大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「最悪!」
学校の廊下。
楓はふくれっ面のまま前を歩く。
「そんな怒んなって」
「誰のせいだと──うぅ!?」
楓は駆け出すと女子トイレへ向かった。
セックス中は満足そうだったのに、帰るからとパンツを履いたら機嫌が悪くなった。
中出ししたのがバレた、というわけではなく、量が多すぎて怒った感じだ。
なにせ歩いたら溢れ出して、パンツでは防ぎきれず太股にまで垂れてきているみたいだから。
そして戻ってくると、楓は目の前に立ちむすっと目を細める。
「……出しすぎ」
「悪い悪い、そこまで頭回らなかった」
「嘘付き。あたしとしてるんだから当然、奈菜ちゃんとも中学のとき学校でしてたでしょ」
「まあ」
「だったら気付いてたでしょ。自分のあの、あれの量がヤバイってことぐらい」
「だとしても、奈菜にはなんも言われなかったな……」
昼休みだろうと放課後だろうと、いっつも中出ししてたけど何も言わなかった。
「もしかして、なんかいい方法あるのかな……」
「奈菜に聞いてみたらいいんじゃない?」
「そうしよっかな。って、もう学校でしないから!」
「またまたー」
「この変態が……っ!」
楓は難しそうな顔をしながら隣を歩く。
どうやらさっきよりは歩きやすくなったらしい。
玄関へ行き、靴を履き、駅へ。
「そういえばさ、あんたクラスに友達できた?」
「……同じクラスなんだからできたかどうかわかるだろ」
「できてないんだ。話相手あたししかいないもんね」
「奈菜がいる」
「別のクラスじゃん。というか、奈菜ちゃんも最近はクラスの友達と一緒にいて構ってもらえてないじゃん」
「……」
「あんたって、男友達作るの苦手なの?」
「どうだろうな。まあ、女の”友達”はできやすいけど」
「……」
嫌な顔で見られた。
「そういうお前はどうなんだよ」
「あたし? あたしはいるよ。同じクラスにも違うクラスにも」
「へえ」
「信じてないでしょ。あっ!」
駅に着くと、楓は駅のホームで電車を待っている二人組の女子高生に手を振る。
「ゆなちゃん!」
片方の名前を呼ぶと、ゆなと呼んだ子はこちらを向いて明るい笑顔を浮かべて手を振り返す。
「あっ、かえちゃ──」
だが隣にいる俺を見て、その子は笑顔だった表情を強張らせると、隣にいるもう一人の女子高生の後ろに隠れた。
隣にいた眼鏡をかけた女子高生は俺たちを一瞥すると、まだ電車が来ていないのに改札口を通って行ってしまった。
「嫌われてんじゃん」
「いやいや、どう考えてもあたしじゃなくってあんたを見てでしょ」
「俺、なんもしてないぞ」
「無意識にいやらしいことしたんじゃないの……?」
「そんなことするか。というか、そんなに手が早かったらもう全校生徒に手を付けてることになるだろ」
「まあ、それもそっか。それに理由、なんとなくわかってるし……」
「そうなのか?」
「うん。あの子、橋田優那ちゃん。クラスは3組で、ボードゲーム部の見学に行ったとき仲良くなったの」
「へえ、俺も一緒に行ったのに会わなかったな」
「その時はほら、隠れてたから。あの子、大の男嫌いなの」
俺たちも改札を通る。
すると、さっきの二人組が楽し気に話している姿、そして──手を繋いでいる姿が見えた。
「あー、なるほど」
「まあ、そういうこと。もう一人の方は知らないけど、たぶん先輩なんじゃないかな。そういう関係だから、あんたが一緒にいたら嫌な顔されたというわけ」
楓は大きくため息をついた。
要するにレズ、もしくは百合。
仲良さそうに話す二人の姿は、まるで姉妹のようだ。
少し身長の高い姉と、小さくて可愛い感じの妹の優那。
優那の方は庇護欲をそそる幼さがあるけど、姉のような存在の彼女はこれぞ優等生って感じの見た目だ。
黒縁メガネに三つ編み。
目付きはあまり良くなく棘のありそうな雰囲気だが、優那に向ける笑顔は優しそうなお姉さん感がある。
体型も全体的に細身だが、膨らむべきとこは膨らんでいていいモノを持っている。
女同士で楽しむには勿体ない身体だ。
「……あんた、今エロいこと考えてるでしょ」
「ん、いいや」
「あの二人を見る目が獣っぽい。止めときなよ、百合の間に挟まろうとする男は死罪って相場が決まってるから」
「何処でだよ」
「百合界隈」
「……」
「まあ、どうせ話しかけても相手されないでしょうけど。あの二人の男を見る目、なんか怖いんだよね」
「男嫌いの百合なら、まあ、そうなるんじゃないか」
まるで二人の世界。
そこに侵入する男は害虫みたいな。
そんな雰囲気だ。
さすがにあれは手強いだろうな。
そう思いながら駅に到着した。
「あれ、あの子もこの辺りなんだな」
「うん、家もけっこう近いよ」
優那も同じ駅で降りたのが目に入った。
ただもう一人の姉っぽい子はいない。どうやら彼女は別の駅らしい。
鞄を抱きかかえるようにして電車を降りる彼女は、どことなく不審者感があった。
だから目で追ったのだろう。
優那の後ろを付ける男の姿も。
優那が小走りすると、男も小走りする。
「なあ、あれ……」
「ん、あれって何よ。あっ、ちょっと売店見てくる!」
楓は気付いていないらしく駅のホームにある売店へ走っていった。
すると、男が優那に声をかけたのが見えた。
優那は子犬のようにぷるぷる震え、涙目のまま脅えていた。
だが男は興奮気味で、逃げようとする優那の肩を抑え何かを言っている。
いや、あれはまずいだろ。
俺はそう思い二人のもとへ向かった。