大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
部屋の中は至って普通の教室だ。
書物が並べられた本棚に、木目のテーブル。
そして、ソファー。
「紅茶でよろしいですか?」
「えっ、紅茶……? はい、お願いします」
「それでは少しお待ちください。お菓子のおもてなしはできませんが、くつろいでくださいね」
あれ、ここって学校の、それも図書準備室だよな?
なんでこんな場所で紅茶を出されるんだ? というよりここ。
「なんか、住み慣れてますね」
「ええ、この部屋でよく授業をサボらせていただいてますの」
「先生にバレたりは……」
「先生ですか? ふふっ、知っていてもわたくしには何も言ってきませんわ」
「それは」
「優しい先生方ばかりですから。はい、紅茶をどうぞ」
綺麗なマグカップに注がれた紅茶を受け取ると、アリスさんは隣に座る。
ってか、その言い方だと先生とも……。
聞かなかったことにしよう。
「ありがとうございます」
うん、美味しい。
すると、アリスさんは「そろそろ換気が終わりましたわね」と開けていた窓を閉める。
「なかなか匂いが消えないので、こうして終わったら換気をするようにしてるのです」
「なるほど」
隠す気がないなら、まあ、こっちも気を使わずに聞いていいか。
「もしかして、さっきの少年とも?」
「彼ですか。はい、少し味見を……」
舌なめずりしたアリスさんは、妖艶な笑みを浮かべる。
「といっても、その手前ですが……」
「手前?」
「はい。あれ、ここへ来たということは柑奈さんからわたくしのこと聞いてませんか?」
「柑奈さん? もしかして、あの人?」
「あっ、そうでした。彼女のことは聞かなかったことにしてくださいませ」
「は、はあ」
何かに気付いて、アリスさんは慌てて隠した。
「祐輔さんは、わたくしが”誰とでもセックスをする”と聞いてここへ?」
「理由は他にもありますが、聞いた噂はそうですね」
「はあ、噂というのは広がれば広がるほど大きくなっていきますわね……。いいですか。わたくし、誰とでもはセックスしませんの」
少し迷惑そうな表情を浮かべ、アリスさんは言葉を続けた。
「じゃあ、さっきの子は?」
「彼とは、これしかしてませんわ」
手をひらひらさせる。
一瞬どういう意味かわからなかったがすぐに理解した。
「手コキでってことか」
「はい。だってまだ皮も剥けてない子供ペニスでしたから。本当はその時点でお帰りいただくつもりでしたが、うぇんうぇん泣きながら「僕を男にしてくださぁい!」と頼むものだから……手で、ピュッピュってしてあげました」
「なるほど。つまり、本来は手でもしないと」
「ええ。男性方がわたくしのことを『頼めばやらせてくれるビッチ』だと認識しているのでしょうが、こちらにも選ぶ権利がありますわ」
そう言って、アリスさんは自分なりの考えを教えてくれた。
まず第一に、告白されたりエッチに誘われたりしたらペニスを確認するそうだ。
そこでまず”合格”か”不合格”かを出す。その基準は長さや太さ、それから硬さに反り返り具合とか、彼女なりの基準があるらしい。
で、そこに合格すると次に手で味わってみる。
そこからは企業秘密らしいが、そこを合格するとやっとそこで男側が触らせてもらえる許可を得られる。
「ちゃんとわたくしのことを気持ちよくしてくだされば合格。微妙だったら……ごめんなさい、というわけです」
「な、なるほど」
「その次にやっと……ですが、そこまで辿り着けた人は片手で数えられる程度。なのでわたくし、噂で聞くような経験人数豊富ではないのですよ?」
話や噂を聞くかぎりだと、誰とでもとりあえずセックスする子だと思っていたが、どうやら予想や見た目よりもお堅いらしい。
「ってことは、ほとんどの人がセックス前に不合格だったんですか?」
「はい。残念ながら中々満たしてくれる方はいませんでした」
「そうなんですか。てっきりセックスが好きな人なのかと。あっ、こういう言い方は失礼でしたね」
「いいえ、セックスは好きですわ。男性に抱かれて愛されて……それにすっごく気持ちいい。むしろ、セックスが嫌いな方っているのですか? 男性も女性も」
「まあ、そうですが。でも好きな人以外は無理って人もいません? 特に女性に」
人間の三大欲求だから嫌いな人はいないだろうが、相手を選ぶ人がほとんどだろう。
「ええ、それにはわたくしも同意です。なので告白されたり誘われたとき、その時点で無理だと思ったら丁重にお断りさせていただいてますわ」
「なるほど」
「そもそもわたくし、お付き合いしているお相手がいる時には全てのお誘いをお断りさせていただいてますの」
「そういえば付き合ってた人と別れたって」
「わたくし寂しがり屋なので……。ですがお相手は誰でもいいわけではありませんの。付き合うとなれば必然的に、身体の相性が重要だと思いませんか?」
「まあ、確かに」
「であれば付き合う前に相性がいいか確認するというのが賢明かと。いざ付き合ってみて身体の相性が悪く、不満を持ちながらも好きだからとお付き合いする……というのは、わたくしも、それにお相手にも申し訳ないですから」
要するに、付き合ってからガッカリしたくないから、付き合う前にお互いの身体の相性を見極めたいと。
だから誘われたら試すように段階を踏んで関係を築いていく。
理由を本人から聞けば納得できる。
というよりなんか、大人になったらこういうタイプいるよな、男も女も。
高校生でそんなことしてたら目立つし、噂だけ聞いたらちょろいビッチだと思われても仕方ないが。
「それで?」
そこまで教えてもらってから、アリスさんは首を傾げる。
「祐輔さんは、どうしますか……?」