※この作品はR-18です。

未来も希望もない戦場で必死に生き残ってたらモテモテになった件(ハーメルン版)   作:SIS

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<戦場のひみつ:兵士と違って政治将校は、逆にレーザー銃を使わず実弾のみを運用する。しかもただの実弾ではなく、特に殺傷力の高い銃を好んで使用する。これは彼らの任務内容上、対レーザーコーティングを施されたプロテクターを相手にする事が多いからだ。>




第十八話 タワーディフェンス

 

 

「よし、状況を開始する」

 

「全ての稼働可能な防衛設備は全部で三つ。暫定的に、α、β、γと呼称します。全てこちらの管理下にあり、いつでも発砲できます」

 

「一応、砲台のジェネレーターから電力拝借してレーザーガンも充電しておきました」

 

「敢えて言うなら燃料がちょっと心配ですね。基地に残っていた燃料は揮発してました」

 

「まあそれはわかっていた話だ。仕方ない」

 

「今更なんですけど。今からでも逃げる訳にはいかないんですか? 異星生物が集まってくるといっても、あくまでナマモノだし、基地周辺からここまでやってくるとなるとそれなりに時間がかかるじゃあないですか。それだけの時間があれば救難信号は十分に機能するでしょうし、その間に燃料が尽きるまで走れば安全圏まで退避できると思いますけど。というか、奴らが襲ってくる前に救援がくるんじゃないです?」

 

 そんな事をミリシアが言ってくる。それは確かにその通りなのだが、アレックスには懸念事項があった。

 

「悪いが、そういう訳にもいかない理由がある。近くに連中の拠点が無い、という保証はないしな。それに想定としては最悪から三つぐらい下だが、敵航空戦力が存在する可能性がある。……どうやら悪い予想ばかり、的中したようだが」

 

「……! 船の砲台センサーが、こちらに接近してくる機影を探知……?!」

 

「迎撃しろ! この状況で味方という事はあり得ない!」

 

「りょ、了解!」

 

 アレックスの指示に、ネルスが砲台の攻撃待機命令を解除する。27式の対空迎撃プログラムによって制御される砲台は、時速500キロほどで接近してくる飛行物体を補足。ただちに高出力レーザーを照射され、地平線から顔を出したばかりのそれを、即座に迎撃する。

 

 が、対象は一機だけではなかった。一つ、二つ、三つ……。続々と地平線の向こうから現れるそれらに、対処が間に合わない。レーザーは光速かつ必中ではあるが、長期間放置されていたレーザー砲台は連続照射時間に問題が生じている。また、ジェネレーターからの供給エネルギーも不足している。それらが原因のインターバルによって、少しずつ、迎撃距離が短くなっていく。

 

「た、隊長、なんですこれ?! 反応がいっぱい飛んでくるんですけど!」

 

 センサーを覗き込んでいたイオリが悲鳴を上げた。ネルスは文句を言う暇もないのかひたすら計器に数値を叩き込んでいる。

 

「肉の風船っていうか、ガスを噴出するキノコっていうか。連中の運用する、人類でいう長距離ミサイルとかそういう代物だ。中に爆薬の代わりに異星生物の歩兵を大量につめこんでて、基地とかにぶち込んで攻城戦に使う。やっぱ育ててやがったか……!」

 

「聞いたことないんですけど、そんなの!?」

 

「そりゃ連中が計画的に拠点攻撃行う時だけひっぱりだしてくる奴らだからな! 普通に前線で押し合いへし合いしてる時にはまず使ってこない。逆に言うと、これ用意されてるときはだいたいヤバイ。基地司令部とか狙い撃ちにされて前線が孤立したあとタコ殴りにされる。……今もだいたいそうだったな!」

 

「ん。なるほど。知った時には死んでるやつですね。隊長だから知ってる的な」

 

「うふふ、一蓮托生って感じしますね! あとこれで基地陥落してるのも確定してすっきりしました」

 

 イオリがなるほどー、という感じで愚痴り、からからとミリシアが笑った。どうにもミリシアはシャレにならない状況をネタにする不謹慎なところがあるなあ、とアレックスは思った。

 

「私としては一般常識じゃないのにびっくりだがな。情報フィードバックされてねえのかよ」

 

 ちっ、と舌打ちをする。危地にあって冗談を言えるのは悪くないが、今のは単に追いつめられて口数が増えてるだけだ。非常によろしくない。

 

「仕方ない、前にでて迎撃に参加しろ。火線の出元から所在がばれるのは面白くないが、迎撃しきれなくなって敵地上戦力の殺到を許したら意味がない」

 

「了解」

 

 廃墟に隠れていた27式を前進させる。機関砲が空を仰ぎ、対空射撃を開始する。対象は気球みたいなものなので、対空砲としては心もとない機関砲でも十分に撃墜が可能だ。

 

 異星生物の使う弾道輸送生物は、幸い速度自体は大したことがない。発射拠点が近かったのか初動こそ早かったが、飛行速度自体は現代兵器からすれば止まっているようなものだ。さらにアレックスの経験から言えば、数があまりにも少ない。異星生物の恐ろしさといえばその物量だ。本攻撃なら吹雪のように輸送生物が空を埋め尽くし、数百の対空砲をフル稼働させてもまったくおいつかないほどの数を飛ばしてくるのを考えると、現状のそれは出涸らしのようなものだ。

 

 おそらく、肝心の基地攻略に使ったあまりを飛ばしてきているだけなのだろう。宇宙船のレーザー砲台と27式一台の迎撃でも、かなりの割合を遥か彼方で叩き落す事に成功している。

 

 が、残念ながら全てとはいかない。撃墜数が100を超えたあたりから、迎撃が数キロ手前まで迫るものが出てきた。被弾や墜落の衝撃で内部の異星生物は死傷するものもいるだろうが、もともと敵地に墜落させて使うようなものなので内部の連中もそれなりにタフな奴らがつまっている。時間がたてば、自力でこの基地まで走って到達してくるだろう。

 

 最悪の事態を考えるなら、見極めが必要だ。

 

 ギリギリまで通信装備は守る必要がある。だが、ある程度の所で見切りは必要だ。

 

 輸送生物で運ばれてくるのが敵の全てではない。今も普通に走ってこちらに向かってくる敵がいるはずだ。今は何も見えない地平線も、じきに敵で埋まる事だろう。そうなってから逃げ出してももう遅い。阻止限界点を見極めて、そうなる前にこの場を離れなければならない。

 

 さらにいうと、弾薬の問題がある。専用の動力炉でエネルギーを供給されているレーザー砲台はともかく、27式は実弾だ。使えば使うほど、弾薬は減っていく。

 

「ん。隊長、砲弾の残量が30%を切りました」

 

「……予定通りだが頭が痛いな。敵の数は?」

 

「ピークは越えたようで徐々に減少してきていますが、27式が迎撃から抜けるとこちらに到達するものが出てくると思われます」

 

「やむを得ない。ネルス情報管理手、敵の落着予想地点がセントリーガンのキルゾーン近くの物を判定できるか? 防衛設備で始末できる奴だけあえて抜かせて、残りを確実に落とす」

 

「ある程度は……なんとか。クズノハ砲手、選定を手伝ってください」

 

「ん。了解。主砲は温存する方向でいいです?」

 

「ああ、頼む」

 

 本来避けねばならぬ急な作戦変更にも柔軟に対応する部下を見て、アレックスは自分のふがいなさに歯噛みをした。これなら最初から輸送生物の存在を前提に作戦を組むべきだった。予想はしていたのだ……だが様々な理由から実際に投入される可能性は低いと考え、保険程度に思っていた。実際はこのありさまだ。

 

 無論、アレックスの見積もりが甘かったというよりは、この星の防衛体制が想像をはるかに超えて杜撰だったというのが問題なのだが、それは何の慰めにも言い訳にもならない。

 

 ただ、良い意味で想定外もある。思っていたよりも、攻撃が遥かに優しい。正直、輸送生物を確認した時は今の十倍ぐらいの量が飛んできてどうにもならないのを想像していたのだが。基地は間違いなく陥落したようだが、土壇場での抵抗が激しかったのか異星生物も消耗しているように見える。一瞬、偵察訓練を共にした車長達の顔が思い出された。話を通していた彼らは、あるいは組織的な迎撃に成功したのかもしれない。

 

 まあどっちにしろアレックス達だけでは手にあまる攻勢なのは変わりないのだが。

 

「一度後退する。可能な限り通信設備への侵攻を抑えられるルートに向かえ」

 

「了解」

 

 

 ギャルルル、と無限軌道をうならせて27式が後退する。廃墟を盾に、後方の宇宙船残骸の陰を目指す。

 

 空を見上げれば、相変わらずレーザーが空をよぎり地平線の彼方へと照射されているのが見える。純レーザーは肉眼ではほぼ目視不可能だが、その熱線によって燃焼、あるいは化学変化を起こした大気の塵の影響を見る事で、その軌跡を推し量る事は可能だ。

 

 その地平線の向こうから、ぽつぽつと異物が浮かび上がってくる。遠目では白い風船のようにしか見えないそれが、異星生物の輸送生物だ。迎撃が間に合わず、また27式が抜けた事で、近づいてきている個体が増えている。

 

 その存在を知るアレックスもまじまじと見た事はないが、落着した残骸を見る限り、それはある種のキノコに似た存在だ。子供のころ、図鑑で似たようなキノコを見たことがある。それは風船のように膨らみ、湿気の変化に反応して自分自身をすぼませ、内部の胞子を吹き出すという生態だった。輸送生物も原理は似ていて、内部で生成させたガスで膨らみ、それを噴出する事で飛行する。つまりは穴の開いた風船のような飛び方になる。そして敵地に乱暴に墜落して着地する訳だが、その際も風船のような肉体がクッションの役割を果たし内部の強襲兵を保護する。また見た目に反してかなり頑丈で、現に今も重レーザー砲台の照射を浴びても即時撃墜とはいっていない。

 

 内部に収納された強襲兵は、一般的な歩兵に該当するヒトデとは別の種だ。棘皮生物っぽい見た目なのは変わらないが、一言でいうと足がカニか昆虫のような形状のオニヒトデ、とでもいうべき見た目だ。鉄を切り裂く鋭い足が八方向に放射状に生えたそれは、立ち上らずに這いつくばったまま高速で移動し、人間を鋭い爪で引き裂いてしまう。またその爪は風船のような輸送生物の外皮を切り裂いて脱出するのにもつかわれる。

 

 一見するとまるでそのために生み出され組み合わされた生物のように見えるが、実際の所この二つの生物は出自の惑星がまるで異なる事が分かっている。異星生物の理解不能である点の一つだ。全く違う生態、惑星の生物が、まるで最初からそうデザインされたかのように、気が付けば組み合わさって侵攻してくる。当初彼らが生物兵器だと目されていた理由だ。

 

 だが生物兵器として遺伝子に調整が加えられた痕跡が一切存在せず、しかしまるで本能的に理解していたかのように初めて顔を合わせたはずの生物同士が連携して戦線を構築する事例が目撃された事でそれは違う事が判明した。

 

 彼らがなぜ、集団で軍事的な戦略行動を行えるかは、いまだに不明のままだ。

 

「数体、敢えて見逃すことで以降の迎撃率を維持します」

 

「ああ。飽和させないほうが大事だ。多少は、ターレットとこちらで迎撃するしかない」

 

「隊長。ミサイル使うのはダメ?」

 

 ニーナから提案が上がる。副砲手の彼女は、現状、手が空いている。確かに彼女にミサイルを操作してもらえば、撃ち漏らしは撃墜できるだろうが……。

 

「……いや、ミサイルは数発しかない。いざという時にできればとっておきたい。戦力の逐次投入は確かに下策だが、私としてはこのまま想定通りに事態が推移するとはとても思えない」

 

「了解。残念」

 

「……そうだな。クズノハ砲手に代わって砲手座席についてくれるか? 砲手はそのまま情報管理手と共に防衛設備の管理をしてほしい」

 

 経歴的に、ニーナでも主砲の操作はできるはずだ。逆に、敵輸送生物のルート割り出しや自動砲台の遠隔制御といった技能はニーナにはなくイオリにしかない。現状、これが一番効率がいいはずだ。

 

「ん。砲手、了解。ニーナさん、あとはよろしく」

 

「任された」

 

 副砲手が席を離れ、砲手座席に座る。その拍子に靡いた彼女の金髪が、数本ハラハラと舞ってアレックスの顔にかかった。鼻がむずむずとする。

 

「っしゅん」

 

「あ」

 

「……髪の毛、ずいぶん荒れてるな。ちゃんとケアはしなさい」

 

「……へぇい」

 

 明らかにその気のない返事にため息をついて、情報管理手に目を配る。ネルスは愛想笑いの苦笑を浮かべた。なるほど、同室でも注意はしてるが聞かないらしい。やれやれである。

 

 車輛が退避ポイントに移動し、停車する。頭上に輸送船の残骸が屋根のように張り出しているポイントで、かつ周辺の廃墟が少ない。敵が浸透してきても、27式の機関砲で迎撃しやすい地形だ。

 

「……見逃した輸送生物の落着予想時間は?」

 

「あと40秒ほどでこちらに到着します」

 

「後続は今の所迎撃できてます。……どうやらあちらも品切れのようで、数が徐々に減ってきていますね。この調子なら最後まで迎撃できそうです」

 

「なら、こっちに着陸した奴を排除できれば安牌だな」

 

 口ではそう言いながらも、アレックスは内心、警戒を高めた。そう上手くいくはずがない。ただの本能で殺到するだけのはずの異星生物に、人類は数えきれないほどの煮え湯を飲まされてきたのだ。今回もまだ何かあると考えておく方がいいだろう。

 

「敵輸送生物、高度下げました。着陸まで、5、4、3、2、1」

 

「着陸」

 

 どずん、と振動が27式を揺るがした。敵の着地音……にしては何か妙だ。確かに輸送生物はそれなりに大きいし重いはずだが、風船のような肉体で着地時の衝撃を吸収する。こんな戦車を揺るがすような地響きが聞こえてくるような覚えはない。

 

 ネルスが悲鳴のような報告を上げる。

 

「じ……自動砲台α沈黙! 通信が完全に途絶……外部からの攻撃で破壊された模様!」

 

「ミリシア! 緊急発進、対空射撃が可能な場所まで前進しろ! クズノハ砲手、残る砲台β、γは防御に専念しろ、輸送生物の迎撃は後でいい!」

 

 言うが早いか、車輛が急発進する。指示は出さなかったが、即座に砲台αの存在していた地点にむけて回頭。遅れて副砲手が砲塔を旋回させた。

 

 視界に入るのは、巨大な宇宙船の残骸と、放棄された居住区の廃墟。それらの陰に隠れるように、何か巨大な影が低空を高速で横切った。ギャギャギャギャ、という金切り音が、無人の廃墟に木霊する。

 

「な、何かいます! 低空で砲台の目をかいくぐって……ダメです、射角が確保できません、近すぎる!」

 

「対空戦闘用意! ミサイルの使用を許可する、ニーナ副砲手、叩き落せ!」

 

 ヴォオオオオ、と機関砲が唸りを上げた。曳光弾の光の線が、なめるように居住区すれすれの低空を薙ぎ払う。

 

 その砲弾を、敵生物は大きく翼を撃ち羽ばたかせ、瞬時に高度を上げて回避した。それによって衆目の前に、その全容が露になる。

 

 蝙蝠を思わせる、皮膜の巨大な翼。トカゲを思わせる鱗に覆われた肌と裂けた口に、感情の無い金の瞳。完全に飛行に特化したと思わしきその体は手足全てが翼になっており、頭部には剃刀のような二本角がカナードのように生えている。そしてその腹部には、無数の寄生虫のようなものがうごめいていた。

 

 初めてみる異星生物。だがアレックスは経験から、それが敵攻撃機だと看破した。腹部に寄生しているのは生体爆弾だ。あれで自動砲台を破壊したのだろう。

 

 おそらく輸送生物は主戦力と同時にこちらの対空能力を推し量る為の囮。速度の遅い輸送生物を撃たせて対空兵装の所在と規模を確認した上で、認識されないよう低空を高速で接近してきたのだ。

 

 高度を上げた敵飛行生物が、不意に踵を返して急降下。こちらの対空射撃に絡みつくような機動で、まっすぐにこちらに突っ込んでくる。その腹部で、不気味な寄生体がうごめいているのが見て取れた。

 

「……ロックオン完了」

 

「撃て!」

 

 砲塔の左右に備え付けたランチャー。それが二つ同時に白煙を噴いた。圧縮空気で射出されたミサイルは射出後一瞬だけ落ちるが、そこでロケットモーターに点火。一瞬で加速して上空の飛行生物へ向かっていく。

 

 それを目の当たりにした飛行生物、ミサイルを回避しようと翼を羽ばたかせて急激な軌道変更。ミサイルはそれに対応し、左右から回り込むようにそれぞれ怪物の退路を塞ぐ。一瞬判断しかねたのだろう、怪物がぎょろぎょろと目を左右に彷徨わせ、左から来るミサイルを羽ばたきによる急速旋回で回避する。生物ならではのアクロバティックな機動だが、しかしそこまで。無理な回避で運動エネルギーを失い失速したその体を、もう一つのミサイルが確実にとらえた。

 

 空に爆炎の華が咲く。黒い噴煙から、手足の皮膜を完全に破られ、だるま状態の怪物が黒焦げになって墜落。そして寄生体の生体爆薬に引火したのだろう、空中でその躰ははじけ飛び、ピンク色の飛沫が雨となって周囲に降り注いだ。

 

「ん。敵航空戦力の沈黙を確認。やりました、隊長!」

 

「やられた……!」

 

 敵撃破の報告を上げるイオリの快哉に、しかしアレックスは憤りを返すしかなかった。ドン、と車長席にこぶしを叩きつける。

 

 敵の切り札だったであろう飛行生物を撃破できたのはよい。だがそれと引き換えに、看過できない損害を許してしまった。

 

 レーザー砲台の損傷。ただでさえ手数が足りなかったのに、ここで一台失ったのはあまりにも大きい。それに、あの怪物は質の悪い置き土産を置いて行った。アレックスの目は、撃墜される瞬間に怪物が腹の寄生ミサイルを数発ばらまいて逝ったのを見逃していない。そしてそれらは、アレックス達ではなく別の場所にばらまかれていた。

 

「セントリーガンの状況は?!」

 

「え? あ、はい……ああ!? そんな、10機近い端末がシグナルロスト?! なんで!?」

 

「奴の最後の置き土産だ……! とっさに27式を破壊しきるのは無理と判断して、陣地を荒らすだけ荒らすのを選びやがった……!」

 

 27式は重戦車ではないが、異星生物との戦闘を想定して開発された車輛だ。その複合素材には対アルカリ及び耐酸抗腐食素材ももちいられており、異星生物が重火力に用いる生体爆薬の破壊に強い耐性を持つ。あの飛行生物が死に際にばらまける数発では、27式を破壊・無力化するのは不可能だ。

 

 だから奴は、死に際にこちらの生命線である防御陣地を破壊する事を選んだ。

 

 一連の攻撃は、まるで熟練の戦術家を相手にしているような計算されつくしたものだ。しばしばそういう面を異星生物の軍は見せてくるが……。

 

「くっそ、残り一輛の生存者に過剰すぎるだろうが。油断しやがれ油断っ」

 

「た、隊長! 敵輸送生物多数出現! 10、20……数えきれません!」

 

「こっちの迎撃手段をつぶしたところで残り全部ぶっこんで来たか……!」

 

「あ、だめ、だめです! セントリーガンの反応、次々ロスト! 敵強襲部隊の進撃をとめられません!」

 

 次々と悲鳴のような報告が飛び交う。

 

 悪態をつく暇もない。アレックスは矢継ぎ早に指示を飛ばした。

 

「副砲手、残り砲弾数は?!」

 

「残り10%ほど。さっきの対空戦闘で大分使った。ミサイルはあと2発」

 

「……やむを得ん! 防御陣地を放棄する! これ以上通信設備の防衛は不可能だ! 敵輸送生物が到着する前に離脱する。武装は全て自衛に使え!」

 

「了解」

 

「りょーかい、飛ばしますよ!」

 





<戦場のひみつ:ショックポイント航法発見のきっかけとなった高次元視座理論は、他にも運命、宿命といった概念的な言い伝えに一定の理論的根拠を与える事になった。今現在では、影響力は低いものの、戦略的判断における数値の一つとして扱われている。>
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