大人の知識を持ったまま中学生に戻った俺は好き勝手に生きていく 作:柊咲
「えっと、佳香さん……?」
驚き固まる奈菜だが氷室先生は一切の動揺を見せない。
奈菜の話を聞くかぎりでは氷室先生は真面目で厳しいタイプだと思っていた。
けれどここへ来て、彼女と話をしてみて、そういう一面もあるが自分に素直で正直な人だと理解した。
だからそういう、いわば自由恋愛のスタンスを持っていても不思議ではない。
「別におかしいことではないだろ。それとも奈菜ちゃんは、私が一人の男を愛し続ける純愛至上主義者だと思っていたのかな?」
「いや、だって佳香さん真面目なタイプだって」
「ああ、私は真面目なタイプだ。周りからはずっとそう言われてきたし、奈菜ちゃんのお母さんにもいつも言われてきた」
「えっ、じゃあ、さっきのは冗談?」
「冗談? いいや、冗談じゃないよ」
二人の会話が上手く噛み合わない。
そんな様子を見ていた俺が口を挟む。
「要するに、一人の相手と交際するのではなく好きな相手とそれぞれ関係を持つ方が幸せだと氷室先生は思ったんだろ。価値観の違いというか、考え方の違いみたいなものだ」
「そう、彼の言う通りだ。世間一般的に健全とされる交際は好きじゃないのだよ。交際すれば色々と面倒くさいしがらみが増えるからね。その点、一人の相手とではなく好きな相手と関係を持つ人生は気が楽だし、何より飽きがこない」
私は飽き性なんだ、一人の男では満足しない。
氷室先生はドヤ顔でそう言った。
周りに流されない自分の意志を持ったタイプの女性か。
俺個人としては好きだし、何より憧れる生き方だと思う。けれど中学生相手にその考えが受け入れられるとは思えないな。
「佳香さんは、その……結婚とかの予定は?」
「結婚? 残念ながらその予定は一生ないな」
「どうしてですか?」
「どうして、か……そうだな。私が飽きっぽい性格なのを抜きにしても、同じ家で暮らし、収入を共有する。24時間365日を共に過ごし、腹立たしいことがあっても嫌いな一面を見ても一緒にいなくてはいけない人生は地獄のようなものだと思わないか?」
「いや、その……」
奈菜は困ったように俺を見る。
いやほんと、最悪な結婚生活を数か月前まで送っていたから納得しかしない。
だが、
「氷室先生の考えは理解できます。ただ、中学生相手にそれを理解しろというのは、さすがに難しいと思いますよ」
はっきりとした否定はしないものの、隣に奈菜がいるから賛成もしない。
「ほお、それもそうか」
納得したような声を漏らすと、横目で俺をジッと見つめる。
まるで同族を見つけたかのような。いや、中学生っぽくない俺の反応に感心したというのに近い。
「だが、君たちがなんと言おうと私はこういう女だ。誰かに縛られることも、特定の相手と一生添い遂げるというのも性に合わない。いい男がいればいくらでも味見をするさ、それが誰であろうと、ね……」
氷室先生は舌なめずりをしながら笑顔を浮かべる。
奈菜は気づいていない様子だったが、一瞬だけまた視線を向けられた気がした。
中学生も守備範囲なんですか?
そう聞きたいが、奈菜の前だからさすがに止めておくか。
「と、私の話しはこの辺にして、そろそろ話を戻そうか」
性的なヒアリングを再開する氷室先生。そしてやっぱり、奈菜にしか質問しない。
「普段は何処でしているの? まさか学校でだけ、というわけではないのでしょ?」
「……お互いの家とか、後はカラオケとか」
「カラオケか。ああいう場所は部屋に監視カメラがある場合が多いから、あまりオススメはしないな」
「はあ」
「好きな体位は?」
「なっ!? それ、言わないと駄目ですか……?」
「もちろん。体位の名称を知っていて、正しいやり方でできているのか知らないといけないからね」
「黙秘権は」
「ふふっ、ないね」
「……はぁ。好きな体位は、その……バックが、好きです」
「へえ」
「な、なんですか……」
「いや、奈菜ちゃんは後ろから突かれるのが好きなんだなと。大人しい顔をしていても、意外とマゾ気質があるのかな?」
「なっ!」
顔を真っ赤にさせながら固まる奈菜を見て、満足そうにする氷室先生。
それからもヒアリング──というか、奈菜への羞恥プレイみたいなのは続いた。
俺と奈菜が何処でするのか、どんな体位でして、週に何回、何回戦までするのか。赤裸々に語らされた奈菜は終始顔を真っ赤にさせ、氷室先生は満足そうにしていた。
「それじゃあ、ヒアリングはこの辺で終わりにしようか」
「や、やっと、終わった……」
気付いたら外は暗く、廊下には電気が付けられ、部活動の生徒も帰っていた。
「二人の性行為への知識量は問題なさそうだ。行っている行為も、避妊具無しでしていること以外は特に問題なさそうだ」
「じゃあ、今回のことはママには秘密で──」
「──だが、本当のことを話しているかどうかについての真偽は不明だ」
「なっ!? 本当だもん! 嘘は言ってません! ねっ、祐輔!」
必死に訴える奈菜だが、氷室先生は首を左右に振った。
「口では何とでも言える」
「じゃ、じゃあ、どうしたら」
「なのでこれから、実技の確認をさせてもらおう」
「実技の確認って……え、ええ!?」
イスから立ちあがり、保健室のベッドに移動する氷室先生。
ニコリと笑みを浮かべながら、純白なベッドをポンポンと叩く。
「ここで今から、私の目の前でセックスして見せてくれ」