※この作品はR-18です。

NFFサービス業務記録   作:葛轍偲刳

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あのNFFビューティーの嘘CM見たらネタとして使いたくなってAIさんに注文してしまった

なおタイトルのイントネーションは某獣の槍さんと同じでよろしく



獣の髪【フェイクCMネタ】

「母は、可愛い娘が悪い獣と付き合うのは認めません」

 

 小柄で華奢な可愛らしい体に精一杯の威厳と、それ以上にダダ洩れの母性愛を溢れさせているメソポタミア神話の地母神ティアマトは、むんっ、とばかりにぺったんこの胸を張った。もちろん霊基の再臨によって、もっと大人っぽい外見になることも出来るが、その状態だと言語能力が著しく落ちてしまって意思疎通を図る上で問題になる。なので戦闘時はともかく、普段はこちらの小柄な外見でいることの方が多い。

 

「あー…えっと、その、ティアマト母さん?」

「! はいっ! 母です!」

 

 普段は同じく私の母親を自称する頼光さんと張り合っている地球の生命体全ての(神話的には自称どころか掛け値なしに本物の、だけど)母親だが、あまり正面からはお母さんとは呼ばないようにしている。何しろ、そうすると今度はどこからともなく現れた頼光さんが泣き縋ってくるので。

 とはいえ、今回はしょうがない。何しろティアマトの小さく細い腕にはこれ見よがしに深々と嘆息しているコヤンスカヤが抱えられているからだ。

 

「とりあえず、その、コヤンスカヤを離してもらっても、いい?」

「……むぅ」

 

 ちょっと悩むような間を置く。この母性愛の塊(混じりっけなしの純度100%)が、敵対とまでは言わないけど愛憎の入り混じったような、どこか複雑そうな煮え切らない態度を示すのはビースト関係の相手だけだ。

 特にコヤンスカヤの場合は、その由来からして地球から生まれた生き物とは言い切れないからなのか、微妙に嫉妬めいた対抗心があるように見える時もある。

 同じ元ビースト勢の殺生院にもカーマにも、そしてビーストとして現界してのけたドラコーに対しても徹底して自分が母親だという立ち位置なのだが、こっちのコヤンスカヤは成り立ちからしても『獣』寄りだ。

 もちろんティアマトにとっては人類だけが母性愛の対象というわけでもないが、そこに元ビーストという背景が加わると、一気に警戒心が強くなる。

 

「ほら、そんな風に腕に抱えているのを見ると、まさかとは思うけど、お料理の材料にしちゃわないかと思っちゃったりするし」

「そんなことしない。しないけど…まあ、うん」

 

 仕方なさそうに放されたコヤンスカヤはすかさず私の後ろに回り込んで、首に両腕を回してくる。それを星の内海を映す綺麗な眸で、けれどジトッと見つめるティアマト。

 

「ありがとうございます、マスター。おかげで助かりました。私、ビジネストークが通じない相手はどうにも苦手です」

「だろうね」

 

 というか、まさかとは思うけどティアマトにまで商談を持ちかけようとしたりしたんじゃなかろうか。どうせ聞く耳を持ってもらえなかったんだろうけど。

 

「実は、ティアマト神に我が社の社員寮の寮母をしていただけないかと思いまして」

「前から思ってたけど、ほんっとうに怖いものなしだよね、コヤンスカヤって」

 

 特にビジネスが絡むと。

 

「というか、社員寮?」

「はい、マスターの自宅および実家は別といたしましても、勤務中の休息や万一に備えての退避用としての拠点は必要かと。我が社は福利厚生も万全ですので」

 

 ニッコリ笑ってみせるコヤンスカヤは完璧なビジネススマイルだ。

 

「…もしかして、その寮って」

「さすがマスター。お察しの通りかと」

「テノチ、お前もか」

 

 そりゃそうだよね、と言いたくなった。テノチティトランはたびたび私に移住を勧めてくる都市神なので、寮としての住居を提供するなら適役の存在ではある。ただし湿度がちょっと…なのだが。

 

「だからってティアマトに寮母役?」

「いけませんか? 毎日マスターにお弁当を作れると快諾していただきましたが」

 

 そして、まさかの既に合意済みだった。聞く耳を持つ以前の問題だったか。

 

「母は、我が子にお弁当を作るのは当然です」

 

 それはそれとして、獣と付き合うのは別問題として一言あって然るべきと考えたらしい。

 

「そうと知ったら頼光さんとか、絶対に口を挟んでくると思うんだけど」

「既に源頼光とは社員寮の警備、防犯、ならびに風紀の取締役として外部顧問契約を別途に締結済みですが」

 

 なんという手回しの良さ。そうなると必然的に頼光四天王の金時や綱さんも一緒だろう。この時点で防犯は完璧だ。いや、そもそもテノチティトランの鍵付きの住居に外部から泥棒が侵入する事態が起きるって時点で普通じゃないけど。

 そして頼光さんと言えば丑御前。丑御前と言えば牛頭天王。牛頭天王すなわち帝釈天(インドラ)。元ビーストのティアマトを寮母にするという話と合わせると、連鎖的にインド神話系列かつ元ビースト勢で連想される一つの名前が頭に思い浮かぶ。

 

「……。もしかして、もしかするとコヤンスカヤ。その流れだとカーマちゃんにも話が伝わってたりするの?」

「ルームメイト、という形で入居していただこうかと。マスターも常に社員寮にいらっしゃるわけにもいかないでしょうし、空き家のままにするよりは、誰かしら住んでいる方が管理上の問題も早期に発見しやすいというメリットがございます」

 

 さすがにそこで頼光さんと同じ溶岩水泳部でも清姫や静謐ちゃんだとか、あるいは同じ元ビースト勢でも色ボケ殺生院をそこに入れようとはしない辺り、コヤンスカヤは私のことをとてもよく『理解(わか)っている』と思う。

 それにしても、住居提供テノチティトラン、寮母ティアマト、そして住人にカーマ。人外魔境ここに極まれりと思うのは私だけだろうか。

 

「…うん。まあ…悪くはないかな。確かに」

「そうでしょう?」

 

 相性というか、力の均衡という意味では。一応の配慮はされている。

 

「でも、母は悪い獣を常に見張っています。目を光らせます。ぴかー」

 

 そう言って本当に目をピカピカ光らせる地母神。何これ可愛い。

 

「うん、ありがとうティアマト」

 

 思わず手を伸ばして軽く抱き締めると、ものすごく目をキラキラさせてギュッとハグを返された。

 

「今日のおやつは何がいい? たこ焼きと焼きイカ、どっちもある」

「それじゃ、今日はタコ焼きで」

「うんうん、いっぱい焼いておくから」

 

 角を軽く撫でてから離れると、機嫌を直してくれたティアマトは鼻歌混じりに食堂へと歩いていく。

 

「着々と外堀を埋められている気がする今日この頃」

「でも、嫌ではないのでしょう? 本気で嫌だとおっしゃるのなら、もちろん改めますが」

「言うわけないじゃない」

 

 ちゃんと私の事を考えてくれているのだとわかるからこそ、嫌だとは言いにくいのも確かだけど。

 

「私の前で愛を育むとか、やめてもらえます? 嫌がらせにも程があります」

 

 ボソッと聞こえよがしの呟きが鼓膜を刺す。

 

「あ、カーマちゃん。今日のおやつはタコ焼きだって、ティアマトが」

「なーんだ、甘いのじゃないんですか。だったら今日は部屋でゴロゴロしてた方が良さそうですね」

 

 甘味好きの愛の女神様は、つまらなさそうに唇を尖らせるとくるっと背を向けて立ち去ろうとする。

 

「あ、あとNFFサービスの社員寮に入ってくれるんだって?」

「別に。…もとより身体のないアナンガの私にしてみれば、どこでも一緒じゃないですか。働く気なんか全然ありませんけど、何もしなくてもご飯を食べさせてくれて放っておいてくれるなら、それでもいいかなって思っただけです」

「うん。それは知ってる。でも、一緒のところに住むならよろしくね、って思ったから」

「……」

 

 ちょっとだけ立ち止まったカーマは私を、というより私を背中から抱きしめているコヤンスカヤを肩越しにチラッと見て、剣呑そうに眼を細めた。

 

「…ソレとは、あまり近づき過ぎない方がいいと思いますよ。ま、どうでもいいですけど」

 

 人が不幸になるのを見るのが好き、と言う割に、こうやって忠告してくれる程度にはビースト関連の相手には黙っていられないのはカーマも同じらしい。

 

「もしもの時には助けてくれる?」

「……。何も言わずとも助けてもらえるなんて、そんなの甘えですよ。ちゃんと『お願いですから助けて下さい』って跪いて頭を擦り付けて懇願するなら考えてあげなくもないです」

 

 一応お願いすればそれでも考えてはくれるんだ。コヤンスカヤを相手にするってことは、最低でもビーストを相手にすることになるのと同じぐらい面倒くさいことになるってわかっているのに。

 

「うん、その時はちゃんとお願いするから」

 

 ふぅ、という小さな吐息を漏らす音。嘆息というより、仕方ないなぁ、とでも言いたげな感じの。そうしてカーマも姿を消す。

 

「あら、何やら不穏な気配を察して参りましたが、気のせいだったのでしょうか」

 

 そして締めの大トリとばかりに出てこなくてもいい顔を出してきたのが元ビースト勢で一番の問題児こと殺生院キアラ。

 

「気のせい気のせい。そのメロン峠のせいで出遅れてきた牛女さんは、どうかそのまま部屋で大人しくしていて下さい」

「まあ、何と言う悪口雑言。私、思わず昂ぶってしまいます」

 

 このドM性癖の皮を被った魔性菩薩は何を言っても無駄だとわかっているのに、ついアンデルセン先生の口調を真似てしまう。でも、やっぱり本家本元のアンデルセン先生の口からでないと効き目は薄いか。

 

「……」

 

 コヤンスカヤは黙って金色の目を爛々と光らせている。もしかするとコヤンスカヤにとって一番の天敵が殺生院かもしれない。天敵というか、競争相手だろうか。全人類を堕落させて自分の快楽のために消費してみせるのが殺生院なら、全人類を堕落させて管理するのがコヤンスカヤの最終目的だから。

 

「ねえ、マスター? もし快楽が欲しいのでしたら、そんな獣臭い――」

「……」

「――…あら、失礼…ほほほほ」

 

 黙ってその澄まし顔を凝視していると、それで私が本気で気分を害していることに気付いた色ボケ殺生院はすぐに失言を笑って誤魔化しながら逃げていった。多分コヤンスカヤも一緒になって睨んでいたせいもあるだろうけど。

 つくづく余計な事しか言わない女だ。時計塔は誰よりもまず殺生院を封印指定にするべきだと思う。…まあ、そうしたところで一体誰が封印するのか、そもそも封印できるのかという問題はあるけど。

 

「はぁ…」

「お疲れ様でした、マスター」

「誰のせいよ」

 

 結局、私の背中にずっと貼り付いたまま、後ろから私を抱き締め続けているコヤンスカヤの髪の匂いを何気なく嗅いだ。別に、殺生院が獣臭いだの何だのと言ったのを気にしたわけじゃないけど。

 

「あれ、コヤンスカヤ。もしかしてシャンプー変えた?」

 

 いつもの香水の匂いとは別に、ふわりと鼻先をくすぐる微かな芳香を感じる。

 

「いえ、シャンプーではなくヘアオイルですわ。天然素材で、お肌にも優しい一品です」

「へぇ? コヤンスカヤも、こういう感じの匂いが好きなんだ」

 

 上品で、でも嫌味じゃ無い程度に控え目な匂い。オレンジやレモンの柑橘系というより、どちらかというとハーブやミントみたいな胸がスッとする感じの爽やかな香り。私もベタベタした感じの甘い匂いよりは、こういう感じの方が好きだ。

 でも、コヤンスカヤならもっとゴージャスな、例えば薔薇とかの強烈で華やかな匂いを漂わせている印象があったから、ちょっと意外だ。

 

「PMCとして設立したNFFサービスも昨今の情勢を鑑みて経営の多角化を進めようかと存じまして、手始めにクレオパトラ様と業務提携の上、美容部門を新しく起ち上げようかと。まず手始めに、ささやかながらカルデアスタッフ向けに新商品の開発などを行っておりますわ」

 

 立て板に水とばかりに滔々とビジネストークを耳に流し込んでくるコヤンスカヤの話術は話半分に聞き流しておくとして、

 

「なんで美容部門?」

「言うまでも無くマスターは女性の身の上ですから、こういったものにも関心がおありになるのでは、と」

「うん。まあ、確かに無いとは言わないけど」

「既にマリー・アントワネット王妃やアナスタシア皇女、楊貴妃やマタ・ハリにもこちらのサンプルを提供させていただいて、なかなかの好感触を得ておりますわ。マスターにも一度お試しいただいて、是非ご感想などを頂戴できればと思っていたところです」

 

 スリスリと私の頭に、というか髪に頬擦りしてくるコヤンスカヤ。

 これが口紅やら香水やらだったとしたら少し敷居が高く感じられたかもしれないけど、ヘアオイルくらいならお風呂の後にでもちょっと試してみようかという気分にもなる。

 

「よろしかったら、この後すぐにでも」

「え? お風呂の時間にはまだ早過ぎない?」

「マスターが食堂に行かれる前に試していただければ、ついでに他のスタッフの皆様からの印象も聞けるかと存じまして。これぞ一石二鳥というものですわ」

 

 そう言われると強くは拒み切れない。匂いの趣味は人それぞれだけど、もしマシュとかセレシェイラさんとかも、こういうのを気に入って一緒に使ってくれたりしたら私も嬉しいし。

 

「では、早速」

 

 コヤンスカヤは私の腰をひょいと軽く抱き上げて、そのまま後ろ向きに歩き始める。

 

「まだ何も言ってないんだけど」

「本当にお嫌でしたら、マスターはそう仰るでしょう?」

「むう」

 

 このところ、ますますコヤンスカヤが私の扱いを覚えてきて、いいように操られて掌の上でコロコロと転がされてる感じがある。それが嫌じゃないのが何とも――なのだけれど。

 

「あ、先輩。どちらに? もうすぐおやつの時間、ですが…」

「ごめん、マシュ。先に行ってて。いま、コヤンスカヤに新商品のヘアオイルを試して欲しいってお願いされちゃって。…あ、ティアマトが、今日のおやつはタコ焼きだって」

「はい、それなら先輩の分はいつものようにマヨネーズは抜きの、削り節と青のりはたっぷりでよろしいですか?」

「うん、お願い。すぐに追いかけるから」

 

 コヤンスカヤの腕に抱えられたまま、通路ですれ違ったマシュの声に答える。

 可愛い後輩は微妙に羨ましいような、困惑と不審とが複雑に混じった何とも言えない顔で遠ざかっていく私とコヤンスカヤを見比べている。

 

「相変わらず仲がよろしいようで」

 

 通路を曲がってマシュが見えなくなると、コヤンスカヤが囁くように小さい声で呟く。

 

「当然じゃない。私とマシュだもの」

「……」

 

 そう言うと、コヤンスカヤの足取りは少しだけ速くなる。足早に私の部屋に入ると、何も言わずに私に口付けしてきた。

 いつもより、ちょっとだけ強引に。ちょっとだけ乱暴に。もしかして、これってマシュに嫉妬した? いや、まさか、ね。

 

「ん、ちゅ」

 

 私もコヤンスカヤのキスに応える。でも、これはきっと嫉妬したとかじゃなくて、ただ単にちょっと拗ねただけだろう。だから、いつもより少しだけ長くて激しいだけで。

 ねっとりと絡み合う舌先が互いの唾液を混ぜ合って交換するのも、もうすっかり慣れたもの。鼻で息を継ぎながらお互いの唇を重ねたまま、コヤンスカヤは私を浴室に連れ込む。手早く服を脱がす手つきも、いつもより少しだけ強引。

 

「マスター」

 

 裸にされて、浴槽に運ばれて、コヤンスカヤの細い指先がシャワーで濡らした私の身体を優しく撫で回す。愛撫そのものの手つきと耳元で囁かれる甘い声が相まって、それはまるで媚薬のように私の脳を蕩けさせていく。

 

「ん、もう……仕方ないなぁ」

 

 結局、私はコヤンスカヤに逆らえない。だって、そうされるのも嫌いじゃないし。むしろ嬉しいから。だから私はコヤンスカヤのしたいようにさせてあげるのだ。

 コヤンスカヤが泡立てた石鹸の泡が私の身体に纏わりつく。肩も、胸も、お腹も、コヤンスカヤの手で優しく丁寧に執拗に、ねちっこく弄ぶように撫で回される。まるで全身が性感帯になったみたいに気持ちよくて、甘い吐息と声が勝手に零れてしまうのを止められない。

 本当にこの獣は私の弱いとこを知り尽くしていて始末が悪い。コヤンスカヤにいいようにされながら、私はもうすっかりその気になってしまってる。

 

「マスター? どうかなさいましたか?」

 

 そんな私の変化なんてとっくにお見通しのはずのコヤンスカヤは白々しく聞いてくる。

 

「別にぃ?」

 

 精一杯の強がりを込めて返す言葉は、自分でもびっくりするくらい甘ったるく蕩けていて、むしろ挑発して誘っているようにしか聞こえない。

 

「お可愛らしいことで」

 

 かぷ、と私の耳朶を食むコヤンスカヤは、そのまま舌先をチロチロと這わせながら囁く。

 

「ん……ちゅ」

 

 そしてそのまま舌先が、私の耳の穴に差し込まれた。

 

「……ぁ……っ、コヤンスカヤ、それダメ」

「ええ。存じておりますわ、マスター。ここがお好きなのでしょう?」

 

 くちゅくちゅと水音を立てて耳の穴を舐め回される。それと同時に、コヤンスカヤの手が私の胸に触れる。両手で優しく乳房を包み込むように揉まれながら、指先が乳首を転がすように弄ぶ。

 

「っ、ぁ……ぅあ……」

 

 耳の穴というより、もっと奥まで差し込まれたコヤンスカヤの舌先に脳を舐めしゃぶられてるような錯覚を覚えて、頭が蕩けていく。

 やがてコヤンスカヤの舌は私の首筋から鎖骨へと降りていき、そのまま胸まで下りてくると今度は乳首にしゃぶりついてきた。まるで飴玉でも舐めるみたいに口の中で転がされて吸われるたびに甘い痺れが走る。もう一方の乳首は、まだ指で転がされていて。空いた手が、私の股間をまさぐる。

 

「あ、や……っ」

 

 ゆっくりと前後する指先は、すぐにぬちゅ、くちゅという粘着質な水音を立て始める。石鹸のぬめりだけが原因じゃないのは自分でもわかっている。繊細な花弁の隙間に指先が潜り込むと、コヤンスカヤはわざと音を立てて私の羞恥を煽るようにしながらゆっくりと前後に動かす。恥ずかしいのに、すごく恥ずかしいのに、私は自分から腰を動かしてコヤンスカヤの指に股間を押しつけてしまう。

 

「あら、もうこんなになっていらっしゃいますの? マスターってば本当に堪え性のない方ですわね」

 

 そんな私の内心を見透かしたように、コヤンスカヤは妖しく微笑む。そして私を浴槽の縁に座らせると、自分は床に跪いて私の脚の間に顔を埋めた。そしてそのまま舌先を花弁の内側に差し込みつつ、唇を花芯に押し付けるようにして強く吸い上げた。

 

「ひっ、あぁっ!」

 

 びくんっと腰が跳ね上がると同時に私は軽く達してしまう。こういうところが堪え性のないと言われてしまうのだけれど。

 でも、だって、コヤンスカヤの奉仕はすごく気持ち良くて。肉襞を長い舌でねっとりと舐られる感覚は、まるで身体の内側からぞわぞわした感じが広がってくるようで。

 

「まふたぁ」

 

 口が塞がっているせいで低くくぐもった、甘く蕩けた声でコヤンスカヤに優しく名前を呼ばれると、それだけで胸の奥底がきゅんとなるような感覚に襲われる。濡れた金色の瞳に見詰められると、もうどうしようもないくらいに昂ぶってしまう自分がいるのもまた事実だった。コヤンスカヤの頭を愛おしむように両手で優しく撫でる。もっと大きく脚を開く。花弁から垂れた蜜がお尻の穴にまで伝っていくのを、コヤンスカヤは舌先で追いかける。

 コヤンスカヤにお尻を抱えられて、菊座の皺の一つ一つにまで唾液をたっぷりと塗り込められる。

 

「あ、は……ぁ、ん」

 

 そのむず痒さにも似た快感と恥ずかしさに身悶えする。コヤンスカヤの舌はまるでそれ自体が生きているかのように蠢いていて、私のお尻の穴を解していく。やがて舌先がつぷりと中に潜り込むと、私は思わず悲鳴を上げた。

 

「ひぅっ!」

 

 そんな私の様子を愉しむように、さらに深くまで舌を突き入れるコヤンスカヤ。腸壁をなぞられるたびにぞわぞわっとする感覚に襲われる。

 でも、それは決して不快なものではなくて。むしろ逆で。もっとして欲しいと思ってしまう自分がいる。自分がとんでもない恥知らずになってしまったような、そして排泄の世話までもされる本当の意味でのペットになってしまったような気がして、とてつもない羞恥心に襲われる。そして、それ以上にキモチイイ。

 反射的にお尻に力を入れて、コヤンスカヤの舌を締め付けてしまう。すると、舌はさらに深くまで潜り込んでくる。舌先が腸壁越しに子宮の裏側をなぞり上げるたびに腰が砕けそうになる。

 

「ふぁ、あっ、ああ……っ」

 

 前後の穴の両方をコヤンスカヤに開発されてしまって、こんな恥ずかしい姿を見せるのも、見せられるのも、コヤンスカヤだけだ。下半身をすっかりコヤンスカヤに預けて、自分の手で自分の胸を揉みしだき、乳首を刺激する。コヤンスカヤが私を見ている。私の浅ましい姿を余すところなく視られているという感覚に背筋が震えるような興奮を覚える。

 

「や……ぁ、ん、あぁっ」

 

 尻を穿るコヤンスカヤの舌の動きに合わせて私も腰を動かすと、まるで本当にセックスをしているかのような錯覚に陥る。いや、これはもうセックスそのものだろう。舌で犯されて感じてしまっているのだから。

 でも、違うのだ。だってお尻の穴なんかで感じるわけがないんだからと自分に言い聞かせるけれど、それでもなお身体の内側から湧き上がってくる快感を抑えきれない。コヤンスカヤの舌使いに翻弄されて、私はまた達してしまう。

 

「あぅ、あっ! ああぁっ!」

 

 もう何度目になるだろうか。すっかり蕩けきった秘所からはとめどなく蜜が流れ出し、浴槽の中に滴り落ちるほどになっていた。絶頂で収縮した括約筋が、ゆっくりと弛緩する。粘液質の糸を引いたコヤンスカヤの舌が私の菊座から抜けると、優しく宥めるように排泄器官だったはずの穴を舐られ、そしてまた軽く口づけされた。その刺激にすら感じてしまって「ひぁんっ」と情けない声が出る。

 コヤンスカヤはそんな私の反応を楽しむかのように何度もお尻にキスを繰り返す。そのたびに甘い吐息を漏らして身体を震わせてしまう自分が恥ずかしいけれど、でもそれがとても心地いいと思ってしまうのだからもうどうしようもない。

 やがてコヤンスカヤの唇が離れた時にはすっかり蕩けきっていた。

 

「ふふ、可愛らしいですわ、マスター?」

「あ……ぅ……」

 

 そんな私の様子を見下ろしながら、コヤンスカヤが妖しく微笑む。私はといえば息も絶え絶えで言葉を発することすらできない状態だったのだけれど、それでもなおコヤンスカヤの言葉に反応して身体が勝手に震えてしまったりするのだ。

 

「さて、そろそろよろしいかしら?」

 

 コヤンスカヤは私の身体を浴槽に横たえると、今さらのように髪を洗い始める。何度も絶頂に達して汗だくになってしまっているから、決して無駄ではないと言えばそうなのだけれど。

 

「マスター、お加減はいかがですか?」

「ん……大丈夫」

 

 コヤンスカヤが優しく私の髪を洗ってくれる。体は今も絶頂の余韻を引きずっているけれど、それでも少し落ち着いてきた気がする。ぬるめのお湯で髪と体の泡を洗い流され、私はふうっと大きく息をついた。

 

「少し長くお湯に浸かり過ぎてしまわれましたわね、そろそろ上がった方がよろしいかと」

 

 そう言って私を軽々と抱き上げたコヤンスカヤは脱衣所に出てバスタオルを手に取ると、私の体にふわりとかけてくれる。そのまま大きな鏡の前の椅子に座らされ、髪を優しくタオルで拭かれる。ドライヤーで乾かされた後でヘアオイルを垂らされ、優しく馴染むように髪を梳かれる。鼻腔をくすぐるハーブとミントの爽やかな匂いが気分を落ち着かせてくれた。

 

「この際、私と同じ香水も試してみては?」

「いや、さすがにそれは…」

 

 ここぞとばかりに調子に乗ったコヤンスカヤの提案はもちろん丁重にお断りさせていただいた。汗が引いた体に下着をつけ、椅子から立ち上がって服を着る。まだ少しだけ力が入らない腰からお尻にかけてをコヤンスカヤの手に支えられると、甘えるように寄りかかってしまう。

 

「いい匂いですわ。やはり、マスターに合う匂いを選んで正解でした」

 

 寄り添ったコヤンスカヤが私の髪の匂いを嗅いで、鏡越しに満足げに微笑むのが見える。そもそもの最初から私の興味を惹くために、わざと私好みの匂いに調整したヘアオイルを選んでつけてきていたらしい。そうなると、わざわざティアマトに余計なちょっかいを出したことさえ自然な形で私と密着するための布石だった可能性すらある。ティアマトとコヤンスカヤがやりあっていれば、他のビースト勢が黙っているとも思えないし。

 

「あのさ、…いや、なんでもない。それより、このヘアオイルを商品化するんだったら、なんて名前にするつもりなの?」

 

 あまり深く突っ込むと余計な闇が出てきそうなので、話題を別の方向に持っていく。

 

「そうですわね、――…『REBORN』、というのは如何でしょう?」

 

 だが、話を逸らすつもりで訊いた質問の答えは、逆に私の頬を引き攣らせた。

 

「まさかそれってもしかして、これをつけた人はコヤンスカヤのペットに生まれ変わります、とか、そういう意味が…」

 

 思わず呟いたら、コヤンスカヤはニッコリと満面の笑顔を返してきた。その無言が逆に怖い。せめて表向きの建前だけでも否定してくれないかな嘘でもいいから。

 

「本格的に売り出す際はCMの一つも作ろうと思うのですけれど、よろしければマスターも出演なさいません?」

「え。いや、それはちょっと…」

 

 勘弁して欲しい。クスクスと愉しそうに笑うコヤンスカヤは、ヘアオイルの小瓶を私の手に握らせてきた。

 

「こちらはサンプルですから、またご自分でお使いになるなり、誰かに差し上げるなりお好きにどうぞ。マスターがお望みなら追加で新しくお持ちしますわ」

「うん、ありがと」

 

 マシュにプレゼントしたら喜んでくれるかな、なんて何気なく考えて、そしてコヤンスカヤの爛々と光る金色の目が私の目を覗き込んできていることに気が付いた。

 

「本当にお可愛らしいこと。あまり後輩を構ってばかりいると、拗ねた獣に噛みつかれても知りませんわよ?」

「甘嚙みされるぐらいで許してもらえるのならいいんだけどね」

「それで許してもらえると本気でお思いですの?」

 

 私はコヤンスカヤの顔を引き寄せ、その頬に軽く唇を押し当てた。

 

「――…私の好きなビーストは、そんなに了見が狭いの?」

「…ずるい仰りようをなさいますのね」

 

 甘えるように密やかに囁くと、コヤンスカヤは小さく嘆息した。

 

「でも、仕方ありません。今回は、その言葉だけで許して差し上げますわ」

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