マークの車から逃げてきたユイは、昨夜のことを警察に通報しようかと思ったが…
なぜか、その気になれなかった。
マークのやったことは、未成年者への不同意性行為という、あきらかな犯罪
なのだが、警察に言ったら言ったで
同意があったのではないか
とか
ついて行ったあなたも悪い
などと言われかねない。
ユイは、昨日の夜、マークの車に乗ってしまった、自分の行動の軽率さを悔やんだ…。
・
「ただいま…。」
と、帰宅したユイ。
「ユイ!?
どこ行っとんたんじょ!?」
と、ユイを叱る母親のスミカ。
「ごめんなさい…。
友達の家に泊まって…
連絡するの忘れて…。」
と、スミカと一緒にキッチンに向かうユイ。
「それならえぇんじゃけんどな…。」
と安堵するスミカ。
「お父さんは?」
と訊くユイに
「寝とぉよ。」
と言うスミカ。
テーブルについたユイに、コーヒーを淹れるスミカ。
「ありがとう。」
と、コーヒーを一口飲むユイ。
しばしの沈黙ののち
「ねぇ、お母さん…。
変なこと訊くけど…
お父さん…
お母さんに…
射精するの…?」
と、伏せ目がちに訊くユイ。
「な…何訊いとんじょ!?」
と、顔を赤くして驚くスミカ。
「だって…
お父さんと…
エッチしたら…
お母さん…
妊娠するんじゃないかなって…。」
と言うユイに
「そんなん、心配せんでえぇけん…。
お父さん…
そこまでは、せんけん…。」
と言うスミカ。
「そうなんだ…。」
と、コーヒーを飲むユイ。
「でも…何で、そんなこと訊くんじょ?」
と訊くスミカ。
「ごめんなさい…。
お父さんとエッチしてるのに、お母さん、妊娠しないのが不思議で…。」
と言うユイ。
「お父さん…
お母さんを抱くんが好きなだけじゃけん…。」
と言うスミカ。
「私も…
いまさら、弟か妹ができても困るよ。」
と、苦笑するユイ。
「何じょ?
と訊くスミカ。
「一応ね…。
ごちそうさま。」
と、コーヒーを飲み終えるユイ。
「私も…
シャワー入って寝るね…。
何か…ちょっと疲れてる…。」
と言うユイ。
「薬飲む?」
と訊くスミカ。
「大丈夫。
そんなんじゃないから…。
おやすみ…。」
と、浴室に向かうユイ─。
・
シャワーを浴び
秘部を洗う。
洗い流せば、妊娠する可能性も低くなるだろうという思いから
念入りに洗った…。
・
今日は土曜日─。
自室に戻ったユイは制服を脱ぎ捨てて、下着姿になってベッドの上で仰向けになって天井を見つめながら、右手で下腹部に触れた。
(赤ちゃん…
できないよね…?)
昨日の夜、マークに犯され、膣内に射精された時の、腹の奥が熱くなったことを思い出してしまうユイ…。
不安を感じたユイはスマートフォンを取り、キリカに電話をかけた。
《ユイ?
どうしたの?〉
と訊いてくるキリカ。
「おはよう、キリカ。
今、空いてる?」
と訊くユイ。
《大丈夫だよ。
でも、どうしたの?
メールじゃなくて電話って?〉
と訊くキリカ。
「うん…。
昨日の夜のことでね…。」
と言うユイ。
《昨日?
マークに送ってもらったんでしょ?〉
と言うキリカに
「うぅん。
トオル君を降ろしたあと、ラブホテルに連れて行かれた。」
と言うユイ。
《は?
ちょっとまって!?
何言ってるの!?〉
と、慌てふためくキリカ。
「昨日の夜…
私…
マークに犯されたの…。」
と、涙を流すユイ。
《ちょっ…ウソでしょ!?〉
と言うキリカに
「こんな嘘、つけるわけないじゃない…。」
と答えるユイ。
《何よ、それ!?
犯罪じゃない!!
警察に言ったの!?〉
と訊くキリカに
「言ってない…。」
と答えるユイ。
《今、どこにいるの?〉
と訊くキリカに
「家…。」
と答えるユイ。
《今からそっち行くから待ってて!!
一緒に警察に行こ!!〉
で、電話が切れた…。
それから15分くらいしてから、キリカが来た。
「ユイ…。」
と、ベッドの上で下着姿で仰向けになっているユイを見るキリカ。
「キリカ…。」
と、上半身を起こすユイ。
「さっきの話…本当なの?」
と訊くキリカに
「うん…。」
と答えるユイ。
「おじさんとおばさんには言ったの?」
と訊くキリカに
「言ってない…。」
と答えるユイ。
「どうして言わないのよ!!
こんなの、ないないで済ましちゃいけないよ!!」
と、まくし立てるキリカ。
「ちょっと…キリカ…?」
と困惑するユイに
「とりあえず、服着て!!
おじさんとおばさんに、昨日の夜のことを話して、警察に通報しよ!!」
と、まくし立てるキリカ─。
・
リビングのテーブルに座る
キリカ
ユイ
ユイの父・バロン
ユイの母・スミカ
キリカは昨日の夜、ユイがマークに強姦されたことをユイの両親に話した。
ところが…
「そりゃ、めでたいけん☆」
と喜ぶバロン。
「な…何を…?」
と、娘が強姦されたと聞いて喜んでいるバロンを見て驚愕するキリカ。
スミカは落ち着きなく、そわそわしている…。
「おじさん…
ユイが…
おじさんの娘が強姦されたっていうのに、何がめでたいんですか!!」
と激怒するキリカに
「何言っとるけん?
女ってぇのは、男に抱かれてナンボじゃけん☆
ユイが男に抱かれたんなら、ユイも一端の女になったけん☆」
と、満面の笑顔て言うバロン。
(何なの…この人…?)
と、言葉を失うキリカはユイを見る。
ユイは目を閉じ、うつむいていた…。
両親とは話にならないと思ったキリカはユイを連れ、外に出た。
せめて、警察には通報する。
10分ほどでパトカーが来て、2人はアスマン警察署に向かい、青少年犯罪課で、昨日の夜の出来事を証言した。
これでマークは、未成年者への不同意性行為および婦女暴行罪で逮捕されると思った。
しかし…
マークは起訴されなかった…。
理由は
マークとユイがラブホテルに泊まったという決定的な証拠が無かった
からだった。
ラブホテルの駐車場には
防犯カメラは駐車場の入口にある1台しかなかった
ため
マークとユイが乗った車が駐車場に進入してきた映像はあった
ものの
マークが鳩尾を殴って失神させたユイをラブホテルに連れて入る映像が無かった
ので
ユイへの暴行を立証できなかった
のだ。
しかも、ラブホテルなので
宿泊記録に利用者の名前は記入されていないため、利用記録はあっても、利用者を特定することができなかった。
さらに
利用者のプライバシーを保護する名目で、ラブホテル内には防犯カメラは無かった。
そして、2人が入った部屋もすでに清掃され、利用した痕跡が残っていなかったため
マークとユイが宿泊したことも立証できなかった。
マークについた弁護士が
腕の良い悪徳弁護士
だったことも、ユイにとって不幸だった。
マークの弁護士は、ラブホテルに入った車が
ナンバープレートと車種だけでは、マークの車だと証明できる絶対的な証拠ではない
と言い張ったのだ。
ラブホテルの駐車場の防犯カメラが1台しかなかったため、マークとユイが車から降りる映像が無かったので
警察もマークの弁護士の主張に反論できなかった…。
ユイも
秘部を念入りに洗ったことが裏目に出てしまった…。
秘部にマークの精液が残っていれば、マークの犯行だけでも立証できた
のだが、洗い流してしまったため、マークの犯行も立証できなかった…。
マークは無罪
となった…。
・
当然だが、ユイは【インビンシブル】を脱退した。
脱退した日の夜、マークから
『帰ってくる日を待っている
愛してるよ、ユイ』
というメールが送られてきたが、ユイは即削除し、なおかつ、マークからの通信をブロックした─。
ユイはキリカにも【インビンシブル】からの脱退を勧めたが
キリカは断った。
「どうして?」
と訊くユイに
「マークは、私には興味無いし…。
それに…
私
トオルが好き
なの…。」
と言うキリカ。
「えっ?」
と驚くユイ。
「マークは嫌な男だけど…
でも…
トオルがそばにいるのなら…
我慢できる…。」
と言うキリカ。
「そうなんだ…。」
と言うユイ。
「ごめんね…。
こんなチームに引き込んだりして…。」
と謝るキリカに
「こっちこそ、短い間だったけど…
キリカと一緒にガンプラバトルできて楽しかったよ。」
と言うユイ。
「ありがとう…。」
と答えたキリカに…
ユイは別れのキスをした…。