大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「はあ」
よくわからないが、どうやらこいつらは『写真部』の部員らしい。
それから部室へと案内されると、同じようなタイプの男子部員はいた。
だが、その有栖川アリス先輩っていうのはおらず、失恋後みたいなどんよりした空気がするのを部室に入った瞬間に感じた。
「えっと、ここって部室……ですよね?」
「はい、写真部の部室ですぞ!」
一応だが敬語を使う。
なにせ俺を連れて来た佐藤鈴木田中だけじゃなく見知らぬ生徒もいるからだ。
ここにいるのは全員で六名。ガリもデブもチビもハゲもいて、いわゆるオタクが運営する部活なのだろう。
女子はいない。
歓迎ムードではないが、それでも追い出されるようなことはない。
それにしても、
「広い部室ですね、ここ」
写真部にここまでの広さのある部室は必要か?
と思うぐらい、一クラス分の教室ぐらいの広さがある。
「数年ほど前は、部員がこの倍以上いたんです」
「へえ。でも写真部って、外に出て撮影するものじゃないんですか?」
「……」
質問したら、なぜか無視された。
いや、写真部の連中ってそういうものじゃないのか?
綺麗な景色を撮ったり、好きなモノを撮ったり。
決して部室で何かを撮るのが活動方針じゃないだろ、変なこと言ってないよな俺。
「みんな」
すると、佐藤だったか田中だったか鈴木だったか忘れたクラスメイトが部員を呼ぶ。
お前がここで偉いの? 部長なの?
という疑問を持ったが、そんなことどうでもいい。部員たちは長机を挟んだ正面に座る。どの顔も真剣で、ちょっと面白い。
「……これから話すことは、他言無用と。約束してくれますか?」
「は、はあ」
すると、一枚の紙とペンを渡された。
それは契約書みたいな、これから話すことを外部に漏らすなという内容のものだった。
「え、これ書かないと駄目なの?」
「はい」
「なんか怖いんだけど。え、薬とかやってる?」
「そんなことしてません」
「じゃあ、何してるの……?」
「……サインを」
えっ、嫌だ。
絶対に危ないことしてるだろ、こいつら。
だけどここまで来てこの秘密を知らないまま生きたくはない。
仕方ない。
俺はサインをする。
その瞬間、おそらく佐藤だと思う奴は紙を受け取り、厳重そうなファイルに保管する。
「今回、楠木殿には撮影の協力をお願いしたいのです」
「撮影? なんか撮ればいいのか?」
「いえ、楠木殿には──男優になっていただきたいのです!」
「……は?」
真面目な顔で、不真面目なことを言われた。
男優、男優ってモデルとかってことか。いや、それならモデルって言うだろ。
それに俺がパッと出てきた男優って職業は全く別の者。でもまさかな。
「ちなみに、男優って何をすればいいんだ……?」
「有栖川アリス様と、この部室で……セ、セセセ、セックスしていただきたいのです!」
え、ああ、やっぱそっちの男優なんだ。
……35才から中学生にタイムスリップした。
それから奈菜とセックスして、人妻や先輩に同級生、いろんな子と夢のような体験をした。
──でもさ。
学校で、しかも写真部の奴らにいきなり『AV男優になってくれ!』とか言われるとは思わないじゃん。
だってこの学校、俺が35才の時にだって通ってた学校なんだよ?
ってことはさ、当時もこうなる可能性があったってことだよな。まじで何も知らなかっただけなんだな、俺。
とりあえず、詳しく聞くか。
「本気で言ってる?」
「本気です! なあ!?」
「はい、本気でござる!」
「頼む、君しかいないんだ!」
どうやら部員たちは本気らしい。
そして佐藤は、どういうことかを説明してくれた。
──元の写真部は普通の活動をしていた。
花を撮ったり、綺麗な景色を撮ったり、好きなモノを撮ってそれを部員たちで共有して楽しむ。
俺が想像した写真部の活動をしていた。
だが、そんな平穏な日常に災厄と天使が訪れた。
部員でなかった有栖川アリスが、当時付き合っていた彼氏に連れられてやってきた。
チャラチャラしたタイプの彼氏は部員たちに、有栖川アリスとイチャイチャする部屋にこの写真部を指名した。
部員たちは暴力を恐れ、いつか解放されるのを願いジッと我慢した。
けれど一向に二人が来なくなることはなかった。
そして、そんなある日のこと。
「放課後、我々が部室に行くと……そ、そそそ、そこには、あの男とセ、セックスしてる有栖川アリス様がいたのです!」
いわゆるチャラ男に、この写真部はいつの間にかヤリ部屋にされていたそうだ。
普通はそこで怒るだろう、神聖な部室で汚いことするなと。
だけど部員たちは何も言わなかった。
それどころか──黙ったまま、無意識のままカメラを構えていた。
「……美しかった。男に跨る有栖川アリス様が、上下に揺れるたびに全身に浮き出た汗の粒が飛び散る。艶がかった色気のある表情は、まるで天使のようだった。我々は、そこに芸術を見出したのです!」
「……」
それからも、部員たちは隠れながら二人の行為を盗撮した。
だが、部員たちは気付かれていないと思っていたが、当人の二人は最初から気付いていたそうだ。
だが、怒られることも止められることもなかった。
それどころか、
「あの男は言ったんだ。我々に『もっと近くで撮影しろ』と、そして『撮影だけじゃなく動画で録画しろ』と。屈辱だった……だが、我々は拒めなかった!」
その日からここは、写真部とは名ばかりのAV部になったそうだ。