大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
──次の日のお昼過ぎ。
本当は朝早くに起きて朝食バイキングに行こうかなって思ってたんだけど、みんな昼近くまで寝てしまっていた。
「まだ頭が痛いわ……」
「彩さん、めちゃくちゃ呑んでましたからね」
「ええ、二人にも迷惑かけてごめんなさい」
部屋で出掛ける準備をする俺たち。
支度が終わった俺と彩さんは、洗面所を占拠している愛華さんを待っていた。
「気にしないでください」
「ありがと。それで話の続きなんだけど……祐輔くん、愛華ちゃんの友達に寝取らせ? というのを頼まれたって本当?」
「ええ、本当です。そろそろ──」
──コンコン!
話の途中で扉がノックされた。
どうぞと声をかけると、扉が開かれた。
「おはようございます」
「……おはよう、ございます」
入ってきたのは私服を着た順平さんと萌香だった。
順平さんは少し緊張した様子で中に入り、萌香は顔を下に向けたまま入ってくる。
「あれ、寿さんは?」
「愛華さんなら」
「こっちこっち!」
洗面所から愛華さんが大声でここにいるよアピールをする。
二人は靴を脱ぐと、部屋の隅に座った。萌香はまだ下を向いたまま、俺と顔を合わせようとしない。
「宿のチェックアウトをしたので、みなさんに挨拶しようと思って」
「そうでしたか。自分たちはあと二日あるんですけど、もうすぐ遊びに出掛けようと思っていたんですが、愛華さんの支度が終わらなくて」
「あはは。えっと、ところで隣にいる方は……」
昨夜は彩さんが酔い潰れて寝てしまったから、二人は初対面だ。
「彼女は峰野彩さんです」
「はじめまして、峰野です」
彩さんが挨拶すると、順平さんは慌てた様子で挨拶を返す。
だが何か気になるようで、チラチラと俺を見ている。
「どうかしました?」
「えっと、その……峰野さんは、左手に指輪を付けてるから」
「ええ、結婚してますよ。もちろん相手は俺じゃないですけど」
彩さんの太股を撫でると、彼女は「こら♡」と甘い声を漏らす。
「まあ、こういう関係なので」
「そ、そう、なんですね……あはは、楠木くんって凄いですね。その、人妻……あっ、いや、結婚してる女性も、アレなんて」
「セフレですか? まあ、そうですね」
明らかに順平さんの表情が変わった。
思春期の中学生がエロ本を見つけたときみたいな、そんな挙動不審な反応をしている。
人妻のセフレである彩さんに、男として少なからず反応してるのだろう。
「お互いセックスが好きですし、何より身体の相性もいいので……ねっ、彩さん?」
「も、もう、人前でそういうこと聞かないで♡」
「あ、あはは……そう、なんですね。で、でも、浮気とかして、旦那さんにバレたりしないんですか……?」
「どうですかね。だけどもしバレても、そこは仕方ないんじゃないかなって思ってます」
「え、どういうことですか……?」
「お互いに望んで浮気してるので、バレたらバレたで仕方ないかなって。それに、奥さんが浮気しちゃうぐらい寂しい思いをさせた旦那さんの方が悪いと俺は思ってるので。もし奥さんが夫婦生活に満足してたら、他の男に抱かれる必要ないですからね」
そう伝えると、順平さんは圧倒されながら笑い「まあ、そうですね」と同意した。
その言葉を近くで聞いている萌香さんは、いったいどんな気持ちでいるのだろうかと視線を送ると、顔を下げたままだった。
昨夜のことを思い出してくれているだろうか。
この部屋で彼氏じゃない男に指で何度もイかされ、ペニスを咥え、最後には口内射精されて精液を飲まされた。
──もし奥さんが夫婦生活に満足してたら、他の男に抱かれる必要ないですからね。
俺が彼女に送ったこの言葉は届いているだろうか?
わからない。だから、
「もちろん、順平さんと萌香さんみたいに普通の恋愛が一番いいとは思うんですけどね」
俺は二人の話題に変える。
すると、はっきりと萌香さんの体がビクッと反応させた。
「あはは、そうですかね。でも、その……僕のアレのこともあるので、なんとも言えなくて」
「ああ、性癖のことですか。寝取らせのこと彩さんにも話しちゃったので隠さなくていいですよ?」
「えっ、話しちゃったんですか!?」
「恋愛はそれぞれですから、別になんとも思わないですよ。彼氏さんの為に応えてあげる萌香さんのこと、凄い優しいなって話してました」
実際には”凄い”の意味が違うけど。
彼氏の頼みだからって、知らない男なんかに抱かれるなんて”凄い変態ね”という意味だ。
「僕のこんな……変な性癖に付き合ってくれる彼女には、ほんと申し訳ないのと、感謝しかないです」
「まあ、萌香さんがいいって言ってるならいいんじゃないですか?」
「そう、ですかね……」
「ですよね、萌香さん?」
今日初めて声をかけると、萌香さんは顔を上げ、
「は、はい……」
潤んだ瞳で俺を見つめる。
変なこと言わないで、そう無言で訴えてるようだった。
だから俺は笑顔を浮かべながら、少しだけ彼女を虐めようとした。
「そういえば昨日の夜──」
「──よし、準備できた!」
だが間の悪いことに洗面所から愛華さんが戻ってきてしまった。
どうやらばっちりメイクが終わったらしい。
残念がる俺と、安堵する萌香。
「よし、海行こう! 海行くよ!」
「海……? もしかしてみなさん、これから海に行くんですか?」
「ええ、そうなんです」
そう言った瞬間、萌香の顔色が一瞬で悪くなった。
「実は僕たちも、これから行こうかって話してて」
「へえ、そうなんですか。それじゃあ一緒に行きましょうか」
笑顔でそう言う。
順平さんと、俺から離れたがっていた萌香に。