※この作品はR-18です。

未来も希望もない戦場で必死に生き残ってたらモテモテになった件(ハーメルン版)   作:SIS

57 / 87
第五十六話 女神の零落(シルバ)

 

 

『マツヨイグサの咲く頃に待っています』

 

 

 手紙にはそう書かれていた。

 

 アレックスの懐にいつの間にか忍ばせてあった古紙の手紙。軍で大量消費されているような質の悪い紙ではなく、少し厚みのあるもっちりとした手触りの紙には僅かに香が移してあり、黄色い押し花が挟まれている。綴られた文字も達筆で、それだけの教養があるのはだれか、という事で必然的に差出人が誰か迷う事もなかった。

 

 だが、それはそれでアレックスは大いに躊躇った。

 

 マツヨイグサ、というのは夜に咲くという、地球に存在したという花の名前だ。地球から遠く離れ、もはや本物のマツヨイグサを知る者など誰もいないのに、その存在だけはある種の慣用句として残り続けている。そしてつまり、マツヨイグサが咲く頃、という事は夜なのだが、この言い回しを使う場合のある種のお約束がある。

 

 早い話が、逢引のお誘い文句なのだ、これは。

 

 それも黄色い押し花も添えてあるときた。伝説によれば、マツヨイグサは夜に鮮やかな黄色の花を咲かせたのだという。権力者のパーティーで、見染めた相手の胸元に黄色い花を挿し、耳元でそっと夜の再開を甘く囁く……そんなやり取りが今も残っている事を考えれば、もはや疑う余地もない。

 

 故に、アレックスはかなり困惑した。確かにシルバは美人であるし優秀な星見であるのは疑う余地がないからして仲良くやりたかったが、こういう意味で仲良くしたい訳では……いや全くないというとそれはそれで嘘になるが、とりあえず期待していた訳ではない。

 

 そもそも若い星見、という立場であれば相手なぞ選り取り見取り、もっと良い相手がいるのでは……そう考えてしまう。

 

 が、しかし。このような古式ゆかしいやり方をしてくる、という時点で相手は本気も本気、間違いなくそのつもりであり、それを伝える為にこのような手段を取った、というのはアレックスとて理解せざるを得ない。そもそも、権力者同士の婚姻は惚れた腫れたというだけでなく、家の事情や経済的な繋がりも含めたうえでの話であり、それを踏まえた上で気に入った相手にマツヨイグサの誘いをするものだ。その事を考えれば、ただシルバがアレックスに好意を持ったから、というだけではなく、何かしらの事情も背後にあると考える事もできる。

 

 そんな風に裏事情まで思いをはせて、結局、アレックスは手紙通りに深夜、シルバの元を訪れる事にした。

 

 その判断に、シルバが性格もよく、見目も麗しい美女であった事が大きく関与していなかったかというと、まあ嘘になるであろう。

 

 

 

 

「…………ううむ」

 

 シルバの部屋の前、閉ざされた扉の前で逡巡する。

 

 ここまで来ておいて今更、であるのは本人もわかってはいるのだが、イマイチ現実感がない。

 

「ま、まあ例の小瓶についても聞きたかったところだし……あれだ、こっちが考えすぎって事もあるだろうし本当にただのお喋りで終わるかもしれない訳で……」

 

 誰も見ていないの言い訳のような事をブツブツつぶやくアレックス。

 

「……よし! シルバ、来たぞ」

 

「ああ、中尉さん。鍵は開いていますので、どうぞ」

 

 コンコンとノックして呼びかけると、即座に中からシルバの声。意を決して扉を引き、アレックスはシルバの私室に踏み入った。

 

 初めて入るシルバの私室は、予想に反して素朴で、どこか暖かい雰囲気のする空間だった。毛糸で編まれたカーペットや質素な机や椅子に、壁にかけられた何かしら宗教的な雰囲気のする木材のオブジェ。机の上には蝋燭台が立てられており、使い込まれた感じのするそれには溶けた蝋の残滓がこびりついている。

 

 手間はかかっているが、高価な物はない。自給自足で営みをつむぐ開拓地の匂いがする部屋だった。その部屋の中で、シルバはソファーに腰かけゆったりと寛いだ様子でアレックスを待っていた。……私室という事もあってかフードは纏っておらず、いつもの露出の多いドレスのような姿だ。見慣れているはずなのに、アレックスの胸がドキリと跳ねる。

 

「ようこそいらっしゃいました、中尉さん。どうぞ、こちらに」

 

「あ、ああ……」

 

 ソファから立ち上がったシルバに促され、自分もソファに腰かける。少し硬い革のクッション。決して上質ではないが、悪いものでもない。どことなく、故郷であるウィンザードの総督府でもあった実家の応接間にあったソファを思い出す。ウィンザードでは獣といえば野生の狂暴な猛獣であり、それらからとれる革は決して低品質ではなかったがあまり装飾具や家具には適していなかった。

 

 クッションの座り心地から故郷を思い返しているアレックスの隣に、さも当然のようにシルバが寄り添うように腰を下ろした。いつもと違う甘ったるい香水が至近距離で香り、薄絹のようなドレス越しに柔らかな女体の熱が伝わってくる。

 

 ドギマギするアレックスに、くすり、とシルバが微笑む。青い瞳が吸い込まれそうな深い色合いを称えていて、引き込まれるようにアレックスは見つめ合ってから我に返った。

 

 不味い、なんかすごく不味い。

 

 空気を変えようと、わたわたとアレックスは話題を切り出した。

 

「と、ところでシルバさん。ちょっと聞きたい事があってね……あってだね」

 

「シルバとお呼びください」

 

「え。いやでも、シルバさんは立場上別に部下って訳でも……」

 

「シルバと、お呼び、ください」

 

「……シ、シルバ」

 

「はい」

 

 よくできました、と言わんばかりの微笑み。ついでにぎゅっと狭いソファの上で躰を寄せてくる。

 

 待て待て待て、なんでこんなに積極的なの?! とまだ何とか保っているアレックスの理性が困惑に揺れる。正直相手があまりにも美人なのもあって、鼻の下を伸ばすよりも警戒と恐怖が先に来る。こう、自分が美人局のターゲットになってるような。

 

「お、おほん! そ、それでね、シルバに聞きたい事がちょっとあってね。今晩はその事もあってお邪魔させてもらったんだけど」

 

「聞きたい事、ですか? そんなの、昼にでも聞いてくださればよかったのに……」

 

「いや、ちょっと怪しげな物でね。持ち歩かずに机にしまっていたんだよ。ほらコレ」

 

 懐から小瓶を取り出してテーブルにおく。

 

「む……」

 

 シルバがしなだれかかるのをやめて、興味を小瓶にむける。ラベルも注意書きもないただの小瓶は、外見では何が入っているのか判別できない。小瓶を手に取り、傾けたり照明の光にすかしたり、軽く振ったりして確認しながら、シルバが不思議そうに訪ねてくる。

 

「これは見えていませんでしたね。一体どこで、誰から?」

 

「あ、ああ。クワイエット星見からだ。中身はシルバに聞けばわかるだろう、と」

 

「クワイエット? 彼から……?」

 

 訝し気にしながらも、同じ星見からの贈呈品という事で警戒心を解いたのか、シルバは躊躇いなく瓶の蓋を開いた。直接嗅がないように手で仰ぐようにして匂いを確かめ、記憶を探るように目を細める。

 

「……あ」

 

「どうした、分かったのか? その小瓶、何が入ってるんだ?」

 

「あ、いや。その……」

 

 明らかに心当たりがあります、といった反応だったのに、シルバは何やら口ごもっている。というか、言いづらそうである。

 

「何か危険な物なのか?」

 

 それならいけない処分しよう、とアレックスが手を伸ばすと、ひょい、とシルバが小瓶をもったままかわすように手を引いた。驚いて目を合わせるが、シルバも自分の挙動が信じられない、といった体に目を見開いている。視線が合い、そこでシルバはようやく観念したように口を開いた。

 

「その……ええと、これはその、星見が修行で使う薬なんですよね」

 

「修行? 薬?」

 

「ええ。感覚を過敏にする効果があって……目を塞いで体を拘束してこの薬を打って、鋭敏になった肉体の感覚に捕らわれずに、現実と異なる視座に繋がる、といった修行があるんです。結構厳しい感じで。で、ですね。当時は全然そんな事思わなかったんですが、後々になって思い返すとですね、ええと。その」

 

 何やら散々に自己弁護らしき言葉を並べたてたあと、恥ずかしそうにシルバは瓶の正体を告げた。

 

「……媚薬、になる、んじゃないかなあ、と……」

 

「媚薬ぅ??」

 

「あ! あくまで、それっぽい効果、かなあと……」

 

 顔を真っ赤にして伏せてしまうシルバ。一方のアレックスは、訝し気に首を傾げた。

 

 媚薬。まあ未来永劫過去永劫、人類の憧れの薬。気になる人に一服盛って、好い感じになりたい……なんて欲望は、過去の人間も今の人間も変わらないらしい。が、言うまでもないがそんな都合の良い物はない。たいていの場合、媚薬と銘打たれているのはホルモンの分泌を促すだとか、神経過敏を引き起こすとかそういうものだ。早い話が躰に無茶苦茶する薬で、効き目には個人差があるしきつい副作用も想定される。好い感じになるどころか絶縁されるのがオチだ。

 

「なんか一気に胡散臭くなったんだが……大丈夫なのかこれ」

 

「あくまで星見が摂取する分については、です。私達は特殊な訓練で痛覚とかをある程度、遮断できますし、薬物耐性もありますので。普通の人に打ったらバッドトリップで入院間違いなしですけど」

 

「はぁ……。そういう前提条件なら、まあ、ありうるのか?」

 

 思えば故郷ウィンザードでも、人間なら触れただけで死ぬ超猛毒のキノコを、しかし耐性のある動物はお遊びで齧ってラリって遊ぶ、という話がある。それと似たような話……なのだろうか。

 

「いや、まて。なんで? どうしてそんなものをクワイエット星見が私に?」

 

「…………」

 

 小瓶の謎は解けたが意図が分からない。媚薬といっても、星見にしか使えないならアレックスにとっては不要の産物だ。少なくともシルバとはそういう関係ではない。いや、そういう関係になるのは嫌ではないが、今の所シルバに対する情欲は、雑誌の超人気グラビアアイドルの撮り下ろしピンナップに向けるようなものだ。あくまで手の届かない、言ってみれば空想の存在に対する情欲であって、現実的にどうこうという気持ちは抱いていない。そもそも、アレックスには四人の可愛い恋人がいる。これ以上を望むのは流石にバチが当たる。

 

 が。

 

「……使ってみます?」

 

 ぽつり、とシルバがつぶやいた。ビシリ、とアレックスが硬直する。

 

「し、シルバ……? えっと、それは……」

 

「ふふ。惚けなくてもいいじゃないですか。薄々察していたのでしょう? 私がそういうつもりで、中尉さんを呼び出したって……」

 

 小瓶をことん、とテーブルに置き、シルバがしなだれかかってくる。それを払いのけられない時点で自分の負けを理解しながらも、アレックスは口だけの抵抗をみっともなく続けた。

 

「そ、それは、あんな文面だったら、少しは……。で、でも待ってください。なんで私に? 部隊の女を四人も愛人にしてる腐れ野郎ですよ!?」

 

「そうでしょうか? 場所が変われば人の価値も変わります。戦場において、強く特異な雄に惹かれるのは雌として当然の結論ではないでしょうか。ふふ、かくいう私もその一人、という事です」

 

「お、雄とか雌とか、そんなケダモノみたいな……」

 

「中尉さんは、私達星見を高度な技術職として敬意を払ってくださいますが……本人達から言わせれば、我々の方がよっぽどプリミティブで野生的な存在ですよ。人間社会から距離を置き、迷信的な考えで自らを縛り、時に不合理な行動を取る。知ってますか? 私達星見に、家族の概念はありません。男の星見は、不遇な立場にある難民や貧困者に援助と引き換えに契約として子供を産ませます。その後、才能があれば引き取り集団で育成し、才能が無ければ経済的な支援は続けつつも顔すら見せません。そして女の星見は……」

 

 今やアレックスは完全に為されるがままだ。抵抗できていないのは、心の奥底でこの状況を望んでいたからだろうか。それとも、目の前のシルバの妖気ともいえる色気に呑まれてしまっているからだろうか。あるいはその両方か。

 

「……こうして、見出した男に精を授けて頂くのです……。ふふ」

 

「せ、精って……まさか、シルバ、君は」

 

「ええ。私は、貴方に孕ませて頂きたいのです。アレックス様」

 

 下半身とは別の生き物とはよく言ったもの。衝撃的な言葉で、混乱する心とは裏腹に逸物がガチガチにいきり立つ。下着と分厚い生地のズボンに押さえつけられて痛みに思わず顔をしかめるアレックスに、シルバはふふ、と笑うと優しく手を彼の股間に宛がった。じじ……とチャックをずり下げて、解放された屹立を下着の上から優しく撫でる。

 

「は、孕ませ……って」

 

「心配する事は何もございませんよ。父親として認知を迫る事もありませんし、故郷のご両親に迷惑をかける事はしません。才があれば星見として取り立て、無くとも我が子として育てた後、星見の支援組織に就く事になるでしょう。無責任に放りだす男の星見よりは、きちんと面倒を見ますから」

 

「い、いや、それは有難いけどそうじゃなくて……い、いくら家族の概念がなくても妊娠は一大事でしょというか……ぐ、軍がOKするとは」

 

「あら。私達星見が軍の直接的な指揮系統にないのはご存知でしょう? 別にやんや言われる事はありませんし、そもそも女の星見がこうして軍と行動を共にするのは、何割か相手を探しているという面もあるのですよ?」

 

「相手を探すって、星見なら選り取りみどりでしょう? なんでそんな、危険を冒してまで……」

 

「特別な星の元に生まれた男の血を継いだ子を産む。それが女の星見の使命でもあるのです。そして私はアレックス様を見出しました。死の定めに魅入られながらも、決してそれに惹かれる事のない、強く、荒々しく、精気に満ちた魂。四人もの愛人を抱えながら、彼女らを逆に食い潰すほどの雄……」

 

 形を確かめるように、恭しい手つきで白い繊手が屹立を這う。こちらを見つめるシルバの青い瞳は、どこか酩酊したような、理性の薄れた色合いを帯びていた。

 

「雌として、そんな雄の牙にかかるのは光栄なことです。ええ、そうですとも……ああ……アレックス様……」

 

「シルバ……」

 

 雰囲気に呑まれ、ごくりと唾を飲むアレックス。

 

 今更取り繕うような事でもない。シルバの躰にアレックスが好色な視線を向けていたのは事実だし、性的な意味で抱きたい、と思わなかったらそれこそ嘘だ。道徳的な裏切りも、そもそも四人もの部下を食い物にしてる時点で今更だ。自分自身が女を食い物にする事に何の抵抗もないケダモノだと、アレックス自身がよく分かっている。

 

 その上で、シルバが自ら望んで抱かれる事を望んでいるなら。これ以上抵抗するのは逆に失礼なのではないか?

 

 シルバの躰に視線が回される。銀色の髪、潤んだ蒼い瞳。ドレスで辛うじて隠された、見た事がないほど豊かな胸に括れた腰、安産型の尻部。性格だって悪くない、理知的で理性的な、しかし愛嬌もある淑女……それが今や獣欲を剥き出しにして媚びてきている。

 

 抱きたい、と思った。

 

 この優秀で見目麗しい女を、自分の物にしたい。

 

 そんな粗野で卑しい、ケダモノのような雄の欲求がぐつぐつと腹の底で煮えたぎっている。

 

「ふふ。……どうなさいますか?」

 

 シルバが、アレックスの内心を見透かしたかのように微笑んだ。

 

 シルバのベッドは、アレックス達が使っているのと変わらない、支給品の硬いマットのものだった。そこに、持ち込んだと思われる私物の毛布がかぶせられていて、少しは寝心地がマシになっている。

 

 そんなシルバのベッドの上で、アレックスはボクサーパンツ一枚の姿で落ち着かなく据わっていた。傍らには、例の小瓶が毛布に埋まるようにして転がされている。

 

 シルバの姿は、ぱっと見える範囲にはない。だが部屋の反対側、カーテンで仕切られた空間……本来なら相部屋でもう一人が生活するエリア……から、ごそごそと物音がする。

 

「お待たせしました」

 

 カーテンを捲って、銀色の髪の美女が姿を顕す。その姿を目にして、ごくりとアレックスは息を飲んだ。

 

 もともと露出の多いドレスを私服としていたシルバ。だが今の彼女は、真珠色の面積の極端に狭い下着を纏っただけの、ほぼ裸同然の衣装だ。言うまでもなく、下着ではあっても本来の意味を果たすための機能など存在しない。明らかに第三者に見せる事を想定していない、ただ男に媚びるためだけに存在する布切れ。

 

 その効果がどれぐらいあったかは、頬を染めてちらちらと視線を逸らすシルバの躰に、食い入るようなアレックスの視線が十分すぎるほど答えていた。

 

「せっかくですから、そういう事をするのにふさわしい恰好をと思いまして……ふふ、お気に召してもらえたみたいですね」

 

「あ、ああ……」

 

「それと、これをどうぞ」

 

 差し出されたのは、小さな注射器と消毒セット。軍でも普通に使う、ありふれた代物だ。基本的に一回かぎりの使い捨てで、鎮痛剤を打ったり止血剤を打ったり、あるいは最後の慈悲をもたらすために使われるそれ。アレックスだって使った事は一度や二度じゃない。

 

 だが、こういう目的で使うのは初めてだ。

 

「…………」

 

 ごくり、と息を飲み、小瓶の蓋をあける。中に満たされた、やや黄色みがかったとろみのある液体を、受け取った注射器で適量吸い上げる。

 

 横にシルバが滑り込むように身を預けてきて、無防備に首筋を晒しだしてくる。普段は銀の髪やフードで隠されてみる事のない、女の無防備なうなじ。その気になれば簡単にへし折ってしまえそうな華奢なそれに、軽く指を這わせて血管の位置を確認する。触れた肌は驚くほど滑らかでひっかかり一つなく、赤子の肌を撫でているかのようだった。

 

「ん……」

 

 白い肌は血管が透けて見えるようで、簡単に場所が特定できた。アルコールで肌を清め、ちくり、と針を刺すと、シルバが艶めかしく息を飲んだ。少しずつ、薬液を注入していく。

 

 微量を流し込み、針を抜く。刺した場所を念のためガーゼで拭っておく。注射器自体は長年の人類史の研鑽と不衛生な戦場での使用を想定しているのもあって、そのあたりはよく考慮されているがまあ念のためだ。

 

「……打ったけど。体調に変化はない?」

 

「大丈夫です。何度か経験済みですし、それにこれは遅効性なので、効くまで少し時間がかかります」

 

「そういうもんなのか」

 

「ええ。……なので効いてくるまで、ちょっと気分を高めましょう、ね?」

 

「おっとと……」

 

 しなだれかかってくるシルバを受け止めつつ、注射器とゴミをベッドの下に放り込む。転がしておくと危ない。

 

「こら、注射器もってる人にいきなり触らない。全く……んっ」

 

「んんぅ……」

 

 シルバの躰を抱き留めるようにして、口づけを交わす。シルバは初々しく目を閉じてされるがままなので、アレックスからリードする。抱きしめる彼女の肌はどこもすべすべで柔らかく、兵士として鍛えている部下達とは違う手触りがする。

 

 数度触れるだけのキスをかわして、一呼吸。至近距離で見つめるシルバの情欲で潤んだ蒼い瞳。底なしの深い湖のような色合いに、しばし目を奪われる。

 

「……綺麗な目をしてるよな、シルバって」

 

「そうでしょうか? そんな事を言われたのは初めてです……」

 

「お世辞じゃなくて、な。もっと見せて……」

 

 再び重なる唇。さっきよりも強く密着させて、互いの唇の形を確かめ合う。

 

 目を誉めたせいか、シルバは目を細めながらも閉じずに、しっかりとアレックスの視線を見つめ返そうとしてくる。とはいえキスする相手の顔をまじまじと見つめるのは恥ずかしさが先立つようで、すがりついてくる指にきゅ、と力が入るのが分かる。

 

 悪戯心が沸き上がって、アレックスは言葉なくキスを次の段階に進めた。舌を少し伸ばして、触れ合っている彼女の唇をなぞる。びく、と反射的にシルバの肩が跳ね、無意識に距離を離そうとするのを抱き留めて阻止する。

 

「ふ……ん。んん……っ」

 

 観念したように抵抗をゆるめたシルバの唇を存分に湿らした後、こじ開けるようにして口内に舌に潜り込む。形のよい歯列の並びを確かめていると、おずおずとシルバがアレックスを受け入れるように口を開いた。舌先をさらに侵入させて、縮こまったシルバのそれを絡み合わせる。敏感な粘膜同士が擦れ合って、性交とは違う快楽に頭がしびれる。それはシルバも同じだったようで、くぐもった喘ぎが口内に響く。

 

 そのままベッドにシルバを押し倒し、のしかかる姿勢で唇を離した。互いの間につぅ、と銀の糸が引いて、千切れる。その様子を、シルバは口元を隠したままトロンとした目で見つめていた。

 

 いやらしい下着に覆われた胸に手を伸ばす。触れてみると、極小の布の下で乳首が硬く勃起しているのが指先でわかる。くりくりと刺激すると、シルバが小さく声を上げて身じろぎする。

 

 それにしても大きい胸だ。何食べたらこんなに育つんだろうな、と頭の片隅で考えながら、仰向けでも形の崩れないそれをふにふにと揉みしだく。ハリがあるのに柔らかく、すべすべもっちりとしている。なんともクセになりそうな揉み心地だ。

 

「ふ……んん……っ。あ、ん……あっ」

 

 それに感度も抜群らしい。大きい胸は感じにくい、なんて俗説もあるが、所詮は俗説のようだ。胸への刺激にぴくぴく反応しながら、悩まし気に眉を潜めてシルバが小さく喜悦の声を上げる。

 

「んぁ、あ……いい……ですっ。それ……んっ。あ、あぁ……」

 

「結構、敏感だね。……もう少し強くする? 大丈夫そう?」

 

「…………」

 

 しばし逡巡するような沈黙の後に、シルバがこくんと頷いた。ならばと様子をみながら、大胆に胸を揉みしだき、形を変えて弄ぶ。ひっかかる程度だった布の端切れは、胸をもんでいるうちにはずれてどこかにいってしまった。

 

「は、あっ! んん……っ、あ、はぁっ! いい、です……んっ!」

 

「そう? じゃあ、これは?」

 

「んいぃいっ!?」

 

 シルバの声が跳ねる。あ、え? と自分の反応が信じられないように目を瞬かせている。

 

 そんな彼女の様子をみながら、アレックスは口に含んだ右の乳首を再び舌で舐めしゃぶり、舌先で押しつぶした。それに反応して、ガクガクとシルバの腰が跳ねる。

 

「ひぃっ! あひっ! そんな、乳首……ぃ! あ、駄目っ、乳首ダメっ」

 

 駄目と言いながら、胸を押し付けるようにしてくるシルバに薄く笑いながら、アレックスは反対側の乳首も指でぐりぐりと押しつぶした。豊かな旨に乳首を押し込んだり、指先をつかってくりくりと擦り上げたり。ガチガチに勃起した乳首はシルバの興奮を物語っていて、遠慮はいらなかった。

 

「あっ! ひ……ああぁああっ!」

 

 きゅうう、とシルバが背筋を弓なりに逸らして、軽く達する。

 

「ひっ……ああっ……ああ……っ」

 

「うん。よくできました」

 

 息を荒げながらベッドに沈むシルバ。そんな彼女の頭を、よくできました、と撫でてやる。額に汗が浮かび、銀髪がくしゃくしゃになって張り付いている。

 

「ふぅ……はぁ……。……その。今のが絶頂なんですね」

 

「もしかして経験がない? 自慰とか」

 

「そ、その、人並みにはして……ましたけど。人にされると、全然違うし……乳首を、な、舐められるなんて想像もしてませんでしたし……あんっ」

 

「こんなに立派な胸があるんだから、揉まないと逆に失礼でしょ」

 

「んっ! あっ……ちょ、ちょっと、話してる最中にもまないでください……」

 

「ごめんごめん。でも、胸は普段から結構自分でもいじってるでしょ。経験無い子の反応じゃなかったと思うけど」

 

「う……べ、別に。言ったでしょう、人並みには、って」

 

「ふーん」

 

 恥ずかしそうに顔を逸らすシルバに、まあいっか、とアレックスはそれ以上の追及をとりやめた。これからもっとすごい事をするのだから、胸がどうとかは別に後でいい。

 

「それよりも、こっち……と」

 

「んっ!」

 

 軽くシルバの股間、秘所の周りに指をやる。

 

 そこはもう大変な事になっていた。大量の愛液が染み出し、ベッドにまで染みを作っている。わずかな布切れが辛うじてクリトリスと陰唇を隠してはいるが、逆に素っ裸よりもいやらしい眺めになっているのではないか、というのがアレックスの所感だ。その僅かな布も、今や愛液がたっぷりと沁み込んですっかり色が変わってしまっている。

 

「すごいな。お漏らししたみたい。……もしかして薬が効いてる?」

 

「…………」

 

「シルバ?」

 

「うぅ。……まだそんなに効いてません。素です……」

 

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいと思うけどなあ。濡れやすいのは可愛いと思うけど」

 

 言いながら、シルバの足の間に体を割り入れる。足を閉じて抵抗する術を奪って、アレックスは優しく秘所に指先でふれた。くちゅ、と粘液質の音が鳴る。

 

「ふっ、あ……ああっ! あんっ! んっ!」

 

 くちくちと陰唇を刺激しながら、布切れを押しのける。露になった陰核と陰唇は、どちらもぷっくりと充血していた。クリトリスは包皮を押しのけて痛いほど自己主張をし、陰唇はだらだらと涎を垂らしながら半開きでその時を待ち望んでいる。いっぽうで、まったく経験が無い事を示すように色は鮮やかな薄ピンク。本人の自己申告通り、自慰も人並み以下程度だったのだろう。それが今やこのありさまだ。天然物の淫乱体質、という感想が頭によぎる。

 

「ん、かわいいクリトリスだね。美味しそう」

 

「え、あ……んひぃいっ!? あっ、ああっ!?」

 

 陰核にキスを落とし、舌で可愛がる。反射的にシルバの足が閉じられようとするが、それを抑えて執拗に陰核をいじる。舌先でくりくりと刺激し、圧をかけて吸い、まるでクリトリスを優しく肉体から掘り出すように愛撫する。

 

 経験の無い刺激に、シルバが上半身をのけぞらせながら悶絶する。少しでも強すぎる快楽に耐えようととシーツをくしゃくしゃに握りしめて、それでも堪えきれずに悲鳴のような嬌声が響いた。

 

「あ゛っ! あ゛ひぃぃっ! だめ、それだめぇええっ! 取れちゃう、私のおまめ、とれぢゃぅううぅうっ! あ゛ぁあああーーーーっ!」

 

「んちゅ、取れない取れない、大丈夫。辛かったら声をあげたら少し楽になるかもね」

 

「あひぃあっ!? あ゛あっ! んんんーーーっ!」

 

 クリトリスを吸い上げながら、指を一本、陰唇に差し入れる。とろとろの膣内はクリトリスへの刺激できゅうきゅうに閉まっていたが、大量の愛液が潤滑になってほとんど抵抗もなく奥へと潜っていく。処女膜の少し手前で侵入を止め、指の腹で優しく擦るようにして恥丘の裏側、クリトリスの根元を反対側から刺激する。

 

「ああっ!? あっ、あ゛ぁ! ああ、イく、イきますっ! ああ゛ーーーーっ!!」

 

 浅ましい言葉で宣言しながら、シルバが絶頂に達する。

 

 教え込んでいないのにこの言い回し、さては部下達の情事を覗き見してたかな、とアレックスはイオリの事もあってなんとなく察した。絶頂に震える体を、指を止めることなく追撃を続行する。シルバの喘ぎに恐れの色が混じった。

 

「あ゛っ、い゛っ!? まっ、今、イっ……あ゛あ゛あっ!?」

 

「まだまだ。そのぐらいだったらまだ全然序の口。数回絶頂を経験したぐらいで調子に乗らない」

 

「そんなぁっ! ああ゛っ! あっ!」

 

 美しい声が悲鳴のような嬌声を上げる。それを絞り出すように、容赦なく陰核を攻め立てていく。

 

 そしてかれこれ10分ほど陰核を虐め倒して、アレックスはぷはっ、と唇を離した。口元は大量の愛液でべとべと。それを袖で拭いながら、ベッドの上に沈むシルバを見下ろす。

 

「……は……っ、あ……。ひぃ……」

 

 情けなく蟹股でベッドに転がり、荒い呼吸を繰り返すシルバ。その銀髪は千々に乱れ、玉の汗が浮かぶ体に張り付いている。白い肌は赤く上気し、肉体の奥で情欲の炎が燃え盛っているのが見て取れるようだ。薬が回ってきたようだ、疲労しているように見えるのは見せかけだけに過ぎない。

 

 下準備は整った。あとはもう、どう蹂躙してもシルバは悦びの声を上げるだろう。期待するように濁った青い瞳がアレックスを見上げてくる。

 

 それを受けて、アレックスは。

 

「…………え?」

 

 ごろん、とシルバの横に寝転がった。期待をはずされたシルバが、きょとん、と目を見張る。

 

「あ、あの。アレックス様……?」

 

 呼びかけても反応はない。ともすれば寝入ってしまったようにも見える。ここまで来てそんな……そう考えて、シルバはふと考え込んだ。

 

 ややあって、聡明な彼女はアレックスが自分に何を求めているのかに思い当たった。それは女どころか人としての彼女の尊厳を踏みにじるようなものであったが……同時に、ぞくぞくとシルバの背が期待に震え上がった。

 

「……っ。し、失礼しま、す……」

 

 重い体を引き起こして、ぎこちない動きであおむけで寝転がるアレックスの体の上に移動する。屹立する逸物にごくりと唾を飲みながら、アレックスの股上をまたぐ。つぅ、と滴った愛液が、逸物の亀頭にふりかかった。

 

 膝立ちになり、恥丘を突き出すような姿勢を取る。恥ずかしいどころではない恥辱だったが、今のシルバにはそれよりも体のうちで滾る熱に従う方が正しい事だった。

 

 できるだけイヤらしく。でもできるだけ上品に。あまりにも浅ましく振舞っては、相手方の気分を損ねる。そう意識しながら、言葉を選んだ。

 

「そ、その……アレックス様。私の痴態で、興奮して頂いて……ありがとうございます。気持ちよくしていただいたお礼に……ここからは、私にやらせていただきます。ど、どうか、私の処女を、捧げさせてくださいませ……」

 

 到底対等な男と女の関係にあるまじき、媚びるような従属するような言葉。とはいえ、その言葉尻にハートマークが見えるような、とろとろに惚けた媚び声では悲壮感の欠片もない。

 

 下から視線をよこすアレックスが、鷹揚に頷いた。やはりこれで正しかったのね、とシルバが茹だった頭で喜んだ。

 

「……っ、それでは、いきます……」

 

 逸物に手を添えて、角度を調整する。ゆっくりと腰を降ろし、亀頭を己の陰唇に宛がう。そのまま迎え入れようとして……つるりと、と逸物が外れてしまう。

 

「あん……っ、も、もう一度……んっ!」

 

 再び挿入に失敗し、クリトリスを逸物がこすった刺激で腰砕けになる。もう一度膝立ちになって挑戦するが、今度は素股のような姿勢になってしまう。思わずそのまま動きそうになる衝動を制して、再び距離を置く。

 

「ど、どうして……? は、入らない……っ」

 

 もはやシルバは涙目だった。息を乱しながら、半ば向きになって挿入を試みるが、焦るせいでうまくいかない。

 

 確かに大量の愛液のおかげで滑りは良い。が、滑りすぎて、ちょっと角度がずれただけで逸物が飛び出してしまう。もともとアレックスの逸物がえぐい角度で反り返っているので、それをしっかり調整しないと位置が合わないのだが、おっかなびっくり手を添えるシルバの手つきではそれすら儘ならない様子だ。

 

 信じられないような美女が、逸物を迎え入れようと、へこへこと浅ましく腰を振っている。それはアレックスからしてももうそれだけで満足できるそれは淫らな光景だったが、これでは先に進まない。

 

 一応、シチュエーションとしては、シルバがアレックスに子種を”強請る”、という体裁であるからして。本心では全くそんな事はないのだが、シルバの様子に失望したように深いため息をつくと、びく、と彼女は肩を震えさせた。

 

「あ……す、すみません、アレックス様。も、もう少しお情けを……」

 

 完全に自分が下、という立場にのめり込んだ、侍従が主人に許しを媚びるような態度と視線。というか、これは完全に自分の本来の立場とか関係とか吹き飛んで、脳と子宮が直結してるような感じにみえる。媚薬こえーな、と内心ちょっと独りごちた。

 

「いいから。そこに膝立ちになって」

 

「っ、は、はい……」

 

 アレックス自身の手で逸物を抑えて、角度をシルバに合わせる。先端がくちゅり、と陰唇に触れて、そのままずぶり、と中に潜り込んだ。そこで少し角度を変えて、中に食い込ませる。

 

「っ……ふ、ふぅ……んんっ!」

 

 悩まし気な声を上げながら、ゆっくりと腰を下ろしていくシルバ。今にも腰砕けになりそうな体を必死に踏ん張って、ぷるぷると震えていく。そして逸物の切っ先が、僅かな抵抗にひっかかった。処女膜だ。

 

「は……あっ、これ、私の……っ。あ、はぁっ……」

 

 一度動きをとめて、はあはあと息を整えるシルバ。彼女の中では膣がぐにぐにと逸物の形を確かめるように蠢いている。そのまま、しばし目を閉じて沈黙する。逸物を自らの処女膜に宛がってその感覚を確かめるようにしたあと、シルバが青い瞳を男に向けた。

 

「で、では……アレックス様のペニスで……私の処女膜を、破らせていただきます……あっ……!」

 

 ぐ、と腰を下ろす。抵抗は一瞬だった。痛みはほとんどない、むしろ待ち望んだ瞬間を迎えて、悦びのほうが勝っていた。

 

 紙のように処女膜を引き裂き、逸物がシルバの最奥に達する。

 

 が、勢いよくシルバは腰を下ろしすぎた……アレックスの逸物が、平均的な男性のそれよりも長い事を彼女は失念していたのだ。ましてや今は、シルバの痴態に平時以上に興奮したそれは、膨張の新記録を達成していた。

 

「あ、お゛っ!?」

 

 切っ先が最奥の子宮口を強く打ち、アレックスの腰上に腰かけるつもりで降ろされたシルバの躰が急停止させられる。女の最奥を串刺しにされて、シルバが目を白黒させた。

 

 このままだと腹を突き破られる。一瞬よぎった本気の恐怖に、反射的にアレックスの胸元に手を突く。体を斜めにして体重が一点に集中しないようにして最悪の破綻をなんとかさけて、シルバは冷や汗交じりの息を吐いた。

 

「ひっ……ふ……っ。は……あっ。こ、これ……う、嘘……こんな、長いなん、て」

 

 膝をついてなかったら本気で危なかった。そう思いながら結合部に目を剥けると、処女の証であった流血が確認できた。決して少ない量ではないが、大量の愛液で薄まって今はピンク色だ。それよりも、はっきりと胎の最奥……自分でも信じられないような場所にまで収まっているのがわかるのに、今だ余裕を残している逸物に戦慄がよぎる。

 

 なるほど、これが女殺しというものなのだろうけど……流石にちょっと、その。ゴア的な意味でも女殺しは、困る。

 

 そんな風に、流血の結末を回避できてほっとしているシルバに、ちょっとイラっとした様子でアレックスが声をかけた。

 

「……シルバ?」

 

「ひっ! あ、す、すいません……っ」

 

 忽ち縮こまって、膝立ちの姿勢に戻る。処女を失ったが、それが目的ではない。これから、アレックスを気持ちよくして中に射精してもらうまでがシルバの役目なのだ。

 

「ふぅ……はぁ……。う、動きます、ね……んんっ!!」

 

 ゆっくりと、逸物を引き抜くように体を持ち上げていく。その拍子に凶悪に反り返ったエラが、ぞりぞりとシルバの中をえぐっていく。破られたばかりの処女地をひっかくそれに僅かな痛みもあったが、それ以上に、薬で鋭敏化した肉体は確かな快楽を見出していた。というよりも、あまりにも刺激が強すぎる。子宮から脳にかけて電流が走ったかのような衝撃に、僅かに動いただけでシルバの動きが止まってしまう。

 

「……っ! ふぅ……ふぅ……んっ! っ!!」

 

 目尻から涙をこぼしながら、何度も僅かに動いては止まり、止まっては動くを繰り返すシルバ。痛かったり苦しい訳ではない、確かに快楽は感じる……が強すぎる。快楽信号に神経をやかれて体の制御を失えば、今度こそ最奥を突き破られる……そんな恐怖が、シルバの動きをぎこちなく制限していた。

 

 だが、時間がたてばたつほど、シルバの躰に染み渡った媚薬の効果が増していく。少しずつ理性や恐怖心が、快楽を求める本能に侵食されていく。それを示すように、少しずつ、大胆に……言い換えれば無謀にも、腰の動きが大きくなっていく。

 

 その一連の流れを、アレックスはにやにやしながら眺めていた。さながら自ら命綱を削るような、己の急所にナイフを刺すような、堕落へと上り詰めていく様をじっくりと観察する。

 

 あと少し。

 

 あと少し……。

 

 最初に比べれば随分と大胆に腰を上げ、再び下ろそうとしたシルバの動きに合わせて、アレックスはごちゅん、と下から突き上げた。

 

 

 

「っ、あ、い゛っ!? あっ!? あぉあっ!?」

 

 そのままシルバの腰を抑えて、下からガンガンと突き上げる。ギリギリ破綻しないラインを見定めて動いていたシルバが、急にライン越えした快楽に舌を剥いて悶えのたうった。

 

 シルバの中は、処女の窮屈さと、とろとろに蕩けた柔らかさを併せ持つ極上の器だった。がちがちに屹立した逸物で深く抉っても、それを受け止めて快楽にかえる貪欲さがある。とはいえ、処女を失ったばかりの媚肉を掘削されるのは、媚薬がなければそうとうな苦痛だったかもしれない。

 

 が、実際にはシルバの喉からは悦びに満ちた嬌声が絞り出されるばかりだ。遠慮も容赦もなく、アレックスはシルバを攻め立てた。

 

「ほら、腰の動きが止まってるぞ……っ!」

 

「あっ! ひぃぁっ! す、すいま、せんっ! あ゛っ! ああ゛っ!」

 

 叱咤されて、ぎこちなく腰を動かし始めるシルバ。その動きに合わせてアレックスも下から突き上げる。が、すぐにシルバの動きが止まってしまう。

 

「ご、ごめ、なさ……っ! つよすぎ、て、腰、動かな、あっ!? ああ゛っ!」

 

「全く、本当に我が儘だな、お前っ」

 

「あ゛あっ! あっ! あぁーーーあっ!!」

 

 ぐちゅぐちゅと愛液をかきだしながらシルバの最奥を突き上げる。シルバはもう完全に腰砕けになって、アレックスの胸元に手をついた前傾姿勢のままなされるがままだ。銀色の髪がヴェールのように二人の間に垂れ下がり、その向こうでシルバの青い瞳が淫蕩に潤んでいるのがよく見えた。普段の知性も神秘性もどこかに吹き飛び、淫らな事で頭がいっぱいになっている雌の目だ。

 

「はあ゛っ! あ゛っ! いっ! ああっ! 来ます、またイキます、ああ……………?!?」

 

 シルバが切羽詰まった声を上げて目を閉じる。膣もきゅうきゅうに閉まり、その時めがけて高ぶっていく……そのさなかで、アレックスは不意に動きを止めた。

 

 絶頂を寸前でお預けされて、シルバが目を見開く。そんな彼女に何も言わず、アレックスはぐぐっとシルバの腰を動かないように両手で押さえた。

 

「あ、え……? アレックス、様? ……え?」

 

 テコでも動かそうともしないアレックスの様子に、シルバが目を泳がせて困惑する。やがて近づいていた絶頂の波が遠ざかり、シルバの呼吸が整ったのを見計らって、アレックスは再び動きを再開した。

 

「あ、え……んんんっ! あんっ! ああっ!!」

 

 淫熱に浮かされた膣内は、多少時間を置いたところでそうそう収まりはしない。とろとろの膣内を再び剛直で掻きまわし泡立てる。

 

 再び絶頂が近づき、シルバの声に熱が入る。が、それが本格的に高まる前に、再びアレックスが動きを止めてしまう。

 

「あ……っ」

 

 戸惑ったように、シルバがアレックスに視線を向けてくるが、彼はそれに曖昧に微笑み返すだけだ。シルバはしばし唇を噛んで沈黙し、やがてゆさゆさと、ぎこちなく腰を動かし始めた。

 

「は……っ! あっ、ん……っ! ああ……っ!」

 

 つたないながらも、先ほどまでよりは要領をえた動き。上下に動かすだけだと剛直に奥を突き上げられて苦しいので、やや前傾姿勢で、膣の壁をするように腰を動かす。やがていい所を見つけたのか、そこにこすりつけるように段々と動きが激しくなっていった。

 

「あ、はぁっ! あ゛っ! いや、らしい……っ、私、凄くいやらしい、事、してるぅ……っ」

 

「そう? 俺は嬉しいけど……。ベッドの中で、そんな事考える必要、ある?」

 

「だ、だって……」

 

「もっと淫らになりなよ、シルバ。自分をもっと解放するんだ」

 

「………っ、あ、んっ! ああっ!」

 

 アレックスの言葉に躊躇うように動きが止まる。だけどそれは一瞬の事で、すぐに今まで以上にねちっこく、自分自身を追いつめるような腰の動きが彼女の心境を示していた。

 

「あっ! いいっ! 気持ちいいのっ! あ゛っ! ああっ!」

 

「そうそう。このあたりがいいんだね? えっちな子だ」

 

「んっ! あぁっ! あぁんっ! ああ……っ!」

 

 自ら見出した急所を、執拗に男のそれを使ってぐりぐりと虐めるシルバ。いささかぎこちないそれを、アレックスがフォローしてやると嬌声が一段階高くなる。先ほどまではわずかに残っていた恥じらいは完全に消え失せ、今はむしろ、自分の痴態を見せつけるように腰を捻っている。とろんとした目には目の前のアレックスすら映っておらず、自分の中の快楽の坩堝に耽溺しているようだった。

 

 淫欲に飲み込まれ、自主的に男のそれをこすりつけて腰を振る美女の姿を特等席で眺めて楽しむアレックス。とはいえ、こちらの存在が意識から消えているのはいただけない。相手をしているのを忘れられては困る。

 

「こら、こら。俺を置いて盛り上がらないの」

 

「ひ、あ゛っ!? ま、まって、奥突き上げない、で……っ!」

 

「全く。シルバは何のために俺を誘ったんだっけ? そんな感じだとこっちもいつまで経っても出す物出せないんだけど」

 

「あ……っ?! ご、ごめんなさい……」

 

 嘘ではない。シルバの痴態を眺め、逸物をヘコヘコしごかれるのも十分に気持ちいいが、濃い精液をぶちまけるにはいささか刺激が物足りないというのは本当だ。このまま続けられても終わらない事はないが、やはりメリハリが欲しい。

 

 だがシルバにとっては、割と聞き捨てならない事だったらしい。目に僅かに正気の光を取り戻して、さっきまでのように自分だけが楽しむ動きではなく、膣全体をつかって奉仕するような腰の振り方を始める。

 

「ふ……っ! あ……ふぅ……っ! ん……っ」

 

 汗を流しながら、必死に腰を振るシルバ。お腹に力を入れて膣圧を高めているのか、さっきよりも締まりがいい。それでいて、短くいい所にあてる自分だけ楽しむやり方ではなくて、長くストロークを取って腰を振るのは、自分よりも相手を気持ちよくしようとする献身的な心掛けが見て取れた。

 

 が、残念ながら経験が足りないせいか動きがやはりぎこちない。それに媚薬が回ってきた彼女にはそれでも十分すぎる刺激らしく、頻繁に動きが乱れて一定のリズムを保てない。

 

 そろそろこのあたりで許してやるかな、とアレックスはシルバの尻を両手でつかむと、彼女をベッドに押し倒すように半身を起こした。一転して、ベッドにシルバが押し倒される構図に逆転する。

 

「あ、え……あ……っ」

 

 状況を理解したシルバの瞳に期待するような色が浮かぶ。

 

 その期待を裏切らず、アレックスが叩きつけるようにピストンを開始した。先ほどまでの騎乗位で当たりをつけていたシルバの感じる部分を、容赦なく責め立てる。

 

「ひっ、あっ! あ゛あっ! お゛っ! んぃいいっ! あぁーーーーっ!」

 

 処女を失ったばかりの女にはきつい責めだが、嬌声を上げるシルバの語尾はハートマークでもついてそうな蕩け具合だった。容赦はいらないらしいと、射精に向けてスパートをかける。

 

「あっ! ひいっ! いい、ですぅっ! あっ、もっと、私の体、つかって、ぇ!」

 

「全くスケベだな、お前は! そんなに俺の子を孕みたいかっ!」

 

「は、はいっ! はいぃ! 産みたいですっ、アレックス様の、ややこっ! 授けてくださいませっ! あぁあっ! だ、だから……っ」

 

「だから……なんだ?」

 

「孕む、までぇっ! 犯してくださいっ! あ゛あっ! 何回でも、何回でもっ! 私を、イカせて……っ!」

 

 言わせようとしていたよりも過激な言葉が出てくる。色事の経験が乏しい中で、シルバなりに言葉を尽くしたのだろうが、ちょっと飛びすぎだ。

 

 それとも、これがシルバの本性なのだろうか。

 

 一度は女神と疑った女を、完全に屈服させ己の物にした支配感に、ぐっ、と股座が熱くなった。

 

「っ! 出すぞ、飲み干せっ!」

 

 まだ馴染まない膣の最奥に逸物を押し込み、最奥で弾けさせる。尿道を夥しい量の精液が駆け抜けて、女の胎内に注ぎ込まれていく。

 

「ひっ!? ああ゛っ! 熱いっ! 熱いのが中にぃぃ……っ!」

 

 ぐぐ、とシルバから腰を押し付けてくる。いつの間にか腰に足を絡ませて、無防備に最奥で熱を受け入れる。膣が蠕動するように蠢いて、精液を子宮へ送り込もうとしているのがよくわかった。

 

 しばし、そのままの姿勢で硬直する。やがて長い射精が終わり、アレックスが結合を解いた。ずるり、と逸物が引き抜かれ、開ききった膣口からピンク色の粘液があふれ出す。処女血と精液と愛液の混合物が垂れるのを目の当たりにして、シルバが悲しそうに眉を潜めた。

 

「あ……もったいない……」

 

 ぼそりと、本当に悲しそうに呟く。

 

 その様子をみて、思わすアレックスもクラリときた。そんなに、そんなに……。

 

「そんなに俺の子を産みたいのか?」

 

「あ、は、はい……。……きゃっ」

 

 再びシルバをベッドに押し倒す。

 

 至近距離でシルバの顔を覗き込む。僅かに怯えながらも、その目には続きを期待する色がある。乱れた呼吸は、まだ媚薬の熱に浮かされて物足りなさそうだ。

 

「まあ、初めて顔を合わせた男と女が数日後には結婚してるのなんて珍しくもないが。この間までなんか距離があったにしては随分執着してくるじゃないか。どんな心境の変化があったんだ?」

 

「あ、それは、その……。言い出すのが恥ずかしかったのと、アレックス様のセックスの激しさを皆さんに聞いて怖かったといいますか……」

 

「それが自分からベッドに連れ込むとか、随分な方向転換だな」

 

「そ、それは自分でも正直……んっ!」

 

 すっかり回復した逸物を再び陰唇に宛がう。弄ぶように入口をこね回すそれに反応して、シルバがびくびくと肩を震わせた。

 

「ひ……あ……っ! ま、まだしていただけるのですね……んっ」

 

「抱き潰されるの怖がってた割にはずいぶんとノリ気じゃないか。あれだけ激しく抱いたらミリシア達でもちょっとヘバってるぞ」

 

「そ、それは、その……。失神するまで抱き潰されるとか、失神しても突き起こされるとか聞いたら、恐ろしかったんですけど……。その……」

 

「その、何? さっきから随分言葉を濁すな」

 

「……そんなに、気持ちいいのかなって……。だって皆さん、口調とは裏腹に嫌そうじゃなかったし、当番の日は待ち遠しそうにしてたし……。苦しいのが事実でも、それ以上に気持ちいいのかなって……そう思ったら……」

 

「ふーん……。で、どうだったのさ、実際?」

 

「う……それは……んんっ! い、言います、言いますから、入口くちくちしないでくださいませ……はぁ……ふぅ……。凄く、いい、です……滅茶苦茶にされるの、素敵……ぃ」

 

「お前な……」

 

 ぐ、と逸物をシルバの胎内に再び潜り込ませる。まだ二回目なのに、とろとろに蕩けた膣肉が絡みついてくる。天性の名器、魔性といってもいい。

 

「処女のくせに薬物セックス提案してくるあたり大分まともじゃないと思ってたけど本当に変態だな、シルバは。おまけに孕みたがりとか、普通の男だったら手に余るんじゃないか?」

 

「ひっ、はひ……っ! あ、はい、私、おかしくなってます……ひぅっ! ああっ!」

 

 獣欲を叩きつけるように正常位でシルバを責め立てる。ほとんど休みを入れずに立て続けの二連戦、少しぐらいは拒否感があるかと思いきや、シルバは一回目以上に躰を開いて抽挿を受け入れた。突き入れた逸物を引くと、きゅうきゅうと膣肉が名残惜し気に絡みついてくる。

 

「あぁっ! あんっ! ああ……っ、種付け、してぇっ! 何度でも、何度、でもぉ……っ! ああぅんっ! ああ゛っ!!」

 

「こいつ……」

 

 貪欲に快楽を貪りながら、性交の本質である生殖の為に子宮の奥の奥まで開ききってる感じがする。潜り込んでくる逸物は柔らかく受け入れるのに、抜こうとすると猛烈な抵抗を感じる。突き入れた奥、鈴口に感じる感触は、子宮口がぷっくらと膨らんで口を開いているようだ。

 

 女として、雌として致命的なまでに無防備な状態。なのに、アレックスはまるで貪られているのが自分の側のような錯覚を覚えた。

 

 これはちょっと、凄いのを目覚めさせてしまったかもしれない。

 

 まあだからといって、手を引くつもりは全然ないが。

 

 ノーガードならそれでよい。本人も望んでいるんだし、満足するまで貪らせてもらう。

 

 そうこうするうちに、二度目の射精が近づいてくる。二回目以降は普通一回目より遅くなるものだが、シルバの具合がますます良くなったせいか、自分でも驚くほど我慢が効かない。

 

「……っ! そろそろ二度目、いくぞ……っ!」

 

「ひぃ、あぁっ! 私も、ああっ! 来る、来ます……っ、あ゛っ、あぁあああああああーーーーーーっ!!」

 

 のけぞるようにして達するシルバ。その拍子に膣が凶悪な締め付けを発揮し、それでアレックスも達する。

 

 二度目にしては非常に濃い精液がどくどくと胎の中に注ぎ込まれていく。シルバの体は下半身全体で絶頂に伴う搾精運動に励んでいて、膨らんだ孕みたがりの子宮がごくごくと精液を飲み干していくのが柔らかな胎越しに見えるようだ。

 

「ひ………は……。……あ……ぅ」

 

 流石に数度目の特大絶頂で、声も絶え絶えなシルバ。生殖器だけが、彼女の意思とは裏腹に貪欲に蠢いている。

 

 その体を、再びぱちゅん、とアレックスは突き上げた。

 

「ひ………うっ! ………あ……っ」

 

「まだだぞ。散々挑発したんだから、責任はとってもらわないとな……!」

 

「お……あっ! ………っっ、おっ、あっ!」

 

 胎の最奥を揺さぶられ、嬌声を絞り出されるシルバ。目は虚ろで、まともな言葉も出てこない。にも拘わらず、アレックスを歓迎するかのように、腰の動きだけは合わせてくる。これまでで一番、アレックスの好みを熟知した、淫靡な動きだった。

 

 こちらを見つめる蒼い瞳。淫欲に堕ちた視線が、さらなる快楽を強請っている。それに応えて、アレックスは一層容赦なく彼女の体を責め立てた。

 

 

 

 その晩、アレックスは久しぶりに精を絞りつくすまで女を抱いた。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。