大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「楓、それ……」
「顔出しとかは恥ずかしいけど、この雑誌見たらみんなマスクして顔隠してたり、目元を手で隠してるから大丈夫! でねでね、これ誰かが一回見ただけで──」
「──楓ちゃん。それね、アダルト動画の投稿サイトだよ?」
「え……アダ、ルト?」
俺たちと雑誌を交互に見ると、楓は口を大きく開けて固まる。
どうやら気付いてなかったようだ。
「これ普通の動画投稿サイトじゃないんだよ。制服とかエロいコスプレして、オナニーとか、ディルドとかを咥えてフェラしてるみたいなのを、動画とか生配信するんだ」
「もちろん、視聴者はみんな18才以上の男性だよ。マスクとか目元を手で隠してるのは、個人情報を隠すため。……嫌でしょ? オナニーしてる動画、友達とか知り合いにバレるの」
「あ、あ……」
田舎生まれ田舎育ちだからだけでなく、元は根暗な性格だからこういうことを知らないのだろうか。
いや、少し天然が入ってるのだろう。
悪い男に簡単に騙されそうな性格。ああ、俺に騙されて初体験をセフレに奪われたんだった。
「良かったな、俺たちに話して。もしかしたら知らないまま騙されて、ここに顔出しで動画投稿してたかもな」
「うう……危なかった。バイト見つからなかったら、やってたかも」
「まあ、いろんな男にエロい姿見られたいなら止めないけど」
そう言いながら胸を揉むと、頬を赤らめながら睨まれた。
「んっ♡ そ、そんなわけないでしょ!」
「そうだそうだ、楓ちゃんはね、祐輔にしか股を開かない従順な子なの!」
「奈菜ちゃん、それフォローになってないよ」
「あれ?」
「まあ、いくらお金貰えても知らない人に、その……恥ずかしい姿を見られるのは無理だから」
楓は雑誌をテーブルに置いて大きくため息をつく。
奈菜はその雑誌を手に取ると、興味深そうに眺める。
「奈菜は気になるのか?」
「ん、ないよ。だってこういうのさ、知り合いにバレたら人生終わるもん」
「まあな」
「だけど……見てみたい」
ニヤリと、おっさんみたいな悪い笑みを浮かべた。
俺と楓は嫌な予感がした。
「ねっ、ちょっと……ちょっとでいいから、見てみない?」
「言うと思った。止めておけ、こういうのに登録したら変なとこからメール来たりするんだ」
「変なとこ?」
「架空請求だったり、出会系の誘いとかな」
「へえ。もしかして祐輔、やったことあるの?」
「……いいや」
この体ではない。
だが、35才の頃の俺はある。
アダルトサイトに登録して53万もの請求をされたことも、登録してもない出会い系から「一目惚れです、会ってホテル行きましょう」とかいう謎のメールが来たことも。
まあ、それを二人に話す気はない。
「とにかく、登録するのは止めておいた方がいい」
「あっ、これ登録無しでも見れるよ!」
奈菜が雑誌を見ながら言葉を発した。
「ここに小さな米印で書いてあるよ。なんかね、一つの動画だけなら登録無しで見れるんだって。で、二つ目からは月額1980円で見れて、なんかプレミアム? っていう動画は視聴するのに課金しないと駄目なんだって」
「お試し、みたいなのか」
「らしいよ。それならメールアドレスとか登録しないからいいでしょ! ねっ、お願い祐輔、祐輔のスマホで一緒に見よう!」
「なんで俺のなんだよ」
「ちょっと怖いから。ねっ、楓ちゃん!」
「ん、まあ、祐輔のならいいんじゃない」
乗り気な奈菜と、どうでもよさそうな楓。
俺はため息をつくと「一つだけだからな」と言って雑誌のQRコードを読み取る。
「ほらほら、ベッドで横になって見よう! 楓ちゃんも早く!」
「え、うん」
真ん中に俺、で、横に二人が寝そべる。
「シングルベッドに三人は狭いな」
「だからダブルベッド買おうって言ったのに」
「買ってくれたの親なんだぞ。一人暮らしの高校生がどんな理由を付けてダブルベッド買ってって言うんだよ」
「寝相が悪い、とか?」
「実家のベッドはシングルベッドだ」
そんな話をしていると、いくつかの”名前”と”動画のサムネイル”が出てきた。
サムネのほとんどは下着姿でモザイク付き。それに顔もマスクをしていたり目元を手で隠していたり。
その、ちょっと隠しているのがエロい。
奈菜は興奮気味にサムネイルを凝視する。
「うわ、みんなエッチだね!」
「モザイクで見えないけど、本当にエッチなやつなんだ……。登録しなくて良かった」
「で、誰の見るんだ? 一人だけだから慎重に決めろよ」
主に決めるのは奈菜だ。
楓は「興味ありません」みたいな顔をしながら視線はチラチラとスマホの画面を見てる。
むっつりだからな、楓は。
「んー、サムネはかわいい感じなんだけど、たぶんこれは違うかな。あ、この子いい。でも、ちょっと違う」
「奈菜、マジでおっさんみたいだな」
「だって一人だけなんだよ、よく見て選ばないと!」
ランキングというのがあるんだから、ランキングの一位でいいじゃん。
と思うのは違うのだろうか。
奈菜はランキングを順に見ていき、百位ぐらいまで見て、
「あっ、この子!」
奈菜のお眼鏡に適ったらしい。
俺と楓に許可を取るが、正直なとこ奈菜の選んだ女性以外を探す気はなかったのでその子の動画を見た。
マスクで顔を隠した、明るい金髪の女性。
かなりエロい下着を履いた彼女は、ゆっくりと視聴者を誘惑するように両脚を開いた。