未来も希望もない戦場で必死に生き残ってたらモテモテになった件(ハーメルン版) 作:SIS
今はもうランキング更新で順位が落ちてしまいましたが、皆さんの応援をきっと忘れる事はないでしょう。
いい夢を見せていただきました。ありがとうございます。
その日、独立遊撃隊の女性メンバーは集まってミリシア・イオリの部屋で駄弁っていた。扱いが向上したとはいえ下士官に過ぎない彼女らに与えられた部屋は相部屋どまりで、そこに五人も詰めると聊か狭い。
とはいえ、食堂で堂々と猥談に励むわけにもいかなかったので、それはもう仕方ないと誰もが割り切っていた。
今回の参加者は、ミリシア・イオリ・ニーナ・ネルスに、最近加わったシルバもいる。小さなテーブルを取り囲み、思い思いにお茶請けに手を伸ばしながら会話を重ねる。
いつもは白湯か不味い代用コーヒーがお喋りの御供だが、シルバが参入したおかげで美味しいお茶菓子とお茶が供給されるようになったのは嬉しい誤算だろう。
しかしながら、最近の談話は開催される度に深刻さを増していた。
いや、傍から見ると、はいはい惚気乙、かもしれないが、しかし当の本人達は大真面目だった、というべきか。
「……という訳で、途中から記憶がありません」
そういって話を締めくくるのはイオリだ。昨晩の夜伽でどういう目にあったかを報告する彼女の話に、本日当番のニーナは頭を抱え、ネルスはごくりと唾を飲む。すでに当番を終えたミリシアは自分の時の事を思い返して頬を赤らめ、シルバは顔が真っ青だった。
「……端的に言うと。一対一だともう完璧に抱き潰されるね」
「さ、流石に、前はこれほどじゃなかったですよね……?」
「ええ、そりゃ間違いないわ」
ニーナとネルスの感想に、ミリシアも同意を示す。
「もともと絶倫のベッドマフィアだったけど、こっちが1~2回ぐらい飛ばされるぐらいにはあっちも出してたし、そもそもそこまで性交にがっついてなかったもの、あの人。性感開発とか躾けとか楽しんでたフシはあったけど」
「ん。そうね。だから一人では無理でも、二人ぐらいで相手すればちょうどバランスとれてた感じだった訳だし。今だと二人がかりでも潰されると思うわ……明らかに持久力とか増大してるし」
「これもそれもどこかの誰かさんが要らぬお世話したせいよね」
「うぐ」
どこかのだれかさんであるシルバが呻く。
彼女からすれば常識に従って手助けしたつもりだったのだが、現状大変な事になってるのは事実なので言い訳にもならない話である。
「多分だけど。精力増したから。性欲もマシマシになってる……?」
「そんな感じかしらね。隊長の方もムラムラしてる感じだったから」
「前はもうちょーっと紳士だったよね。今はなんかもうスイッチはいっちゃうとホントに容赦ないよ。マジで」
「はわわ……」
ミリシアとイオリが揃って口をそろえるのに、ネルスが顔を赤くして頬に手を当てる。とはいっても、恐怖や恐れよりも期待している感じではある。そもそもこのメンツの中で、喜んで後ろを開発されているド変態だ。
口ではなんだかんだいっても関係を断つつもりなぞ絶無のミリシアとイオリも合わせて、結局の所全員好き者、というだけの話だ。別に強制された関係ではないし、つらいと思ったら断ればいい。
ただ、シルバはちょっと事情が違うようだが。
猥談に顔を赤くするのではなく真っ青にしている生娘に、ミリシアがちょっと気の毒そうな視線を向ける。
「……大丈夫? やっぱやめとく?」
「い、いえ、いえ。え、英雄色を好むといいますし! 夜に強いのは、ね、願ってもないことです。あははは……」
「そう言うならそれでいいけど……」
到底大丈夫そうには見えないが個人の判断だ、これ以上外野が口を出す事でもないだろう。
ちなみに、アレックスを口説き落とすのは自分でやってね、とはいったが、既にアレックスにアプローチしようとするシルバの奇行は一日も経たずに隊内で噂になっている。
物陰からじっと見つめてたり、ものすごく不自然に声をかけては、結局何も言えずに退散を繰り返しているそうだ。そりゃ噂にもなる。当のアレックスは海兵隊の時と同じく、「もしかして嫌われてるのだろうか……」とへにょへにょになっていて可愛い事になっていた(あくまでミリシアの視点での話である)。
もともと生娘かつ経験もなかったネルスからすれば、相手が生娘なら生娘なりに対応してくれるはずだからそんなに心配する事ないのになー、と思ったが、多分ミリシアなりに序列を教え込んでいるんだろうな、と解釈して黙っておく。ついでにいえば、生娘相手だからと手を抜いてくれる事はなく、生娘でも色狂い一歩手前まで仕込んでくるというのは否定のできない事実ではある。思い返すと、まだ貫いて貰っていない女陰が疼いた。
「そういえば、今日、ニーナの番だけど、タイマンで大丈夫?」
「……申し訳ないんだけど、一昨日、昨日と私達、充分相手できずに撃沈されたから、多分隊長、普段よりずっと溜まってるよ。だいたい通常時でも2~3回戦するのに、精力増強状態で昨日は一回戦で終わってるから……」
「大丈夫。幸い私は二人より関係が短い。二人ほど躰を開発されてないから」
そう言って胸を張るニーナ。彼女なりに勝算?はあるらしい。
「つまり二人が熟れきってぐずぐずの熟した果実なら、私はまだ硬さの残る青い果実」
「もしかして喧嘩売られてる……??」
「滅相もない」
目を逸らしてふるふると首を振る。明らかにこちらをおちょくってる同僚の態度に額に青筋を浮かべながらも、ミリシアは大人の対応で受け流した。
なんせこっちの方が付き合いが長いのは事実なのだ。その絶対的優位は揺るぎようがない。そう。だから多少挑発されたぐらいで全然気にならない。処女を奪ってもらったとか、一から仕込んでもらえたとか、全然羨ましくもない。
そんな風にミリシアが精神防御に努めていると、別口から反撃が飛んだ。
「でもさ。普段、普通にテジレアさんも撃沈されてるよね。アドバンテージになる?」
「ぐぅ」
ルームメイトのネルスにぐっさりと背後から言葉のナイフで突き刺されてニーナ、撃沈。
「あんた、感度以前にシチュエーションに酔うタイプだもんね……」
はあ、とミリシアがため息をつく。なんだかんだアレックスはこちらの性癖を熟知しているので、間違いなくそこは外してこないだろう。
特に今はなんていうか、その気にあふれているので普段は遠慮してやらないようなプレイも断行してくる可能性がある。……正直、ちょっと気になってきた。
「ねね。自信が無いなら付き添ってあげようか? 別に無理してタイマンしなくても」
「それは何か嫌。今更複数に抵抗はないけど、私だけ二人きりじゃないってのは負けた気がする。背水の陣、もはやここで引けない」
「そう? ちょっと残念」
「ま、前から思ってたんですけど、皆さん、その、ずいぶん明け透けなんですね……?」
この中で一番色事に関しては正気であるシルバが、とうとう黙っていられなくなった、という感じでつっこむ。確かに、常識で考えれば、アレックスと彼女らの関係は異常極まりないだろう。いくら戦場という特殊環境であっても、聊か爛れすぎていると言われても仕方ない。
が、当の本人であるミリシアからすれば、それは分かっているけど、だからどうした、という話である。
「作戦の度に全滅しかけてれば、そりゃ遠慮なんて無くなるわよ。次の機会なんて無い可能性の方が高いんだから。それでも隊長は生き残る可能性が高いけど」
「それは、そうでしょうけど……」
「だからさ。隊長には覚えておいてほしいのよ。たくさんいた愛人の一人でいい、いい女がいたな、ってね」
「…………」
「それはそうと。隊長に言い出しにくいんなら私が手解きしてあげましょうか? 経験があるので」
「その経験ってのは私を隊長との3Pに引きずり込んだ事かしら、ミリシア?」
「3Pじゃないわよー。どうせだったら6Pとかどう? 正直、今の隊長とシルバさん二人きりにしたら、翌日、腹上死体が見つかっちゃうわよ。シルバさんの。……どう? 優しくしとくわよ?」
「け、けけけ、けっこ、結構ですぅ!」
そんなところで、本日のお茶会は解散となった。
10分後には訓練がある。後片付けもそこそこに、ミリシア達は部屋を後にした。ガチン、とロックが掛かった部屋は完全に無人だ。
その、無人のはずの士官室で。備え付けられている棚の引き出しが勝手に開いた。中に入っているのは常用薬のポシェット。その中に収められていた小さなピルケースが勝手に宙に浮く。
かちり、と蓋が外される。中に入っていたのは白い錠剤……軍から支給されている避妊薬だ。地味に人類医学の粋が尽くされており、個人に特別調整しなくても適合して副作用もほとんどなく、かつ人によって個人差がある月のものの症状を極めて軽微に抑える、ある意味では夢の薬だ。
それがじゃらじゃらとピルケースからひっくり返される。零れ落ちる白い錠剤は虚空に飲み込まれるように消えていき、一通り空になると、今度は虚空からあふれ出した白い錠剤がケースに収まっていく。一見すると全く同じ錠剤。だが実際には全く逆の効果の錠剤だ。
中身を入れ替えたピルケースが、元通りに戻される。最後にぱたん、と引き出しが閉じられ、あとにはもう、ここで何かがあった痕跡はチリ一つ残っていなかった。