※この作品はR-18です。

未来も希望もない戦場で必死に生き残ってたらモテモテになった件(ハーメルン版)   作:SIS

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第二十四話 蓼食う虫も好き好き(ニーナ)

 

 

 思わぬ騒動を経て、アレックスは自室に戻ってきた。

 

 思ったよりも時間がたってしまった。さてこれからどうするかな、と部屋を見渡したアレックスは、自分のベッドが不自然に膨らんでいるのを目の当たりにして、ドアの前でびしりと固まった。

 

「…………」

 

 別に静かにドアの開け閉めをした訳ではないので、ベッドの中身の何物かがアレックスの帰宅に気が付いてないはずはない。いや寝ていたらその限りではないのだが、何となく布団越しに視線を感じる。しかし、その何者かに動きはない。

 

 どっちだ? ドアの前で固まったまま思案する。

 

 ミリシアか、イオリか。ミリシアは最近、かなりはっちゃけてきているのでこういう、待ち伏せみたいな迂遠な真似はしないような気がする。どちらかというと、ドアの横で待ち構えていて抱き着いてくるのが彼女のやり口だ。となると、イオリだろうか。肌恋しくなってやってきたものの、当の本人がいなかったのでベッドにもぐりこんで待っているというのは、確かに彼女ならやりそうだ。内心は積極的でも、それをいざ行動に移すと恥ずかしがってしまうタイプのようだし。

 

 いや、いや。冷静に考えて愛人二人とは限らない。頭が色ボケしている。いくら人類軍の艦内とはいえ、絶対安全という訳ではない。もしかするとアレックスを狙った刺客という事だって、あり得ないわけではない。いや心当たりも全くないしそれなら標的の帰宅に対して何も動きを見せないのはおかしな話だが、警戒心ゼロで近づくのはとにかく危険だ。

 

 いつ布団の下から何が飛び出してても対応できるように腰を低くして近づく。布団の下に動きはない。そおっと、グレーの布団を捲る。

 

「…………何やってるの」

 

「…………てへ」

 

 布団の中にいたのは、イオリでもミリシアでもなくニーナだった。悪びれる様子もなく他人のベッドの上で丸くなっている彼女に、どう反応を返したものかしばし困惑するアレックス。

 

 と、不意にちょっとした違和感に気が付く。ニーナの様子がいつもと違うような気がする。しばし脳内のニーナのイメージと照らし合わせて、はた、と思い当たった。

 

「なんだ、ヘアサロンでも行ってきたのか?」

 

「……へえ。すぐわかっちゃう? ちなみに具体的にはどんな風に変わった?」

 

「そうだな。前髪がさっぱりして目がよく見えるようになった。髪の手入れもちゃんとしてるんだな、キューティクルが見違えるようだ。前はくせっ毛なんだと思ってたけど、こうしてみるとカーブがかっていてなかなか綺麗じゃないか」

 

「…………」

 

 アレックスが思いついた事を片っ端から口にすると、ニーナは顔をベッドにべたりと伏せた。何故。

 

「いや、それはいい。とりあえずなんでここにいるんだ? 自分のベッドがあるだろ?」

 

「……それを言わせる? 女が男のベッドにもぐりこんで待ってるとか、理由は一つしかないと思うけど」

 

「へ……?」

 

 想像だにしてなかった返しに思わず固まる。

 

 いや、まったく意識の外だったわけではないけど、相手はニーナである。協調性もそこそこ、男女関係には興味ないですって顔をして、趣味は異星生物殺し。それがニーナの印象である。いや確かにスタイルはけっこういいと思ってはいるし、こうしてあらわになった顔もなかなか整っていて美人だと思うけども、それがイコール下半身に直結するほど、アレックスは別に女に飢えてもいないわけで。

 

 虚をつかれて処理落ち状態に入ったアレックス。平時ならともかく、そんな彼を引きずり倒すのなんてニーナにかかれば朝飯前だった。

 

「てぃ」

 

「のぅわ!?」

 

 蛇のように絡みついてきたニーナの手で、バランスを崩されベッドに引きずり込まれる。重心をおさえられバタバタ抵抗するアレックスから手早くブーツを脱がせるとそれを床に放り、そのままドスン、とニーナはアレックスに馬乗りになった。みぞおちに体重が落とされてアレックスが呻く。

 

「ぐぇ」

 

「ふふふ。ちょろい」

 

「な、何のつもりだっ」

 

「何って、ナニだけど。……どうにも隊長がその気にならないみたいだから。その気になってもらうね……」

 

 ぐり、と腰というか尻を押し付けるようにして、ニーナがかがみこむ。そして状況を呑み込めてないアレックスの頬を両手で捕らえて、そのまま熱烈なキス。

 

「んー………。むぅ、ちょっと難しい」

 

「いやまて、ニーナ、まず状況の説明を……」

 

「えー? 要る? それ」

 

「要る!」

 

 豊満な胸やらあれやらを押し付けるようにしがみついてくるニーナに理性を揺さぶられながらも説明を求める。アレックスとしては、勢いでよくわからないまま関係を持つのは避けたい。手が早い男だと思われているかもしれないが、それでも踏むべき手順はしっかりと踏むべきというのがアレックスの主張だ。

 

 面倒くさいなあ、という顔を隠そうともしないニーナだが、一理あると思ったのか、それともこのままでは思うようにいかないと判断したのか、しぶしぶ説明を始める。

 

「隊長いいなあ、と思ったので関係を持ちに来た。床上手だとも聞いてるし、中古でも構わないって話だったから私もいけるよね、と思った」

 

「床上手とか中古とかは置いといて、なんで唐突にそうなったんだ。こないだまでそんなそぶり全くといっていいほどなかっただろ」

 

 いや、実際にはイオリとのキスを覗かれたりとか、そこそこ色々あったけど。

 

「そりゃあ、実戦のアレコレで、ね。正直あそこまで異星生物を殺すのがうまいとは思わなかった。猟兵級と白兵戦して普通に勝つとか、実際に目で見てないと信じられないね」

 

「まあ、あれは火事場のなんとやらっていうか……。故郷だと猛獣とナイフ一本でやり合うとかない事なかったからなぁ……経験があったんだよ」

 

「そう? まあともかく、隊長は私よりも殺すのが上手かった。私は、感情とか生存とかを棚上げにすれば、多く異星生物を殺せると思ってた。だけど、そうじゃないって事を隊長に証明された訳」

 

「あー、まあ。そうかもな……」

 

 結局の所、全ては効率であり、効率とは数学であり、数学とは数値だ。感情とか自身の生存を無視してやっても、それは必要な数値が欠落している。よく自分を理論派だと気取っている奴ほど感情を無視するが、そもそも人間から感情を排しようというのがまず非理論的なのだ。感情は乱数だから排除しよう、ではなく、その乱数を踏まえて数式を組むのが真に理論的な立ち回りであり、そうする事で真に効率よく物事を進める事ができる。

 

 異星生物との戦争もそうだ。兵士の感情を、恐怖を、怒りを無視していては、まともな戦略など組みようがない。政治将校の役割はそれを踏まえた上で、無視できない乱数となった者を始末する事ともいえる。

 

「感情を排する、って時点で、感情に呑まれてるともいえるからな、そういうの。正直ニーナのやり方は効率が悪かったと思う」

 

「うん。それは理解した。なので隊長の女になろうと思ったわけ」

 

「そこが分からん。理論が飛躍してないか?」

 

「してない。隊長は私より効率よく奴らを殺せる。隊長より良いやり方を私は思いつかない。つまり、隊長に従う事で、私は今よりずっとずっと効率よく奴らを殺せる。その為に、隊長のモノになるのは当然でしょう?」

 

「えっと……」

 

 少し冷や汗を感じる。思ってたよりニーナは大分、精神面で破綻していたらしい。いや、正しくは、想定以上に異星生物への復讐に取り憑かれていたらしい。

 

 彼女にとっては、自分の尊厳だとか感情だとかは完全に二の次なのだ。そういう気持ちが無いわけではないのだろうが、それを目的のために排してしまえる。そしてその目的とは、異星生物の際限ない殺戮。そのためなら、愛していない相手を愛する事もできてしまえる。

 

 もしかすると髪を整えてきたのも、女性らしさの発露とかじゃなくて、「隊長に言われた」からだったりするのだろうか。

 

 ちょっと思考回路が独特である。が、まったく理解できない訳でもない。

 

 物語に例えよう。家族を殺され、自らも凌辱された少女がいた。彼女は復讐を誓ったが、仇を殺すための技術も手段もない。そこへ凄腕の殺し屋と知り合ったので、彼に弟子入りしてその技術を教えてもらう代わりに、自分の躰を対価として差し出した。ニーナの考えは、概ねそういったものなのだろう。なんか色々とおかしいが。

 

「……いや、うん。言いたいことは分かった。わかったんだけど……それなら、俺を押し倒すのはおかしくない?」

 

「…………それは、その」

 

「何?」

 

「既成事実を先に作ろうと思って……」

 

 どうやら勢いが先行しすぎていたというのが実態らしい。冷静に問い詰められて、自分のやってる事の滅茶苦茶ぶりを把握したのか、言葉は尻すぼみに小さくなる。あくまで彼女の中で優先度が高くないだけで、喜怒哀楽はちゃんとあるのね、とアレックスは少し安堵した。

 

「いやさ。少なくとも俺は隊を率いている間は今までどおりにやるし、ニーナは今まで通り指示に従っていればいいよ。別に、そんな躰を差し出すみたいな事しなくてもさ」

 

「それではダメ。足りない」

 

「足りない……? 俺の事が信用できないか?」

 

「信用している。だから足りない」

 

 ニーナの碧眼が迷いなくまっすぐ見つめ返してくる。情動の薄い、曇りガラスのような瞳。

 

「ただの隊員ではダメ。それでは、隊長が死んだら私はきっと元のやり方に戻ってしまう。それではダメ。隊長が死んでも、隊長のやり方で殺し続けなければならない。その為に、貴方に抱かれたい」

 

「……それは。ちょっと、どうかと思うよ」

 

 流石にそれはちょっと引く。愛という感情で自分を縛るために、誰かを愛するなんて。目的と手段が逆転している。政略結婚だって、そこまで人間性を蔑ろにしてない。隊長いいなと思った、なんていうから、ちょっと恋っぽい話を期待してたのだが斜め上だ。

 

 色々と勘違いしていた。

 

 このニーナ・テレジアという女は、おそらく、とてつもなく情が深いのだろう。その情のあまりの深さ故に、仲間を鏖にされた事を忘れられず、彼らのために復讐を誓った事を絶対とし、それを貫くために誰かを愛して背負うモノを増やそうとしている。その重みが無ければ、自分自身を定めておけないのだ。

 

 生き方があまりにも不器用すぎる。アレックスも上手いほうではないが、これには流石に勝てはしない。

 

「……隊長に、良く思われないのはわかってる。それでも……」

 

「いや……わかったよ。君の考えは君の物だ、否定はしない。わかった、わかった。ニーナの望むようにするよ。それで、どう扱ってほしい?」

 

「別に、望むとかはない。私が隊長に勝手に尽くすだけ」

 

「そうか。じゃあ、今からニーナは俺に絶対服従する、って事でいいのかい? そういう扱いが望み?」

 

「トンチみたいな事を言い出さないなら」

 

「わかった。……じゃあ、最初の命令をする。服を脱いで、そこに立て」

 

「はい。……わかりました」

 

 正直、あんまり気乗りはしない。ミリシアやイオリはなんだかんだで、お互いに情の交換があって、愛がある。だがニーナが望むのはそんな感情の交感ではなくて、自分自身を縛る建前だ。

 

 アレックスの趣味じゃない。

 

 趣味じゃない、が。嫌いではない。

 

 ニーナが、あくまでアレックスという存在を自分のために利用するつもりで、その対価を払っているだけのつもりならそれで結構。その考えが甘いという事を、文字通り躰に教え込んでやるだけだ。

 

「はい。……脱ぎました」

 

 ベッドの横に立つ、金髪の美女。下着も完全に脱ぎ捨てて、完全な裸でベッドの脇に立っている。処理の甘い恥毛も露になっていて、流石に羞恥を覚えるのかその顔は普段に比べればほんの少し赤く、無表情も保てていない。それでも命令に従って局部を隠すような事はせず、手を後ろで組んで佇んでいる。

 

 そんな彼女を、無言で観察するアレックス。

 

 じっと、モデル体形の彼女の躰を観察する。胸は大きく、腰は括れていて、お尻は大きくてやや安産体形。肌も戦場暮らしの割には肌理が細かく、目立つ戦傷もない。本人にあまり手入れにこだわる様子はないから、これは天然の素質だろう。色々化粧品をつかって気を使っているミリシアあたりが目の当たりにしたら憤怒するに違いない。

 

 ちなみに、アレックスは女性のスタイルは全体の調和が大事という考えだ。変に胸だけ大きいよりも、小ぶりでも全体のシルエットが整っている方が好みである。どちらかというと、小さいほうが好きまである。

 

 それでもニーナは大きい方で全体の調和がとれていて、やはり目を引かれざるを得ない。もしグラビア写真のモデルなどになれば、多くの兵士のロッカーに写真が飾られていた事だろう。そんな彼女が羞恥を隠せずに、しかし言われたままに裸をさらして立っているというのは、なんだか背徳感に似た優越感がある。

 

「た、隊長……その……」

 

「ん?」

 

「さっきからずっと……見てるだけ……」

 

「そうだが。何だ、絶対服従を言い出したのはニーナだろう? 黙っていう事をききなさい。それとも、話は全部なかった事にするか?」

 

「そ、それは嫌。……わかりました……」

 

 顔を背けて、大人しく立ち続けるニーナ。だけどその肌はほんのり火照り赤みが差し、汗でしっとりとした質感を帯びる。

 

 アレックスはそのまま手を出さず、しかし彼女の躰を品定めするように見て回った。うなじや鎖骨、胸や秘所、手や足の指先まで、時に顔を近づけてじっくりと見る。ぷっくりと立ち上がってきた乳首をじっと観察されて、ニーナが小さく震えた。

 

「そういえば、ニーナ。中古とか言っていたが、経験はあるのか?」

 

「……男性経験は、ないです。処女は、検査の時に……」

 

「異星生物の捕虜になっていたんだったな。しかし、検疫官には相当乱雑に扱われたみたいだな、その様子だと」

 

「それは……はい」

 

「恋人もいなかったのか。じゃあ、こうしてニーナの裸をじっくり見る事のできた人間は、俺が初めてって事かな」

 

「そ……そうなり、ます……」

 

「どんな気分?」

 

「え?」

 

 虚をつかれたニーナの様子に、噛んで含めるように言い聞かせる。

 

「自分から男の部屋に押しかけて、こうして言われるがままに裸で立ったまま、その様をじっくりと鑑賞されるのは、どんな気分?」

 

「え……あ……」

 

 きょろきょろとニーナの視線が泳ぐ。自分の立っている状況を、客観的に説明されて俄かに羞恥心を刺激されたらしい。

 

 もともと、感情が無い訳ではないのだ。でなければ復讐にのめりこんだりはしない。

 

 だいたい読めてきた。要は、ニーナは男女関係のあれそれを、甘く見ているのだ。自分の煮えたぎる復讐心が、そういった要素で冷えるはずがないと思っているから、こんな軽率な真似に出る。

 

 確かに、たかが男女関係、たかがセックスだ。肉体のごく一部を触れ合わせるだけの、ただそれだけの行為。

 

 それだけの事に、過去、偉人でさえも道を踏み外してきたという事実を、この女にしっかり教育してやる機会を得て、アレックスは実に乗り気だった。

 

「ニーナ。命令に逆らうのか?」

 

「う……。は、はい。……その。恥ずかしいです……」

 

「どうして恥ずかしい? 別にそういうの、気にしてないんじゃなかったのか」

 

「そう思ってたけど……まじまじ見られると、その……。クズノハさんやヴァディスさんと、比較されてるようで……」

 

「なんで比較されると恥ずかしいんだ?」

 

「だ、だって、あの二人みたいに、可愛くないし、私……」

 

「なんだ、結局口だけで、そういうの気にしてるんじゃないか。別に、比較するものでもないだろう。あの二人と、ニーナは方向性が違う。胸も大きいし、腰も括れてるし、エッチな体つきをしてる。もうちょっと肌の手入れに気を使ったら化けるだろうな。そうなったら軍の男どもが放っておかないだろう」

 

「そ、そういう事、言われても困る……。えっちな体つき、って、褒めてるのそれ……?」

 

「勿論、褒めてるとも。自分から恋人でもない男のベッドにもぐりこんでくるようなエッチな女の子には、ちょうどいい評価だと思うけど?」

 

「た、隊長……もしかして怒ってる?」

 

「いや、別に。ただの事実を指摘しただけだよ」

 

「うう……」

 

 少し涙目で目を逸らすニーナ。本当なら逃げ出したいぐらい恥ずかしいのだろうが、服従するといった手前、そうはしない。まあそもそも、素っ裸で逃げ出す事はできまい。普段の彼女ならそれも平然とやってしまうかもしれないが、羞恥心をチクチクした今の彼女には、裸を他人に見せる事は”恥ずかしい”事だと再認識されてしまっている。

 

 言葉責めをしながら、ニーナの反応をつぶさに観察する。小陰核がぷくりと起き上がっているのを見て、アレックスは意地悪くほくそ笑んだ。

 

「クリトリスが大きくなってきてるね。……ずいぶんと大きい。自慰はけっこうする方かな?」

 

「それも……言わないと、ダメ?」

 

「勿論」

 

「うう……。……それなりに、します……」

 

「へえ。どのぐらい? どうやるのがお気に入り?」

 

「10日に、一度ぐらい……相部屋の人がいない時に……」

 

「……本当は?」

 

「………み、三日に、一度……」

 

 羞恥で顔を真っ赤にしながら、ぷるぷると震えるニーナ。しかし、この状況を望んだのは彼女自身なので、ギリギリまで追い詰める事に躊躇いはない。

 

「へえ。どんな風にいつもするの」

 

「…………」

 

「ニーナ?」

 

「っ。む、胸を触りながら、クリトリスを、いじります……。中は痛かったりすると嫌だから、入口だけ……触る……。胸は、乳首より、その周りをさわります……っ」

 

「ふぅん。誰の顔を考えながらするのかな」

 

「そ、そういうのはなくって。欲求不満の解消が一番だから、その。でも最近は……」

 

「最近は?」

 

「た、たた、隊長の、顔を……」

 

「そう」

 

 とりあえず、このぐらいにしておこう。これ以上つつきまわすと、泣き出してしまいそうだ。あくまでそういう責めなので、ニーナを本気で悲しませるつもりはない。

 

 それに下準備としてはもう十分だろう。

 

 アレックスは膝をついて、無言のまま手を伸ばす。その指先が、あきらかに秘所に触れようとしているのを見ながら、ニーナは逃げずにその場に佇んでいる。

 

 それは動くな、と命令されているからか。それとも、彼女自身期待していたからか。

 

 指先が触れると、くちゅり、という粘ついた感触。あつぼったく膨らんで緩んでいる女陰を、輪郭を確かめるように指先ですっとなぞる。指を引くと、愛液が透明な糸を引いて、切れた。ニーナに見せつけるように、粘液にまみれた指先を泡立てるようにこすり合わせる。

 

「っ……う……」

 

「凄い興奮してるね。言葉で虐められて感じちゃった……」

 

「わ、わからないです、わからない……」

 

「そう。……ニーナ、もう一度命令しておくけど、その体勢を崩さないように。いいかい?」

 

「わ、わかりました……」

 

 内心、次に何をされるかわかっているのだろう。僅かな怯えと、多大な期待を秘めた複雑な表情で、こくりと幼げに頷く。

 

 それを確認して、閉じたままの女陰に、ずぷずぷと指を沈めていく。

 

「ん、あっ。はいって、くるぅっ。あ、ああっ」

 

 ほとんど使っていないのは事実らしく、入口はきつく閉じていて、指一本でもちょっときつい。愛液がなければ痛みが強かったかもしれない。とりあえず、指の第二関節半ばまで潜り込ませて、そこで動きを止めた。

 

「ん、んん……」

 

「痛みはないか?」

 

「痛くはない、けど。変な感じ……。自分じゃないのが、自分の中にある……。これ、親指? それとも人差し指?」

 

「まだ指一本も入ってないぞ。中指の第一関節と少し」

 

「う、うそだぁ。絶対指元まで入ってるよぉ」

 

「うそじゃないぞ。もう少し、動かすからな」

 

「ん、あっ。んんっ」

 

 ニーナが悩まし気な呻きを上げるのを聞きながら、少しずつ、指を上下させて奥へと入っていく。とにかく痛みを感じさせないのが大事だ。解すように、無理のない形で指を彼女の秘所に馴染ませていく。ミリシアもイオリも、性交自体には慣れた様子だったが、ニーナは本当に生娘とそう変わらない感じだ。いや、言うほど多くの女を抱いた経験がある訳ではないが。

 

「よーし、少しずつ解れてきたぞ。まだ立っていられるか?」

 

「ん、あ。な、なんとか……です」

 

「よし。少しずつ広げていくからな……」

 

「そんな、これ以上……ひぃんっ! あっ、あひぃっ」

 

 一度浅い位置まで指を引き抜き、人差し指も加えて再び潜り込む。少しずつ指の味を覚えつつ秘所をゆっくりとかき回すように馴染ませていく。そう、例えば一度貼ってしまったシールを傷つけずに剥がすような感じだ。何度も短い往復を重ねて、彼女の膣を解していく。

 

「あっ、あっあ、何、これ、変な感じ、あっ」

 

「息は止めるなよ。ゆっくり吸って吐くんだ」

 

「だって、あっ、これ、体が勝手にびくって、んんぅ!」

 

 泣き言をいうニーナだったが、体の方は順調に馴染んできた。愛液の量が勢いを増し、ぽたぽたと床に垂れた。

 

 そろそろ次のステップにいく頃合いだろう。解れてきた膣の中で、指を広げて掻きまわすように動かした。まだ硬さの残る肉だが、愛液の量は十分。

 

「あひぃあ?!」

 

 びくんとニーナの躰が跳ねて、腰砕けになって倒れこみそうになるのをとっさに支える。

 

「おっと、危ない。……こら、ニーナ。立っていろといっただろう?」

 

「だ、だって……」

 

「まあいいか。この体勢の方がやりやすいといえば、やりやすいし……な」

 

「あっ!? ああっ、あっ!」

 

 ニーナの体を支えてやりながら、段々と指の動きを激しくして行く。本数も二本から三本へ。痛みを与えないよう慎重に、しかし大胆に彼女の中を弄り、快感を得られるポイントを探り出していく。ニーナはもう姿勢を立て直すどころではなく、必死にアレックスにしがみつきながら金髪を振り乱し与えらえる快楽に悶えている。つうっと悦びの涙が頬を伝った。

 

 そうこうするうちに、大分ニーナの感じるポイントが分かってきた。クリトリスをいじるのが好きだといっていたが、その関係だろうか、その根元……いわゆるGスポットと呼ばれる場所が特に感じるようだ。Gスポットはいわゆるクリトリスの根の裏側の部分だ。他とは少し手ごたえが違う、どこかコリコリとした感触の襞を指の腹で解すように刺激してやると、ニーナの腰が強く震えた。

 

「あひぃっ! あっ! ああっ! あーっ!」

 

「なるほど、ここが好きなんだな、ニーナ。……しかし随分と良いみたいだね。普通、膣内で感じるのはそれなりに経験がいるんだが。エッチなのは体つきだけじゃなかったんだな」

 

「ひ、ひどいっ、あっ、そんな事、言わないで……んっ! あっ!」

 

 わざと酷い言葉を投げかけると、涙目で悶えながら目を逸らすニーナ。それでもその手は溺れる者のようにアレックスにしがみついたままで、腰は押し付けるようにアレックスの手の中で弄ばれるがままだ。

 

「そう? でも自分でもわかってきたんじゃないか、そろそろ」

 

「何が……?」

 

「自分の性癖。ニーナはただ気持ちよい事をされるだけじゃなくて、少し酷い事をされた方がもっと感じるんだよ。いや、少し違うかな……自分がエッチで淫らな事をしているって自覚があった方が、気持ちよくなれるタイプだな」

 

「そ、そんな、事……ない……」

 

「嘘だね。だって愛液、凄い事になってるよ? わかるだろう?」

 

 言って、指で掻きまわす。愛液の量は先ほどよりも濃く、多く、激しく掻きまわされたそれは白く泡だっている。いわゆる本気汁だ。本番の経験がない女の躰がここまで感じているのは、よほどそういう才能がないと難しい。

 

 自覚はあったのだろう。羞恥と興奮に、ニーナの顔がますます赤く染まる。

 

「マゾヒスティック、ってレベルじゃないけど。意地悪されたほうが気持ちいいんだね、ニーナ」

 

「あ、ああ……。違う、違うの……」

 

「何が違うんだい、ニーナ」

 

「だって、こんなの変態みたい……」

 

 言って、惨めそうに顔を逸らす。アレックスの肩に顔をうずめる彼女に、一旦手を止めて勘違いを訂正してやる。

 

「変態、ってのは筋違いかな。性癖なんて人それぞれだよ。普通に快楽にのめり込むのがあっている人もいるし、逆に相手に奉仕する事に快楽を見出す人もいる。肉体的にはただ痛いだけの行為に、精神的な悦びを見出す人もいる。何に悦びを見出すかに、普通の基準なんてないよ」

 

「そ、そう……なの?」

 

「そうだとも。ニーナは気持ちいいのが好きで、ちょっと酷くされるのも好き。それをまずは受け入れるんだ。そしたらもっと深い所まで感じられるようになる」

 

「……? 深い、ところ?」

 

「そうさ。まさかニーナは、これぐらいでセックスの深みを知ったつもりになってる? こんなの全然まだ序の口だよ。本番の入口にも立ってない」

 

「う、嘘だぁ」

 

 肩から顔を上げて、ニーナが言い返してくる。その顔には惨めな気持ちはもう残っていないが、同時に猜疑の色が濃い。逆に言えば、この段階で十分感じてくれているという事だが……。

 

「こ、これ以上とか、頭がおかしくなるに決まってる……」

 

「だから、頭がおかしくなっちゃうのさ。人によっては人生観すら変わっちゃう事もある。まあ、逆にこんなもんかと見切りをつける人もいるけどね。さっきもいったけど人それぞれなんだよ。……ニーナには、もっと深く感じる才能があるのは保障するよ。それを今から教えてあげる」

 

「んあっ、あっ! ゆび、また動いて……あぁっ!? ひぃっっ!? まって、クリトリス、同時はダメっ」

 

 膣の中を弄るのに加えて、親指でクリトリスを刺激する。普段からいじっているからだろう。充血したクリトリスは袋から顔をだして、ぷっくりと自己主張していた。親指で直接触れても痛みは感じていないようで、ニーナの声が高く響く。

 

 Gスポットと合わせて、陰核を裏表から責めているようなものだ。声で彼女の絶頂が近づいてきているのが分かる。

 

「……じゃあ、一度、逝こうか」

 

「あっ! まって、まってたいちょ、ああっ! やだ、怖い! 怖いの! ああっ!」

 

「それがエクスタシーだよ。高まった時に、イク、って口にするんだ。いいね」

 

「まって、無理、そんな、あっ! 無理……んあっ! あっ! あああっ! だ、ダメ、イクッ!!」

 

 ビクン、とニーナの全身が硬直し、腰が跳ねる。痛いほど力を込めてしがみついてくる彼女の体を抱き寄せながら、限界まで締め上げられた膣内で、ゆっくりと指を動かして絶頂をゆるゆると後押しする。

 

 4、5秒ほどそのまま石のように硬直が続いて、やがて脱力した。ぐったりと倒れ込む彼女の体を支えながら、腕の中に抱き留めて寝かせる。

 

 ニーナの目は虚ろだ。普段から焦点のあってない感じのぼんやりとした目つきの彼女だが、今は少し意味合いが違う。

 

「ニーナ。大丈夫かい?」

 

「……あ。隊長……」

 

「どうだった? 人に逝かされるのは」

 

「……すごかった、です……。ひとりと、ぜんぜん、ちがう……」

 

「どう違った?」

 

「その……ふかくて、おもくて……。もう限界なのに、全然、手をゆるめてくれなくて……。崖の上から、突き落とされるみたいだった……」

 

 ぶるり、とニーナは体を震わせた。

 

「怖い?」

 

「正直言うと……凄く……。苦しいとか、つらいとかじゃないんだけど……ああ、だめ。おかしくなる、こんなの……。なんで? ヴァディスさんも、クズノハさんも、これを知ってるの? なんで……まともでいられるの……?」

 

 どうやら初めての他人に導かれた絶頂は、ニーナの人生観に疑問符を投げかけるほどのものだったらしい。そこまで感じてくれるのなら男冥利に尽きるが、しかし、アレックスの方は全く満足していない。ズボンの中で痛いほど怒張した逸物の位置を調整しながら、アレックスはしばしこの後を考える。

 

 ミリシアやイオリなら、ここまでだ。これ以上続けると、彼女たちが持たない。

 

 だがニーナは。ニーナは彼女たちと違って、アレックスへの服従そのものが目的だ。あくまで背水の陣、既成事実で自分を縛り、戦い続けるための理由(言い訳)を求めて。

 

 だったら。別に、遠慮する必要はないのでは?

 

 すっかり脱力しているニーナを抱き上げて、ベッドに向かう。え? と目を白黒させている彼女を横たえて、自分自身も手早く服を脱ぎ捨てる。ベルトを緩めた途端、限界まで張り詰めた逸物が床に対して垂直に近い角度でまろびでる。

 

 それを目の当たりにしたニーナが、疑問符を頭に浮かべているのがありありとわかる顔で硬直。ややあってそれが何か理解したのか、泡を食ったように彼女はベッドの上で後退し、壁にぶちあたって動きを止めた。

 

「た、た、隊長、そそそ、それって……」

 

「いや、ニーナだけ気持ちよくなって終わり、は酷いだろ。きちんと最後までつきあってくれよ」

 

「そ、それは、やぶさかじゃない、けど。え? それ? 嘘? え?」

 

 そそり立つアレックスの逸物と、自分自身のお腹とをニーナの目がひっきりなしにいったりきたりする。まあ、大体そういう反応になるよなあ、とアレックスも思う。

 

 いや、もともとはここまでじゃなかった。軍で支給されているサプリメントに精力剤でも入っているのか、軍での生活が続くうちにどんどん逞しくなっていった。多分、常識的な女性の体だと受け入れるのは相当な負担になるとは思う。

 

「ま、まって、そんなの入ってきたら、お腹破れる……死んじゃう……」

 

「ミリシアもイオリも生きてるから大丈夫」

 

「そ、それはそうでしょうけどぉ……」

 

「別に無理に奥までねじ込んだりはしないから。ほら、絶対服従、なんでしょう?」

 

「…………うう……」

 

 心の底から言うんじゃなかった、という感じの顔をしながらも、律儀にアレックスに従ってベッドの上で股を広げるニーナ。足の間に体を割り入れ、逸物をぐっと手で押さえて女陰の入口に宛がう。ビキビキに充血した亀頭を近づけると、まるで歓迎するように女陰の花弁が柔らかく開いた。その奥から、白濁した愛液がどろりと涎のように垂れる。

 

 なんだ、体の方は歓迎してるじゃないか、とアレックスは舌なめずりをした。

 

「じゃあ、入れるよ」

 

「いや、まって、嫌じゃないんだけど心の準備が。数秒ください。まって」

 

「ダメ」

 

 この期に及んで見苦しい抵抗を続けるニーナを抑えつけながら、ぐっ、と腰を前に押し込んだ。狭く小さな、しかしどろりとした愛液で潤ったニーナの膣口を、怒張の切っ先がぐぷりと越えた。

 

「あっ」

 

 小さい悲鳴を上げて、ニーナがのけぞった。

 

 よく解したとはいえ、思っていたよりも抵抗は弱かった。最初の抵抗を越えた後は、スムーズに半ばまで挿入が進む。

 

 勿論、それはアレックス視点での話だ。ニーナからすれば、自分の胎内に太く長い物が押し入ってくる異物感は筆舌に尽くしがたいものだろう。いくら入念に下準備をしたといっても、本物の男を知らない膣には辛いはずだ。

 

 アレックスは奥まで入れずに、そこで動きを止めた。むずむずするのを我慢して、ニーナに極力優しく声をかける。

 

「ニーナ、大丈夫?」

 

「は、はひ……」

 

 全然大丈夫そうに見えない。少しでも動いたら腹の中を突き破られるとでも思っているのか、全身をガチガチに硬直させたままぴくりとも動かない。玉のような汗が全身に噴き出るほど力を入れて緊張しており、それにつられてか膣の方の具合もきゅう、と緊張気味になってきた。最初の衝撃で茫然としているうちに奥まで入れておくべきだったかもしれない。

 

 今回は途中で動きを止めたほうが不味かったかもしれない。難しいなあ、とアレックスは自問した。

 

「んー。中、痛くないか? しばらく動きを止めようか」

 

「あ、ありがとうございます……。い、痛くは……ちょっと痛いかも……」

 

「ヒリヒリする?」

 

 アレックスの問いかけに、幼子のようにコクコク頷くニーナ。よほど余裕が無いらしい。とはいえそこまで痛い訳ではなく、自分の胎内に逸物が収まっている事への違和感が大半だろう。こういう時、見た目や実物のそれよりも、大きく感じてしまうものだ。いや、男であるアレックスは当然経験はないが、過去の戦傷で、処置してでてきた破片とかはだいたいイメージより小さかった、という話だ。

 

「処女じゃないのに……痛い……。なんで……?」

 

「あー。処女膜は確かに痛いらしいけど、それよりも未使用の膣の擦過傷の方が、痛みの原因らしいね。聞いた話だと」

 

「そうなの……?」

 

「いくら入るようにできているとはいえ、小さな穴にそれより太い物を押し入れるんだから、それはある程度痛いんじゃないかな……。ごめんね。大丈夫? どうにも俺のは大きいらしいからな……あんまり痛いなら中止にするか?」

 

 フルフルフル、とニーナは首を横にふる。

 

「だ、大丈夫……。そんな、中止にするほどじゃ、ない。ちょっとじんじん、するだけ……」

 

「そっか」

 

「……その。もし中止にしたら、どうするの?」

 

「ん?」

 

「あ、いや、やめてほしい訳じゃなくって、単なる好奇心というか……」

 

 身動き取れないまま器用に慌てるニーナ。とにかく絶対に逸物を動かしたくないらしい。そんな彼女のどこかおかしな質問に、アレックスはわざとらしく顎に手を当てて考えるふりをした。

 

「んー。そうだなぁ……。少しずつ拡張して慣らす、のが一番かな」

 

「な、慣らす……?」

 

「そう、慣らす。さっきは初めてだし奥まで指をいれなかったけど、一度受け入れたんだしもう遠慮はいいからね。奥の届くところまで潜り込ませて、何度も何度も刺激して広げていこうか。ついでに膣の性感帯も刺激して、中で感じるように訓練もしようか」

 

「ま、まって。え、さっきの手加減してたの??」

 

「そりゃあ、勿論。本番に入る前にニーナがグロッキーになったら駄目だからね。でも本番を無しであくまで慣らすっていうなら、もっと深く刺激するよ。道具を使うのもありかもね。俺のは平均より大分大きいから、一般的なサイズのバイブか何かで挿入に慣れるのはどうかな」

 

「ど、どうかって、言われても……???」

 

 想像もつかないのか、ニーナは混乱に目を白黒させている。本人は擦れているつもりだったのだろうが、知識も経験もまるで足りていない。無垢な少女にイケナイ悪戯を教え込んでいるような気分になって、アレックスは正直、滅茶苦茶この状況を楽しんでいた。

 

「大丈夫、さっきの感じだと慣らすのにそんな時間はかからないと思うよ。すぐに指だけで3~4回は逝けるようになる、いや、する」

 

「いや、その。そんな事、断言されても……」

 

「イメージがわかない? さっき、指で逝ったけど、あんなの序の口だからね。どろどろに泡だった愛液をぐちゃぐちゃ掻きまわして、膣の中のニーナが感じるポイントを何か所か探り当てて、それで順番に逝けるようにしてあげようか。それぐらいになったら、俺のを迎え入れた瞬間に逝けるかもね。痛みとか圧迫感とか、感じる前に理性を吹っ飛ばしてあげる」

 

「……っ!!」

 

 淫らな可能性未来図を、嫌らしくニーナに語りかける。その様子をありありと想像したのだろう、赤く紅潮していたニーナの躰が、びくん、と小さく跳ねた。きゅう、と膣が柔らかく絞られる。

 

「もしかして。想像だけで、軽く達した?」

 

「うぅ……っ。たいちょうの、いぢわる……っ」

 

 舌足らずな口調で、アレックスをなじるニーナ。だが口調とは裏腹に、内心、その想像に興奮し、期待しているのはあからさまだった。

 

 ぞくり、とアレックスの腹にサディスティックな熱が灯る。

 

 成されるがままの腰を掴み、残りの空隙を一息に埋める。

 

「ひぁあああっ!?」

 

 ニーナが悲鳴を上げるが、そこに苦痛の色は薄い。それを見て取って、そのまま膣壁を擦るように休む事なく往復運動に入る。最奥はあまり触れないようにする。個人差があるし、感じる素養があっても最初は痛いだけだ。

 

 行き来する速度も、早すぎず遅すぎず。感覚をできるだけ、しっかり掘り起こすように一突き一突きに気を遣う。慣れたミリシアあたりだと、多少物足りなさを感じる程度。

 

 しかしニーナにはそれでも翻弄されるには十分なようで。刺激から逃げたいのか、もっと深い刺激が欲しいのかどっちつかずに腰を捩らせながら、ベッドシーツをしわくちゃにしながら声を上げて悶えている。

 

 そして再びの絶頂。歯を食いしばり、シーツにしがみついて余韻をやりすごす彼女の姿を観察しながら、アレックスはしばし動きを止めて観察した。

 

 交合部を見れば、泡立つほどの本気汁にほんのり赤い色がまじってピンク色になっている。まあ、ほとんど経験が無い状態で男を受け入れれば、多少の擦過傷はやむを得ない。

 

 しかし、経験が無いにしては感じすぎている。それなりに自慰慣れしていたとしても、いまいち説明がつかない。

 

 となると、肉体的なそれではなく、精神的な悦びによるものだろうか。先ほどまでの言葉責めへの反応を顧みて、アレックスは少し乱暴に責める事にした。

 

 息を荒くして絶頂の余韻を逃がすのに意識を向けていたニーナに、上から押しつぶすように体重を乗せる。そのまま彼女に覆いかぶさるようにして、力なく投げ出されていた両手の手首をがっちりと固定した。戸惑ったように目を白黒させてニーナが見返してくる。その瞳には困惑、恐怖、そして僅かな期待が確実に存在しているのをアレックスは見て取った。

 

「た、隊長……? な、何……?」

 

「そろそろ本番にしようかな、って。ニーナもそっちのほうがいいみたいだし、ねっ!」

 

「ひぃあ!?」

 

 ずん、と奥まで一息でつきいれ、そのままの勢いでカリ首まで引き抜く。間合いはもう覚えた、ニーナの奥ギリギリ触れないぐらいと、抜けてしまう一歩手前を、ずんずんと往復する。さっきから我慢させられていた逸物は不満げに反り返り、ニーナの胎を裏側からごりごりと磨り潰す。強すぎる刺激にニーナの躰が逃げようと暴れるが、手首をしっかり抑え込まれ、体重をかけて上から押しつぶされている彼女の躰は逃げる事ができない。

 

 勢いだけならレイプのような交合(勿論、アレックスはニーナに必要以上の負担をかけないように細心の注意を払ってはいる)。それなのに、すがりつくようにニーナの足が腰にからみついてくる。無意識で行われたその動きが、ニーナの本音だった。

 

 泣き悶えるニーナの耳元に、ささやくように語り掛ける。

 

「こんなレイプまがいのセックスでこんなに感じちゃうんだ?」

 

「ち、ちが、あっ! ああっ! ちがうのっ! わ、わた、あっ、そんなつもり……んぃぃいっ!」

 

「違わないだろ? ニーナは本当は、男に組みしだかれて滅茶苦茶にされたかったんだろ? こんな風にさ」

 

「ほんとに、ちがっ、あっ! だめ、また来る、きちゃう! ああああっ! ああーーーっ!!」

 

 ぎゅうう、とニーナの中が絶頂に締まる。

 

 休憩のために一旦、動きを止める。だが、口での責めは続けていく。

 

 なるほど、言葉は休憩中でも関係ないな、とアレックスは新しい知啓を得た気分だった。

 

「違う? ニーナの体はそうはいってないけど?」

 

「ああ……。そんな違う……ちがうのぉ……。だって、そんな……ああ……」

 

 口でいくら否定しても、これだけ絶頂を重ねれば言い訳にも力が無い。息も絶え絶えにアレックスの下で悶えるニーナの目からは、困惑の色より納得の方が強くなってきているようだった。

 

「……じゃあさ、ニーナ。こうするのはどう? この場でだけ、その“仮定”を受け入れるのは」

 

「このばで、だけ?」

 

「そう。ごっこ悪戯みたいなものさ。今この場でだけ、ニーナが乱暴に抱かれるのが大好きなマゾ娘だ、って設定にするのさ。あくまで、仮にね?」

 

「……それは。仮に、なら……」

 

 ニーナに露骨に妥協の色が見えて内心ほくそ笑む。言うまでもなく詐欺師の類の手口である。が、助け舟でもあるのは本当だ。あくまで例え、仮に、という話なら、ニーナも自分の性癖を受け入れやすいだろう。

 

 しかしさっきからこの一連のやりとりをしている間も、ニーナの秘所はアレックスの逸物を銜え込んだままだ。そのあたりを意識すると、こう、淫らな事をしているなあっていう自覚が沸いてくる。

 

「わ、わかった……あくまでこの場限り、なら……」

 

「うん、ありがとう。じゃあ、ニーナの思う言葉で、宣誓してくれる?」

 

「え……」

 

 アレックスの“命令”に、碧眼を泳がせてニーナが狼狽える。が、すぐに今の自分の立場を思い直して、つっかえつっかえ、彼女の思う言葉で淫蕩な誓いを紡いだ。

 

「わ、私、ニーナ・テジレアは……隊長に強引にされるのが好きな、淫乱な雌です……。お、お願い、ですから。今晩だけでも、無茶苦茶に、して、ください……」

 

 ぐぐぐ、とニーナの胎の奥で、アレックスの逸物が大きく反った。

 

 それを、衝動のままに彼女の奥へと叩き込む。

 

 もう、手加減とか、痛くないように、とか、そういう自制は吹き飛んでいた。とにかく、獣じみた性欲を発散するための道具として、ニーナの躰を使い倒す。

 

 たちまち上がる悲鳴。苦痛を訴えるその言葉は、しかし、隠しきれないほどの悦びにも満ちていた。

 

「あ゛っ! あぃあっ!! はげし、いっ、あぁっ! 奥、ごんごんっって! ああっ! ああぁっ! ああーーーっ! ひっ! ああぁーーーーっ!」

 

 ベッドの上で躰をよじらせて悶えながら、両足がしがみついてくる。

 

 レイプと見まがうような乱暴な交合、しかしニーナの様子は喜悦を覚えているようにしか見えず、十中八九、見る者がいれば彼女を倒錯者だと認識するだろう。

 

 アレックスとしてもこういうタイプを躾けるのは初めての事だ。情愛故に従順だったミリシアやイオリと違い、ニーナは間違いなく服従する事、乱暴に扱われる事に悦びを見出している。性に慣れていたミリシアでも、アレックスの本気を受け止めきれなかった事を考えると、ニーナのそれは天性の淫蕩さと言えよう。

 

 ある意味では、加減を見誤らないようにアレックスが気を付けなければならない。いくらなんでも、限界はある。その限界をニーナ本人でコントロールできず、叩きつけられる獣欲をいくらでも受け止めてしまうのなら、やりすぎて壊れてしまう事もあり得る。

 

「あっ! ひあっ! あぁんっ! あっ! んあ……っ!」

 

 様子を見るように、一度少しペースを落とす。安心したように、ニーナの喘ぎが安定を取り戻すが、そこに微かな物足りなさが残っている。

 

 再びペースを上げて、奥を少し控えめに突き上げる動きに切り替える。

 

「んぎぃっ! あっあっ、あっ! あ゛あっ! あぁーーっ!」

 

 のけぞるように悶えるニーナ。白い喉を無防備にさらしてのたうち、玉のような汗を散らす。声の響きには苦痛の色があるが、間違いなく官能は優しくやるよりも強く感じている。奥をつかれる事に痛みを感じているのは間違いないが、精神的な被虐の喜びがそれを上回っている感じだ。

 

 ただ、痛みは痛み、危険のシグナルである事は違いない。本人の素養がそれを悦びにできてしまっても、肉体的な損壊とはまた別の話だ。

 

 これは他の愛人たちとは違った意味で手がかかりそうだ、とアレックスは舌なめずりをした。ニーナ自身にも自分の性癖を理解させた上でコントロールできるように躾けないと破滅まっしぐらである。案外、異星生物への我が身を顧みない復讐も、こういった潜在的な彼女の性質が影響しているのかもしれない。

 

「あ゛ぁっ! んっ! んあぁっ、ぁあっ! ひっ、ああっ!」

 

 そうこうしている内に、アレックスの腰に熱がたまってきた。初物に近いニーナの膣はまだこなれておらず、アレックスに満足に奉仕もできていなかったが、乱暴に侵されて悦ぶ相手、というシチュエーションは精神的に満足を得るには十分な刺激だった。

 

「そろそろ出すぞ……。それまでイクのは我慢するんだ、我慢」

 

「無理ぃっ! ああっ! 無理、ですっ! こんなの、耐えられないぃぃ……っ!」

 

「そう? 俺の命令を無視するのかい?」

 

「ひぅっ! あっ! そ、そんな、ヒドイ……っ! あっ、んあぁっ!」

 

「そのひどいのが好きなくせによく言うよ、ほらっ」

 

「んぎぃぃいいああっ! あっ!」

 

 パンパンパン、とペースを上げる。自分だけが達する事を考えた乱暴な動きだったが、ニーナはとっくにそれどころではない状態。口では無理だなんだと言いながら、命令に従うために歯を食いしばり、髪を振り乱して達するのを必死にこらえている。力が入るあまり、彼女の手首を抑えているアレックスの指が振りほどかれそうになった。

 

「っ!」

 

 これ以上は痣になる。アレックスはそう判断するとニーナの手首を解放し、空いた両手でニーナの腰を抱えて、どちゅどちゅと膣奥へと叩きつけるように腰を振る。栓が壊れたように愛液が噴き出し突き入れるのに問題はなかったが、無理な角度で膣壁を突き上げられたニーナは悶絶じみた声を漏らしてのけぞり返った。

 

「……っ、出るぞ、ほら、存分に逝けっ」

 

「っ! ~~~~~~~っ!!」

 

 ゴムも無しに、特濃の白濁液を女体の奥に好き放題に吐き出す。それを受けて、ニーナも達した。呼気も乱れ切りまともに息も吸えなかったせいか、もはや喘ぎ声すら出てこない。 全身で絶頂を体現する彼女の最奥に一通り吐き出し終えてから、アレックスは逸物を抜いた。一度ではまだ満足していない、まだ硬度の残るそれが膣に引っかかるたび、びくびくと微かに痙攣のようにニーナの躰が震える。

 

 引き抜くと同時に、ぶるん、と反り返る逸物。およそ平均男性のそれを上回るそれを受け入れていたニーナの膣は、乱暴に耕されてぽっかりと空いたまま、奥から複数の体液のいりまじったピンク色の混合液を垂らすがままだ。ミリシアやイオリと違って、経験のない膣を乱暴に使ったから、恐らく、時間がたって塞がっても、アレックス並みのそれを受け入れないと今後満足する事はできないだろう。

 

「ニーナ、大丈夫か? 生きてる?」

 

「…………」

 

 返事はない。念のため心拍と呼吸を確認するが、どちらも問題ない。処女膜が破れていたとはいえほぼ初めての相手に少し激しくしすぎたため、ニーナは完全に失神しているようだった。逆にいうと初めてでこれだけ感じる事ができるなら、次が非常に楽しみな逸材である。開発次第では、女の悦びの果てを教えてやる事もできるかもしれない。

 

「んー……」

 

 思ったより溜まっていたかもしれない、とアレックスは少し自分の考えに顔をしかめた。そういう素養があるとはいえ、ニーナはあくまで部下であり、兵士だ。専属愛人のように扱うのはよろしくない。

 

 なんども立て続けに死線をくぐったせいで、生殖本能が刺激されていたのかもしれない。今までは発散するアテがなかったのが、ミリシアやイオリ相手に定期的に発散できるようになって、タガが緩んでいたのか。

 

 ただ、一瞬でもやはり想像してしまう。

 

 ベッドにミリシアとイオリ、ニーナを並べて、順番に彼女らが果てるまで相手をする。回春剤のせいか精力剤のせいか、女性一人では抱き壊しかねない性欲も、三人相手にすれば事足りるだろう。

 

「いかんいかん、頭まで陰茎になってる……」

 

 ピンク色の妄想を頭をふって振り払い、気絶したままのニーナの後始末をする。彼女もピルは飲んでいるはずだが、それとは別にきちんと処理してあげないと不衛生だ。机からティッシュを持ってくると、アレックスは失神した彼女の秘所を拭いにかかった。

 

 

 

 

 

 

 なお、意識が戻ったあともニーナは酷使した股の痛みが引かず、そのまま半日ほど寝込む事になった。勿論何が原因かは明言しなかったが、言うまでもなくミリシアとイオリにはばっちり把握されたようで、二人からは「コノケダモノメ」といった感じの非難と嫉妬の視線を浴び、アレックスは盛大に冷や汗を背中に流す事になった。

 

 あとネルスは気が付かなかった模様。彼女が鈍いというより、経験の無い女を調子にのって立てなくなるほど責め立てたアレックスが普通じゃない、というのはこれまた言うまでもない話である。少なくともネルスの常識では、非常識すぎて候補にすら上がらなかったらしい。

 

 そして当のニーナは、機嫌は悪くないが超絶不機嫌、という矛盾したような状態が数日続き、彼女の機嫌を取るためにアレックスは配給チケットをかなり散財する事になった。

 

 

 

 

 

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