大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
スワッピング生活二日目、月曜日。
俺は体を揺すられて起こされた。
「ちょっと、祐輔くん……起きないと学校遅刻するよ?」
「ん……」
彼氏のいる女性との同棲生活。
やっていることは大人──いや、大人でもこんなことしないけど、それでも中学生が経験するようなことではない。
そんな非日常生活を送る中でも、残念ながら中学校に行かなくてはならない。
「ほら、早く起きて」
「キスしてくれたら、起きます……」
「バカなこと言ってないで早く起きなさい」
「ぐぅ」
それでも起きずにいると、桃花さんは大きなため息をついてから、
「ん、ちゅ……っ♡」
唇にキスをしてくれた。ちょろい。
「起きました」
「最初から起きてよ、もう!」
目を開けるとエプロン姿の彼女が頬を膨らませていた。
時計の針は7時を示し、普段よりも早い起床時間だ。
「朝ご飯もうできてるから。顔洗ってきて」
「え、作ってくれたんですか?」
「そうだけど。ほら、早く」
背中を押されて洗面台へ。
確かにリビングからはいい匂いがした。
「いつも彼氏さんに作ってあげてるんですか?」
「うん、そうだよ」
「えっ、もしかしていつもこんなに早く朝起きてるんですか?」
「もちろん。だってトモくんが会社に行くのいっつもこれぐらいの時間だもん。だからだいたい……一時間ぐらいかな、早く起きて朝ご飯とお弁当を作るの。えっ、彼女なら当然でしょ?」
めちゃくちゃいい子だ。
浮気しまくりの彼氏には勿体ないぐらいに。
なんだかため息が出そうになるのを抑えてイスに座る。
トーストに目玉焼き、サラダにヨーグルトといった簡単な朝食でも、ちゃんと用意してくれるのは男として嬉しい。
しかもまだ会って一日や二日の俺にも同じことをしてくれた。
「桃花さん、絶対いい奥さんになりますよ……俺が保証します」
「……中学生に保証されてもなんか微妙だけど、まあ、ありがとっ」
複雑そうに苦笑いを浮かべる桃花さんから箸を受け取り、いただきます、をする。
「だけど惜しいなあ……あと一つ、たった一つのことをするだけで、完璧な奥さんになれるんですけどね」
「えっ、なになに、モモの何が足りなかったの!?」
「それはですね」
「あっ、待って待って、メモするから待って!」
「朝はおはようフェラして起こしてくれたら、男としては最高の目覚めでした」
「……期待したモモがバカでした。このませガキ!」
いいから黙って食えと怒られた。
「いやいや、男としてはかなり真面目な話なんですよ?」
「それ、祐輔くんだけでしょ」
「いやいや、そうとも限りませんよ」
「だってトモくん、前に朝からエッチしたいって言ったら『めんどくさい』って怒ったもん」
「その時はほら、たまたまとか?」
「別の日も、そのまた別の日も。最近は夜でも、エッチしたいって言ったら『疲れてるから』とか『めんどくさい』っていつも断られるもん」
それは、他の女とやり過ぎて桃花さんが誘う時には精子が枯れているとかじゃ? と思ったけど、それは口に出せなかった。
桃花さんも薄々だがそれに気付いているのか、しょんぼりしてしまった。
「まあ、人それぞれなんですかね……」
「ほら。やっぱり祐輔くんだけじゃん」
「ですかね。でも、俺は桃花さんみたいな人に誘われたらめちゃくちゃ嬉しいですけどね」
「え……」
「それに、朝早くに起きて朝ご飯を作ってくれて、お弁当まで用意してくれる。それだけでも嬉しいのに、朝からフェラで起こされたら幸せで、もしかしたら学校行きたくないってなるかもしれないです」
「……」
桃花さんは「そっか……」と呟く。
「そうやって面と向かって嬉しいって言ってくれると、やっぱいいね……」
「……彼氏さんは、あんまり喜んでくれないんですか?」
「まあ、ね……。慣れかな、たぶん! もう二年も同棲してるしさ!」
空元気のように笑って誤魔化そうとするが、悲しそうな顔をしている時点で彼氏に不満があるのがわかる。
まあ、不満があっても言えないのだろう。
もしも不満を口にすれば別れると言われるのがわかっているから。
好きだから一緒にいたいのはわかるが、その依存──洗脳は断った方がいいと思う。
「桃花さん──」
「はい、この話は終わり! 朝から暗い気持ちになったらダメ! ねっ?」
そう言って桃花さんはそれ以上、何も聞くな、何も言うなという感じで話の流れをぶった切った。
「ですね。せっかくの美味しいご飯が台無しになっちゃいますから」
「そうそう!」
「で、明日はしてくれるんですか?」
「え……まあ、気が向いたら……いいよ?」
「おはようフェラですよ?」
「わかってるよ! ってか、言い方がいやらしい!」
「いやらしいことですから」
「はあ……。というか、昨日の夜あんなしたのに勃つの?」
あれから結局、三回戦までした。
まだまだしたかったが、桃花さんに「明日はお互いに学校も仕事もあるからこれで終わり!」と強制終了させられてしまった。
「もちろん、まだまだ勃ちますよ」
「ほんと性欲おばけだね。ませガキ」
「なんなら今からでもできます」
「そうだとしてもこっちは遠慮しておきます。お互いに学校と仕事があるんで。というより、朝起きたら筋肉痛みたいになっててめっちゃ辛かったんだからね!?」
「そんなにですか?」
「そうそう。だから休ませてください」
「えっ、じゃあ、今日の夜は無しですか……?」
少しがっかりした感じで見つめると、桃花さんは「うっ」と漏らし、目を背けた。
「ま、まあ……夜には回復してると思うから、まあ、いいよ?」
「よしっ!」
「だけど、今夜は絶対にゴム付けてよ!?」
「あー、考えておきますね」
「こら、ませガキ!」
ぷんぷん怒る桃花さんだが、さっきの悲しそうな顔から明るい表情に変わっていた。