大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「彼氏? こっちに?」
そう聞くのが当然だ。
彼女は北海道から引っ越してきたのだから。
俺と奈菜みたいに同じ高校へ一緒に進学しに東京へ来たのだと。
だが、
「……ううん、遠距離」
「あー、そうなんだ」
北海道と東京の遠距離って。
「なにその顔。どうせ上手くいかないとか思ってんでしょ」
「いや、そういうわけじゃ」
「上手くいくもん、いくから、絶対!」
少し不機嫌そうに話す白石。
まあ、何かあるのだろうなとは思ったけど聞かなかった。
そして自然と話は途切れ、入学式、それから担任の話へと変わり今日は午前で終わった。
「そういえばあんた、一人でこっちに来たの?」
「こっちって?」
帰り支度をしているとき白石に聞かれた。
「東京」
「ああ、そういうこと。いや、幼馴染とこっち来たんだよ」
「へえ、そうなんだ。その幼馴染は別クラス?」
「そう、2組。っと」
噂をすればなんとやら。
教室の中を一旦確認してホームルームが終わっているとわかると、真っ直ぐこっちに来た。
「祐輔、終わった?」
「ああ、もう帰れるけど」
「えっと、ごめん! 友達とこれから、東京案内してもらう約束しちゃった」
「友達?」
と、廊下を見るとこっちを見る二人の女子がいた。
俺の知らない二人。ということはこっちで知り合った、クラスメイトってことか。
「もう友達できたのか」
「うん! 祐輔と違って私、人見知りしないタイプだから。じゃあね!」
人見知りじゃねえよ、と言い返す暇も貰えず友達のもとへ帰って行ってしまった。
「幼馴染って女の子だったんだ」
「ん、そうだけど」
「彼女?」
「いいや」
「だよね、彼女いたら引っ越し初日に家で大音量AV鑑賞なんてしないか」
だからAVじゃないんだが。
と、それを否定すると色々とややこしくなるのでグッと飲み込んだ。
「じゃ、あたし帰るから」
「ああ、じゃあな」
白石が手をひらひらさせて教室を出ていく。
他のクラスメイトがスカートの長さをひざ丈で揃いているのに、白石だけめちゃくちゃ短くしてるから目立つ。
モデルのような細い脚はエロく、女子高生というのは興奮材料になる。
まあ、彼氏いるって言ってたし、ガード固そうだし、さすがにすぐ狙うとかはないけど。
そんなことを考えながら俺も教室を出る。
学校から離れて近くで駅に行くと、
「あっ」
駅のホームで白石と会った。
「ストーカー?」
「なんでだよ。帰る家一緒なんだから帰る道も一緒に決まってるだろ」
「うわ、その言い方イヤ。一緒に住んでるみたいじゃん」
「なんでそうなるんだよ」
とか言いながら自然と一緒に電車を待つことに。
まあ、ここで「じゃ」と言って離れるのもあれだし、白石も「じゃ」とは言わなかったから無言で離れるのも失礼かなとか思って。
「そういえば楠木って部活とか入んの?」
「いや、とくにその予定ないかな。運動とかあんま得意じゃないから」
「ふぅん、じゃあ文化系は? うちの学校、体育会系より文化系の方が力入れてるってホムペに書いてあったから」
「えっ、入学前にホームページなんて見たのか?」
「当たり前じゃん。あっ、電車来た」
空いていたので俺と白石は座ることに。
「わざわざ北海道から東京に出て学校選びで失敗したくないじゃん。願書提出前に東京の学校は全部調べたよ」
「へえ、意外」
「意外ってなにさ。こう見えてあたしって真面目だから。つか、真面目で頭良くないとうちの学校入れないでしょ」
「そういえば」
確かに言われてみればそうだ。
うちの学校って偏差値高いんだった。
じゃあ白石も見た目だけはギャルっぽくて、中身は真面目?
「白石ってさ」
「うん」
「もしかして、高校デビュー?」
「……」
聞いてはいけないことを聞いたときに生まれる間が。
ガタンゴトンと電車が走る音が鳴り響き、少ししてから、
「いいや」
「そうか」
それ以上は深く聞かなかった。
「で、話を戻すけど」
「戻すんだ」
「文化系の部活にさ、”ボードゲーム部”ってのがあって、そこに見学行こうと思ってるの」
「ほお、いいんじゃないか」
「暇なら付き合ってくんない?」
「誰が、俺が?」
「しかいないでしょ、あんたに言ってんだから」
「ボードゲーム部って、え、何? スー〇ァミとか6〇とかして遊ぶの?」
「……なにそのチョイス。もしかしてだけど、ボードゲームってやったことないの?」
「ああ」
「えっ、マジ? うわ、ボードゲームやったことないとか終わってるわぁ……いい、ボードゲームってのは──」
と、白石に一駅、二駅、三駅と延々にボードゲームの話をされた。
ギャルが人狼ゲームがどうとか語ってるのは違和感だらけで、やっぱり白石は高校デビューなんだなとか思ってしまった。
「──というのが、ボードゲーム。わかった?」
「なんとなく」
「でも説明だけじゃわからないから。あんたどうせ暇でしょ? 一日だけ付き合ってよ」
「まあ、見学だけならいいけど」
「ほんと? 良かった……いやあ、部活動紹介で部活の先輩見たらあたしと正反対のタイプで、絶対に一人で行ったら浮くだろうなって思って」
「まあ、クラスでも浮いてるしな」
「うざ」
最寄り駅に着くと、白石は駆け出し、
「じゃ、明日見学行くからよろしく!」
と、走って行ってしまった。
ここまで来たら一緒に帰ってもいいだろと思うけど、彼氏持ちだから駄目なのかもしれない。