大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
昨日までは、味方だったのに……。
「でねでね、『旦那にもう少し頑張ってもらうにはどうしたらいいかな』って祐輔くんに聞いたの。そしたら苦笑いされちゃって」
「純玲ちゃんの旦那さん年齢も年齢だから。それに彼のを味わっちゃったら……」
「まあそうなんだけどさあ。はあ、島から帰ったらどうなっちゃうんだろ。ねえ、凛子」
「わたしも、心配かも」
朝食。
三人で楽しんでいたら、いきなりそんな会話を始められた。
彼、というのは誰のことだろう。
そんなの私でもすぐにわかった。
「ねえ、凛子」
「ん、なに汐音ちゃん」
「もしかしてその、あの子と……したの?」
私が問いかけると、凛子は顔を赤らめ小さくなった。
「えっと」
「あー、うん、言わなくていい。わかったから」
やったんだ。
昨日はやらないって言ったのに。
裏切られた、という気持ちよりも、どうして彼氏じゃない男に抱かれてそんな幸せそうな顔してるのって疑問。
……まるで最高の夜だったみたいな。やめてよ。
私は早々に食事を切り上げ立ち上がる。
「汐音、どしたの?」
「別に。先に部屋戻ってる。あと、今日はジムに行くから別行動で」
一方的に告げて部屋へ。
あのまま二人といたらあの男の子の話を続けられそうだった。
今までは凛子がこっち側だったからそこまで話題に出なかったけど、二対一から一対二になった。
遠慮していた純玲も、初めてできた彼氏との惚気話みたいにしてくる。そして凛子も、恥ずかしがりながらその話に乗っかる。
「私が間違ってるみたいじゃない」
部屋に戻るとスマホを手に取る。
彼氏の健也からメッセージは……。
「来てない。サークル行く前にメッセージの返事ぐらいしなさいっての」
大きなため息をつき、私はホテル内にあるジムに向かった。
ここには一般的なスポーツジムと同じぐらいの広さと施設がなぜかある。
とはいえこの島に来る女性の多くは”上手”な男性とアレをすることだから、わざわざジムに行くなんてしない。ましてや朝早くから。
私ぐらいだ、ここにいるのは。
「まあ、こんないい場所を貸し切りできる機会なんてないからいいけど」
昨日はそこそこお酒呑んだから体を動かさないと。
軽くストレッチしてから、ランニングマシンで走る。
二、三時間したら午後はどうしようか。そんなことを考えていたら、
「隣、いいですか?」
「え……」
どうしていつもは音楽を聞きながら走るのに、今日はイヤホンをしてなかったのか。
そんな後悔を後にしたかもしれない。
私は声がした方へ顔を向けると、そこには例の彼が。
「君は」
「隣いいですか?」
「……え、ああ、どうぞ」
つい、そう答えてしまった。
正面には綺麗な青空が一望できる一面ガラス張り。
十台はあるだろうランニングマシンの、なぜか端二つを隣同士で使う。
なんで彼がここに。それにどうして隣に。
そんな疑問を持ったけど、すぐにあの二人が関係してるとわかってむっとする。
「……あの二人に言われて来たの?」
「何か悩んでるみたいだから話してきてって。迷惑でしたか?」
「迷惑っていうか……。というより悩んでないから、もう帰っていいよ」
悩んでるというより二人は私にもこの子と関係を持ってほしいと考えているのだと思った。
だから愛想悪く彼を突き放す。
私は二人とは違う。出会って間もない男の子とセ、セックスするなんて……。
「そうですか。でも僕も話してみたいなって。えっと、汐音さんと」
「……」
名前で呼ばないで、と言おうとして止めた。
これではまるで自分が彼を、まだ高校一年生の彼を男として意識してるみたいに見えるから。
「そう。じゃあ好きにすれば」
「わかりました。じゃあ──」
二台のランニングマシンと二人が走る音が響く。
彼はゆっくりなペースでジョギングしながら、いろんな話をしてくる。
どうしてこの島に?
──純玲に誘われたからなんとなく。
こんな島があるなんて驚きましたね。
──本当にね。こんな場所、国のお偉いさんに知られたら逮捕者続出ね。
そんな会話をした。
他愛もない会話だけど、まあ、最初ほどの敵対心みたいなのはなくなった。
だってこうして会話してるだけなら、普通の、本当に普通の男の子って感じだから。
「そういえば汐音さんって幼馴染の彼氏さんがいるんですよね?」
「そうよ。純玲から聞いたの?」
「はい。自分にも幼馴染の女の子がいるんですよ」
「へえ。その子は彼女とかじゃないの?」
「彼女ではないです。仲はいいですけど」
「そうなんだ。恋愛感情とか……って、ないの?」
つい、気になって聞いた。
同じ境遇だからなのか。ただ話の流れだからか。
彼は少し考えてから、
「少しはあったかもしれないですけど。付き合えて、もし別れちゃったら……元の幼馴染に戻れなくなりそうで。だからそういう話はしないですね」
「あ……」