大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
普通の学生は、いざ農作業をやってみろと言われてもできるものではない。
部活や、体育の授業と同じじゃない。
そもそも屈んで何十分、何時間と作業するのだって足腰にきて苦痛だ。
「祐輔くん、こっちの収穫もお願い!」
「は、はい!」
YOUは何しに北海道へ?
そんな疑問を持つほど、秋葉さんは人使いが荒かった。
軽い説明を受け、収穫。
重たい肥料を持って移動、からの畑を耕す農作業。
これは手伝いではない。
完全に新しい職員としてコキ使われていた。
「よーし、今日はこんなとこかな! 二人ともお疲れ様!」
昼にここへ来て、終わったのは日が暮れた頃。
秋葉さんの声を聞いて、俺はその場に座った。
「ぷはぁ、疲れた……!」
「おつかれさま、祐輔。ごめんね、ママ、容赦とかなくって」
「楓は余裕って感じだな」
「まあね」
一緒に作業していた楓はそこまで疲れている感じはなかった。
実家にいた頃はこの作業を毎日のように手伝っていたのだろう。
それから家に戻って夜ご飯──の、前にお風呂へ。
「マジか、これ……」
案内されたお風呂場は、旅館の室内風呂のような広さがあった。
木で作られた湯船に、流れ続けるお湯。
顔と体を洗い、酷使した肉体を湯船へ。
温かい気持ちの良さに、自然と声が漏れる。
「祐輔、着替えここ置いておくから」
「ああ、ありがと」
「ご飯の支度はたぶん、まだかかると思う。ゆっくりしていいからね」
脱衣所から聞こえる楓の声。
「こんな気持ちいいのに、一人でだなんて……はあ、誰かさんが一緒に入ってくれたらなあ!」
「そんなこと言ってもダメなものはダメ。ママが来たらどうすんの」
「ちぇ」
彼女の家でイタズラなんて、全高校生が憧れるシチュエーションじゃないか。
「まあ」
すると、脱衣所の入り口の前に立ち止まった楓が、
「ママね、すっごくお酒が好きなの……。でね、酔って寝たら、なかなか起きてこないんだよね」
「うん」
「だからさ、もし酔って寝たら……できるかも」
「ほお。それはつまり、酔わせろということか?」
「祐輔が、どうしてもしたいって言うなら? まあ、どうするかは祐輔に任せるけど。じゃあね!」
楓はそれだけ言って出て行った。
「とはいえ、畑仕事で頑張ったからな。秋葉さんを酔わせて眠らせるより先に俺が寝ちゃいそうだ」
なんなら、こうして湯船に浸かっている今ですら目が閉じてうとうとしてきた。
俺はもう少しゆっくりしてから湯船を出ることに。
それから、今度は楓がお風呂へ。
少しだけ。ほんとちょびっとだけ覗きに行ってイタズラしようかと思ったのだが。
「──へえ、祐輔くんと楓って、同級生で同じクラスだけじゃなくって、住んでいるマンションも隣同士なのね」
「そうなんですよ、凄い偶然で」
料理をしていた秋葉さんに話しかけられた。
足の短い横長のテーブルの前に置かれた座布団に座る。
イタズラしたい欲はあったが、秋葉さんとの話しは楽しかった。
それに。
キッチンに立つ秋葉さんの後姿を堪能する。
大きく肉付きのいいお尻を強調したぴっちりとしたジーンズに、薄い生地のシャツの背中は透けてブラのホックが見える。
楓は言わずもがな高校一の美人だ。
その楓の母親だ。三十代とはいえ、やっぱり美人は美人。
いや、大人だからこそ、楓に少しだけ足りなかった色気があって……。
「どうかした、祐輔くん?」
「え、ああ、いえなんでも」
「もしかして、お腹空いて待ちきれない? ふふ、ごめん、もう少しだけ待ってねぇ」
見ているのがバレたのかとひやひやしたが、どうやらバレていないようだ。
「そういえば、楓と付き合い始めたのって高校入学してすぐなの?」
「えっと……」
母親にこういう話をどこまでしているのかわからないが、わざわざ実家まで連れて来たんだからセフレとは言っていないだろう。
ここは話を合わせておくべきだろう。
「入学してすぐですね」
「へえ、どっちから告白したの?」
「……自分からです」
「おー、さすが男の子! で、で、自分も好きだってあの子がオーケーしたの?」
「えーっと、まあ」
「ごめんなさいね、ぐいぐい聞いちゃって。あの子、こういう色恋話とかお母さんに全然してくれないから。好きなんだけどなあ、こういう恋バナっていうの」
「なるほど。自分は全然、話せることなら別に。まあ、楓にバレたら怒られるかもですが」
「じゃあ、ここで話したことは楓には秘密ってことで」
人差し指を立て、ウインクする秋葉さん。
「わかりました、楓には秘密で」
「ふふ、祐輔くんがいい子で良かったわ。中学生の時の、あの……」
と、何かを言いかけて秋葉さんは口を閉じる。
おそらく、こっちで付き合っていた同級生のことを思い出したけど、今カレに元カレの話をするのは止めておいたのか。
「ううん、なんでもないわ。でも、まさかいきなり実家に呼ぶとは思わなかったわあ。せっかくの夏休みの旅行デートなのに、ごめんね、畑仕事なんて手伝わせて」
「いえいえ、貴重な経験だったので楽しかったです。まあ、筋肉痛とかやばそうですけど」
「あ、そうだ」
ガスコンロの火を止めた秋葉さんが、風呂場の方を確認してから俺の側へ寄ってくる。
お、お、これは?
秋葉さんは俺の耳元で小さく囁く。
「……一応、一階であたし寝てるけど、夜中とか、あたしのこと気にせず、二人で楽しんでもいいからね?」
「それって……」
ビクッと、股間が嬉しそうに反応した。
「二人っきりで旅行デートするほどなんだもの。そういうこと、もう済ましているんでしょ?」
ママ……。