大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
結果として俺は月曜日の学校を休んだ。
なにせ俺と桃花さんは寝ずに朝まで交わっていたんだ。
お互いに「もう寝よう」という言葉は口にせず、終わったのも、ラブホの宿泊時間が近くなったからだった。
帰って寝よう。そんなことを考えていたら、桃花さんは仕事に行くと言った。
休む選択もあったが「うち従業員少ないから」と笑った。ちゃんとした大人だな。
一睡もせずにシャワーを浴び、着替えると、部屋を出る前に俺に抱き着き、
「またさ、会ったりしたらダメ……?」
と言った。
弱々しい声と、不安を意味しているかのように俺を抱きしめる手には力が込められていた。
「もちろん。桃花さんが嫌だって言っても、俺は元からそのつもりでしたから」
そう答えると、桃花さんは嬉しそうにはにかみキスをする。
──そして、一週間限定のスワッピング生活は終わりを迎えた。
♦
「──という感じです」
「なるほど」
次の日の火曜日。
昼休み、学校の保険室に呼ばれるなり佳香さんに一週間のことを聞かれた。
白衣を着た彼女は何度か頷くと、ふう、と一息吐く。
「結論から話すと、あの二人は昨日で別れたそうだ」
「えっ、そうだったんですか?」
「ああ、あの男から聞いた」
佳香さんは、ふっ、と鼻で笑う。
「そのときはメッセージの文面だけでもわかるほど大喜びしていた。やっと独り身になれたーとな。だが、今朝になって急に「一緒に暮らさない?」と連絡が来たよ」
「うわ、もうですか……。節操ないですね」
「そうだな。だがおそらく、理由は別にあるのだろう」
「別ですか?」
「いつもは朝になったら起こしてくれる彼女がいなくて会社を遅刻して、いつもは彼女が作ってくれる弁当も無くコンビニのカップラーメンを食べて、帰って真っ暗な部屋を見て辛くなったのだろう」
「……ああ、なるほど」
要するに今まで桃花さんが母親のように何もかもしてくれたが、別れて出て行ったことによって全て自分でしなくてはいけなくなった。
「彼女の有難みをわかったってとこですかね?」
「そんなとこだろう。もちろん、こんなのまだ序の口だがな」
「それで、佳香さんはあの人と同棲するんですか?」
「私が? まさか」
鼻で笑うと、彼女はマグカップに口を着けながら目を細める。
「前にも言ったが、私は縛られるのが嫌だから結婚しないんだ。なのになぜ、あんなろくでもない男と同棲なんてしなければならない」
「あー、そういえばそうでしたね」
「あの男とは、ただセフレの考え方が合ったからセフレでいるだけだ。あんな男の世話なんて、老人の介護をするのと変わらないのだぞ」
「そ、そこまで言うんですね」
「ああ。ついでに言うとお前が彼女と一週間暮らしている間、あの男を私の家に泊めたことは一度もない」
「えっ、そうなんですか?」
「世話してやるほど私は優しい女じゃないからな。おそらく他の女の家に……は、ないだろう。あの何もできない男を泊めてやる物好きはいないからな。おそらくネットカフェにでも泊まっていたはずだ」
「なるほど」
「それで、彼女との関係はこれからどうするつもりだ?」
桃花さんと付き合うのか、それともこのまま終わりか、ということを聞きたいのだろう。
「付き合うとかはないですね。中学生なので。ただ今週末デートに誘われました」
「ほお、要するにセフレか」
「まあ、そうなりますね」
「いいんじゃないか? 彼女にいい男ができるまで相手してやれ。それが、狂わせた男の責任の取り方というやつだ」
「きっかけを作ったくせに無責任な」
そこで昼休みの終わりを告げる鐘が鳴る。
俺は保健室を出て教室へと戻った。
♦
──激動のスワッピング生活を終えて、時期は中学3年生の10月。
学生たちは受験日が迫り、就職活動に手を掛け始めた。
元は35才の俺も例外なく受験勉強に日々を注いでいた。
「ねえねえ、ここなんてどうかな?」
「……」
「都内の1LDKでこの値段ならいいんじゃないかな。あっ、でも交通機関から遠いから自転車買わないとだね」
「……」
「近くにスーパーは……あっ、いいとこあった。学校帰りにここで買い物して……って、ねえ聞いてる?」
「……お前、受験勉強しに家に来たんじゃなかったのか?」
同じ高校を受験するということもあって奈菜が毎日のように家に来るようになった。
が、実際は受験勉強ではなく高校進学と共に一人暮らしする俺の家探しだ。
「受験勉強は後で。ほら、先に住む場所とか決めちゃわないと」
「……落ちたらどうすんだよ」
「その時はその時だよ。あっ、この家さっきのとこよりも広い!」
ぱんぱんと肩を叩かれる。
「それに祐輔が部屋決めてくれないと私が決められないもん」
どうやら奈菜は一緒に暮らすという考えは無いらしい。
それでも近所に暮らし、ご飯を作って一緒に食べる計画を立てているのだとか。
「あっ、そうだ! 今度の土日に一緒に東京行って探してみようよ!」
「気が早すぎだろ」
「いいでしょ、別に! ねっ、お願い! あっ」
ニヤリと悪い笑みを浮かべた奈菜。
「どうせなら一泊二日でさ、ホテルとか泊まって楽しもっ?」
「ホテルねえ」
「そうそう。もしお願い聞いてくれたら、なんでもしてあげるから……ねっ♡」
猫撫で声で誘われた。
まあ、最初から予定なんて無かったから別にいいんだけど。
「じゃあ、前借りお願いしてもいいですか?」
チャックを外して肉棒を取り出すと、奈菜は言いたいことをすぐに理解した。
「前借り? ……もう、しょうがないなあ。下に祐輔のお母さんいるんだから、変な声出さないでよ」
出さないよ。
そう答えると、奈菜は耳に髪をかけて俺の前に四つん這いになると、肉棒に舌を這わせる。