大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
──地雷系女子。
というのを俺なりに調べてみた。
その時に真っ先に出て来たのはピンク色のシャツに黒のスカートを着た少女だった。
日焼けの無い真っ白な肌。目元はピンクで涙袋を強調させたメイク。
腰まで伸ばした黒髪にツインテールといった髪型で清楚感を出している。
見た目の特徴はこんなところで「ああ、そういえば街に行ったらこんな子よく見るな」って、今も35才の時も思ったことはあった。
似たような見た目から量産型地雷系とか言われているけど、そういう女性と仲良くなることなんてないないだろ。
……そう、思っていた。
安藤俊夫、香山桃花。
日曜日の朝、この二人が暮らすマンションへと佳香さんに連れられて来た。
そして出迎えてくれたのは人畜無害そうな何処にでもいるような好青年の見た目をした安藤さんだった。
彼は笑顔で簡単な自己紹介をすると、すぐさま部屋に入れてくれた。
軽く今回のスワッピングの主旨を説明されると、早々に安藤さんと佳香さんは部屋を出ようとした。
まるで早くセックスしたい、二人だけになりたい、みたいな急ぎようだった。
で、去り際に彼女である香山さんに安藤さんが挨拶しに行くと、
「やっぱり、イヤ」
「桃花、今さらそんなこと言うなよ、二人で決めたことだろ。これはお互いの今後の為にも必要なことだって」
「だけど、トシくんと離れて暮らすなんて絶対にイヤ!」
「だから……はあ。これも……そう、結婚する為に必要なことなんだ。なっ?」
「結婚……? トシくんと、モモの?」
「ああ、そうだ。これは……つまり……そう、花嫁修業のようなものだ。一週間後、楽しみにしてるからな?」
「……花嫁修業。う、うん、わかった。トシくんの為に、モモ……他の男なんかとするの、すっごく、すーっごくイヤだけど頑張る」
「こらこら、祐輔くんの前で失礼だろ?」
「だって……」
みたいな、最悪なやり取りを目の前で見せられた。
佳香さんには「すまない」と、珍しく心の底から謝られた。
だから俺は「大丈夫ですよ」と返しつつ、まじでこの女、終わったら気絶するまで犯してやるからなと笑顔を浮かべながら無言で伝えた。
それで二人は部屋を出て今にいたるわけだが、まさか昨日調べた通りの服装にメイクに髪型の女の子が現れるとは思わなかった。
見た目だけなら綺麗というよりは庇護欲をそそる可愛い系だ。
ただ地雷系だと前もって聞いているからか、今までセックスしてきた女性とはどこか違った雰囲気を感じた。
「座って」
さっきまで彼氏に聞かせていた甘ったるい声とは違った素っ気ない声で言われ、俺はソファーに座る。
「名前」
「名前?」
「あなたの、な・ま・え!」
「ああ、楠木祐輔です」
「ふーん。何歳?」
「えっと」
佳香さんには中学生だってことは明かしていいと言われているから、まあいいか。
「14だけど」
「14!? ……モモより10も年下の子供じゃん」
はあ、とはっきりとしたため息をつかれた。
いやまあ、当然の反応なんだけどさ。なんだけど、少しイラッする。
「こんな子供とエッチしろって……。トシくんの命令じゃなかったら犯罪だよ」
「命令でも犯罪だと思いますけど」
「何か言った?」
「いいえ、何も」
なるほど、彼氏の前ではネコ被っていたというわけか。
というよりも男の前では弱々しい女を演じているタイプなのかもしれない。
「一応言っておくけど、トモくんがここで一緒に泊まれって言うから仕方なくだから。エッチするのも、本当に……ほんっとーにイヤだけど、トモくんがしろって言うから我慢する。だから間違っても、勘違いしてモモのこと好きになってストーカーになったりしないでね」
いい、わかった?
と念入りに聞いてくるので、俺は頷く。
「はあ、ほんと最悪……。なんでモモが中学生と一週間も暮らさなきゃ……」
ぶつぶつ文句を言われて、俺は苦笑いを浮かべる。
すると彼女は大きくため息をつき、
「まあ、この一週間……めちゃくちゃイヤだけどよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
頭を下げると、彼女はさっさとソファーに横になって派手な装飾をしたスマホを操作しだした。
スカートが捲れてピンクのパンツが見えるが、中学生相手に警戒してないって感じだな。
「なに、どうかしたの?」
俺は何をすればいいのかとキョロキョロしてると聞かれた。
だがすぐに彼女は「ああ」と何か納得したのか、寝室へと向かう。
それから一分後。彼女は最新のゲーム機を手に戻ってくると、それを俺に渡した。
「はい、これでもやって遊んでな」
「え、これ……」
「どうせ好きでしょ、ゲーム」
じゃ。
それだけを言って彼女はソファーで横になりながらスマホをいじる。
画面にはSNSの表示。しかも、なんか延々と『はあ』とか『最悪』とか『トモくんに会いたい』とか殴り書きをしている。
俺は渡されたゲームを起動した。
ピコンという起動音を聞きながら、無表情のまま画面を見て──心に強く誓った。
──この女、絶対にめちゃくちゃにしてやる。