それでいて世話焼きで優しくて清楚な彼女。そんな彼女に一番近い存在は隣に住んでいる自分だと思っていた。
そんな彼女を一途に思い続けたのは俺の気持ちは...誰にも負けないと思っていた。
清純な彼女の最初の恋人になるのは...俺だと思っていた。
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『優柔不断は切り捨てろ:周りの美少女は全員他人のモノ(https://syosetu.org/novel/294060/)』と世界線を共有しています。
―――――――――――――――――魁人視点
「くっそー、やっぱつえーなお前」
「あ、ああ」
まずい...これはまずい。
もう1時間以上ゲーセンで遊んでいる。
今は既に最初に遊んでいた筐体ではなく、今は峠を攻めるレースゲームに熱中しているところであった。
沙織の事が気になりすぎて力が抜けているお陰か、今日の俺はゲームでは絶好調だ。
「なあ、そろそろ腹減らねぇ?」
友人の一人が空腹を訴えている。
「そうだな。坂本はどうする?」
「あ、ああ。そうだな。飯でも行くか」
幸い、直ぐ隣にフードコートが有る。食事はそこでも良いだろう。
「俺、今日はバーガーの気分だわ」
「お前それいつもだろ」
軽口を叩きながらフードコートへと足を運ぶ友人たち。
「坂本?」
友人の一人がこちらに振り返る。
「あ、ああ。今行くよ」
サービスカウンターの前で最初に声をかけてきた友人だ。...コイツはいつも俺を何かと気にかけてくれる良いヤツだ。
ガタイが良くて背も高いマッチョだが、心優しいオタクという珍妙なパッケージの男だ。
「行こうぜ」
他の二人は先を歩いており、コイツだけが待っていてくれた。
「ああ」
肩を並べて俺もフードコートを目指す。
...ん?
「なんか...距離近くないか?」
「そうか?」
気のせいだろうか...
「まあ、人も多いしな。多少は近づいて歩かないと他人に迷惑だろ」
「それも...そうか」
なんとも暑苦しい気分だが...まあ仕方ない。
それに...コイツは沙織とサッカー部の先輩との噂を唯一否定してくれた。他の二人を信用していないワケでは無いが、コイツの言葉は特に信用できる気がする。
「お、やっと来たな」
「悪い悪い。もう注文したのか?」
ありがたい事に、他の二人が席を確保してくれていた。
紙コップは4つ用意されており、全てに水が注がれている。
...我ながら良い友人を持ったものだ。俺も今度同じような機会が有れば真似しよう。
「今からだよ。俺はバーガーにするわ」
赤い看板のハンバーガーショップだ。既に大行列が出来ているが大丈夫だろうか?
「混んでるな...俺はカレーにするわ」
彼の視線を追うと、黄色い看板の大手カレーライスチェーンが見えた。
「俺はネット注文するから行ってきて良いぞ」
「悪いな」
友人の一人はカレーを注文するために立ち上がった。
「俺は...うどんで良いかな」
食べやすいモノが欲しい気分だ。
「じゃあ俺もうどんで」
俺が立ち上がると同時にマッチョの友人も席を立つ。
「おう」
軽く手を挙げて返事をするハンバーガーの友人。
そして、再びマッチョ友と並んで歩く。...少し暑苦しいな。
「何食うかな...」
「俺はかつ丼セットにするよ」
ちなみにマッチョ友はかつ丼が大好物だ。
「俺もかつ丼にするかな...」
俺も好きだし。
そして、うどん屋までの道中、どうしても気になる事が有ったので尋ねてみた。
「なあ、聞いても良いか?」
「ん?」
マッチョ友は少し顔をこちらに向けた。
「沙織...の事なんだけどさ」
「...ああ」
このマッチョ友。今は部活に入っていないが、かつてはとある運動部に所属していたのだ。
「本当にあの3年の先輩と付き合っていたのか?」
「それは...」
コイツが所属していたのは...サッカー部なのだ。
「...ぶっちゃけよく分からん。噂が出始める前に俺は辞めたからな」
「そうか...」
それなら仕方ないな。
そんなことをしている間に、俺たちの順番が回ってきた。
俺たちはかつ丼を注文して席に戻ったのであった。
......................
「ふぅ...食った食った」
俺たちはだべりながらのんびりと食事を摂り、その後もダラダラと下らない話で盛り上がっていた。
...まあ、いつも通りゲームや漫画の話題だけど。
「この後どうする?」
「俺、プラモ買いたいんだけど、行っても良い?」
この近くにホビーショップも店を構えていたはずだ。そこに行きたいということだろう。
「いいね。俺も行くわ」
その場の流れで決定してしまった。
...まあ、ちょっとくらいなら良いか。その後で沙織に電話しよう。
そう思いながら食器を返却口に戻し、フードコートを出た。
...その時であった。
「あっ...」
マッチョ友が何かに気が付いたらしい。
彼はなんでもよく気が付く。背が高いので人混みでも視界が良いのだろう。
「どうした?...あっ」
彼の視線の先を追うと...そこには黒沢さんと沙織がこちらに向かっていた。
「あ、魁人ここに居たんだ...もう、折り返しの電話くらいしてよね?」
「わ、悪い...」
まるでしっかり者の姉に叱られている気分だ。
「まあ、ゲームセンターだとは思ったから良いんだけど...友達と一緒だったの?」
「...まあな。たまたま会ったんだ」
「そうなんだ。どうする?このまま二人で遊ぶ?」
本当に姉か母親のような聞き方だ...しかし、どうしたものか。
「いや、他にも二人居るんだ。だから...その...」
どうしたものか...
他に二人居るから俺は抜けても大丈夫...と、言うべきだろう。
しかし―――
「それなら仕方ないね。帰りはどうする?電車で帰る?」
―――沙織の中では別行動が決定してしまった。
せめて帰りは一緒に...
「そ、そうだな。坂本、この後はカラオケに行くから電車で帰るだろ?」
慌てた様子で俺と肩を組んだマッチョ友。
「そうなの?」
「え?」
知らない...カラオケの予定など初めて聞いた。
「(後で話すから今は合わせろよ...)」
ぼそぼそと耳元でマッチョの吐息を感じた。
「(あ、ああ...)」
何か考えがあるのだろうか...?
「か、帰りは電車で帰るよ。ごめんな、沙織。俺から誘っておいて...」
俺が買い物に誘ったというのに、俺だけ抜けるなんて...なんとも不義理な話だ。
「ううん、大丈夫だよ。元々勇太さんと出かける予定だったから」
ふわりと微笑む沙織。その笑顔には100%の善意しか感じられない。
「わ、悪い...」
「じゃあ、カラオケ楽しんでね。バイバイ、二人とも」
「魁人君もお友達さんも帰り道は気を付けてね」
沙織と黒沢さんはふりふりと小さく手を振りながら去ってしまった。...密着する程の距離で寄り添いながら。
「ぁ...」
ただただ虚しく手を振る事しか出来ない。
「...お前、本当に海老沢さんと出かけていたんだな」
「...まあな」
他の二人の姿は見えないので、おそらく既にホビーショップに向かったのだろう。
「まあ...でも、あの場面ではお前が引くべきだぞ」
「...そうか?」
少しムッとして返事をしてしまった。
「そう睨むなよ。まあ、気持ちは分かるけどよ。海老沢さん可愛いし優しいし...胸もデカいし」
「っ...!」
カっと頬が熱くなった気がした。
...俺は沙織の身体に惹かれたワケでは無い。
そう思いたいのだが、沙織の身体が魅力的という事も理由の一つという事は否定できない。
「だけどさ...ありゃ多分あの男の人に夢中だぞ、海老沢さん」
黒沢さんの事だろう。
「あの人は...あの人はただの知り合いのはずだ」
もはやそう自分に言い聞かせていないと落ち着かない。
「...まあ、お前がそれで良いならいいんだけど...とにかく、今はカラオケにでも行こうぜ」
「...そうだな」
忘れよう。今日の事は。
そして、明日からは勉強を頑張ろう。沙織に思いを伝える為に。
―――――――――――――――――黒沢視点
「じゃあ、カラオケ楽しんでね。バイバイ、二人とも」
「魁人君もお友達さんも帰り道は気を付けてね」
少し複雑そうな表情で手を振る魁人君と背の高いお友達さん。
そんな彼らに背を向けて俺たちは歩き出した。
「ふぅ...よかった」
ほっと息を吐く沙織。ちなみに、コレは安堵のため息だ。
「とりあえず安心だね」
沙織は、先程はぐれてしまった魁人君の事を心配していたのだ。
連れ去られるような年齢と体格ではないので、その点は心配していなかったのだが...彼の方が沙織を探していないかという点が気になった。
一応、"ゲームセンターに居ると思っていた"とは言ったモノの、実のところ彼がゲームセンターに居る姿を確認したのだ。沙織が何度電話をかけても反応が無いので、俺も彼の身を案じて探していたのだ。
しかし、ゲームに熱中する彼を発見し、少し安心した次第だ。その際に声を掛けようとしたのだが、彼があまりにも熱くなっていたので、俺たちはメッセージだけを残して買い物を楽しんでいたというワケだ。
「はい。もう、魁人ったら...自分から誘ったのにゲームに夢中になるなんて」
はぁ...とため息を吐く沙織。
「うーん...」
若気の至りというべきか、彼の情緒がまだ幼いというべきか。
上手い事彼をフォロー出来ない。
「とりあえず、コーヒーでも飲む?」
「うーん...それより、もっと静かなところに行きたいです」
ぎゅっと俺の腕に抱き着く沙織。
...彼女の豊満な双丘の感触に右腕が包まれてしまった。
「それなら...近くの公園にでも行く?」
近くの小高い山の頂上付近に大きな公園が整備されていたはずだ。
「...もっと静かなところが良いです...♡」
甘い吐息交じりの囁き声。
赤く染まる頬は羞恥の色だけだは無いはずだ。
「...今夜、帰りが遅くなっても良いの?」
「はい...お母さんは出張なので...今夜は独りぼっちなんです」
ワザとらしく泣きまねをする沙織。
「それはいけない...悪い大人が沙織の家に入ってきちゃうかもしれないよ?」
俺たちは...自然と立体駐車場へと足を運んでいた。
「きゃー♪」
おどけてぎゅっと腕に抱き着く沙織。
「ふふふっ...勇太さん、私怖いです...♡」
ちっとも怖くなさそうな様子だ。
「それなら仕方ない。...俺が見守るよ」
「...外で?」
いたずらっぽく微笑む沙織。
「もちろん...中で」
「...ふふふっ♡」
どうやら、この後の行先は決定したようだ。
―――――――――――――――――魁人視点
カラオケを終えて、ファミレスで夕食を終えた後。俺たちは電車に揺られながら家路に就いていた。
両親には少し帰りが遅くなることは了承済みだ。
「じゃあまた明後日なー」
「おう」
一駅手前で降りる友人3人
彼らを見送り、一人で再び座席に腰かけた。
「ふぅ...」
思わずため息が漏れてしまう。
...今日は何も上手くいかなかった。
いや...そもそも、元々沙織は黒沢さんと出かける予定だったのだ。そこに無理やり俺が割り込んだことが今日の失敗の原因だろう。
よし...今度は俺だけの為に予定を開けて貰おう。
「あっ」
そう決意していたところ、電車はいつの間にか俺が下りる予定の駅に到着していた。
俺は少し慌てて電車を降りて、自動改札機に切符を入れて改札を出たのであった。
「...」
既に日も落ちた帰り道。
トボトボと歩く帰宅路は...なんとも寂しいモノであった。
本当は...隣に沙織が居たはずなんだ。
でも...今、彼女は居ない。もうこの時間なので家に居るだろう。花蓮さんも帰宅している頃だ。
「あ...」
家へ向かう最後の曲がり角。
赤いオープンカーと黒い大きなミニバンが並ぶ駐車場。...黒沢さんの家だ。
どんな仕事をすればこんな車に乗れるのだろうか?詳しく聞いてみたいものだ。
「...あれ?」
妙な事に気が付いた。...電気が点いていない。
車は有るのだから、恐らく黒沢さんは在宅中のはずだ。
だというのに、大きな家には一つも電灯が点いておらず、人の気配が感じられない。...電車やタクシーで出かけたのだろうか?
「ま、良いか」
どうせ他人の事だ。先ほどまで一緒に居たので少し気になるところだが、この際気にしても仕方ない。
俺は再び足を動かして自宅へと向かった。
角を曲がると奥の方に我が家と海老沢家が見えてくる。
通りの一番奥が海老沢家で、その手前がウチだ。
そして、家まであと数メートルという所で海老沢家を見上げてみた。
「あれ...?」
沙織の部屋の電気が点いている。
というか、沙織の部屋のカーテンの色が違う。今までは派手なオレンジ色のカーテンが掛けられていたのだが、今は白いレースカーテンが掛けられている。
しかし、あれでは部屋のシルエットが見えてしまう。恐らく、もう一枚厚手のカーテンが掛けられているはずだ。今は端に寄せて束ねられているのではないだろうか。
「...ふぅ」
沙織は在宅で、黒沢さんは外出中。...俺の嫌な予感は外れたらしい。
二人の行先が違うという事は、二人が一緒に居る可能性はゼロに近いという事だ。
俺は心地よい安心感を胸に、玄関のカギを開けたのであった。
.................
「ふぅ...」
風呂から上がり、眠くなるまで勉強するか漫画でも読むかと考えながら部屋へと向かう。
「ふぁ...」
さて...どうしたものか。
眠くて仕方ないというのが本音だ。
しかし、このまま惰眠を貪るというのはいけないと理解している。
何かしなくてはという意思だけで俺は椅子に座って学習机に向かった。
「...よし」
勉強しよう。俺にはそれしかない。
「...」
テキストを開き、先日解いた共通テストの過去問で解けなかった箇所の解説と応用問題に取り組んでいる。
「これは...」
塾で配布されたテキストは分かりやすい。これを繰り返していけば必ず力になるだろう。
「...」
黙々と応用問題を解き、解説を読みながら回答を確認する。
その作業を何度か繰り返した頃、ふと窓の外から何かが聞こえてきた。
「ん?」
ちらりと窓から外を見るも、人影は見当たらない。
「子猫か?」
子猫の鳴き声のようなモノが聞こえた気がする。
野良猫が子猫を産んだのだろうか?
「...」
ちらりと隣の家を見るが、沙織の部屋は人の気配が感じられない。
「まあ...良いか」
冬ではないので子猫も死にはしないだろう。
そう思うことにして、再び机に向かった。
「...」
しばらくの間は聞こえなかったのだが、ふと集中力が切れたタイミングで再び鳴き声が聞こえてきた。
「...気になるな」
窓を開けてみよう。
そう思い、沙織の部屋に向かっている方の窓を開いた。
「あれ?」
気が付けば沙織の部屋の電気が消えていた。
しかし、妙なことに窓が開いている。
「まだ暑いぞ...?」
窓を開ければ良いという気温ではない。夜も冷房を利かせなければ寝苦しい程だ。
何より先ほどまで窓は開いていなかった。
「ん?」
よく見るとカーテンがひらひら揺れている。
最初は風で揺れているのかと思ったのだが、俺も窓を開くとそれが誤りであることに気づく。
何故なら今夜は完全なる無風状態なのだ。
花も草木も今はおしゃべりを控えている程である。
「あ...」
ひょっとして、沙織も謎の鳴き声の正体が気になるのだろうか?
『...っ...ぁ...っ...』
「...!」
聞こえた。
細く、高い鳴き声。
まるで子猫の鳴き声のようなか細い声だ。
「...」
沙織も音の正体を探っているということは...恐らく彼女も起きているということ。
声をかけても問題ないだろう。
「沙織...っ...沙織...っ」
ウチの両親は既に就寝している。だから控えめに声をかけている。
...まあ、両親の寝室は家の反対側であるので大した問題ではないけれど。
「...っ...!」
がさがさとカーテンが揺れた。
息を飲むような音が聞こえ、ベッドがギシギシと軋む音が聞こえてきた。
...どうやら沙織も気が付いたらしい。
「沙織、聞こえるか?...沙織...っ」
再び呼びかけると、再びカーテンが揺れた。そして、彼女がカーテンの隙間から顔だけ覗かせたのであった。
「か、魁人...っ...ど、どうしたの...っ...?」
少し様子がおかしい。突然声をかけたので驚いているのだろう。
「いきなりすまん。今、大丈夫か?」
一応、それを訪ねるのは礼儀だろう。
「っ...あっ♡...す、少しだけ...っ...なら...っっ♡♡...大丈夫、だよっ...」
暗闇のせいで沙織の顔がよく見えない。
しかし、少し顔が赤い気がする。それに息も荒い。
これは...まさか...
「わ、悪い...タイミング悪かったか?」
「そ、それは...っ...」
実は...前にも似たような事があった。
あれは去年の春頃で、半日授業で部活も無い日の事だった。俺は沙織と帰るつもりだったけれど、沙織はいつの間にか先に帰っていたのだ。
その日、家に帰って漫画を読んでいた時も今夜のように子猫の鳴き声のような声が聞こえ、沙織の部屋から物音が聞こえてきた。あの日もベッドがギシギシ軋む音が聞こえ、沙織はカーテンの隙間から顔だけだして答えていた。...今日と同じように、顔を赤らめて。
「あー...」
俺はあの日、沙織が一人でオナニーをしていると結論付けた。以前に彼女の部屋に行った際に、やたら使い込まれた電動マッサージ機を見かけたことがあるので、その結論に至ったのだ。...まあ、何の確証も無いけれど。
「か、魁人?...っ...ぁ...んぅっ...♡♡♡♡」
両手でカーテンを握り、顔を真っ赤にしながら声を震わせている沙織。
...両手?
そういえば...あの日も沙織はオレンジ色のカーテンを両手で掴んでいた。...ぶっちゃけると、あの時の沙織があまりにも煽情的であったので、それを思い出して行為に耽ることが何度もあった。おかげさまで鮮明に思い出すことができるのだ。しかし...両手を使わないということは、まさか股の間にバイブを挟んでいるのだろうか?凄いな...
「悪い...何でもないよ。邪魔したな」
「そ、そう?...っ...」
これ以上我慢させるのも悪い。
ここはこの思い出を胸に刻みながら退散することにしよう。
「じゃあ、おやすみ」
「うんっ...おやすみ...っ...ああっ♡♡♡」
俺が窓を閉める寸前、沙織の甘い声が耳朶に染み込んだ。
「...うん」
ダメだ...俺も興奮してきた。
その後、去年の春より長い時間、遠くで聞こえ続けている沙織の嬌声をオカズに...俺も楽しんだのであった。