大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「それじゃあ、女子のクラス委員長は長尾に決定だな、はい拍手!」
担任の先生がそう言うと、パチパチと拍手が響く。
「ありがとうございます」
教壇の前に立つ彼女は、視線が集められると頭を下げる。
長尾優子。
成績は学年一位。授業態度も良く、お人好しすぎるほど誰にでも優しく、話しやすい性格。
三つ編みの黒髪。地味な黒の眼鏡。
ブラウスの胸元を押し出す豊満な胸は魅力的だが、たぶん俺みたいなのと絡むことのないタイプだろう。
これぞ優等生といった容姿に性格の彼女は、クラスの委員長に任命されてスピーチを始める。
当たり障りのない完璧なスピーチ。
そして一日が終わると、鞄を持った楓に声をかけられる。
「あっ、祐輔。帰りスーパー寄っていい?」
「ん、なんか買うものあんのか?」
「なかったらスーパーに行かないでしょ」
同棲中の彼氏彼女みたいな会話を教室でする楓。
「奈菜がね、キムチ鍋したいんだって。だから食材買って帰りたいの」
「なるほど」
「もちろん、お金は祐輔持ちね」
「なんでだよ」
「だってあんたの家でするんだし。文句あるならあたしだけじゃなく奈菜に請求して? 祐輔が、あの子に言えるならね」
「……」
楓もそうだけど、奈菜にもめちゃくちゃ世話になってるからな。
主に食事と掃除。もし二人に手伝ってもらえなかったら、たぶん餓死してるかもしれない。
あっ、あとエッチなことも。
なんだかんだ三日に一回はどっちかとしてるからな。
「じゃ、荷物持ちお願いね」
「はいはい」
「──あっ、楠木くん。ちょっといいかな?」
教室を出ようとしたら呼び止められた。
長尾優子だ。
「はい、忘れ物。三者面談の紙」
「ああ、さっき先生に口頭で話したからいらなかったんだ」
「え、そうだったんだ。ごめんね、忘れたのかなって思って余計なことしちゃった」
「いや、忘れてたのは本当だからありがとう」
「良かった」
「もう祐輔、優子ちゃんに迷惑かけんじゃないの!」
「別に迷惑かけてないだろ」
「ふふ、楠木くんと白石さんってほんと仲いいよね」
「そ、そそそ、そんなことないよ! ない、ほんと!」
楓が挙動不審な否定をするのを見て、優子が口元に手を当て笑う。
へえ、優子ってこんな笑い方すんだ。
それから軽く話してから、俺と楓はスーパーに寄り、買い物をしてから家に帰った。
…………。
……。
「ふう、食べた食べた! ごちそうさま!」
「美味しかったね。雑炊まで食べちゃった」
「ねっ、ちょっと太ったかも!」
「え、やだ! 明日から食べる量減らそう」
「……二人とも痩せてるんだからいいじゃん」
食事を終えて。
奈菜と楓が本当に思ってるのかどうかわからない会話をしていたから、つい口を挟んでしまった。
「今は痩せてても、女の子は油断したらやばいんだって」
楓がベッドを背に座りながら俺を見る。
「そうそう、油断したらすぐぶくぶくなっちゃうの。祐輔だって、ぶくぶくなったわたしたち嫌でしょ?」
テーブルに腕を伸ばしスマホを眺める奈菜に言われた。
「まあな。でも、後で運動するじゃん」
「運動? 運動……」
「まあ、そうなんだけどね♡」
楓はピンときてないが、奈菜はすぐにピンときた。
「楓ちゃん、エッチな運動ってこと」
「あっ……はあ。ほんとあんたってすぐそっちに頭いくよね」
「そういう男だからな」
ベッドに座ると、楓の顔の後ろに座る。
俺の太股に顔を挟まれる楓は目を細めながら、顔を左右に動かして太股に攻撃してくる。
「そういえばさ」
奈菜がスマホを見ながら俺たちに聞く。
「二人とも、バイトとかする?」
「バイトか、俺はなんかしようかなって思ってるけど」
「あたしもしようかな。仕送りは貰ってるけど、それだけだといろいろ大変だから」
「だよねー。わたしもしようかなって思ってるんだけど、テニス部の活動、平日も土日もあるからさあ」
奈菜は入学前に言っていた通りテニス部に入った。
楽しいらしいけど、平日は18時まで、土日は午前中か午後のどっちかびっしり部活があるらしい。
大会が近くなったら、もっと忙しくなるのだとか。
「奈菜は無理なんじゃないか?」
「うん、先輩たちは夏休みとか冬休みとかに短期でバイトしてるんだって。他は無理だって」
はあ、と大きくため息をついた奈菜はスマホをテーブルに置く。
画面はアルバイトのサイト。奈菜も仕送り貰ってるらしいが、額は俺や楓よりも少なく、かなり生活は厳しいらしい。
親に迷惑かけたくないから。
と、完璧な理由で仕送りの金額を自ら減らしたらしい。
俺には絶対に無理だ。
だから今日みたいに三人で食事を済ませて食費を浮かすこともよくある。
「だけどさ、テニスのラケットとウェアも買わないといけなくて……はあ、テニスはお金持ちのするスポーツだよ」
「まじか」
「あっ、じゃああれは? 前に雑誌に載ってたんだけど」
と、楓がバッグから女性ものの雑誌を取り出す。
ファッション誌とは少し違う、ちょっとエッチな雑誌。
「なんだこの雑誌」
「え、いや、雑誌の内容はいいの!」
「あっ、これ女性向けのエッチな雑誌だよ。ベッドへの誘い方とか、フェラとか騎乗位の仕方とか載ってたりするんだって!」
「へえ」
「……べ、べつに、あたしそういうのが気になって買ったわけじゃないから!」
「じゃあ、何のために買ったんだ?」
「そ、それは……そう、占い! この雑誌の占い、なまら当たるって有名なの!」
目を細めて疑いの眼差しを向けていると、楓は焦りながら雑誌を急いでめくり、
「こ、これ! この配信サイトで動画投稿したらお金貰えるんだって! YouTubeみたいなの!」
「「……」」
俺も奈菜も言葉を失った。
なにせ楓が興奮気味に女子高生である奈菜に勧めたのは、素人女性がオナニーの動画とかを投稿してお金を稼ぐ動画投稿サイトだった。