大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「聞き間違いだったらすみません、えっと……寝取ってほしいって言いました?」
「ひゃい!」
裏返った声を出した順平さん。
すぐに平然を装うように、眼鏡をクイと上げる。
「え、えええ、えっと、実は僕……その、寝取られ癖が、ありまして」
「寝取られ癖、ですか……」
「は、はい……最初に自分の性癖に気付いたのは、その、寝取られモノのAVを見てるときで。最初はその、興奮するのはAVの中だけかなって、そう思ったんです。でもなんていうか、妄想の中で、彼女……萌香が、他の男に抱かれるのを想像したら、その……ものすごく興奮して」
顔を真っ赤にしながらも流暢に話し出す順平さん。
俺はなんとか相槌を打ち、愛華さんはマジでドン引きして、萌香さんは顔を真っ赤にさせ俯いたまま動かない。
「それでわかったんです、自分には、寝取られ癖があるんだって……。それである日、彼女に自分の性癖のこと知られてしまって……正直に、打ち明けたんです」
「わお」
愛華さんがつい声を漏らして、慌てて口を塞ぐ。
ごめんね、って謝り再び黙る。
「話したときは、困惑させてしまったんですが……そ、その、一回でいいから、他の男に寝取られてほしいって相談したら、彼女が「順平くんが喜んでくれるなら、一回だけならいいよ」って言ってくれたんです」
「うわお……」
今度は驚きというよりもドン引きした声を漏らす愛華さん。
いや、俺も大概だと思うけど、この二人……というか、順平さんは相当ヤバイな。
萌香さんは彼氏の頼みを聞いてあげようとする健気で優しい子だけど、順平さんは性癖を知られて、しかもその彼女に相談するって……。
まあ、これに関しては人それぞれか。
人の性癖にも、カップルの恋愛事情にも口を挟まない方がいいだろう。
「それで話し合って、出会い系とかマッチングアプリとかで相手を探してみたんですが……なかなか踏ん切りがつかなくって」
コクコクと頷く萌香さんが、小さな声で「知らない人とするの、怖くて」と言った。
「まあ、そうでしょうね。それで……」
「寿さんは僕たちの同級生だし、その寿さんのセフレである楠木くんなら、悪いようにはならないかなって……」
「……」
愛華さんと目配せする。
彼女もなんて言ったらいいかわからないようだ。
別に俺としては問題ない。
萌香さんは愛華さんや彩さんとは真逆の雰囲気があるから、男としてセックスしてみたいと思った。
大人しい見た目で可愛いタイプだ。
しかも庇護欲をそそるタイプで、たぶんだけどМっぽい感じがした。
──そして何より、寝取りっていう行為に興奮する。
愛華さんと昼間したシチュエーションエッチじゃない、本当に、彼氏がいる女とセックスするんだ。
しかも彼氏も同意しているから、バレたときの心配をしなくてもいい。
だけど、
「本当に、お二人ともいいんですか……?」
順平さんは自分の性癖だからと納得してるようだけど、いざ本番をしてみてから、妄想とかじゃない本物の寝取られという行為を味わって発狂して襲い掛かってくるかもしれない。
彼はなんとなく、そうなる可能性のあるタイプに感じる。
そして何より心配なのは萌香さんだ。
彼氏の頼みだからって、彼氏でもない他の男に抱かれるのはどうなのか。口では大丈夫だと言っても、後で泣かれたりしたら後味最悪だ。
「は、はい、もちろん!」
「……はい。順平くんが、してほしいなら」
二人とも納得していた。
「それなら、まあ」
断る理由はない。
すると順平さんが前のめりに興奮気味に俺を見る。
「ほ、ほんとうですか!? ありがとうございます!」
順平さんにめちゃくちゃ感謝されてしまった。
「それでどうしたら?」
「えっとですね、できれば動画に残していただきたいんです!」
「動画に? ということは」
「僕が一緒にいると、たぶん萌香が困ってしまうと思うので……二人でしていただいて、それを撮影してきてほしいんです」
「なるほど」
つまり、萌香さんとしている情事をハメ撮りしてほしいということか。
それから簡単な話をして、連絡先を交換した。
もちろん萌香さんともだ。メッセージアプリの連絡先で、アイコンはウサギの可愛い感じのだった。
こんな子が彼氏じゃない男と寝取られセックスを、しかもハメ撮りをするなんて。もし中学生の体に戻っていなかったら知らなかった世界だ。
そして二人と別れて、俺と愛華さんは自室へと戻ることに。
「まさか、あの二人に……というより、順平くんにあんな性癖があったなんて」
廊下を歩きながら、愛華さんは苦笑いを浮かべた。
「まあ、性癖は人それぞれですからね」
「そうなんだけど、順平くんも萌香ちゃんも学校では大人しくて目立たないタイプなんだよね。というより、付き合ってたことすら知らなかったもん」
「そんなにですか」
「うんうん。そんな二人がまさかね。でもゆうくん的には良かったんじゃない? プレイじゃない寝取りエッチできるんだもん」
「まあ、そうですね」
俺が笑いながら言葉を返すと、愛華さんは「変態……♡」と同じく笑う。
すると、
「あっ」
と、急に立ち止まりスマホとり出す。
「どうしたんですか?」
「んふふ、いいこと思い付いちゃった♡」
愛華さんは悪い笑みを浮かべながら「送信っと」とスマホをしまう。
「萌香ちゃんに「彼氏が寝たらうちらの部屋においで。いいもの見せてあげる」って連絡しちゃった」
「え、連絡って……」
「ふふふん♡」