大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「──祐輔さん、お弁当を作ってきましたの。もし良ければ一緒に食べませんか?」
「ん、じゃあご馳走になろうかな」
「では、あの場所で……」
食後にパコパコ!
次の日。
「──祐輔さん、今日もその」
「ん、じゃあ」
「はいっ♡」
食後にパコパコパコパコ!
次の日。
「祐輔さん、欲しい……ですっ♡」
「まったく」
「んっ♡」
食後にパコパコパコパコパコパコパコパコ──
「ねえ!」
あの日からしょっちゅう、俺の教室にアリスが来るようになった。
無人の図書準備室に行って、お弁当をあーんしてもらってから決まって生ハメセックス。
5時間目をサボることもあって、ついに隣の席の楓に怒られた。
「……アリス先輩、だっけ。最近はあの子にご執心なのかしら?」
「そういうわけじゃないけど」
朝早く学校に来るなり楓に小言を言われた。
あの日から何か言いたげな様子だったが口には出さなかったが、まあ、これは完全に怒っているようだ。
「学校中の生徒にあんた、陰でなんて呼ばれてるか知ってる?」
「……なんて呼ばれてるんだ?」
「陰の支配者」
なんて不名誉な呼び名だ。
「あのアリス先輩を堕とした謎の高校一年生。最近、あんたの周りで変わったことあんでしょ」
「言われてみればたしかに。自称ヤリマンの先輩方にホテルに誘われたり……」
もちろん犯してやったがな!
「要するにあんた、周りからそういう男として見られてるの。友達、できたわけ……?」
「……女のお友達は、ちょこちょこ」
「セフレでしょ、それ」
「まあ」
「で、クラスでも前以上に避けられてるの気付いてる?」
「……」
俺の周りだけぶっとんだエロ漫画みたいな感じだから勘違いするが、ここは都内でも優等生が通う高校だ。
そんな高校に通う一般生徒が、不名誉なあだ名を付けられた男と仲良くしようとは思わないのは当然だ。
──まあ、俺はクラスメイトたちに避けられているというわけだ。
学校で話せるのも楓と奈菜、それと最近は部活で忙しいという蘭華ぐらいだ。
「友達、欲しい……」
「どっちの?」
「本当の友達。フレンドじゃない」
「いや、フレンドは友達だけど。要するにセが付かないフレンドね」
「そう」
「ふぅん」
楓は大きく息を吐く。
「無理に決まってるでしょ」
「……俺が友達を作るのを手伝ってくれる、みたいな流れじゃなかった?」
「ううん、全然。というより、もう無理でしょ」
「……ですよね」
「と、いうわけであたしも祐輔と離れようかと思います。あんたと一緒にいると、こっちまで勘違いされて友達いなくなりそうだから。じゃ」
立ち上がってどこか行きそうになる楓の腕を掴む。
「なに……?」
「えっと、その、楓さんがいなくなると俺、学校で一人ぼっちになってしまうというか」
「そうね。じゃあ、アリス先輩とずっと一緒にいれば? あっ、最近は授業サボりすぎて先生に目を付けられてるんだっけ」
「はい……」
「自業自得」
なんとか席に戻ってくれた楓。
……ふんっ、あたしに構ってくれない罰よ。
小さな声で本音を漏らす。
これは相当、溜まってるようだな。
機嫌直さないと、このままだと本当にクラスでぼっちになりそうだ。
「これからはその、アリスとする頻度を減らすので……。俺には、楓しかいないんだよ!」
「何股もかけてる男が浮気がバレたときに吐くセリフを言うな」
「そこをなんとか。なっ、なっ? これからも末永く、なっ?」
「ふぅん。許してほしい?」
「はい!」
「じゃあ──」
にっこりと悪い笑みを浮かべ、楓は描いていたストーリーの締めくくりを始めた。
♦
「──夏休み、三泊四日の北海道旅行に連れて行ってかあ」
放課後。
あの後、楓から言われたことを思い出してため息をつく。
二週間後から始まる夏休みの予定なんて特になかったけど、まさか旅行に連れて行けと言われるとは思ってもみなかった。
「両親に挨拶させる……とかではないよな。うん」
それだったら詰む。
違うとしても気が滅入る。
旅費とかホテル代とかは折半だけど、それでもバイトしてない俺にとってはかなり厳しい。
親からの仕送りがあるとはいえ、普段の生活費でほとんど消えてる。というより楓と奈菜が毎日のように家に来るから、余計に金がかかるんだよ。
「つっても、ここ最近ずっと楓の前でアリスといちゃいちゃしてたからな……」
元から嫉妬するタイプの彼女の嫉妬心に火を付けてしまったのだろう。
まるで他のヒロインに浮気しまくって寝取られゲージを溜めてしまったエロゲーのようだ。
まあ、俺の第二の物語に寝取りはあっても寝取られはないけど。
それでもさすがに不満を溜めすぎるのは良くないな、楓とはもっとたくさんエッチしたいもん!
「金か。バイトするか……」
旅行は夏休みの後半で、楓も旅行の為に夏休みの始めに短期のバイトするって言ってたから、俺もこの機会に始めるしかない。
もう働きたくない!
35才の頃に散々働いたのに、またバイトなんてしたくない!
だけど楓との旅行、少し奮発してやりたい。
はあ。
大きくため息をついた。
「アルバイト雑誌、買ってくるか……。はあ」
「バイトしたいのかな?」
ふと、声をかけられた。
いや、放課後の教室で独り言をぶつぶつ言っていたら誰か話しかけてきて当然か。
振り返ると、誰かわからない女の子が首を傾げていた。
いや、彼女はあれだ、アリスの居場所を教えてくれた謎の美少女だ。
「あなたは、たしか……」
「やあ、アリスのお眼鏡に適った少年。バイト、探してるのかな?」
「え、ええ、まあ」
「紹介してあげようか」
「え……?」
彼女はにやりと、少しだけ意味深に笑った。
「君にしかできない、君にとっておきのバイトを……ね?」