※この作品はR-18です。

異種族だらけの貞操観念逆転世界で剣を振る   作:付呂無権左衛門

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004_アルジェンナよ、冒険者になろう-1

 

 一通りの行為が終わったあと、俺もアルジェンナも念入りに身を清めた。

 いやー、やっぱ水魔術って便利。一々汲んでくる必要もない。良い買い物したなぁ、ホント。

 

 さて、これからアルジェンナを連れてのお出かけだ。

 宿を出る前には、冒険者向けの消臭剤と、街中で一般的に使用されている香水をしっかりと振っておいた。自分にも。この街(セルン)の中でもチラホラと見かけるルポーン(犬系獣人)シャラクク(猫系獣人)は鼻が効くため、その対策である。

 男の冒険者などという意味不明な存在がその辺をほっつき歩いていると知れたら、何かしら厄介事が舞い込んでくるのは想像に難くない。そしてそういった時に助力を請えるように、あるいは未然に防ぐことができるように、むしろ交友関係は広げておきたいのだが……取っかかりがな。なるべく早く高位の冒険者あたりと懇ろになりたいものだが、それも容易ではない。

 俺も師匠に鍛えられた身、相応の自負はあるが、ゆえにそれこそ高位冒険者なんて化け物連中から暴力に訴えられたらどうにもならないと理解しているし、こんな世界に男として生まれて来たからには法による守りなんてものがまったくの気休めに過ぎないことも身に沁みている。クソがぁ……。

 

 我が人生を謳歌せんとする場合の最も確実なルートは、冒険者でもなんでも良いがとにかく絶対無敵な最強女――別に男でも良いのだが、知る限りではこの連邦で最強の男とは、何を隠そうこの俺なのだ。うわあ、ざぁこ♡ 強いのチンポだけ♡ うるせぇボケ――が何かの間違いで奴隷として売られている現場に奇跡的にそれを購入できるだけの資金を持って恐るべき偶然によって遭遇して、その最強奴隷を旅の護衛として付き従わせることだ。そうだな、宝くじでも売ってたら物は試しでやってみようか。どこの街でなら売ってる? 手始めに5000兆円ぐらい当てることができたら、そんな幸運に恵まれることもあるって希望が持てるかもしれないな。

 

「――ご主人様、いかがでしょうか……?」

 

 声をかけられて、現実に引き戻される。

 俺たちは今、奴隷商人モーラに教えてもらった服飾店に来ている。そして適当に購入した服を、早速アルジェンナに身につけてもらっていたところだ。「ザ・奴隷」みたいな麻の服で連れ回すわけにもいかんしね。

 

 平民が着るにしては少々華やかなドレス姿。基本的な意匠は、今はもう何もかも全てが懐かしい我が魂のふるさと地球の兄弟ドイツが誇る民族衣装、ディアンドルに近い。

 細身なウエストを締める黒いコルセットの上には、自慢の――かは知らんが、とにかく俺的にはグッドな巨乳が乗り、その豊かな曲線はふんわりしたレースの白ブラウスと紫紺のリボンに彩られている。直上の胸元は堂々と開帳されていて、窮屈そうに谷間が盛り上がっていた。

 スカートは非常に丈が短く、普通に歩くだけでチラチラと下着が見えるような頭の悪いエロ仕様。まあこの世界の女の服は見渡す限りほとんど全部が馬鹿みたいなエロ仕様だから、つまりこれが標準。

 正直なところ、俺からすると下着のパンツは「汚い」って印象が強いので、目に入ったところで嬉しいもんではないが。けど、尻たぶが見えるのは素敵だね。

 

 それにしてもこの世界の男たちって、女のどういうところに魅力を感じてるのかね。逆に露出を少なくしているほうがまぁ清楚で魅力的な方だわぁ――とかなってても不思議じゃねぇな、と思うんだが。

 少なくとも冒険者などは嫌厭されがちらしい。強くて怖いし実際大抵乱暴だから。さもありなん。

 

「よく似合っている」

「ぁりがとうございます……」

 

 周りの人間に自分の声が聞こえないように耳元で言ってやると、アルジェンナは顔を赤くしながらもじもじと嬉しそうにしていた。

 守りたい、この奴隷。――つーか、守らなきゃなんだよね。奴隷とご主人様なので。連邦法においては当たり前なンだわ。

 

「次に行こう」

「はいっ」

 

 下着類の予備大量と合わせてディアンドルモドキを3セット購入して、店を出る。

 続いて訪れたのは、冒険者向けの装備を取り扱っている店。

 アルジェンナに戦闘力を期待しているわけではないし、そもそも荒事に関わらせる気もないが、旅に同行させる以上は色々と入り用だ。外套と背嚢、さらに手袋やブーツを購入する。ブーツは太ももの半ばまであるものを選んだので、今の彼女の服と合わせると中々のフェティシズムを感じさせた。

 ここでも似合ってるよ~ヤッタ~を繰り返したあと、いよいよ本日の最後の目的地へと向かう。

 

 ――冒険者ギルドだ。

 

「……という制度になっている」

「はい、承知いたしました」

 

 ギルド近くの路地裏にて、そんなやり取り。

 今日これまで店を巡る中で、俺は「怪我でまともに声を出せないから奴隷に応対をさせている」という設定で通してきた。わざわざこちらから主張して回っているわけではなく、何か聞かれた時用の言い訳だが。そのためにも、まずは奴隷を購入する必要があったんですね。

 俺の顔を隠した風貌もあっていずれにせよ怪しまれもするだろうが、直に「男の声やんけ!」となるよりはまだマシだ。ま、バレたらその時はその時かなと思っている。だってそこの石橋を叩いてたら何にもできねーのだもの。なんか逃亡してる犯罪者みたいな気分だわ。俺、何か悪いことしちゃいました? あーあ、欲しかったな、チート能力。今からでも過去改変とかできねぇかな。

 などと益体もないことを考えつつ。このあとの冒険者ギルドでは少し面倒くさい手続きをしてもらう必要があるので、アルジェンナには軽く流れを説明しておいたという次第だ。

 

 ちなみに最初に宿を取った時は「10泊希望。食事不要」の旨を書いた紙を見せるだけで済ませた。

 そしてモーラがアルジェンナを仕入れるまでの3日間は、ひたすら部屋に籠もって最低限の鍛錬とオナニーで時間を潰していた。ハァ~、アホらし。

 

 さて、最後に念のため香水をもう一度かけておいて、と……。たのも~。

 木製のスイングドアを静かに開き、俺たちはギルドの中へと足を踏み入れた。

 

「……」

 

 ふーん。

 前に別の街で入ったギルドと、サイズこそ違うものの作りはほとんど一緒だな。規格化されてんのか?

 一階はフロアを丸々使用した広い空間だ。大まかに、入って右側に酒場、左側にギルド受付などの事務所が設置されている。しかし、酒場が冒険者向けあるいは専用だとしても、建物自体は事務所機能を置いている所とは分けたほうがいいんじゃねぇかと前に利用したギルドでも思ったものだが、どこもこうなのか。

 100人ぐらいは収容しても余裕がありそうだ。そして現在は従業員を除いて冒険者と思われる装いの者たちが……14人か。昼間から屯している人数と考えると、多いのか少ないのか、判断に困る。仕事に困るような立地ではないと思うが、だからこそ余裕があっての振る舞いという線もありえるか。

 

 アルジェンナを連れて受付に向かう。

 ギルド内にいた冒険者たちもこちらを認識して「見ねぇ顔だな」ぐらいの反応はそれぞれあったが……受付に辿り着く頃にはその興味も外れたようだ。ふぃ~。

 俺のように顔を隠している者、特に街中でもそうしているのはかなり珍しい部類――男の気を惹く機会を逃さないための、男に嫌われがちな冒険者たちの涙ぐましい努力だ――だが、全くいないわけではない。街でも2人ほど見たしな。少なくとも今すぐそれを理由にちょっかいをかけられることはなさそうだ。

 

「ようこそ、冒険者ギルドセルン支部へ! 本日はどのようなご用件ですか? ワタクシ、ペイリが承りますっ」

 

 3つある内、最も手前のカウンターで元気に出迎えてくれたのは、トログリム(小鬼族)の受付嬢だった。

 トログリム(小鬼族)。ま、ざっくりと言えばいわゆる「ゴブリン」である。体の大きさは成体であってもフィルダン(人間)の子供と同じぐらいの種族で、顔の造形もかなり違うが、我々の美的感覚から見ても不細工というわけではない。このペイリも、ぱちくりとした両目が可愛らしいものだ。

 

「私の冒険者登録とクラス取得、そしてこちらの方の活動拠点登録を」

「――かしこまりました! それでは、まずは冒険者登録を行ないますね。こちらの用紙にご記入くださいっ。読み上げや代筆は必要ですか?」

「いえ、結構です」

 

 アルジェンナの要求に沿って、速やかに手続きが行なわれていく。活動拠点登録の希望ということから俺が冒険者であることを察し、だがアルジェンナ主導で話が進んでいることから、すでにある程度の知識が共有されていると判断したのだろう。話が早くて助かるゥ~。

 冒険者登録の際、最初の記入用紙で必須となっている項目は名前だけだ。あとは任意でギフトやら出身地やら、好きに買いてよい備考やらと。性別の欄は存在していない。うん。

 

 アルジェンナの記入内容を横から見ておく。

 備考欄に奴隷であること、所有者である俺のことと保証する商人がモーラであることと……書いてあるな、ヨシ。

 

「アルジェンナさん、ですね。それではアルジェンナさん、続いて血印の誓いに移りますねっ。ご説明は必要ですか?」

「存じております」

 

 血印の誓い。

 自分が冒険者となる際に行なった数年前にも、神の名のもとに振るわれる力って割となんでもありなんだな~と、感じたのを覚えている。そこからさらに遡っての幼少の頃、魔術の存在を初めて知った時ともまた別種の感慨だった。

 

「かしこまりました。それでは、こちらの誓約文をお読みください。同意いただけましたら、読み上げたあとに血判をお願いしますっ」

 

 ――「冒険者」とは、実のところ俺が勝手にそう翻訳しているだけで、実際の現地語では「人の領域を守護し、人の領域を開拓し、魔の者たちとの闘争を誓った神の戦士」を意味する固有名詞で呼ばれている。その大仰な呼び方からも分かるとおり、これは本質的に十大神に由来する在り様の一つなのだ。

 地球の歴史を踏まえると「騎士」辺りが最も適当な訳なのかもしれないが、まー見た目とか素行がな……。文化的にも、なんか神殿勢力と連携してこそいるもののあまり深い付き合いではないようだし、よぐわがんね。

 とにかく、神への誓いによってその名を戴くことで、それは成る。

 

 マンズール神よ、聞き届け給え。我が名はアルジェンナ。

 我は誓う。人類の領域を守護し、人類の領域を開拓し、魔に立ち向かい戦う。よってこの身は人類の剣であり、その一切に仇なさない。

 

 誓いと共に捧げられた血が神のもとへと届き、その言葉が真であると判断されたなら、摩訶不思議なことに誓約が記された文書はひとりでに燃え上がり始める。そしてその炎の中から、銅色のメダルが姿を現すのだ。

 かくして、裏側に「アルジェンナ」と刻印されたメダルと、それによって神の名の許に身を保証された銅級冒険者・アルジェンナが、今この瞬間誕生した。

 

「おめでとうございます、アルジェンナさん! これからのあなたの旅路が実りあるものであることを、お祈り申し上げますっ」

「――はい、ありがとうございます」

 

 ペイリの祝福に応えながら、アルジェンナは神の奇跡によって生まれたメダルをまじまじと観察していた。

 

 ――ちなみに。

 神に先ほどの誓いが認められたからと言って、それはアルジェンナの心内に相応しい使命感や闘争心が存在していることを意味しない。というのも、師匠から聞いた話だが、あの誓いは結構なガバガバ判定らしい。

 少なくとも、まず前段においては「理由はどうあれ、その気はある」程度の認識で構わないらしく、アルジェンナの場合は「――と、ご主人様に命令されれば、やります」ぐらいの温度感のはずだ。誓約の言葉に対する実行意欲として「嘘ではない」ことが重要らしい。

 後段にしても「何か悪さをする気は無いです」が成立するかどうかという具合らしく、嘘は通じないにしても、後からコロッと心変わりした場合はカバーされない。なので、そうなるといわゆる確信犯とかサイコパスなんて呼ばれるタイプの奴らもすり抜けるんじゃねぇかなぁ~、と俺は思っている。

 もっとも、このあとアルジェンナが手に入れる「クラス」のこともあるので、誓いがまったくの無意味であるということでもないのだが。

 

「その銅のメダルは、アルジェンナさんの魔物討伐の功績が十大神に認められることによって、銀、金、白金と段階的に材質が変化していきます。ただし、弱い魔物をどれだけたくさん倒し続けても、変化は起きません。相応の実力も必要であるとされていますっ」

 

 流石にこれは省けないのか、ペイリが説明を行なう。何度も繰り返してきたのだろう、朗々としたものだった。

 

「また、メダル等級とは別に、ギルド会員としての職位を表す五位から一位までの等級が存在します。それも含め、規約事項等の説明をあちらに掲示しておりますので、後ほど必ずお読みください! 違反者には厳粛な対応がなされますから、くれぐれもご注意くださいねっ」

 

 よって、アルジェンナは今のところ銅級・五位の冒険者である。

 職位はギルドに対する組織人としての功績によって上昇する。だが三位以上は銀級であること、二位以上は金級であることが定められているので、銅級のままではどれだけ品行方正に粛々と頑張っても四位が限界だ。

 そして俺もまだ銅級の五位だ。登録してあるだけだし、魔物を斬った経験も少ないからな。

 師匠からは「銀級としての実力は不足無いし、相応の相手も斬っている。あとは数だけだ」と言われていたので、割とすぐに変化があるだろうが。

 

 ちなみに、逆に金級・五位とかもいるらしい。お察し。絶対に遭遇したくない、目をつけられたくない。くわばらくわばら。

 

「続いて、クラスの取得に移りましょう。こちらへどうぞっ」

 

 ぴょんと踏み台から飛び降りたペイリが事務カウンターから出てきて、建物の奥へと俺たちを先導する。

 扉を隔てた先にあったのは、神殿の出張所とでも言うべき装いの部屋。部屋の中央に置かれた祭壇の上には、(つど)った十大神を象徴する、彫像のような祠が一つ存在している。

 

「クラスに関するご説明は必要ですか?」

「いえ、そちらも存じております」

「かしこまりましたっ! それでは、ワタクシは受付におりますので、取得が完了いたしましたらお声がけくださいっ」

 

 くるりと踵を返し、ペイリ嬢は退出していった。

 それを見届けてから、アルジェンナは祠の前で両手を組んで祈り始める。

 

 クラス。これも俺の訳語であり、実際には――まあ別にいいか。とにかく、冒険者となった者が神の加護によって与えられる、魔物と戦うための力だ。剣士とか魔術師とかそういうの。

 取得したクラスに応じて実力が伸びやすくなり、基礎的な身体能力が向上する。主に後者の点に目を向けて、アルジェンナには取得してもらいたいわけだ。

 また、クラス特有の特別な力――まあ、俗に言う「スキル」だな――が与えられることもあるのだが、ギフトのように個人差が大きい。同じ剣士だからといって全員が「初級スキル・スラッシュ!」とかやれるわけではないのだ。俺も剣士としては中々のものだと自負しているが、そういうスキルは何も持ってない。いつか飛ぶ斬撃ぐらいは撃ち出せるようになりたいものだ。

 これら加護の力は魔物を狩り続ける限り、冒険を続ける限り、そして悪事を働かない限り維持されるが、それらに反したからと言って急に全てが没収されるわけでもない。誓いに反した行動を取り続けることで、段々と消えていく感じらしい。

 

 なお、冒険者のクラスはあくまで才能が無い者でも魔物と戦えるように底上げされる類の力であり、領主、国家、神殿等々……各勢力が組織的に運用する軍事力は才能に恵まれた者たちが更に専門的な訓練を受けた上で成り立っているため、クラスなんて持たなくても普通に強い。

 現に俺も冒険者としての加護はほとんど無い今の状態で、ならず者20人程度を斬り捨てるぐらいはできるわけだし。

 

「……」

 

 アルジェンナの体が少しの間、柔らかな光に包まれた。

 冒険者が十大神の祠で祈りを捧げると、その時点の実力や適性に応じて取得可能なクラスの名前が脳裏に浮かんでくる。

 これだ、とどれか一つを決めれば取得完了だ。

 

「――どうやら、唯一、魔術師としての適性があるようです」

「それを取得しろ」

「はい」

 

 魔術師としての適性があるというよりは、それ以外が皆無なのだろう。特に戦闘の才能を持たず、鍛錬などとも無縁な、つまりまったくの素人が初めて冒険者になった場合は、大体一つしか選べないらしい。概ね、なんらかの魔術適性があって体を鍛えていなければ魔術師、そうでないただの力自慢やなんの才能もないド素人は一緒くたにされてとりあえず戦士、といった具合だそうな。

 そこから無事に成長を続けてより専門的かつ強力なクラスを取得できるかは……運次第。別にアルジェンナは一生ただの魔術師のままで問題ないが。

 

 こうして、剣士ユウヤの奴隷にして生活用水を準備できる程度の実力を持った魔術師アルジェンナちゃんが、新たに誕生したのであった。

 

 

 ○○○

 

 

【とある国の兵士と冒険者の会話】

「私たちが命を懸けて国を守ってる間、お前らは何してやがったんだ?」

「お前らが戦争なんぞにかまけて勇敢に死ねるように、命を懸けてたさ」

 ――一部では、確かにこのような対立が存在する。

 

 

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