※この作品はR-18です。

大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく   作:柊咲

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226話 二日目二人目、そして

 

 

 ──上原凛子は陰キャだ。

 

 中学生の頃は、教室の隅で一人本を読んでいた。

 高校生の頃も、教室ではなく図書室で一人本を読んでいた。

 

 だけどそんな彼女には二人の友達がいた。

 

 派手な見た目で明るい黒羽純玲と。

 綺麗で大人っぽい雰囲気の河南汐音。

 

 趣味も性格も正反対な二人。

 どうしてか仲良くなり、よく一緒にいるようになった。

 

 だけど根本的な部分が二人とは違う。

 学生時代。陽キャに挟まれた生活が息苦しくて、逃げるように自分の居場所だった図書室にいたこともあった。

 

 

 そんな時、今の彼氏である鈴木拓斗と出会った。

 初めて会ったのに、一瞬で理解した。

 この人は自分と同じタイプの人間だと。

 

 それから二人は、図書室デートを何度も繰り返していくうちに付き合うことになった。

 

 お互いに別々の大学に進学した。月に一回程度しかデートしない。

 どちらも人前でイチャイチャするようなタイプじゃないし、ラブホとかに行こうと誘える度胸もないから、セックスはいつもどちらかの家でしかしたことない。

 

 幸せ?

 そう聞かれれば「はい」と答えられる。

 

 だけど。

 

 どう幸せ?

 そう聞かれれば「……趣味と性格が合うから」と、少しだけ間を空けて答える。

 

 凛子は薄々だが気付いていた。

 ”気の合う友達”と”一線を越える恋人”は違う。

 どんなに性格や根っこの部分が一緒だからって、全て満たしてくれるわけではない。

 自分が陰キャだからといって、付き合う相手も陰キャでなければいけないわけではない。

 

 むしろ、こんな自分だからこそ相手には正反対のタイプがお似合いだ。

 純玲と汐音に言われたことがあった。それでも凛子は前に進めなかった。

 だって凛子は「自分のような地味で根暗で、人付き合いが苦手な女を相手してくれる人は彼氏以外にいない」と、そう思っているから。

 

 彼氏のことは好きだ。

 だけどほんの少し、自分みたいな地味な女が言うのはおこがましいと思いながらも、はっきりと相手の男に”理想”というものを持っていた。

 その理想を一生、誰にも言わないと思っていた。

 

 だけど。

 だけど。

 だけど。

 

 凛子はこれから”彼”に本質を見抜かれ、たっぷりと自分の幸せをわからされるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来ないわね」

「そう、だね……」

 

 

 

 朝早く。

 汐音と凛子はホテル内のレストランに来ていた。

 目的はもちろん、三人で朝食を食べるためだ。そしてこの淫夢島での初日について語り合うためでもある。

 

 

 

「……寝てるのかな?」

「はあ。起こしに行こっか」

 

 

 

 二人は純玲の部屋へ向かった。

 

 

 

「そういえば、凛子はあれ……来た?」

「あれ? メッセージの、こと?」

「そう」

「う、ううん、来てない。汐音ちゃんは?」

「……いくつか来てた」

「え!?」

 

 

 

 エレベーターに乗りながら、汐音がなんとも言えない表情をする。

 まだ朝の7時だというのに、しっかり化粧をされた大人びた顔は女の凛子でも見惚れれてしまう。

 

 

 

「じゃ、じゃあ」

「してない! してないから、ほんと……というか、やっぱ無理だわ」

「あ、そ、そう、だよね……」

「彼氏いるんだよ、私たち」

「う、うん……」

 

 

 

 汐音の言いたいことは理解できた。

 幼馴染の彼氏に一途な汐音なら、そう思って当然だ。

 だが凛子は、心のどこかで揺れていた。

 

 ──もし誰か紹介されたら、わたしは。

 

 だけど、

 

 

 

「でも、汐音ちゃんは凄いね……。いっぱい、お誘いあったんだ」

「いや、あんなのただのマッチングアプリだから。相手の条件を低く手広くすればいっぱい紹介してくれるって」

「でもあれって、先に相手が承諾しないと……女性に通知来ないって」

「……」

「汐音ちゃん、モテるから」

 

 

 

 自分はきっと、いい相手が見つかっても相手の男性から拒否されていたんだよ、きっと。

 

 そう言おうとした。

 

 

 

「はいはい、そういうのいいって。好きでもない相手にモテても嬉しくないの。というより、どうせ凛子、あのプロフィールカードに書いた理想、とんでもなくハードル上げたんでしょ」

「え、いや、わたしは……」

「まっ、それも含めてあの眠り姫を起こしてからゆっくり聞いてあげる」

 

 

 

 汐音はそう言って、純玲が眠る部屋のチャイムを鳴らした。

 

 ……。

 ……。

 ……。

 

 だが、部屋の中から物音はしなかった。

 

 もう一度。

 またもう一度。

 すると、部屋の中から物音がした。

 

 

 

「はぁい」

 

 

 

 眠たそうな声がして部屋の扉が開くと、部屋の住人の姿を見て二人はため息をつく。

 

 

 

「ちょっと、なんて恰好してんのよ……」

「え、あ、汐音と凛子」

「純玲ちゃん、服、服……」

「服……あっ!」

 

 

 

 乱れた下着姿の純玲は、自分の痴態に気付くと慌てて部屋の中へ。

 

「ごめん、すぐ準備するから!」

 洗面所から慌ただしい音が聞こえてくる。

 汐音はすかさず、

「なによあんた、もしかしてあの男の子と朝までお楽しみだったの?」

 と、冗談混じりにからかってみせた。

 だが返事は「あはは」とだけ。

 

 二人も部屋の中へ。

 するとすぐ、二人は異変に気付いて足を止めた。

 

 

 

「「……」」

 

 

 

 乱れたベッド。破れたコンドームの袋に、使われた形跡のあるコンドーム。そして息を吸っただけでもわかる、数時間前まで男と女が何度も交わった独特の匂い。

 

 お互いに言葉は交わさなかった。

 

 だが、二人はここで何が起きたのか、すぐに想像することができた。

 

 

 

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