大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
私と健也は幼馴染だった。
小中学校の頃は腐れ縁で、お互いに「こいつなんか嫌いだよ、早く離れたい!」とか言い合ってたのに、高校生になったらなんとなくお互いに異性として意識するようになって。
それで気付いたらどっちからというか、雰囲気で付き合うことになった。
初めての恋愛だったから、正直なところ幼馴染の延長線上のままだけど。
ただキスはした。
キスして、抱き合って、あいつの家で初めて……。
これがセックスなんだって。あんまり気持ちいいとかなかった。
ただ健也と近い距離でいれたのは幸せだった。
恋愛って。
セックスって。
想像していたよりも、あんまり……。
「そう、なんだ……」
つい、小さな声になっちゃった。
私の変化に彼は気付いてないみたいで、変わらず笑顔のままだった。
「まあ、永遠に好き同士でいられればいいと思うんですけど、ちょっと臆病になっちゃって」
どこか子供っぽくない彼の考えに、気付いたら私も笑った。
「だからってこんな島来て誰とでもするのはどうかと思うけど?」
「あはは。なんかこの島を運営してる社長さんに気に入られて。給料も高いのでつい。でも、そういう汐音さんもじゃないですか?」
「私はっ! 私も、まあ……そうかも」
「同じですね。まあ、自分は今回限りですけど」
「私だって」
意外と彼は話しやすいタイプだった。
会話を途絶えないよう気を使って話題を振ってくれるし、私の話を遮らないで聞いてくれる。
話し上手に聞き上手。
天性の才能だ。二人もこういう子供っぽくないギャップにやられたのかな。
「そういえばあの二人は?」
「まだ眠たいから部屋で寝てるそうですよ」
「昨夜はお楽しみだったから?」
「まあ」
ふと、走る彼の体に目がいった。
健也とは違って細くて子供っぽい体。
純玲も凛子も、こういうタイプが好きだったんだっけ?
「どうかしました?」
「ん、なんでもないなんでもない」
「そうですか。なので今日は一人なんです。それで汐音さんが良ければご一緒したいなって」
「……変なこと考えてない?」
「変なこととは?」
見た目は子供だけど中身は……獣。
二人がどんな流れで喰われたのかわからないけど、この純粋無垢な子供っぽい笑顔に騙されたのだろう。
私はそうはいかない。
「何もしないって約束するならいいけど?」
「もしかして、エッチなことですか? 別に自分からはしないです。というか二人からも誘われたから相手させてもらっただけですから」
「二人から? 君からじゃなくって?」
「そうですよ。たしか島のルールでも、男性側からってアウトだった気がしますけど」
「そうなんだ。知らなかった。じゃあ二人は……」
自分から、旦那でも彼氏でもない男の子と……。
物凄くどういう状況だったのかとか気になる。
それは少女漫画とかドラマみたいな、人のアレって興味あるから。
「……二人とのこと聞かせてくれるなら、いいけど?」
あの二人から聞いてもいいけど、なんか隠されそうだから彼から聞いた方がいい気がした。
「いいですよ」
「あと、絶対に襲ったりしてこない?」
「しませんから安心してください」
「怪しいなあ、その笑顔。まあいっか」
悪い子っぽくないからそこは信頼しよっと。
それからお昼ごろまでジムで軽く汗を流した私と彼──祐輔くんは、着替えを済ましてから二人でお昼ご飯を食べることに。
あの二人とどういう流れでしたのかとか教えてもらった。
同性との恋バナとは違った感じだったけど楽しかった。
食事が終わると島の中を探索したり、海に行ったり。
案の定、いろんなとこでやってる男女がいたけど、祐輔くんが私を襲ってくる素振りはなかった。
それどころか見ないようにエスコートしてくれた。
「なんか祐輔くん、あいつよりも大人の男性って感じするわね」
「そうなんですか?」
日も暮れ、ホテルへの帰り道。
「だってあいつ、野球命だから。女性へのエスコートの仕方とか知らないし」
「でもそういう人の方がいいんじゃないですか? 変に遊び慣れてないから安心できるというか」
「そうだけど。んー、まあそうね。そこがあいつのいいところかな」
野球バカで野球第一で、大学生になっても絵に描いたような野球少年。
そんなところが好きなんだけど。
「彼氏さんに何か不満あるんですか?」
「え?」
「すみません。反応がそんな気がして」
「そ、そうかな。まあ、不満というか、なんというか……」
聞かれると思ってなくって、つい動揺しちゃった。
「あっ、もし良かったら、これから一緒に夜ご飯どうですか?」
「え、一緒に?」
「実は純玲さんと凛子さんに連絡したら、今日は忙しいらしくて」
こんな知り合いのいない島で忙しい?
疑問に思ってすぐ、あの二人が私と祐輔くんを二人っきりにしようとしてるんだって気付いた。
「えっと……」
今日一日一緒にいて、彼は本当にいい子だ。
優しくて気遣いもできて、何より私に何かしてこようとする感じがなかった。
だから二人でも……。
そう思ったけど、だけど万が一、万が一があったら。
「嫌だったら大丈夫ですよ」
祐輔くんが悲しそうな声で言った。
「……ううん、大丈夫。一緒にご飯食べましょ」
私がしっかりしていれば間違いは起きない。
大丈夫。ただ一緒にご飯を食べるだけだから。
「良かった。じゃあ後で部屋に来てください」
「え、祐輔くんの部屋?」
「ルームサービス頼むんで。それじゃあ!」
「あっ、ちょっと!」
祐輔くんは一方的に伝えて行ってしまった。