※この作品はR-18です。

大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく   作:柊咲

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252話 つなぎを着たガテン系の楓ママにご挨拶を

「これは、なんていうか……」

 

 

 電車を降りて驚く。

 物語か何かで見たような田舎町が目の前にある。

 駅は無人。ホームは何も無く。一歩外へ出ると人すら歩いていない。

 一面、道路と畑。

 都会から来た者は、この光景に驚かない方が難しい。

 

 

「驚いた?」

「ま、まあ。想像よりもアレで」

「田舎?」

「悪い意味じゃなく良い意味でな」

 

 

 この場合の田舎という言葉は、別に馬鹿にしているとか悪く言っているわけではない。

 

 

「将来的には、こういうとこで住みたいと思ってたんだよ」

 

 

 今は高校生だが、元は三十年も生きた。

 空気が上手いというのが自然に出る風景に、将来はこういうところに住みたいと思うのは当然だ。

 

 

「何それ。おじいちゃんみたいなこと言うわね」

「だってまあ。こういうの、憧れるんだよ」

「ふぅん。何年も住んでたら飽きるけど……まあ、祐輔が気に入ってくれたならいいけど」

 

 

 少し嬉しそうにする楓。

 すると、駅の前に大きな車が停まった。

 

 

「あっ!」

 

 

 楓が走り出す。

 すると、運転席の窓が開く。

 

 

「ごめん、楓。遅れちゃった?」

 

 

 サングラスを外したブロンズヘアーの女性は、楓に笑顔を向ける。

 

 

「ううん、あたしもさっき来たばっかりだから」

「そう、良かった。じゃあ、乗って。そっちの彼も」

「え、ああ、はい」

 

 

 楓の知り合いだろう。

 俺は楓と共に車の後ろに乗る。

 賑やかなヒップホップの音量を下げ、運転席の女性とルームミラー越しに目が合う。

 すると女性は、ニコリと笑顔を浮かべた。

 

 年齢は二十代後半……いや、前半か。

 立ってなくても俺よりも身長は高いとわかる体型で、モデルのように細く、だけど胸元を大きく開けたシャツから大きく実ったモノが見える。

 決して隠そうとしない胸元。その自然さから、自慢しているように俺は感じた。

 むっちりとした脚の肉に、ジーンズが悲鳴を上げている。

 

 楓が大人になったら、きっとこんな感じの女性になると思う。

 というよりも、今の楓がこの女性を目標にしているように感じた。

 なにせこの女性を一言で表すなら、ギャルだからだ。

 少しだけ日焼けしているから黒ギャルと言ってもいいが、そこまで黒くないので普通の、綺麗な金髪ギャルお姉さんだ。

 

 

「はじめまして、楠木祐輔です。えっと、楓のお姉さんでいいんですよね?」

 

 

 これから数日ほどお世話になるので自分から挨拶を。

 お姉さんと楓を交互に見ながら聞くと、楓が首を傾げた。

 

 

「お姉さん? いや、ママはお母さんだけど」

「え、は、お母さん!?」

「ふふ」

 

 

 ルームミラー越しに目が合ったお姉さん──いや、お母さんは顔をこちらへ向ける。

 

 

「はじめまして、祐輔くん。この子の母親の、白石秋葉《シライシアキハ》よ。よろしくね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 母親と姉を間違えることなんて、現実では中々起きるようなことではない。

 実際は顔のしわだったり手のしわだったり、化粧の濃さなんかですぐに見分けがつく。

 だが、白石秋葉さん──秋葉さんは、明らかに楓の姉で間違いないほどに若々しかった。

 まあ、車の中で聞いてわかったのだが、秋葉さんは楓を16才の時に生んだから、まだ32才らしい。

 お母さんと言うには……それでも、32才よりもずっと若々しい見た目と雰囲気をしていた。

 

 

「それじゃあ、楓。お母さん、車を置いてくるから祐輔くんの案内お願いね」

「はーい」

 

 

 普通の一軒家。

 と、いうにはあまりにも大きな家。

 いや、家自体は普通なんだが、驚くのはその周辺だ。

 

 

「辺り一面、畑だらけ。ご近所さんは?」

「ずっと離れたとこに数軒。ちなみに、この辺の畑はうちの畑だから」

「凄いな、それ」

 

 

 家の玄関を開ける。

 そのまま二階へ。

 

 

「二階がうちの家。一階はおばあちゃんおじいちゃんの家だったんだけど、どっちも数年前に亡くなって」

「ああ、そうなのか」

「今はどっちもうちの家なんだけど、あたしの部屋は二階だから」

 

 

 二階にはリビングやいくつか部屋があったが、確かに部屋の雰囲気が一階と二階で少し違う気がした。

 今は一階も二階も秋葉さん夫婦が使っているのだろう。

 俺はそのまま、楓の部屋へと案内された。

 

 

「なんか、楓っぽい部屋だな」

「それどういう意味?」

 

 

 今の一人暮らししている楓の部屋は大人びた感じの部屋だが、この部屋は少し可愛らしい感じが残っていて、だけど大人に憧れている感じのモノもいくつかあった。

 

 

「祐輔が寝泊りする部屋は別の部屋を用意しているって、ママが」

「え、楓と一緒じゃないのか?」

「……言ったでしょ、ここではほら」

 

 

 残念ながらここではお楽しみなことはできないらしい。

 他の空いている部屋を案内され、荷物なんかを置く。

 

 

「ママは一階で寝ると思うから、二階はあたしと祐輔だけだと思う」

「へえ」

「何その顔。変なこと考えないでよ?」

「いや、同じ階層じゃないなら楓が声を我慢すれば……?」

 

 

 お尻を撫でると、楓は頬を赤くさせながらその手をはたく。

 

 

「ダメだってば。周りが静かだから声とか響くの」

「けち」

 

 

 まあ、楓だから、夜這いすれば絶対に拒否する感じではないだろうけど。

 

 

「そういえば、お父さんは?」

「パパは入院中。少し前に農作業中に怪我しちゃって」

「そうなのか。大きい怪我なのか?」

「ううん、ママはそこまでだって。ただ、数週間は入院が必要って。だから祐輔をここに招待したってのもあるんだけど」

「ん、どういうことだ?」

 

 

 そこで、不意に階段を上がってくる音が聞こえてくる。

 

 

「楓、二階は誰も使ってないから好きに使っていいわよ」

「あ、うん。ありがと、ママ」

 

 

 先程のギャルっぽい格好から一変。

 上下紫色のつなぎに着替えた秋葉さん。

 畑作業用の服装か。

 ここで夫婦二人三脚で畑仕事をして暮らしているのだから当然といえば当然だが、秋葉さんもするんだよな、畑仕事。

 さっきの格好の秋葉さんも魅力的だが、今のこのガテン系の服装もまた……。

 

 

「到着して早々悪いんだけど、少し作業があって……二人に手伝ってもらえると、お母さん、とーっても嬉しいんだけど?」

「わかってる。祐輔あのね、パパが入院中で人手が足りなくって。それで祐輔にも少しだけ手伝ってほしいの」

 

 

 楓が申し訳なさそうに言う。

 なるほど、そういう理由で呼ばれたわけか。

 最初から教えておいてほしかったというのはあるが、まあ、畑仕事なんて都会に生きてたら中々できないことだからな。

 俺は嫌がることもなく頷いた。

 

 

「わかったよ。初心者ですけど、よろしくお願いします」

 

 

 秋葉さんにそう伝えると、彼女はニコリと微笑んでくれた。

 

 

「ありがと、この頼れる感じ、さっすが楓が捕まえてきた男ね」

「捕まえたって、も、もう、お母さん……」

「ふふ。じゃあ、着替えたらよろしくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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