大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「あっ、もうすぐ着くよ!」
険しい山道を車で移動していくと、道路端に看板が見えた。
運転していた桃花さんは嬉しそうに看板を指差すが、俺はそっぽを向きながら「そうですか」とため息混じりに返事する。
「もう、まだ怒ってんの?」
「べつにー、怒ってませんけどー?」
「せっかくフェラして、お口に射精までさせてあげたのに……ぷぷっ、そんなに冷たいフェラは嫌だったの?」
桃花さんは俺の反応が面白かったらしく、アイスクリームと肉棒を交互にフェラし続けた。
最初こそ変な感覚だったけど、暑くなったり冷たくなったりが交互に肉棒を襲う刺激が段々と心地良く感じる自分が、なんか嫌だった。
いつも通り口内に射精すると「気持ち良かった? クーラーフェラ!」と聞く桃花さんのドヤ顔もなんかムカついて、こうしてふてくされているというわけだ。
「夜はちゃんとするから、ねっ、機嫌直して!」
「わかってますよ。元から別に怒ってませんから」
「そう? 良かった。で、どうだったの、気持ち良かったの?」
ニヤニヤしながら聞かれ、俺はため息をついて窓の外を眺める。
それから数分。
ようやく目的地に到着した。
「よし、到着! はーい、下りて下りて!」
旅館の前の駐車場には多くの車が停まっていた。
全部が全部、宿泊というわけではないだろう。直通のバスも街から運行しているらしいから、車で来ている人の多くが俺たちのような日帰りだと思う。
「めちゃくちゃ人来てそうですね。まだ11時前なのに」
「だねー。温泉だけじゃなくってランチバイキングも人気らしいから、それ目的で来てるかも」
「なるほど」
隣に立った桃花さんは右手を出して止まる。
俺も左手を差し出すと、桃花さんはにっこりとした笑顔を浮かべて隣を歩く。
こんな恋人みたいなこと、奈菜ともまだしてないな。
そんなことを考えながら旅館へ。
受付をしていると大勢のお客さんの姿が目に留まった。
家族や恋人同士で来ている人から海外からの旅行者まで。
多くの人が既に入浴を済ませたのだろう、浴衣に着替え、ランチバイキングが行われる大広間へと向かっていった。
「ランチバイキングが始まるのが11時からだから、時間的にはタイミング良かった かもね。はい、日帰り用の浴衣」
桃花さんから浴衣を受け取る。
宿泊と日帰りで色の濃さが違うらしい。
男は青で、女は赤。
やっぱり宿泊よりも日帰りの方が多い気がした。
「それじゃあ、また後でね。あっ、大丈夫? 久しぶりに一人でお風呂入ることになるけど、ちゃんと入れる?」
「……」
「冗談冗談、そんなに睨まないで。じゃあ、上がったらここでね」
桃花さんは手を振って女風呂へ向かった。
「なんか、今日はやけに雰囲気が違うな」
フェラしてもらったのがきっかけだけど、いつも以上に冗談を交えて話すし、人前でもボディータッチしてくる。
初めて外でデートしたからってのもあるけど、彼女の気持ちに何らかの変化があったように感じる。
「恋愛感情が彼氏から俺に向いた……?」
元から従順な性格で依存体質な彼女。
彼氏に相手されなくて寂しい思いをしていたのだから、彼氏大好き依存体質な彼女のその矛先が、この一週間の同棲生活を経て俺に向いた可能性も0ではない。
「確実に向いているかどうかはわからないが、揺れているのは確かだろう」
俺はそんなことを考えながら温泉を楽しんだ。
♦
「ごめん、待たせちゃった?」
「いえ、俺もさっき出たばっかなので」
「そっか、良かった……どう、浴衣?」
男の入浴より女の入浴の方が長いのは当然だ。
俺から少し遅れて出て来た彼女は、浴衣姿でくるりと回る。
「綺麗ですよ」
「ほんと? 良かった……」
頬を赤らめながら視線を下げて嬉しそうにする彼女。
この反応も、本来は彼氏に言われて喜ぶような仕草だ。
「桃花さんって意外と派手な服よりも、こういう落ち着いた服の方が似合いますよね」
「意外ってのは気になるけど、まあ、そうなのかな」
難しい表情をする桃花さんを連れてランチバイキングの会場へ。
多くの人で賑わった会場には、俺たちのように浴衣を着た客で溢れていた。
「それにしても、日帰りの客にも浴衣を貸し出してくれるのって珍しいですよね」
日帰りなら温泉から出たら着ていた服をまた着たり、Tシャツ短パンみたいな簡単な服が多い。
「そうだね。なんかさ、こうしっかりと浴衣を着ると、まるでお祭りに来たみたいな感じだよね」
「あー、確かに」
「祐輔くんは今年お祭り行った?」
「行こうと思ったんですけど行ってないんですよね。桃花さんは?」
「仕事! はあ、学生の頃は行ってたんだけどねー。だからこうしてさ、普段は着ない浴衣とかの服を着るのって新鮮でいいよね」
その言葉を聞いて、ふむ、といいことを思い付いた。
「ん、どうしたの?」
「いえ、面白いこと考えて……」
「なんか祐輔くんがそう言うと、嫌な予感しかしないんだけど……それ、大丈夫なやつ?」
「きっと桃花さんも悦んでくれると思います」
「悦んで、か……。なんとなくエッチなことかなって想像付いたよ」
桃花さんは俺の腕を組むと、顔を覗かせる。
「楽しみにしてるね?」