大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「痛い」
ゆっくりとした時間が流れる。
「いーたーい! もしもーし、聞いてますか?」
あれからお尻、膣穴、またお尻と三回も続けてした。
で、楓を前に座らせてお風呂に入っていると、なぜだかご機嫌斜めな彼女が風呂場に文句を響かせる。
「どうかしたのか?」
「どうかしたのか? じゃない! 痛い! すっごくお尻が痛い!」
やってる時は文句とか言わなかったけど、お風呂に入るなり「痛い痛い痛い!」と騒ぎ出した。
日焼けでもしたのだろうか。
「なまらヒリヒリするんだけど!」
「まあ、本来はペニスを挿れる場所じゃないからな、尻穴って」
「ちょ、じゃあなんで挿れるの!?」
「え、気持ちいいから」
「ほんと、ムカつく!」
「まあまあ」
柔らかい乳房を揉むと「誤魔化すな!」と叩かれるが、諦めずに揉むと受け入れた。
「ああ、めっちゃ柔らかい。やっぱ楓の胸が一番!」
「ヤリチン野郎みたいなこと言うな、もう! で、この痛みっていつになったら治るわけ?」
「それは、さあ?」
「さあって……」
「まあ、何日かしたら治ると思う」
「そんな、適当な……。あたしの、あたしのこの痛みが祐輔に!」
すると、むすっとした表情の楓は何か閃いたらしい。
「あっ、そうだ」
腰を痛めたおばあちゃんみたいに「痛い痛い痛い」と言いながらこっちを向くと、俺の上に跨り、逃がさないと言わんばかりに首に手を回される。
「祐輔も試してあげよっか?」
「……試すって、何を?」
「もちろん、お尻の穴に大人のおもちゃを挿れるの♡」
「……」
「そうしたら、あたしの苦しみがわかるでしょ? 突っ込んで、うぃんうぃんって起動させるの。ねっ、ねっ? あっ、いっそのことあの本来の使い道とは違う使い方で有名な電動マッサージを突っ込んであげよっか? あれ、祐輔のペニスより少し太いけど……いいよね?」
「……」
「ねっ、ねっ。そしたらあたしの辛さ……理解してくれるよね?」
怖い。目が怖い。
さすがに今は謝るべきかもしれない。
「楓、あの……」
「ん? ああ、安心して。ちゃんとローション使ってあげるから♡」
「ごめんな?」
「何が……?」
「だからその……」
「ん、何がごめんなの? お尻でしたこと? それとも……優しさに欠けてたこと?」
「後者です。反省してます、めっちゃ」
「そっか。じゃあ」
にっこりと、楓は不気味な笑顔を浮かべる。
「一週間、あたしのお願いをなんでも聞いてくれる?」
「……なんでも?」
「そう、なんでも。聞いてくれるよね、もちろん。それとも……いっとく、電動マッサージをアナルに♡」
「わかった。わかったから許してくれ」
「やった♡ じゃあ、はい」
手を大きく広げて何かを待っている。
「ん?」
「ん、じゃない。歩くのも辛いから、お姫様抱っこで連れて行って」
「……」
「返事」
「はい、喜んで!」
それから、俺は楓の言いなり生活が始まった。
♦
「うっ、やっと一週間を乗り切った……」
楓との約束から無事に一週間が経った。
とはいえ、そこまで嫌な命令とかはされなかった。
『デートしよ!』
『今日は家に泊まって!』
『美味しいパフェがあるの、一緒に行こう!』
『ねえ、エッチしたい……っ♡』
などなど。
どれもこれもいつもの楓と変わらない。
『授業中の教室で、みんなの前であたしの足の指を舐めなさい』
とか、そんな性格が変わったような命令とかはされなかった。
「まあ、ただ俺のことを独占したかっただけなんだろうな」
この一週間、やけに独占欲強めだった気がする。
あの日をきっかけに楓の俺への恋愛感情が増した。そんな気はするが「付き合って!」とは言われない。
「今はこれで満足してくれてるけど、いつかは本気で『責任取って!』とか言われそうだ」
はあ、と大きくため息をつく。
けれど心のどこかで、その未来も幸せだろうなと感じている。
「だけど奈菜が許してくれないよな、はあ、困った困った」
奈菜と楓に挟まれて……。
なんて、ハーレム系の主人公になったみたいだ。
まあ、考えていても仕方ない。なるようになるだろ。
「さて、帰るか」
放課後。
鞄を持って大きく伸びをする。
楓は一週間だけの独占で満足したのか、今日は奈菜とショッピングに行った。で、明日は別の友達と遊ぶらしい。
俺と違って同性の友達が大勢いるらしい。羨ましい。
「──あっ、く、くくく、楠木殿!」
ふと声をかけられた。
今度は戦国時代にタイムスリップしたのかと思ったが、どうやら違うらしい。
「お前は、たしか……」
クラスの中でも群を抜くほどのオタク男子数名が挙動不審な態度で俺の前に立つ。
「あ、あああ、僕、佐藤です!」
「拙者は鈴木と申す」
「田中……」
「はあ」
名前は憶えやすいが見た目は憶えにくい。
まあ、この世界では男の名前と顔は基本的に覚えなくていいか。
それにしてもこの三人と初めて話すな。
「で、どうかした?」
「えっと、その……その、ですね」
一応のリーダーっぽい佐藤が周囲を警戒してから、震えた声で言う。
「も、ももも、もしお暇なら……あっ、暇って言い方、失礼でしたね。えっとその、楠木殿の貴重なお時間をちょうだいできれば、そ、その──僕たちのお手伝いをしていただけないでしょうか!」
「手伝い?」
首を傾げると、佐藤は慌てて訂正する。
「あっ、いや、僕たちというか、その……あ、ああ、有栖川アリス様の、手伝いなんですが」
「有栖川アリス? 誰だそれ」
「えっと、えっと、有栖川様は──」
興奮気味に三人は、その有栖川アリスという三年生の先輩の話をしてくれた。いや、強制的に聞かされた。
──有栖川アリス。
帰国子女で可憐なお嬢様。
色白で、おっとりと美しい雰囲気。
お人形さんのように、いや、天使様のように美しい女性。
誰にでも優しく、佐藤鈴木田中にでも優しく接してくれるのだとか。
きっと前世は聖母か女神だったらしい。いや、聖母や女神とかいう偶像に例えるのは失礼か、あはは。
だとさ。
「そ、そそそ、それで、有栖川様が大ピンチなのでござるよ!」