※この作品はR-18です。

Fate/espoir sort   作:ニコール

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新魔術師計画

聖杯…それは魔術師なら誰しもが欲する、最高位の聖遺物。

古代からの伝説に名を刻むその存在はまるで夢のような力を秘めており、魔術師たちは使い魔であるサーヴァントを召喚し聖杯を巡って戦う、それが聖杯戦争だ。

 

聖杯は、キリスト教において神の血を受けた杯として知られている。

しかし、その真の姿はそれだけではなく、あらゆる魔術の根底にあるとされる魔法の釜、そして無限の願いを叶える力を持つ存在、古今東西の神話にその名を見せる聖杯は、まさに願望機の象徴だ。

 

「願いを叶える」とは、実に魅力的な言葉で、どんな願いでも強い魔力やサーヴァントさえあれば実現は可能だろう。

 だが、現実は厳しいく聖杯の力を手に入れるためには、人を殺してでも勝たなければならない。

 

そんな聖杯に、俺は呼ばれた。

いや、違う…聖杯ではない、誰かの意思だ。

誰かの「諦めたくない」という気持ちが、耳の奥で響いている。

聖杯とその誰かの気持ちに導かれ、俺は召喚されたのだ。

 

召喚された瞬間、目の前に広がった光景は衝撃的だった。

俺のmaître《マスター》が、同じサーヴァントに殺されそうになっていおり、瞬時に俺の武器である大砲を召喚し、間一髪のところでその攻撃を食い止めた。

 

「おいおい、召喚されたと思ったら、俺のmaître《マスター》が危ない状況じゃないか!!」

 

大砲と槍が激しくぶつかり合い、金属音が辺りに響き渡る。

衝撃波が壁に亀裂を入れ、周囲はまるで戦場のような混乱に包まれていた。

 マスターは召喚の影響で、恐らく魔力を消耗している。

こんな状況で、ランサーらしきサーヴァントと戦い、後ろにいるmaîtreを気にしながら戦うのは不利だ。

しかし、俺が引くわけにはいかない……なんせ、俺は諦めが悪い男だからな。

素早く攻撃を仕掛けてくるランサーに、大砲を向けた。

 

「吹き飛べ!」

 

「なっ…!」

 

今出せる魔力を全て込めて、俺はランサーに向けて一斉射撃を放った。

弾丸は城の壁をもぶち抜き、周囲は瓦礫の山と化した。

土煙が立ち上がり、視界が遮られる中、あのランサーの姿を確認しようとしたが、どこにも見当たらなかった。

 

「逃げられたか…maître大丈夫か!」

 

辺りを見渡すと、服についた土埃をはたくmaîtreの姿が目に入り、こちらの声に気づき、振り向くと、月明かりに照らされた彼女の姿が浮かび上がる。

黒髪は漆喰のように輝き、まるで夜空に瞬く星々を思わせる美しさだ。

その髪は柔らかく、風に揺れるたびに光を反射し、幻想的な雰囲気を醸し出している。

陶器のように白い肌は、月の光を浴びてさらに美しさを増し、まるで神々しい存在のようだ。

 しかし、何よりも印象的なのは、彼女の金色の瞳だ。

まるで月の光を宿したかのように輝き、深い闇の中で唯一無二の存在感を放っているおり、その瞳は俺の記憶にある友人の姿を蘇らせた。

 

そんな彼女は俺を見てただ、豆鉄砲でも食らったかのような驚きを隠せない様子をみせた。

 

「…凄い…これがあのフランスの英雄…ナポレオン・ボナパルト…」

 

俺は大砲をしまい、彼女に近づき手を差し伸べた。

 

「遅れたが、召喚に応じ参上した…俺の名前はナポレオン・ボナパルト…これからよろしくたのむmaître」

 

彼女は俺の手を優しく取ってくれた。

 

彼女の名前はカナエ・ルーヴ。

運命の悪戯なのか、彼女は生前の俺の友とも呼べる側近、シュミット・ルーヴと同じ一族で、まさに驚くべき偶然、道理で俺を召喚できたわけだ。

 

英霊は、現世の人間が神話や逸話、英霊たちの物語を知っている者、そしてその英霊を崇める者が多ければ召喚されやすくなる。

シュミットは、俺の過去を知る数少ない存在であり、彼の記した日記には俺の全てが刻まれている。その日記を残して日記から通じて、カナエは俺の過去を知り理解してくれているみたいだ。

 

それにだカナエの存在は、まるで運命が俺に与えた贈り物のように感じられる。

 彼女の美しさや、サーヴァントにも通用する強さ、そして俺の過去を知っているという安心感が、俺の心に忠誠を誓わせた。

 

そしてその後、民間人にバレないようにすぐその場から離れ、現在霊体化した俺とカナエは空港にいる。

 

「んで、カナエ、なんで俺たちは空港にいるんだ?」

「今から家に帰るからだよ。」

「家?」

「私や私の父親はフランス生まれ育ちだが、母親が日本人でね。私の家が日本にあるので、とりあえず報告がてら帰る。」

「おー!! 日本か! 行ったことはないが、知識だけはある。」

「聖杯のおかげなんだろ?」

「あぁ、俺たちサーヴァントは現世に召喚される際に、今までの歴史や知識も一緒に召喚される。」

「便利なものだ。」

 

カナエは待合室ロビーのカフェでコーヒーを注文し、受け取ってからベンチに腰掛け、時間までゆっくりとコーヒーを飲む。

 

「お? コーヒーか?」

「もちろん、朝一のコーヒーは染みるねぇ…」

「確かに、朝一に読書しながらゆっくりと飲むコーヒーは美味い。」

「昨日は私が急に君を召喚したからね…魔力の半分は持っていかれた…今は霊体化しかできなくてごめんね。日本に着く頃には回復してるだろうから、その時は美味しいカフェでも連れて行くよ。」

 

優しそうに俺を誘うカナエは、少しだけ申し訳なさそうな表情を見せた。

 

「いいや、謝ることはないさ! あの状況で精神を乱さず召喚を成功させたのは凄いことだ。」

「はは、褒めてくれて嬉しいよ、ありがとう…一応これでも冠位の魔術師だしね…それに…」

 

カナエは緩んだ表情から少しだけ険しい表情になった。

 

「昨日のサーヴァントのマスター…おおよそ検討がつく」

「ほう? あんな短時間で分かるのか?」

「分かるというか…やり方がね、あの時私はずっと狙われていた…位置と距離までは把握できなかったが、ずっと誰かに見られていた」

「見られていた?」

「あぁ、暗殺者のような殺気を感じたよ…あんな殺気を出す奴は一人しかいないからな」

「誰だそいつは?」

「バゼット・フラガ・マクレミッツ」

 

バゼット・フラガ・マクレミッツ。マクレミッツ家は神代には神々に仕えていたルーン魔術の大家であり、カナエとは時計塔で同級生だったらしい。武術や魔術の才能はあったが、権威主義の時計塔では役割も地位すら与えられず、自分の評価を得るために魔術を使った殺し、魔術師殺しの仕事を繰り返すうちに、封印指定を受けた。カナエも何度か狙われているらしく、今回なぜ奴が聖杯戦争に参加できているのかは分からないらしい。

 もし奴が地位を与えられていたのならば、カナエとならんでもおかしくはない程の実力だ

 

「まぁ、この時代…魔術師の絶滅が危うい時代だ。権威主義の時計塔からしたら、魔術師が滅ぶ時代は望んでいないからね。封印指定魔術師の手も借りてまで必死なのさ」

 

 魔術師の絶滅、この魔術の世界であってはならないことが今現在起こってる。

その原因を作ったのが魔力症という病気だ。

魔術師の才能を持つ者が思春期を迎える頃に発症しやすく、魔力が体内で暴走し制御不能になることが多い。

具体的には、激しい頭痛や幻覚、さらには周囲の人々に対して攻撃的になってしまうこともある。

まるで、魔力が暴走して魔力の持ち持ち主を食い尽くすような感覚だ。

もちろん、全ての魔術師がこの病にかかるわけではない。

しかし、最近では若い魔術師見習いの間で発症するケースが急増している。

特に、血統が薄い家系や、過剰な魔力を持つ者が多いとされ、これが原因で、魔術師の数はどんどん減ってしまい、彼らの技術や知識も失われつつあるのだ。

 

「そこで時計塔はある計画を出した。次世代により強い魔術師を育てるために、魔術師と英霊の子を産ませる計画…新魔術師計画」

 

 新魔術師計画。

本来の聖杯戦争は、6人のマスターと6体のサーヴァントが戦う形式で行われる。

しかし、今回の聖杯戦争は異なり、総勢60人が参加する大規模な戦いになった。

この戦争では、参加者は10チームに分かれ、それぞれのチームには6人のマスターと6体のサーヴァントがいる。

つまり、各チームが協力し合って戦うことになる。生き残ったチームが勝者となり、聖杯を手に入れる権利が与えられる。

しかし、この聖杯戦争に時計塔が計画した新魔術師計画が導入された。

それは、マスターとサーヴァントが「子作り」をすることだ。

具体的には聖杯戦争の最中にマスターとそのサーヴァントに行為が求められ、この計画は次世代の魔術師を育てるための計画の一環であり、魔術師の血を受け継いだ子供を増やすことを目的としている。

そのため、マスターたちは自分のサーヴァントを選ぶ際にその関係性を考慮する必要があり、つまり、単に戦力として優れたサーヴァントを選ぶだけでなく、将来の子供に対する適性や相性も重要な要素となるのだ。

そうした背景から、聖杯戦争はただの戦闘だけではなく、次世代の魔術師を育てるための壮大な計画とも言える。

 

「自分たちの願いならば、好きでもない英霊と子作りとは…ある意味狂ってるな」

「…もちろん、英霊は自分たちで選べるから大丈夫だ」

「カナエは俺と子作りをしないのか?」

 

カナエは一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 

 「……さぁね、私はそっち系は疎いからね。」

 

その言葉には、どこか含みがあるように感じた。

カナエは再びコーヒーを一口飲み、まるで話題を変えたかったかのように視線を逸らした。

だが、俺の心の中では、カナエへの想いが確実に芽生え、もしカナエが俺を男として求めるなら、素直に応えたいと思った。

だが、彼女はそれを己の願いのためだけの行為としてしか考えないだろう。

俺には分かる、彼女の瞳の奥には復讐の炎が燃えていることを。

 

会話が途切れ、少し間が空いたその時、ロビー内にアナウンスが流れた。

 

 「さて、そろそろ行こうか…舞台は日本だ」

 

カナエは立ち上がり、俺の方を振り返る。

その瞬間、カナエの復讐の目に一瞬だけ柔らかい光が宿ったように見えた。

果たして、カナエの心の奥には、どんな思いが隠されているのだろうか。

俺の心は、ますます彼女に惹かれていく。

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