大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「このプロフィールカードに自分の好みや性癖を書いたら、その通りの人を見つけてくれるってことですか?」
「はい、その通りでございます」
「えっと、演技してくれる……じゃなくて?」
「該当する男性がいなければ演技も入るかもしれませんが、基本的にはお好みの相手がいると思います。その為に、世界各地から優れた男性を連れて来てますから。きっと、あなたの性欲を満たしてくれる男性が現れるはずですよ?」
「あたしの、性欲、はっ──す、すみません!」
話の途中だというのに、つい妄想してしまった。
慌てて謝ると、女性はにっこりと微笑む。
「なので、恥ずかしがったりして隠さず、ありのままの自分をお書きください。でないとみなさんにぴったりな男性を紹介できませんので。それと、ここでは本名を名乗らなくて構いません。男性に呼んでほしい呼び名を記入ください。参加者の中には、現実の自分と別の人物として扱ってほしい方もいると思いますので」
と、そこで先程のお嬢様と呼ばれていた女性を思い出す。
現実とは違う自分。お伽噺に出てくる不運なメイド、といった設定なのだったのだろうか。
「終わったら私に提出してください、お部屋のカードキーをお渡ししますので。パートナーの選定が完了するまでお部屋でおやすみするも良し、島内を巡って自由に遊ぶも良し。ここからはみなさん、夢から覚めるまで自由にお過ごしください」
それから三人はプロフィールカードの記入を始めた。
内容は至って普通のから、後半はほとんど性行為についての記入だった。
三人はそれぞれ赤面したりため息をついたり、四苦八苦しながらもなんとかプロフィールカードを記入した。
部屋はそれぞれ別々の一人部屋だった。
荷物を置くと、純玲の部屋に集合する約束をして別れる。
「うわ、これは……」
内装は普通のホテルとは少し違う、どこかラブホ寄りの作りになっていた。
ピンクを主張した丸いベットに、様々な調節ができるであろうライト。
ベットの頭の横には神帝グループ特製のコンドームが置かれており、それだけでなく大人のおもちゃもたくさん揃っていた。
「……」
ロッカーにはコスプレ衣装があり、おしらせと書かれた紙には『コスプレ強化月間!』という表記が。
お風呂場は、と確認しようと思ったとき二人が部屋に入ってきた。
「純玲のとこも、やっぱりこんな感じなのね」
「ってことは二人の部屋も?」
「同じ、だったよ……」
「ということは、ここに男性を呼んで……みたいな?」
三人は想像して、小さく頷く。
「と、とりあえず入って! ちょっとアレな部屋だけど」
三人はそれぞれベットやイスに座る。
純玲は喉が渇いたと冷蔵庫を開ける。
中には水やジュース、お酒の類も揃っていた。
「乾杯、しちゃう?」
「いいわね。せっかくこんな景色のいいリゾートに来たんだもの、お昼から呑んでも罰は当たらないでしょ」
「そう、だね。わたしも、今日はお酒……飲んじゃおっかな」
三人はそれぞれ好きなお酒を手にすると乾杯をする。
窓から一望できる絶景を眺めながら、汐音は「そうだ」と話を振る。
「二人はさ、その……どんな風に書いた、あれ」
「……恥ずかしいから言わない」
「う、うん、内緒」
「そう言わないで、ねっ? 二人の性癖とか詳しく知らないから、いい機会だし言い合いっこしようよ」
「じゃあ純玲から。純玲はSですか、Мですか?」
「え、えっと……Мって、書いた」
「へえ」
「やっぱり」
二人の視線を受け顔を真っ赤にする純玲。
「二人だってそうでしょ!? Мでしょ、絶対!」
「さ、さあ、どうだろ……」
「汐音は絶対にМ! 凛子は、意外とSかも……?」
「ち、ちがっ、Sじゃないよ!」
「じゃあ二人ともМじゃん!」
「ちょっと待って! 私のこと勝手にМって決めつけないでよ」
「Мでしょ?」
「……否定は、しないけど」
「ほら」
「うるさいわね! それより」
三人はお酒も入ってるからか、普段しないような会話を楽しんだ。
二時間ぐらい。
気付いたらリゾート地に来たというのに、ただの居酒屋の飲み会のようになっていた。
そんな時だった。
「それでそれで、男の人に手錠をかけられて──」
『──ピピッ!』
「ん……?」
不意に音が鳴った。
自分のスマホではない、机に置かれていたタブレット端末だ。
「これ、なんだろ……? なになに、受付からのメッセージ?」
「えっ、もしかしてこういうの一人一人に渡される感じなの? 持ってこないと」
「う、うんっ!」
二人は部屋を出て、自分の部屋にあるであろうタブレットを取りに行く。
純玲はその間にタブレットを確認する。
そこには『パートナーのご紹介』というお知らせのメッセージの表示。
お酒で酔った熱い身体が、文字を見ただけでもっと熱くなる。
「こ、こここ、これって、要するに……」
自分がこの夢の世界で抱かれる理想の相手が見つかったってことだ。
純玲は恐る恐る、その相手を確認する。
すると、画面には自分の書いたプロフィールカードの項目に〇とか✕とか付けられてあり、相手の写真も載っていた。
「この子……」
その相手は、フェリーを降りたときに見かけた童顔の少年だった。
そして、純玲の書いた項目のほとんどに〇の表記が──これは、自分の性癖にぴったりな相手だということを意味していた。