがベストな結末だと思ってます。せつ菜さんはどう思いますか?」

 今まではこうやって他の人の意見を聞くこともなかったけれど、今は聞ける。せつ菜さんに出会えてよかった。

「結末は確かに良い方向には進んでいると思います。ですがあの主人公、陸の生活を捨てるのにあまりにも躊躇なさすぎませんでしたか? 思えば冒頭で溺れていた状況も不自然ですし……」

「流石はせつ菜さんですね、初見でそこまで見てるなんて。そこもいろんな説があるんですが、1番有力なのは冒頭時点で孤独の身だったというものです。私もそう思ってます」

「なるほど……あんなに素敵な人なのに孤独な身だとしたら、ようやく報われ……いえ、きっとこれからが本番なんでしょうね。見た目は同じでも性格の違う人魚と、海の中でなんて……きっと大変です」

 映画に感情移入して、心のこもった感想を言ってくれるせつ菜さん。

 ……私も、そろそろ言った方がいい、かな。

「私がどうして今日この映画をせつ菜さんに見せたか、分かりますか?」

「……せつ菜と菜々を使い分けている私だから、ですか?」

「雑に言うとそうなりますが、改めて丁寧に言わせてください。演じるというよりも自我の切り替え……つまりはさらけ出す自分の切り替え。演じていながら自分を出しているその姿勢に、私は強く惹かれました」

 私と似て非なる、その姿に。

「えっと、ありがとうございます……?」

 あれ、何だか反応が薄い……?

「すみません、その観点で褒められたことは無かったので、どう反応していいか分からなくて……」

「本当にすごいことなんですよ!? 自分をさらけ出す演技に苦悩していた私にとって、せつ菜さんは奇跡みたいな存在なんですから!」

 予想外の返答に、身を乗り出して訴える。

「分かりました近い近いです! もう……ですが、そこまで言うなら教えて下さい。あの時せつ菜と菜々を分けて褒めてくださったのは、それだけが理由なんですか?」

「まさか。そんなわけありません! 改めて言いますが、私はせつ菜さんと歩夢さんのことを特別視しています。ですがその歩夢さんをスクールアイドルへと導いたのはせつ菜さん……まさに導く者の頂点! 素敵ですっ!」

 手を掴み、つい熱が入る。

「あ、ありがとうございますっ……ですが、菜々としての私は……」

「もうっ、どうしてそんなこと言うんですか!? 人を引き付け、その人々を律せられるカリスマ性、全校生徒を全員覚えられる記憶力、何よりそれらだけでは決してこなせない生徒会長を務められるほどの能力……せつ菜さんだけでもすごいのに、菜々さんもまたすごいなんて反則ですっ!」

「ぇ……?」

 せつ菜さんを見習って思いをストレートにぶつけた反応は、か細い声のみだった。あれ、変なこと言ってないよね……?

「すみません、そういったことを生徒会の方々以外から言われたことがなくて……え、じゃあ、本当にしずくさんは……両方を……?」

「はい。せつ菜さん、菜々さん。貴女の全てをお慕いしています」

 せつ菜さんの手を持ったままソファーから下り、屈んで片膝の状態になり、跪いて想いを伝える。映画の主人公をなぞる様に、けれど言葉は自分の心を込めて。

「……ぁ、あの……しずくさん……顔を上げてください……」

 その言葉に従えば、頬を赤らめ目を潤ませたせつ菜さんの顔が見えた。

「嘘、ですよね……? ここまでの好意をぶつけられたことはありません、それなのに貴女は歩夢さんも同程度に好きだと仰るのですか……!?」

「……分かりません、同程度かなんて。ただ、大好きを諦めたくないんです」

 しばし熟考し、答える。不誠実だって思われても構わない。これが私の想いだから。

「ずるい、ですよっ……私相手にそんな言い方するなんてっ……!」

 涙交じりの声が響く。

 ……そうだ、これも伝えないと。

「大好きで思い出しました。何より菜々さんは、せつ菜さんの大好きを守っているわけじゃないですか。まるで守護者……ガーディアンみたいでかっこいいです!」

「ガーディアンって……ふふっ」

「どうして笑うんですか、私は真剣に……!」

 涙は収まってくれたみたいだけど、まさか笑われるなんて……もっと褒めて、安心させてあげたかったのに……

「すみません、なんだか私が言うようなことでしたので」

「憧れの人ですから、影響も受けますよ」

「……でも、ありがとうございます。せつ菜だけでは活動は成り立たないので、その部分を評価してもらえることがこんなに嬉しいだなんて思いませんでした」

 嬉しそうにはにかむせつ菜さんに心を奪われていると、一転していつもの満面の笑みになり、正面から見つめられる。

「では、私からも言わせていただきます! 菜々とせつ菜を生きるものとして、演劇に全力で打ち込むしずくさんは特別な存在として見ていました。特別視していたのは貴女だけではないんですよ?」

「嘘……だって、せつ菜さんは歩夢さんのことが……」

「しずくさんと似たようなものです。以前は恋愛感情は歩夢さんの方が上でしたけど、尊敬の念は……いえ、比べるものではありませんね。しずくさんにも歩夢さんにも見習うべき点はたくさんあるのですから」

「もう……そういう時は嘘でも私の方が上だっていうものですよ? でも、せつ菜さんのそういう誠実なところ、大好きです♪」

「っ……ですが、今はしずくさんの方が上、かもしれません……」

「今はそうでないと困りますっ。だから、もっと私を――」

 想いのままに顔を近づけようとした時、部屋の隅の時計が視界に入り、はっと我に返り口を噤む。

「どうしてですか? さっきまであんなに……っ」

 言いかけたところで、映画視聴前のことを思い出したのか目を逸らされる。いけない、早く理由を話さないと。

「違います、もうすぐ夕ご飯の時間だから……おそらくもう少しでお母さんから声がかかると思うんです」

「そ、そうでしたか……でも、私もご馳走になっていいんですか? もう少し早めに言ってくださればお手伝いくらいは……」

「気にしないでください。お母さんはせつ菜さんからスクールアイドルの話を聞くのを楽しみにしていたので、いっぱい話してください。あ、でも私のことはあまり話さなくていいですからね!?」

「あはは、分かりました」

 

 その直後、お母さんから夕ご飯ができたと声がかけられた。予想通りのタイミングだ、気が付いてよかった。

 映画の途中から雨の音が聞こえていたけれど、お母さんが帰るころにはぽつぽつと降り始めていたらしい。もう少し遅れていたら雨に降られてお母さんに鉢合わせしていたのかも。

 お母さんは最初こそせつ菜さんに料理の感想やスクールアイドルの出来事を聞いて、元気に答えるせつ菜さんを微笑ましそうに見ていたけれど、やがて話題は私のことになり、私の同好会での様子について話されて何だかむず痒かった。

 何より1番恥ずかしかったのは――

「しずくがこんなに友達のことを楽しそうに話すのは初めてで、本当に嬉しくって……しずくのこと、これからもよろしくね」

「もちろんです! しずくさんは私の大事な人ですから!」

「まぁ♡」

「ちょっとせつ菜さん! 誤解されるような言い方しないでください!」

 本当は誤解じゃないんだけれど、バレるわけにはいかなかったからそう言うしかなかった。

 

―――

 

「せつ菜さん! どうしてあんなこと言うんですか!?」

 自室に戻り、早速せつ菜さんを問い詰める。

「同好会の仲間としてのせつ菜なら、そう言いますから。変に距離を置いた言い方をするようには怪しまれないかと思いまして」

「む……」

 予想外に芯の通った言い分に思わずたじろぐ。確かにせつ菜さんだったらああいう言い方をするかもだけど、それはそれとして恥ずかしいものは恥ずかしい。

「まあ、母親の前で慌てるしずくさんが見たかったという思いもありましたけど」

「やっぱり意地悪じゃないですか! もー!」

「大好きな人のいろんな一面を見たいと思うのは当然ですから!」

「っ、ずるいです……」

 そんなことを良い笑顔で言われて、これ以上怒れるわけがない。

 

「……しずくさんも、同じですか? せつ菜でも菜々でもない私を見せても、受け入れてくれますか?」

 けれど一転、不安そうに問いかけられる。そんなの答えは決まってる。

「当たり前です。あなたのことが好きなんですから」

「っ……」

 ふわり、弱々しく抱きしめられ、肩と首の間に顔を埋められる。

「何だかずっと変なんです。さっきはしずくさんのお母さんがいたので抑えられましたが、しずくさんと2人きりだとドキドキして、身体が熱くなって、しずくさんに触れたくて仕方ないんです。まるで自分が自分じゃなくなるみたいで……怖いんです。家に着いた直後だって、あのまま続けていたら……一生後悔したかもしれません」

「そんな……いいんですよ。せつ菜さんになら、何をされても」

 本心を努めて穏やかな声色で伝えると、腕を引っ張られ――

「きゃっ!?」

 ベットが軋む音と共に、肩を掴まれ切迫した表情で押し倒される。

「これでも、ですかっ……!?」

 こくりと短く頷く。びっくりしたけれど、覚悟はできている。むしろ少しは期待していた。

 けれどせつ菜さんはただ泣きそうな顔で、やがてぽすりと力なく私へと倒れ掛かった。

「ごめん、なさいっ……怖いのもありますが、自分が嫌なんです。ついこの間まで歩夢さんだけに恋をしていたというのに、今はしずくさんに劣情を抱いている。そしてそれがこんなにも制御しがたく、醜いものだなんて思わなかった……! キスだって今日のうちに済ませるつもりはありませんでした、けれど今はそれ以上を求めている……身体目当てなんかじゃないのにっ……!」

 ゆっくりと抱きとめ、考える。私を大切にしてくれているのは伝わってくるけれど、それ以上に自己嫌悪が強いように思う。

「せつ菜さん……私だって同じです。せつ菜さんに触れたいのは、同じですから」

「違いますっ……私は……いえ、でも……」

 そこで言葉は途切れ、再び身体を浮かせ見つめられる。瞳が涙で揺れている。

「……しずくさんは、私を愛してるから触れたい、ただそれだけですか?」

「えっと、そうですけれど……」

「そう、ですか……でも、私は嫌なんです。性的な繋がりを持つと、相手を性の対象としか見ていない気がして。愛しているのに、汚してしまう気がして。しずくさんにその感情を持つ自分が嫌だし、しずくさんに汚れてほしくないんですっ……!」

 涙のひとしずくがせつ菜さんから零れ、私の頬を伝う。

 こんなに苦しむほどにえっちなことに抵抗があるとは思わなかった。そしてようやく理解した、せつ菜さんがえっちな話を避けていた理由を。

「……ありがとうございます、話してくださって。では……私がせつ菜さんに触れるだけなら大丈夫ですか? 私がせつ菜さんを愛するだけでも、汚されたと感じますか?」

「っ……ずるいです、そんな言い方……しずくさんがそんな人ではないことは今日1日でよく分かりましたから」

「じゃあ……」

「でも、それでも無理です……そうなると尚更しずくさんに触れたいと思ってしまう……いけないことなのに……」

 ――徹底的な自己矛盾。ここで私が引いても押してもせつ菜さんを苦しめることになる。

 なんと言えばいい? どうすればせつ菜さんは私を受け入れてくれる? 

 明確に聞こえだした雨音が、思考に耽る邪魔をする。すると、再び涙が私の頬に落とされ、苦しそうな顔が見える。

 せめて、涙の雨だけは降らせたくない。

「……でしたら、一緒に堕ちましょう? 汚れても構いません、せつ菜さんと一緒なら」

 頬に手を添え、身体を起こし、見つめて再度言葉を紡ぐ。

「さっき言いましたよね、菜々でもせつ菜でもない姿も受け入れると。それでも無理でしたら……別の人格ということにしてください。それこそ先ほどの映画のように」

「それだけは嫌ですっ! 私はしずくさんと私自身で触れあいたいっ……!」

「もう心は決まってるじゃないですか。自然なことなんです、好きな人、と……触れ合いたいと、いうのは……」

 恥ずかしくなって詰まっちゃった……ストレートに言えたらかっこよかったのに……

「……ですよね、始まったのなら……っ」

 一瞬輝いた瞳が、何かを思い出したようにハッとして再度陰る。

 なんとなく分かってしまう。せつ菜さんが今誰を思い出したのか。

「ごめんなさい、貴女だけを見ていたいのにっ……」

 仕方ない、わけがない。今この舞台は2人だけのものなのに。

 それでも、一度意識すればどうしても考えてしまう。今この場に彼女もいれば、と。

 だけど、それでも。

 

「……私は、あなたにとって初めての存在でありたい。今だけはあなたの1番でいさせてください」

 

 本当は順番なんて付けたくない。だけど今いる恋人たちは、私とせつ菜さんだから。

 雨が窓を打つ音だけが響く部屋の中、やがてせつ菜さんはゆっくりと口を開いた。

「そんな顔でそんなこと言わせてしまって断ったら、合わせる顔がありませんよね。……貴女になら、私の全てを捧げたいです。ですから、貴女の初めてを私に下さい」

「はい、もちろんですっ……!」

 張り詰めていた感情が氷解し、涙となって溢れ出す。

 今日一日で何度涙を見られただろう。でも仕方ない、この関係はとてつもなく切ないものだから。

「しずくさん」

 名前を呼ばれ、抱き寄せられ、髪の毛と頭を撫でられる。やっぱりこれ好き……私の全部を受け入れて貰えてる感じがして……でもいつもと少し違うような……リボンに触れられてる……?

「髪、解きますね」

 せつ菜さんの指先が髪をかき分け、しゅるりとリボンが外される。今日の為におしゃれで着けた、いつもは自室で着けている――ピンク色のリボンを。

「とってもかわいくて似合ってますが、どうしてこの色にしたんですか? あの時は水色でしたよね?」

「それはっ……デートだから、少しでもかわいいって思われたくて、普段は家でしか着けないものを……」

「それだけですか?」

 優しくも鋭い眼光が私を射抜く。

 本当にそれだけだった。でも、完全に他意がなかったとも言えなかった。きっと無意識に、考えていたのこの場にいない彼女のことを考えていたのかもしれないから。

「っ……ごめん、なさい……」

「謝らないでください、私だって同じですから」

 リボンはせつ菜さんの手によって丁寧に枕元に置かれる。まるで彼女の頭を撫でるように、慈愛に満ちた表情で。

「ですが、今だけは貴女の1番でいさせてください」

 その言葉と共に、再び頭と髪を包み込むようにゆったりと撫でてくれる。

「しずくさんの髪の毛、長くて手触りが良くて……ずっと触れていたいです」

「んっ、ふぁ……っ、せつ菜さん、私もっ……」

 心地よさに身を委ねたくなるけれど、私だってせつ菜さんに触れたい。

 ゆっくりと髪へと手を伸ばし、髪留めを外して私のリボンの傍へと添える。

「綺麗……」

「あ、ありがとうございますっ……」

 髪の毛を下したせつ菜さんに目を奪われる。かわいくて、かっこよくて、美しくて。

 気付けば彼女に惹かれるように、髪の毛を掬い手繰り寄せていた。

「し、しずくさん!?」

 制止する声すら厭わず、髪を自身に纏うよう密着する。背中、腕、胸、あらゆる箇所にせつ菜さんの髪の毛が触れ、せつ菜さんにくるまれているみたい。

「せつ菜さん、せつ菜さんっ……!」

 脚を絡め、ぎゅうっと距離を詰めていく。

 すると彼女の方からそれ以上の力で抱き返され、ベットへと倒れ込む。

「いいん、ですね……? 存分に抱きしめてもっ……!」

 切羽詰まった、熱の籠った声に深奥が疼く。

「来て、くださいっ」

 背中に回した手をぽんぽんと叩き、ただ一心に彼女を求める。

「はぁっ、しずく、さんっ……!」

「ふ、あっ、せつ菜、さぁんっ……!」

 互いの身体を密着させ、擦り合わせていく。やがて段々と腰の動きが打ち付けるものへと変化するが、密着しているが故に思ったような刺激が得られずもどかしい。

「失礼、しますっ……!」

 せつ菜さんのスカートをまくり上げ、露になった下着目掛けて自身の秘所を密着させる。

「ふあぁぁっ……!」

 ぐちゅりという音と共に、下着越しとは思えない程の鋭敏な刺激が全身に走る。

「やっ、しずくさんっ、お願い、待ってください……!」

 そのまま動こうとしたところ、発せられた切なる声に身体が止まる。

「このままだとっ、その、変になっちゃいますっ……!」

 涙目でそんなこと言うなんて、誘ってるのかな。なんて思ったけれど、その声色は真に戸惑っていて――まさか。

「あの、せつ菜さん。もしかして、自分でしたことって……」

「無い、です……変、ですよね……」

 ――せつ菜さんとは波長が合うと思っていたけれど、こういうところは逆みたい。

 いろんな劇や映画を見てきて、中学生の頃には既にそういうことを覚えていた自分が酷くはしたなく思えてしまう。

 どうしよう、まずはゆっくりと手ほどきしてあげた方がいいのかな……

「……あの」

 思考の迷路に迷い込みそうになった矢先、せつ菜さんのか細い声が耳に届く。

「怖いという気持ちはあります、でもしずくさんと一緒に最後までしたい、から……電気を暗くして、お互い服を脱げば、その……」

「……そういう雰囲気が出るからできるかも、ということでしょうか?」

「は、はいっ……すみません、年上の私がリードするべきなのに……」

「関係ないです、そんなの。私たちだけのやり方があると思いますから」

 立ち上がり、照明を仄かな暖色へと調節する。

 そのままその場にはらりと服が落ち、下着のみの姿となる。

「……綺麗です、しずくさん」

「せ、せつ菜さんも早く脱いでくださいっ」

「あ、そ、そうですねっ」

 慌てて服に手をかけ、止まり、それでも意を決したように服を脱ぎ捨て、同じく下着姿となる。

 恥ずかしそうに胸を手で覆うけれど、余計に扇情的に見えてしまう。

「素敵です、せつ菜さん」

「っ……ここからは、一緒に、お願いします」

「もちろんです」

 ベッド上のせつ菜さんの元へと近寄り、ブラジャーの留め具へと手をかける。

 彼女の手も同じように私のブラジャーに触れ、視線が合う。

 頷き、ぱちり、はらり――綺麗な膨らみが視界に入る。

「きゃっ!?」

 けれど見惚れる間もなく、せつ菜さんの手が私の胸へと伸びていた。

「せ、せつ菜さ……んんっ!?」

 今までの消極性が嘘のように手つきは激しくなり、勢い余って押し倒される形になった。

「あっ、す、すみませんっ……!」

 我に返ったせつ菜さんが、腕を掴んで体勢を戻してくれた。

 そのまましてくれても良かったのに……なんて、流石に言えない。

「急にどうしたんですか……? そんなに焦らなくても、私は逃げませんよ?」

「ごめんなさい、抑えられなくて……」

「抑えないでください。せつ菜さんのしたいこと、受け入れたいですから」

「っ……」

 努めて穏やかに言うも、返ってくるのは沈黙のみ。何かを堪えているような、我慢しているような、そんな表情……してほしくないのに。

「……せつ菜さ」

「しずくさんはっ! ……しずくさんは、どんな私でも、受け入れてくれますか?」

 遮るように、切羽詰まった声が部屋に響く。不安を宿した瞳に「もちろんです」と即応する。

「……私、さっきから変なんです。今もですけど、映画の前にトイレに行ったとき……下着がかつてなく濡れていて……今までこんなになったことなかったのに……」

 せつ菜さんが私で感じてくれた。私を求めてくれている。嬉しくて胸が高鳴るけれど、せつ菜さんからすれば不安の種でしかないみたいだから、まずは安心させてあげないと。

「さっきも言いましたよね、好きな人と触れ合いたいというのは自然なことだって。だから嫌なことではなく、むしろ嬉しいんですよ?」

「私だってこれくらいの知識はあります、欲情すると……そういう液で濡れてしまうと。今はともかく、映画の時点ではそんなことするつもりではなかったのに……!」

 間違ってはない、けれど、何か違うような……

「確かにそういう気持ちもありますけど、もっと健全なお付き合いを考えていたのに、私はっ……!」

 ――もしかして、せつ菜さんの中では恋愛と性欲は別のものなの……? そんなの、地続きであるものなのに。

「では、今の私はせつ菜さんから見れば醜い存在なのでしょうか?」

 ゆっくりと、堂々と、愛液まみれの下着を降ろす。

 逃げ出したいくらい恥ずかしいけれど、せつ菜さんの為だから気にしていないかのように振る舞う。

「私だって、興奮してるんですよ? 映画の前だって、せつ菜さんを待たせている状態じゃなければ、1人でしていた、くらい、にはっ……」

 だめ、やっぱり恥ずかしい。そして同時に、それほどの行為と心情を曝け出したことにより、胸の鼓動が急加速していく。

「っ……綺麗、です……」

 食い入るように見つめるせつ菜さんの瞳の魔力で、更に身体の芯が疼く。

「……いい、ですよ♡」

 もう限界。せつ菜さんに全部貰ってほしい。せつ菜さんと一つになりたい。

「しずく、さん……しずくさんっ!」

 腕を背中に回され、私の全身がせつ菜さんで満たされる。柔らかくて、安心できて、ドキドキする、私の恋人。

「ぁっ、っ! んんっ……!」

 直接熱の伝わる抱擁に、湿った声が漏れてしまう。それでも熱源を求めるように、私からも深く抱きしめる。

「ふぅっ……んぅ……!」

 いつの間にか押し倒される形となり、おっぱいを擦り付けるように覆い被さられる。

 時折先端同士が擦れ合い、鋭い刺激が全身に走る。

「しずく、さんっ……! ふぁあっ!」

 けれど一向に秘所には何も触れられず、もどかしさを感じた私は重ね合わせるように腰を動かす。

「ひゃんっ!? しずくさ、これっ……!」

「これ以上焦らさないでくださいっ……せつ菜さんもっ、気持ちよくなってっ!」

「ひゃわっ、ふぁ、変です、これっ、なんか……!」

 粘性を帯びる音がベッド上で混ざり合い、更なる快感が生み出される。

 せつ菜さんを求めるように、逃がさないように、がっしりと腰を掴んで――秘所を、全身を、せつ菜さんへと押し付ける。

「せつ菜さん、好きですっ、せつ菜さんっ!」

「ぁ、あっ、まって、ほんとに、これ、っ……!」

 せつ菜さんが達しようとしている。今まで生まれてきて感じたことのない体験――初めての絶頂を、私で迎えようとしてくれている。

 その実感で私もイきそうになるのをぐっと堪えて「せつ菜さん」と声をかけ顔をこちらへと向け、その唇へと口づける。

「んんっ!? んっ!? っ!!? ~~~っ!!!???♡」

 声にならない嬌声を受け、脳がピリピリと痺れ、同時に腰が大きく私へと打ち付けられ――

「っ……!! んんんん~~~っっ!!!♡♡」

 全身に電流が走ったかのように、今までに感じたことのない絶頂感が私を襲う。

 同時にガクガクと身体が震え、下からせつ菜さんの秘所へと打ち付ける形になり、更なる快感に包まれる。

「ぷぁっ、ぁ、ひあああぁっ……!」

(なんで、イくの止まんないっ……気持ち、よすぎるっ……!♡)

 明滅する視界の中、せつ菜さんを抱きしめ続けて絶頂を繰り返し、波が引くのを待――

「はぁ、はぁっ……しず、くさんっ……しずくさんっ……!」

「せつ菜さ、んぅっ!? まっ、てえっ!」

 予想外の快楽が私を襲う。私の声なんて聞こえないかのように、一心不乱に秘所を打ち付けられてる。

「なっ、きゅうっ、にっ、いいいぃっ!!」

 絶え間ない刺激に言葉すら紡げず、まるで犯されているかのよう。

「まっ、も、イってるからっ、やぁあっ!!」

「はっ、はぁっ! ごめんなさいっ、でもっ、足りなくてっ……~~~っ!!」

 身体の振動が伝わり、私の秘所に愛液を放出するかのように押し付けられる。

「ひっ♡ はっ、ふああああぁぁぁっっ!!♡」

 決して一人で映えられない感覚に頭がおかしくなりそう。

 最悪気を失うことを覚悟するが、それ以上の刺激はやってこなかった。

(よかった……落ち着いてくれた、のかな……)

 横たわり、私を抱きしめるせつ菜さん。けれど呼吸は依然として荒く、私を見つめる瞳はもっとしたいと語っている。

「……すみません、もう少し、待ってください。せつ菜さんが求めて下さるのは嬉しいですが、まだ……」

「分かって、ますっ……ん、ぅ、っ……ぁ……♡」

 くぐもった声に、クチュクチュと水気のある音。視線を下に向けると、せつ菜さんの指は自らの秘所を弄っていた。

「っ!? せ、せつ菜さん!?」

「……だってっ、こんな気持ちいいって思わなくてっ♡ はぁっ♡ お願いします、もっと気持ちよくしてくださいっ!♡」

 ――もしかして。今まで存在していた性欲に見て見ぬふりを続けていた結果、今暴走してる……?

 こうなるのは予想外だったけど、それなら私が責任をもってせつ菜さんを満足させてあげないと。

「……分かり、ました。じゃあ――」

 脚を開いて。そう言おうと思ったけれど、今の状況が頭をよぎる。今はせつ菜さんとの初めてのえっち。……改めて意識すると恥ずかしいけど、それなのにただせつ菜さんに触れるだけなのは、私が納得できない。……だから。

 

「はい、ここにもたれてください♡」

 ベッド上部に背中を預け、脚を開き、私の胸やおなかにせつ菜さんの背中が当たるように誘導する。

 流石に恥ずかしがるかなと思ったけれど、躊躇なく収まってくれた。それどころか、私に身体を擦り付けるように震わせ、手は胸と秘所を弄っている。

 あまりの変わりように面食らうけれど、このままだと私も気持ちよくなっちゃうから、「手を止めてください」と強めに言って主導権を奪う。

 先ほどまでの余韻も合わさって、裸でせつ菜さんと密着しているだけでも下腹部が疼くのに、これ以上の刺激が加わったら今度こそ身が持たない。

 だけど気持ちよくはなってほしいから――

「力、抜いてくださいね♡」

 せつ菜さんへの愛を込めて耳元で囁く。

「ひぅっ!♡ それ、だめですぅっ……♡」

「えっ、まだ何もしてませんよ?」

「こんなに密着してしずくさんに囁かれると、なんだか身体の奥がきゅうっとなって、頭がピリピリして……だからだめですっ」

 声を褒められることはそこそこあるけれど、こんな反応されたのはせつ菜さんが初めて。私を意識してのことだと思うと、嬉しくって私の方こそ身体の奥がきゅうってなっちゃう。

「へぇ……そうなんですね♡ それなら、ずっとそうしますね♡」

 囁きつつ、背後から脚に指を添え、つぅっと撫でる。そのままおなかへとスライドさせ、そっと胸へと這わせていく。

「ゃ♡ ひぅ♡ ふぅっ……!♡」

「せつ菜さんのおっぱい、大きくてもっちりとしていて……素敵です♡」

「ひゃわっ!? そんなっ、言わないでっ♡」

 手のひらも指も総動員して胸を弄り回す。建前は少しでもいっぱい感じてもらうために、本音はとにかく触れたいから。

「はっ、ふぅっ♡ やだっ、焦らさ、ないでぇっ……!♡」

 切なげな声をあげ、必死に身体を私に押しつけるせつ菜さん。おっぱいを背中で擦られてるから、私も気持ちよくなっちゃう……今はせつ菜さんを気持ちよくしてあげないとだめなのに……♡

「んぅ、ふぁっ♡ せつ菜、さぁんっ♡」

「っ!? 耳元でっ、だめぇっ♡」

「だ、だってっ♡ せつ菜さんっがぁっ!♡」

 私の声でもせつ菜さんは反応してくれて、その度に動かれるから刺激が来て、更に声が漏れてしまう。

 気持ちいいのが循環して、もっと欲しくなって……

「ひゃ!? し、しずくさんっ!?」

「はぅ♡ ふっ♡ はぁっ♡」

 勝手に身体が動いてしまう。せつ菜さんのお尻にアソコを擦り付けて、背中におっぱいを擦り付けてっ……!

「あっ、ダメっ、イっ、ちゃっ……~~~っ!!♡♡」

 小刻みに身体が震え、絶頂に達して余韻に浸る。ふわふわとする意識の中、突如肩を掴まれせつ菜さんの顔が眼前に迫っていた。

「……しずくさん」

「え? あ、あのっ!?」

「私を気持ちよくしてくれるんじゃなかったんですか? それに、さっきはもう限界みたいな感じ出しておいて、自分だけ気持ちよくなって……ほんとはもっとしたいんじゃないですか」

 色欲を孕んだ鋭い視線に、心身がきゅうっと疼く。見たことのないせつ菜さんに、思わず支配されそうになる。

 だけど一方的にされるのは不本意だから、ぐっと堪える。

「だ、だってせつ菜さんが気持ちよさそうな声出して、その上私の身体を刺激して……」

「この体制を指定したのはしずくさんじゃないですか。もしわざとじゃないのなら、相当淫乱ということになりますよ?」

「いんっ……!? 違いますもん! せつ菜さんが……せつ菜さんがっ!」

「ひゃっ!?」

 激情に身を任せ全力で押し倒す。ベッドの上だから怪我をさせる心配はないから、大丈夫。

「初めてだって言うから優しくしようとしてるのに……だけどせつ菜さんと触れてるとどうしても感じちゃうだけなのに……そんなこと言うならもう遠慮しません。性欲に目覚めたばかりのせつ菜さんをこの身で満足させてあげますっ!」

「お、落ち着いてっ、ひぎゅっ!?」

 蜜壺に人差し指と中指を差し込む。突然の刺激にせつ菜さんは心が追い付かないみたい。でも待ってあげない、身体に刻み込む必要があるから。私の全力のせつ菜さんへの愛を。

「ぁあああっ……! だめっ、おねが、まっ……!」

「待ちません♡」

 指を折り曲げ、膣壁を擦り気持ちいい場所を探る。きゅうって収縮して動かしにくいけど、それでもせつ菜さんの反応を見つつ指を動かす。

「ここですか? それともこうですか?♡」

「ひぅ、ぎゅっ……っ!? ま、まって、そこなんか変です、やめてっ!♡」

 ザラザラした箇所に指が当たると、目に見えてせつ菜さんの反応が変わった。私はここでも最初から感じちゃったけど、せつ菜さんはどうだろう。反応を探るために軽めにトントンと刺激する。

「ひっ♡ ひぅ♡ まって、だめ、ですぅっ!♡」

 うん、しっかりと感じてくれてる。だけど左手は空いてるから、手付かずだったむき出しのクリトリスを遠慮なく摘まみあげる。

「んぎいぃっ!?♡ だめ、きちゃう、きちゃうぅっ!!?♡」

 膣内が一層きゅうって締め付けてきて、言葉以外でもイきそうって教えてくれる。それに従い、更に強い刺激をGスポットへと与える。

「イって、私で気持ちよくなってっ……!」

「ひぃうっ!?♡ や、だめっ、これっ、やっ、ふああああぁぁっっ!!!♡♡」

 今日一番の嬌声と共に、水圧を感じ膣内から指を引き抜けば勢いよく淫水がプジャアアァァァッっと噴き出した。

「わぷっ!?」

 至近距離で愛撫していたため、当然私の顔にかかってしまう。だけどせつ菜さんのだから、厭どころか嬉しく思う。かかったそれをぺろりとひと舐めすれば、せつ菜さんを感じて脳にピリピリと焼けるような刺激が走る。

 

「はっ……はぅ……ぁ……ごめっ、ごめんなさっ……」

「え? ど、どうしました?」

 天を仰ぎつつ、力なく謝られる。どうして? 謝るなら私のはずなのに……

「その、おしっ……こ、で、ベッド、汚してしまって……」

 息も絶え絶えで、涙目で、申し訳なさそうに。何かに目覚めそうなくらいにかわいいけれど、流石にかわいそうだから本当のことを教えてあげないと。

「大丈夫です、今のはおしっこではありませんから」

「でもっ、私……確かに……」

「今のはその……潮噴きといって、せつ菜さんを気持ちよくできた証ですから、むしろ嬉しいんですよ?」

 気持ちよくなってくれただけでも嬉しいのに、まさか潮まで噴いてくれるとは思わなかった。私が予想以上にうまくできたのか、せつ菜さんが敏感すぎるのかは分からないけれど、どちらにせよ嬉しい。……両方だといいな。

「そう、なんですか……? ……それにしても、随分手馴れてましたね……? もしかして既に誰かと……」

「違います、私も人とするのは初めてですっ! もう、そういうこと言うとまた今のしますよ!?」

「さ、流石に休ませてください……ってそういえば私さっき……すみません、また暴走してしまったようで……」

「いえ、それについてはお互い様ですから……」

 返答はなく、代わりにぎゅっと腕にしがみ付かれる。余韻に浸るように、甘えるように。かわいいけれど、柔らかな感触が脳を揺さぶる。

「……すみません、迷惑かけて」

 けれど気弱な声がかけられ、意識を傾ける。

「ですから、お互い様だと……」

「違いますっ、私の方が年上なのに、ここぞという場面でしずくさんにリードしてもらって、こういうことは教えてもらわないと分からなくて……」

「その方が安心します、せつ菜さんらしくて。苦手なことのない人なんていないんですから、気にしないでください」

「では、知らないままの方がいいですか?」

「まさか。せつ菜さんに気持ちよくしてもらえることを考えただけで、私は……♡」

「っ、そう、ですか……」

 今みたいに恥ずかしがるせつ菜さんもかわいいけれど、さっきみたいに快楽に溺れるせつ菜さんも魅力的だし、私で手馴れてえっちなことも大丈夫になったせつ菜さんに先導されてみたいとも思う。

 ……どんなせつ菜さんも、好きだから。

 

「あのっ……シャワー浴びたいんですけれど、いいですか?」

「は、はいっ。汗とかでべとべとですし……行きましょうか」

 危ない、妄想のせつ菜さんで思考が埋め尽くされるところだった……今は現実のせつ菜さんのことを考えないとだよね。

「え、一緒にですか!?」

「今更別々は嫌です……」

「そう、ですよねっ……では……っ」

「だ、大丈夫ですか!?」

 立ち上がろうとしてふらつくせつ菜さん。やりすぎたかもと反省の意を込め、彼女の手を取り部屋を出る。

 ――裸で自室を出るなんて、はしたない。恥ずかしい。でもせつ菜さんは私以上にそう思っているのか、不安そうにそわそわしていた。自分の家すらないのだから、無理もない。

「もしお母様に見つかったらどうするんですか……?」

「大丈夫です、この時間は滅多に部屋から移動しないはずですから。でも流石に声を出すと聞こえてしまうと思うので、部屋に戻るまで我慢してくださいね?」

「そんなことしません! しずくさんの方こそ抑えてくださいよ?」

「……自分にも言い聞かせてるんですよ? ほら、こんなに……♡」

 察してくれなかったことに若干拗ねつつ、直接は見られたくはないから後ろを向く。きっと見えていると思う、私の股の間から、蜜がつぅっと垂れているのが。

「っ……」

「ほ、ほら、早く入りますよっ」

 息を呑む声が聞こえた直後、浴場へと向かう。これ以上ここに居たらそういう雰囲気になりそうだから。

 

 身体を洗う最中、終始互いに無言だった。堪えるように、抑えるように、なるべく互いを見ないように。

 湯船に浸かるも、互いの肌が触れ合うたびに目を逸らすむず痒い空気に耐えられなくて、何より他事を気にすることなくせつ菜さんと触れ合いたくて、満足に温まることなく浴室を後にした。

 ――お湯よりも、せつ菜さんの体温で温まりたい。

 

「せつ菜さんっ……!」

 仄かな灯りがついたままの自室に戻るなり、せつ菜さんを強く抱きしめる。

 お風呂場からここまで一糸纏わぬ状態で来たから、肌と肌が直接触れ合う。おっぱいを中心に柔らかい感触が広がって、我慢していた分一気に昂っていく。

「……さっきとは逆ですね。そんなに我慢できないんですか?」

「だって、だってぇっ……♡」

「それならっ、遠慮なくっ……!♡」

 身体を押され、ベッドへと倒れ込む。密着しつつ仰向けにされ、せつ菜さんに覆い被さられる。

 獣のような獰猛な瞳は、まるであの劇の再現のよう――なんて考える暇も与えられず、再び秘所にせつ菜さんのそれがあてがわれ、遠慮なく打ち付けられる。

「はぁんっ!♡ んぅあぁっ!♡」

 その度にぱちゅ、ばちゅと音が響き、全身に甘い痺れが駆け巡る。

「はっ、あっ、きちゃうぅっ……イッ……くうぅぅっ!!♡」

 快楽を渇望していた身体はあっけなく達し、両手両足でせつ菜さんにしがみ付いて快楽を享受する。だけどせつ菜さんは止まってくれなくて、むしろより速く動かれる。

「まって、も、イってますからぁっ!」

「私だって、限界でっ……も、っ……イき、ますっ……!♡」

「あぁっ!♡ あああぁっ!!♡」

「~~~っ!!♡♡」

「っ!♡ あ゛ぅっ!♡ ひゅあ˝あぁっ~~~!!♡♡」

 せつ菜さんの嬌声が耳に届くと同時、一際強い絶頂を迎え、視界がチカチカと明滅する。

 あまりの刺激にはしたない声が出てしまったけれど、取り繕う余裕もなくただ荒い呼吸を繰り返す。

「はっ……はひゅっ、んぅ……♡」

「はっ、はぁっ……ちょっと、失礼、しますね」

「へぅ……? きゃっ!?」

 連続絶頂の余韻が抜けきらない中、腰を持たれてうつ伏せの体勢にされる。

 もしかして、この状態でまだされちゃうの……? 期待と不安が入り混じるけど、この短時間で私を攻められるほどに慣れたのかと思うと戦慄が走る。

「わざとか無自覚かは分かりませんが、私のこと誘ってましたよね? えっちな体液と一緒にアピールポイントのお尻を見せつけてっ……お風呂で抑えるのがどれだけ大変だったか……!」

「わ、わざとでは……ってその前にアピールポイントではありませんっ!」

「前から思ってたんですよ、スレンダーな体型のわりに大きいって……無自覚ならきちんと自覚してくださいっ!」

「ひぎぃっ!? やっ、やだぁっ!♡」

 両手でバシンとお尻を叩かれて、次いで尻肉に深く手を食い込ませられ、縦に横にと手を動かされる。

 嫌なのに、敏感になってるからか何をされても感じてしまう。手の動きに応じて形を変えている私のお尻を見られていることも、羞恥心と気持ちよさが入り混じっておかしくなってしまいそう。

「も、やめっ、ひぅぁあっ!!?♡」

 中心に向かって強く押し込まれた瞬間、鋭い快感が駆け巡った。それ自体が気持ちよかったのではなく、クリトリスが下へと押しつけられたから。

 何とか腰を引いて刺激を逸らそうとするも、それ以上にせつ菜さんの手の力の方が強く更に押し付けられる。

「お尻で感じるだけではなく、そんなに突き出して……やっぱりお尻を触ってほしいんですね♡」

「違っ、クリッ、当たってるからぁ!」

「栗……? よく分かりませんが、このままお尻で気持ちよくなって下さいっ!」

「ふあぁぁっ!♡ なんでっ、だめぇっ!♡」

 略称を知らないのか、クリトリス自体を知らないのか。分からないけれど度重なる刺激に喘ぐことしかできず、説明する余裕を与えてもらえない。

 ぐにぐにとお尻が刺激され、不規則にクリトリスが圧迫されて、再度絶頂へと押し上げられる。

「だめ、だめっ!♡ また、キちゃうっ♡」

「っ! しずくさん、しずくさんっ……!」

「あっ、あぁっ!♡ っ!♡ ふぅっ!♡ ~~~っ!!♡♡」

 今度は変な声が出ないように、咄嗟に枕に顔を埋めて達する。

 それ以上せつ菜さんから何かされることはなく、絶頂の波が引いてきた頃に優しく「顔、見せてください」と声をかけられた。

「……せつ菜さんのいじわる。だめって言ってるのに……」

 せつ菜さんにイかされたのが嬉しくて、だけど恥ずかしくて不機嫌なふりをして顔を合わせる。

 対照的にせつ菜さんはとても上機嫌だった。

「かわいかったですよ、お尻で感じるしずくさん」

「違っ……! さっきは言えませんでしたけど、お尻で感じてたわけじゃないですからね!?」

「え、でもとても気持ちよさそうだったじゃないですか、嘘だって言うんですか?」

「さっきも言いましたけど、その……っ、クリ……クリトリスが押し付けられて、それで……」

(うぅ、口に出すの恥ずかしいのに……なんでこんなこと言わなきゃいけないの……)

「……? ……あっ! あ、あー……そ、そう、なんですね……」

 最初こそそれでもピンときてなさそうだったけど、やがて合点がいったのか気まずそうに押し黙った。

「クリトリスは流石に知ってるんですね~」

 さっきまでいいようにされたのが悔しくて、少し挑発的に返す。

「略称までは知らなくて……でも、例えそうだとしても私がしずくさんのお尻に触れて気持ちよくできたのは本当ですからね! 嬉しいです!」

「っ……一応言っておきますけど、お尻が性感帯ってわけではないですからね?」

「そこまで必死に否定するなんて……なんだか怪しいですね」

「ひゃっ!?」

 抱き寄せられ、再びお尻に手を這わせられる。

「んぅ、はぁっ♡」

「っ、やっぱり感じてますよね?」

「だって、せつ菜さんに触れられてっ、どこでも、気持ちよくてぇっ……♡」

 大好きな人に触れられて、気持ちよくないわけがない。感じちゃうのも、嬌声が漏れるのも、せつ菜さんが相手だから。

「……ねぇ、私をここまでおかしくさせてどうするつもりですか? どうされたいんですか?」

 片方の手が背中に回され、髪の毛も撫でられる。

「ひぅ♡ それ、はっ……♡」

 今までみたいに甘やかされてるみたいで、だけど今までと違いその手つきは完全に私を堕とす為のもので。

 すっかり堕ちきっている私が抵抗なんてできるわけなく、再び奥が疼きだす。

(そういえばまだナカでイけてない……せつ菜さんの指で思いっきりイかされたい……!) 

 せつ菜さんに滅茶苦茶にされたい。せつ菜さんに支配されたい。散々達して熱した心身の、理性は溶けて蕩けて蒸発した。

 両手で彼女の手を持って、私の蜜源へと誘う。

「せつ菜さんっ……♡ こんどはこっちも、お願いします……♡」

(今のせつ菜さんにこんな事したら、確実に滅茶苦茶にされちゃうのに……♡)

 小さな不安と大きな期待で覚悟を決める――が、指が入り口に触れるだけでそれ以上の動きはなかった。

 どうしたのかと思い顔を上げると、笑みを浮かべたせつ菜さんと目が合った。その真意は窺い知れない。

「すみません、私もしずくさんのことを気持ちよくしてあげたいのですが、指でのやり方が分からなくて……しずくさんのことを傷つけたくはないですし、自分で動いてもらえますか?」

 ――確実に、意地悪だ。嘘はついてなさそうだけど、私に恥ずかしいことをさせたいって思いは筒抜け。でもせつ菜さんがやり方を知らないのは本当だから……仕方なく、だから。

「んぅ……ぁっ♡ はぁっ……!♡」

 せつ菜さんの指を持ち、2本を蜜壺へと招き入れる。大好きな人肌の感触というだけで、きゅうっと締め付けてしまうのが分かる。

 けれど止められるわけもなく、両手をベッドにつけ、腰を浮かして動かす。

(見られてるっ……せつ菜さんに、私のアソコも、腰の動きも、ぜんぶっ……♡)

「どぉ、ですかっ……?♡ ちゃんと見て、覚えてっ、くださいぃっ!♡」

「っ……」

 息を呑んでせつ菜さんが見てる。顔を真っ赤に染めて、だけど食い入るように、真剣に。

 少し前まで知識も耐性もなかったせつ菜さんが、熱い眼差しで、私のことをっ……!

「あっ、ダメ、もう、イきますっ……!♡ イっ、っ……~~~っ!!♡」

 身体の芯から熱い快感が全身に走り、せつ菜さんにしがみ付いて身体を震わせる。

(せつ菜さんでイくの、気持ちいいっ……!♡)

 大好きな人の指を玩具のように扱って達した罪悪感と、それを上回る悦楽が心身を襲う。

 ひとまず呼吸を整えて、今度はせつ菜さんと一緒に――

 

「動きもですけど、声と表情……とってもえっちでかわいいです♡」

「っ!? や、ぁっ♡」

 予想外の言葉に、恥ずかしさと嬉しさで頭、ぐちゃぐちゃになるっ……♡

「や♡ あ♡ だめ、やだぁっ!♡」

(ぞわぞわってきて、またキちゃう、せつ菜さんに見られて、声も聞かれてっ……!♡)

「っ!♡ ああぁっ!♡ ~~~っっ!!♡」

(指動かされてないのに、気持ちいいところ当たって、とろとろの蜜噴き出しちゃってるっ……♡)

「ふあぁっ……♡ はーっ♡ はぁっ……♡」

「……大体分かりました。今度は私が気持ちよくしてあげます♡」

「ふぇ? っ!? んいぃいっ!?♡」

 的確にGスポットをとんとんとノックされ、左手でクリも摘ままれる。あまりにも早い物覚えに戦慄するも、与えられる過剰な快楽に思考も抵抗もできるはずなく――

「や、あ、イゅっ、ひゅあ、あ゛ああああぁぁぁっっ!!!♡♡」

 視界がチカチカと明滅し、せつ菜さんの指の動きに呼応するように、プシ、プシャっと淫水が噴き出る。

 限界直前まで繰り返され、ようやくゆっくりと指が抜かれた。

「はーっ♡ はひゅ、ぅぁ……♡」

(もうだめ、動けない……全部見られちゃった……はしたなく気持ちよくなっちゃうところ……♡)

「……ずるいです、しずくさん」

「ふぇ……?」

「今日一日で私の感情も、価値観も、全部塗り替えて……いろんな初めてを奪った責任、取ってもらいますから」

 熱のこもったその言葉に、返す言葉は一つしかない。

「はい、喜んで♡」

「……本当はもっとしたいですけれど、流石にしずくさんも限界ですよね。だから最後は、私たちでしかできない行為をしましょう」 

 真剣な声を受けるも、今ひとつピンとこない。私たちでしかできない行為……なんだろう。

 せつ菜さんのことだからそこまでハードなことは言わないと思うけれど、今さっきの言葉通りどんどん変わっていっているから分からない。

「まず、えっと……っ、しずくさんがしたように、私もっ……!」

 肩を持たれ、そのままキスされるのかと思いきや、首元へと顔を埋められ、髪の毛を触りつつもう片方の手は自らの秘所を弄り始めた。

「……もう♡ そういうことならしてあげますから、遠慮しなくていいですよ♡」

 せつ菜さんのソコへと指を這わせると、熱い蜜に出迎えられた。

「んぅあぁっ……! すみません、しずくさんのこと見てたら、こんなっ、あぁっ!♡」

「嬉しいです♡ もっと私で興奮してください、私で気持ちよくなって下さい♡」

「ふぁああんっ!♡ はぁっ……んっ、すぅっ、はぁっ!♡」

 両手が自由になったからか、遠慮なくと言ったからか。私の背中と髪の毛を掴んで匂いを嗅がれてる。

 恥ずかしいことのはずなのに、嬉しくて仕方ない。

「もっと私のこと、好きになって下さい、気持ちよくなって下さい……!」

「んっ、はぁんっ!♡ イっ……~~~~~っっ!!♡♡」

 身体を大きく震わせた後、ゆっくりと力なく私にもたれかかってきた。

 気持ちを許されている事実に愛おしさが溢れ、そっと唇を重ねる。

 もうすんなりと受け入れて貰えていることが嬉しくて、舌で唇をノックしてその先を促す。

「んっ、んぅ……♡」

「っ!? んんっ……!?」

「んっ……ぷぁっ」

 拒絶とまではいかなくとも強い戸惑いが感じられたので、一度離して見てみると、蕩けた顔をしながらも何が起こったか分からないといった感じで目を見開いて私を見つめている。

「今のって、その……大人のキス、ですか……?」

「はい、一応は……」

 大人のキス。そう言われると何だかくすぐったい気がする。

 本当の大人はもっと違和感なくできるんだろうけれど、ぎこちなかったことくらい自分でも分かる。上手にできたとは言い難い。

「なんだか変な感じでした……でもすっごくドキドキして……その、もう一度お願いします」

「……無理しなくていいんですよ?」

「いえ、私がしたいんです」

 その言葉とは裏腹に、僅かに震える身体を見て進めるわけがない。けれどせつ菜さんの言葉は尊重したい――だから。

「では、しますね……んぅっ」

「っ! っ……! !っ♡」

 少し口を開き、せつ菜さんの舌を私のそれでつつくように触れ合わせる。

 映画みたいに大人びて蠱惑的なものは無理だけれど、今の私たちにはこれくらいがちょうどいい。

 何度か繰り返すと、せつ菜さんの表情は段々と蕩けていき、見たことのない色気を醸し出していた。

 ――きっと、私も。大好きな人以外に見せられない表情をしてるのだろう。

「っむっ、しずくさっ、いっしょにっ……!♡」

 秘裂に指が当てがわれ、応じるように彼女の膣口へと指を添え、互いの膣内に指が挿入り、心身共に満たされていく。

「ぅあ♡ ひぁ♡ せつ菜、しゃんっ♡」

 はしたなくも腰が動き、けれど気持ちよくなってほしい一心で指を動かす。

 時折乳首が擦れ合い、とろとろに蕩けた顔も声も間近で感じ、否応なく絶頂へと引き上げられる。

「だめっ、もっ、イきそうっ……♡」

「っ♡ ふぁあっ、っ!♡ 私も、もうっ……!♡」

 絶頂寸前の中、指が締め付けられる感覚を感じ、それを合図のように快楽が全身を駆け巡る。

「イっ、ちゃっ……っふあああああぁあんっ!♡」

「あぁっ! っく、ふあぁっ、ああああぁっ!♡」

 ほぼ同時に達し、せつ菜さんへと倒れ込む。

 そのせつ菜さんも肩で息をしていて、気持ちよくできたのが分かる。それがとっても嬉しくて、愛おしくて。

「んっ……」

 軽く唇を触れ合わせるキスを交わす。

 揺蕩うように心地よく、せつ菜さんの身体に沈むように溶けていく。

「しずく、さんっ……」

 甘さを煮詰めたような声と共に、私の首元へ顔を預ける。

 また、見たことないせつ菜さん。トクンと瞬く心音と共に頭を撫でれば、更に甘えるように密着され、髪元で深い呼吸をされる。

「……せつ菜さん、そんなに私の髪好きなんですか? 今もですけど、さっきもあんなに匂い嗅いで」

 恥ずかしさを隠すように、揶揄い気味に囁く。

「それはっ……しずくさんだってしてたじゃないですかっ。だから私もやってみたんですけど、予想以上に良くって……」

「っ、そう、ですか……」

 だって、せつ菜さんの髪の毛は憧れる箇所の一つだから。

 匂いを嗅いだ覚えはないけど、そう捉えられてもおかしくないことをしたのは事実なわけで。今になって恥ずかしさが込み上げてくる。

「……それに、さっきは言えませんでしたけど、私、しずくさんの後ろ姿が好きなんです。お尻もですけど、姿勢の良い背中や、長くて綺麗な髪の毛を見ていると、その……ドキドキするといいますか、心が奪われるようといいますか……」

 消え入りそうな声で褒められて、その言葉を発したせつ菜さん以上に気恥ずかしくなってくる。

 だって、そんな褒められ方一度だってされたことなくて。それが憧れで大好きな人からだなんて。嬉しくてどうにかなってしまいそう。

「しずくさん? どうしまっ、ひゃっ!?」

 顔を上げたせつ菜さんに、見られないよう抱きしめる。仄灯りに負けないほどに、私の顔は真っ赤だろうから。

「……ずるいです、せつ菜さんは」

 それ以上は何も言えず、ただぎゅっと抱きしめる。

 それ以上は何も言われず、ただぎゅっと抱きしめられる。

 トクン、トクンと、心臓が少しずつ加速していく。恥ずかしさに加えて、密着していることによる安らぎと興奮が混じって。

 心地よい微睡みと、まだせつ菜さんが欲しい気持ちが混じって。だけどまだこうしていたくて。

 このまま時間が止まればいいのに、なんて実際に自分が思うことになるなんて。

 そんな感情を込め、一層強くせつ菜さんを抱きしめ――かけたその時。

 

 聞きなれた通知音が近くから聞こえた。思わず顔を上げてその方向を見ると、机の上に置いてあったスマホからだった。誰かからの連絡がメッセージアプリに入ったのだと思う。

「すみません、電源切ってなくて……せめてマナーモードにしておくべきでした」

 そう言って立ち上がり、机へと向かう。返信する為ではなく、これ以上2人きりの時間を邪魔されない為に。

「っ!?」

 だが画面の通知を見た瞬間、思わず絶句する。差出人は他ならぬ歩夢さんだったから。

「しずくさん、どうしました?」

 不審に思うせつ菜さんにどう説明しよう……ううん、きっと見せた方が早い。既読をつけないように、けれど画面が消えないように気を遣いつつ、その通知をせつ菜さんに見せる。

「っ……このタイミングで、ですか」

 画面には『こんばんは。すごい雨だね……家の中にいても聞こえてくるよ。2人は怖くない? わたしは大丈夫だけど、侑ちゃん』と表示されている。おそらくまだ文章は続いているけれど、開かないと読めないだろう。そして今気づいたけれど、送った相手は私ではなくAZUNAのグループ宛てだった。

 せつ菜さんのスマホの音が聞こえなかったのは、マナーモードに設定してるからか、机に置いてあった私のものとは違ってバッグの中にあるからか。

「やっぱり優しいです、歩夢さん。でも今は電源切っておきますね」

 宣言通り電源ボタンを長押しし、光を失ったそれを机の上へと戻す。

「……返さなくて、いいんですか?」

 不安そうにそう言うせつ菜さん。答えなんて決まってる。

「今はせつ菜さんとの時間ですから。また明日に返しましょう」

「2人とも反応無かったらどう思うでしょうか。寂しがったりしてくれますかね」

「……ビデオ通話します? 今、ここで」

 一瞬せつ菜さんの顔が歪むも、すぐに笑顔が戻った――かと思いきや、ぐにぃ~とほっぺたをつままれた。

「ひゃっ!? いふぁいでふっ……」

「そんな悪い冗談言うからですよ。本当はする気なんてないくせに」

「あはは、ばれちゃいました?」

 怒りつつも、すぐ離してくれた。やっぱりせつ菜さんも優しいや。

 ――もし、万が一せつ菜さんがやりましょうと言えば、その限りではなかったかもしれないけれど。

「いつか歩夢さんも一緒にと考えているんですよね? なら、今は……」

 私だけを見て。言葉にされなくても、その瞳が思弁に語っていた。言われなくてもそのつもり。ただちょっとせつ菜さんの反応が気になっただけ――なんて、私、悪い子かも。

「髪の毛、お借りしますね」

 私の髪の毛を一房手に持つと同時、もう片方の手が顎に添えられ、真剣な瞳で見つめられる。

 キスされるのかと思ったけれど、そのまま動く気配はない。

「せ、せつ菜さん……?」

「さっき言ったことをしようと思ったのですが、これで終わるのがもったいないなと思いまして。このまま時間が止まればいいのに、なんて」

「あっ……」

 私と同じことを思ってくれてるなんて、嬉しすぎる。胸がきゅうっと疼いて、まともにせつ菜さんの顔を見れない。

「ひゃっ……!?」

 思わず目を逸らすと、そっと肩を持たれ、押し倒されたと言うにはあまりにも微かな力で横にされた。

「好きです。貴女の全てが大好きです。今日のことは絶対に忘れませんし、忘れさせません」

 儚げに、けれど確かに力強く。矛盾を孕んだ声色に、私の心は惹かれてやまない。

「私も、です」

 そっと背中に腕をまわすと、再び髪を手に取られ、それを自らのそれへと引き寄せて、絡ませられて。

 せつ菜さんの香りを間近で感じる中、真剣な顔に見惚れているうちに、私とせつ菜さんの髪の毛は三つ編みの形で繋がれていた。胸の前で、左右で二つ。丁度乳首に結び目の先端がくる形だから、何もしなくても擦れてむず痒い。

「あの、これって……先ほど言ってた……」

「はい、私たちにしかできないことです。嫌、でしたか?」

「いえ、ただ……近いっ……」

 確かにお互いボリュームのある髪の毛だからこそ出来る事だけど、前側に持ってきて編み込めば必然的に密着せざるを得ないわけで。

 顔も、声も、匂いも。何もかもが近くてクラクラする。

「だからこそ、です。それに、私の髪を見て何か思いませんか?」

 せつ菜さんの、髪……初めてすることのはずなのに、どこか見覚えがあって――ああ、そうか。

「菜々、さん」

「はい、私です。私のことも……愛してください」

 どこか気恥ずかしそうに告げる姿に心を鷲掴みにされ、背中にまわしていた手の力が思わず強まる。

 さっきまで手に触れていた髪の毛が無いのは寂しいけれど、その分背中の感触を存分に感じられ、特別なことをしている実感に包まれる。

「菜々さん、大好きです」

 軽くそっと口づける。さっきまでの反応を考えてということもあるけれど、菜々さんだと思うとどうしてか強く出れない。同じ人なのは違いないのに。

「んっ……♡ しずく、さんっ……!」

「菜々さん、菜々さんっ……!」

 髪の毛を挟んで胸同士を擦り付け、アソコもくっつけ合って。

 今までで1番彼女を近くに感じる一方、激しく動けないことにもどかしさを感じてしまう。

「しずくさん、もっと、くださいっ……!」

「いいん、ですか?」

「はい、今できること、全部したいですっ……!」

 けれどそれは菜々さんも同じだったみたいで。

 切なげな面持ちに少しずつ近づいて、唇を重ねて舌を這わせ、たどたどしくもゆっくりと動かす。

「んみゅ、ちゅ、れぅ♡」

「っ! んぅ、ふぁ……♡」

 痺れる刺激に包まれて、絶えず触れ合う身体と至近距離の嬌声で、過敏になっている身体はどこまでも昂ぶっていく。

「ふぁ♡ んぅっ!♡ みゅっ、~~~っ!!♡♡」

「っ!♡ ぷぁっ、んぅっああぁあ~~~!!♡♡」

「ふぁっ……菜々しゃん、もっとっ♡」

「あぁっ、しずく、さぁんっ♡」

 達している最中に菜々さんを感じて、それをきっかけにまた達して。

 その度に強く菜々さんを抱きしめてしまうから、気持ちいいが連鎖して何も考えられなくなる。

「すき、だいすき、ななさん、せつなさんっ!!♡」

「わたっ、私もっ!♡ 愛してっ、ますぅっ!!♡」

 一際強い絶頂感に襲われて、多幸感に包まれて、意識が徐々に遠のいていく。

 もっとずっとこうしていたい、いつまでも2人で繋がっていたい。

 けれどそれは更なる夢への歩みを止めることに他ならないから――どうか、今だけは。

 

(覚えてますから、2人だけの大切な時間を)

 意識は菜々さんへと溺れていった。

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