※この作品はR-18です。

Fate/espoir sort   作:ニコール

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好

 朝日がカーテンの隙間から差し込み、自然と目が覚めた。

本来、サーヴァントには睡眠は必要ないが、カナエがわざわざベッドを用意してくれたのだから、せっかくならとベッドで休むことにしたのだ。

少し体を伸ばし、朝の支度を済ませた後、広い邸内を歩きながら台所を目指す。

 

メイド兼執事の仕事をこなす刻夜の技術が見事なのか、この屋敷にはほこり一つ落ちていない。

大きな屋敷であれば、普通はメイドたちが忙しなく動き回るものだが、この場所は異様なほどに静かだ。

だが、その静けさが、逆に心地よい。

 

「邸が静かなのも悪くはないな……」

 

ふと独り言を漏らしながら、2階から階段を降りる。

すると、どこからか甘いハニートーストの香りが漂ってきた。朝食にぴったりの、食欲をそそる香りだ。

匂いのする方へ足を進めると、台所に辿り着いた。そこでは刻夜が一人で朝食の準備をしていた。彼女は、俺に気づくと、手を止めて優しく微笑みながら挨拶をしてくれた。

 

「おはようございます、アーチャー様」

「アーチャー様だなんて、俺はmaîtreの従者……様を付けるほどでは、それにだ俺もなにか手伝おうかなと」

「いやいや、貴方様はカナエ様の従者……あの方が従者を迎え入れるのも以外でしたが、貴方はカナエ様の大切な従者なのですからゆっくりしてください」

「そうか……」

「そうだ、ならカナエ様を起こしてきてくれませんか? カナエ様は朝が弱いので」

「分かった、起こしてこよう」

 

 刻夜に頼まれてカナエの部屋に向かい、部屋の前まできたら数回くらいノックをした。

 

「本当に起きないんだな……仕方ないが入るか」

 

 ガチャリと静かにドアを開け、そっと部屋に入った。

部屋の中はカーテンが閉まっているせいで薄暗く、朝の光がほとんど入っていない。少しでも明るくするために、まずはカーテンを開けた。部屋いっぱいに朝日が差し込み、やわらかな光が広がる。

 

カナエはベッドの中で、まだぐっすりと眠っている。まぶしい朝日が顔を照らしているはずなのに、彼女はそのまま気持ちよさそうに寝ている。

 

ふと、カナエの顔にかかっていた髪を指で優しくはらう。すると、彼女の寝顔がはっきりと見えた。起きている時は大人びた表情を見せるカナエだが、眠っている今はどこか幼さが残る。その無防備な寝顔は、あの日に見た険しい表情とはまるで別人のようだ。

 

……しかし、気持ち良さそうに寝ているところ悪いが、そろそろ起きてもらわなければならない。

 

「さぁさぁ、もう朝だぜ眠り姫さん!!」

 

 パンパンと手を叩いて大きくカナエを呼び起こした。

 

「んっ……ん……刻夜……まぶ……しぃ……ん!?」

 

 呼び起こされたカナエは眠気まなこでこっちを見て、刻夜じゃなく俺だと分かった瞬間、眠気が吹っ飛んだかのように目を丸くした。

 

「なななな、何故君が私の部屋にいるんだ!?」

「何故って、刻夜がカナエを起こしてこいと言われてな、それにしてもまぁ……あんな冷静なカナエが自室では子どもみたいに気持ち良さそうに寝てるとはぁ、可愛い所もあるんだな」

「つ!? //このぉ、馬鹿ぁぁ!! 着替えるから早く部屋から出てけぇ!!」

 

 俺の言葉で恥ずかしさからかカナエは、頬をトマトの様に赤らめながら枕を力強く投げつけてきたのを右に交わした。

 

「流石に女性の着替えはみないさ、とりあえず朝食は出来てるから早く降りてこいよ」

「分かったから早くで……ん? ナポレオン、今何時?」

「何時って……8時だが?」

 

 俺は海中時計をカナエに見せれば、血の気引くような顔を真っ青にした。

 

「……わぁぁぁぁ!? 遅刻!!」

「遅刻? なんか予定でもあるのか?」

「よ、予定というか、今日はチーム会議なんだよ」

「会議?」

「前に言ったでしょ? 聖杯戦争はチーム戦だって、その日本チームが集まるの!」

 

バタバタと慌ただしく着替えながら、カナエは急いで部屋を飛び出した。廊下を駆け抜けると、待ち構えていた刻夜に少し叱られながらも、台所でサンドイッチを手早く頬張り、バイクに跨って邸をあとにした。

 

エンジン音が静かに唸りを上げ、カナエは湾岸線を駆け抜ける。スピードメーターは制限速度ギリギリ。

次々と車をかわし、風を切るように走りながら、集合場所へと向かう。

 

「おいおい、maître。飛ばしすぎじゃないのか? このままだと警察に捕まるぞ」

 

俺の声が、ヘルメット越しで軽く響きカナエに問いかける。

 

「大丈夫、視覚迷彩をかけてるから、警察にそう簡単には見つからないよ、それに、あと20分で着くから安心して」

 

カナエは自信ありげに返しながら、湾岸線を走り続けた。

風が髪をなびかせ、都市の空気が身体に触れた。

やがて、カナエは高速を降り、街中に入る。

周囲の景色は一気にビル街へと変わり、彼女もバイクのスピードを徐々に落としていった。

 

「……ここが、集合場所か」

 

カナエはしばらく走り続け、大きなホテルの前に到着した。高層ビルがそびえ立つその姿は、圧倒的な存在感を放っている。

 

「さあ、着いたよ」

 

俺は目を細めてホテルの名前を確認する。

 

「……KAIDOU HOTEL……ここって」

「うん、私の母さんが経営するホテルの一つ。ここなら盗聴の心配もないし、セキュリティも万全だから安心して話せる」

「ふぅん……なるほど、魔術師御用達のホテルってわけか」

 「まぁ、魔術師会議によく使われてるからね、あながち間違ってない」

 

カナエはバイクを停め、俺と共にホテルの中へ足を踏み入れた。

ドアが自動で開き、中に入ると煌びやかな内装が目に飛び込んできた。

シャンデリアが高々と輝き、床は大理石。壁には豪華な絵画や装飾が施されており、その雰囲気はまさに高級ホテルそのものだ。

 

「すごいな……」

 

感嘆の声を漏らしてしまう。

 

「日本で唯一、五つ星を取れるホテルだからね。内装と接客サービスも一流」

「maîtreも働いてるのか?」

「いや、私はここでは働いてない、私は基本魔道具の修理などを請け負って仕事にしてるよ」

 

カナエは胸を張って言った。

そのまま二人は、ラウンジを通り抜け、奥にあるエレベーターへと向かった。

エレベーターに乗り込むと、カナエは最上階のボタンを押し、静かにドアが閉まる。エレベーターが動き出し、上昇する音が耳に響く中、俺は少し窓の外を眺めた。

 

「豪華なホテルだけど、上に上がれば上がるほど特別な場所って感じだな」

「まぁね…ここなら安全だし、最上階は魔術師しか入れない仕様になっている」

 

やがて、エレベーターは静かに最上階へと到着した。ドアがゆっくりと開くと、目の前には長く続く廊下が一本、まっすぐに伸びている。その廊下の終わりに、一つだけ重厚な扉が見えた。

 

「……行こうか」

 

カナエは躊躇なく歩き出し、俺も軽やかな足取りでその後を追う。

足音が吸い込まれるような静けさの中、豪華な廊下を進んでいく。

廊下の壁には高級感のある装飾が施され、まるで王族の館のような雰囲気が漂っていた。

 

そんな中、俺はふと思いついたように口を開く。

 

「そういえばさ、maître以外の魔術師たちは、もうサーヴァントを召喚してるのか?」

 

カナエは歩みを止めることなく、少し間を置いて答えた。

 

「……うん。1年前には、もう全員がサーヴァントを召喚してる。チームメンバーもかなり個性が強い人たちばかりでね。だから、サーヴァントもそれに合わせたような濃いメンツになっちゃってるが、あんまり気にしないでくれ」

 

カナエの口調はどこか歯切れが悪い。

それでも、彼女は振り返らず、そのまま歩き続けた。

俺は微かに首を傾げながらも、彼女の後を黙って追いかける。

 

二人が廊下の奥にある扉の前にたどり着くと、カナエは小さく息をついて気持ちを整えた。

 

「さぁ……準備はいい?」

 

無言で頷くと、カナエは一気に扉を開けた。

ガチャリと音を立てて重厚な扉が開かれると、その先には――

 

「やぁ、みんな。待たせて悪かったね! 元気にしてたかい?」

 

カナエが明るく挨拶しながら部屋に入った瞬間、一人の男が鋭い声を上げた。

 

「あぁあ!? なぁにが『待たせて悪かったね』だよ、カナエ!! お前、30分も遅刻してるぞ!!!」

 

その声と同時に、男はクナイを素早く投げつけた。鋭く空を切って飛んできたクナイだったが、カナエに届く前に砂鉄の壁が瞬時に現れ、クナイはその中に飲み込まれて消えた。

 

「ははっ、相変わらず元気だね、芝田君」

 

カナエは軽く笑いながら応じるが、目つきの悪い金髪の男――芝田は悔しそうに舌打ちした。

 

「ちっ……」

 

芝田は、不満そうにクナイをもう一本手に取りながらも、カナエに対して敵意を剥き出しにしていた。

 

「ふふっ、芝田君……君のクナイ、前よりスピードが上がってるね。ずいぶん練習したんじゃないか?」

 

カナエはクナイの速度に感心した様子で、芝田に軽く微笑みかけた。

芝田は少し嬉しそうに見えたが、恥ずかしさからか顔を赤らめ、そっぽを向いた。

 

「……うるせぇ」

 

拗ねたように返す芝田に、カナエは肩をすくめる。

 

「あちゃ、褒めたつもりなんだけどね……まぁ、遊びはこの辺にして、本題に入ろうか」

 

そう言って、カナエは部屋の中央にある席に腰を下ろし、真剣な表情になった。

芝田もそれに倣い、無言で席に着いた。

 

「さて――私は、今回のサーヴァント召喚のため、1ヶ月間フランスに行っていたんだけど……そこで、暗殺されかけた」

 

「「!?」」

 

その瞬間、部屋にいた全員が驚愕の表情を浮かべた。

空気が一気に張り詰め、ざわめきが広がる。

 

無理もない、冠位の魔術師――つまり、魔術師の頂点に君臨するカナエが殺されかけるなんて、そうそうあることではない。

ましてや、彼女が危険な状況に追い込まれるなど、仲間たちにとっては信じがたい話だ。

 

「ちょっと待て……お前、フランスに行ってただけで、命を狙われたのかよ?」

 

芝田が眉をひそめ、鋭い目でカナエを見つめる。

 

「まぁね、向こうで触媒を盗りに行った時襲われた、相手は……かなり手強いサーヴァントだった」

 

カナエは、静かに言葉を続けながら、表情を引き締めた。

 

「それって……サーヴァント同士の戦いに巻き込まれたってことか?」

 

別のメンバーが慎重に尋ねる。

 

「いや、完全に計画されていた襲撃だった。まぁ、急遽だったがその場でナポレオンを召喚し、ナポレオンのおかげでなんとか切り抜けたよ」

 

カナエはちらりとナポレオンに視線を送る。

俺は軽く頷き、冷静に状況を見守っていた。

 

「しかし、冠位の魔術師が殺されかけるなんてな……」

芝田は呆れたように口元を歪めた。

 

「だから言ったでしょ。今回の聖杯戦争は絶対に私を先に叩き潰しにくる」

 

カナエはそう言いながら、静かに周囲を見渡した。緊張感の漂う中、彼女の言葉が全員に響いた。

 

「まぁ、今回の犯人はおおよそ誰かは分かるが……アイツの事だから恐らくこちらの情報は全部知られてる可能性がある」

「犯人は誰なんだよ」

「バゼット・フラガ・マクレミッツ……魔術師暗殺に特化した魔術師だよ」

「封印指定魔術師をもだすとは、犯罪者の手も借りたのですね、堕ちたものだわ時計塔も」

「仕方ないさ黒江、このご時世だからねー……時計塔も必死なのさ……魔術師を絶やさない為にね」

「だからとはいえ、カナエお姉様を傷付けるなんて許さない」

 

 黒江という少女は、カナエが暗殺されかけたことに対する怒りを隠せず、その目には明らかな殺意が宿っていた。彼女の瞳は、まるで鋭い刃物のように光り、周囲の空気がピンと張り詰める。

 

「まぁまぁ、黒江、そんなに殺意を剥き出しにしないで! 可愛い顔が怖くなってるよ」

 

カナエが微笑みながら言うと、その表情は一瞬和らいだ。

 

「申し訳ありません、カナエお姉様……でも、どうしても許せません……もし奴が再び現れるなら、私が相手をしたいのです!」

 

黒江は、まるで愛する人を守る乙女のように、カナエに真剣な眼差しを向ける。

 

「その時は君に任せるよ。でも、まぁ…私たちが動かなくても、他の連中が仕掛けてくるだろうし、こっちはゆっくり待とうじゃないか」

 

カナエの言葉に、黒江はまるで恋に落ちた少女のような表情になる。

 

「そうだ、お姉様!実は、今日クッキーを焼いたんですよ!良かったら食べますか?」

 

黒江の声には、嬉しさが溢れ出ていた。

 

「おー!!皆で食べよう!!黒江、紅茶を入れてくれるかい?」

 

カナエは期待に満ちた目で黒江を見つめる。

 

「もちろんですわ!!」

 

 黒江はウキウキしながら、クッキーと紅茶の準備を始める。

その間、カナエは俺にメンバーの紹介をし始めた。

彼女の声は柔らかく、まるで優しい風が吹き抜けるようだった。

 

 芝田克彦(しばたかつひこ)、カナエにクナイを投げてきた挙句褒められて少し拗ねてた男、アサシンのマスターでサーヴァントは酒呑童子。

 黒江美咲(くろえみさき)、カナエの従姉妹にあたるらしい。まだ10代で見た目がいかにもお嬢様な見た目をしており、カナエに対してとてつもない感情を剥き出しにしているランサーのマスター、サーヴァントはビーマ。

 久堂紀(くどうかなめ)、キャスターのマスターで雰囲気は落ち着いており口数が少ない男、サーヴァントはダウィンチ。

 馬上冬弥(まがみとうや)、カナエと年差変わらなくカナエが言うには幼なじみらしい。

 セイバーのマスターでサーヴァントは伊吹童子。

 今回体調不良で会議には参加はしていないが、ライダーのマスターの間桐桜。

 数年ぶりの間桐家から魔術師が選ばれ参加しているらしいが、間桐家の黒い噂のせいかカナエ自身警戒はしてるらしくサーヴァントに関しても不明。

 

 カナエは、黒江から紅茶とクッキーを受け取り、優雅に一口頬張りながら話し始めた。

 

 「さて、自己紹介も終わったことだし……皆に聞きたいことがあるんだけど、あーでも流石に思春期真っ只中の未成年に聞くのはいけないから、ここは冬弥に聞きたいんだが」

「何だ?急に念話なんかしてきて」

 

 冬弥は少し警戒しながら答える。

 

「君はサーヴァントとやったの?」

「ごふっお!?」

 

 冬弥は驚き、紅茶を吹き出しそうになって咳き込み、まるで静かな湖面に投げ込まれた石のように、場の空気を一瞬で変えた。

 

「カナエ!お前、いくらなんでもデリカシー無さすぎるだろ!」

 

冬弥は顔を赤くしながら叫ぶ。

 

「デリカシーなんてあるかい?小さい頃から裸を見た仲だろ?何を今更気にするんだ?」

 

カナエは涼しげな表情で返す。

その言葉に、他のメンバーがざわめき始めた。まるで、静かな教室に突然響いた爆音のようだった。

 

「誤解を生むような言い方はやめろ!大体、お前はナポレオンとやったのか?」

 

 冬弥がカナエに反論してきた。

 

「…………」

 

 カナエはフイッと明後日の方向を向き、紅茶を優雅に飲み始める。

 

「あ、お前誤魔化したな」

 

 誤魔化すカナエに冬弥は鋭く指摘する。

 

「冬弥君、君はセックスをなんだと思ってる?タダの性行為だと思ってるのかい?」

 

カナエは真剣な眼差しで冬弥を見つめる。

 

「哲学風に言っても意味ないぞ。てかお前、よくそれで冠位になれたな」

 

 と冬弥は呆れたように言うが、カナエは冬弥の言葉を無視し、クッキーを美味しそうに頬張る。その表情はまるで、甘いものを心から楽しんでいる子供のようだった。

 

「お前、まさか今まで男と付き合ったこと…」

 

ドォン!!

 

その瞬間、カナエの砂鉄の槍が冬弥の頬をかすり、背後の強化ガラスに見事に刺さった。周囲の空気が凍りつく。

 

「おっと、すまない!冬弥君、手が滑ったようだ!!」

 

 カナエは明らかに冬弥に怒りを向けて槍を放ったが、その目には冷静さが宿っていた。

冬弥は動じることなく、ただカナエを見つめ返していた。

 

「あはは、相変わらずだね君は…さて、今日はお開きだ!皆、くれぐれも死なないように生きてくれ」

 

カナエが笑いながら言うと、冬弥以外のメンバーは会議室から出て行った。

その中で、冬弥は一歩踏み出し、カナエに近づいた。

 

「お前、本当にナポレオンとやらないのか?」

 

冬弥の声には、少しの不安が混じっていた。

 

「やるさ、勿論…でも、それは私の願いを叶えるための過程でしかない」

 

 カナエは冬弥の問いに冷静に答え、その表情には決意と同時に何かを背負う重さが見え隠れしていた。

 

「お前、まだ…」

 

冬弥は言葉を続けようとしたが、カナエの目を見て言葉を飲み込む。

 

「私は、私の父さんを殺した一族…それに関与した奴らを殺し、父さんを蘇らせる」

 

彼女の声には揺るぎない決意が宿っていた。

その割り切った表情に、冬弥は心配そうな眼差しを向ける。

彼の心には、おそらく彼女の本心に対する複雑な感情が渦巻いており、彼女が抱える重荷を理解しながらも、どうしようもない無力感で胸を締め付けられているのだろう。

 

「おい、ナポレオン」

 

 冬弥は一呼吸し俺を呼びかけた。

 

「なんだ?」

「こいつのこと頼む。こいつは強いが、抜けてるところがある…」

 

 冬弥の視線は真剣で、その瞳には幼なじみでもあるカナエを心配するような無邪気さではなく、好意を抱く異性に対する心配が色濃く映し出されていた。

 

おそらく、サーヴァントとの子を産む条件が無ければ、冬弥はカナエを自分の女にしようとしただろう。

カナエ自身も、冬弥に対しては他のメンバーよりも親しみを持って接している。

彼女の心を開く様子は、冬弥に対する特別な感情を示しているように見え、そんな二人の関係を見つめる俺の心には、胸を締め付けられるような嫉妬の炎が燃え上がっていた。

 

「言われなくとも、任せておけ」

「まさか、冬弥君は私を心配してくれてるのかい?」

 

カナエの問いかけには、少し茶目っ気が含まれていた。

 

「そりゃあそうだろうよ。リーダーでもあるお前が神性サーヴァントじゃなく、フランスの英雄を召喚するもんだから」

 

弥は苦笑いを浮かべる。

 

「HAHA!せっかく一緒に戦うなら、好きな英霊と戦いたいからね、私はね…ナポレオンが好きなんだよ…それに、私は逆に君が死なれると悲しい」

 

カナエは笑顔で言った。その表情には、彼女の強い意志と共に、冬弥に対する特別な思いが感じられた。

 

「はっ、お前、俺が簡単に死ぬと思ってるのか?」

 

冬弥は少し挑発的に言った。

 

「思わないよ、なんせ君はお母さんの1番弟子だし…なんせ伊吹童子を召喚したんだ、そう簡単に死なれたら面白くはない」

 

 カナエは少し楽しそうに笑う。

その瞬間、二人の間に流れる空気が和らぎ、まるで長い間の友情を確認するかのように、楽しそうな会話が続いていった。

冬弥は、カナエの笑顔を見つめながら、彼女の強さと同時に脆さを思い知るのだった。

 

「あなたのマスター、面白いわね」

 

 隣にいた伊吹童子は微笑みながら言った。

 

「あぁ、俺のmaîtreは面白い女だよ」

「…あなた、もしかして気付いてないの?」

 

伊吹童子の視線が鋭くなり、冬弥は首をかしげた。

 

「ん?」

 

 伊吹童子の問いに疑問を抱きながら、彼女の言葉を待つ。

 

「あなたのマスター、あなたのこと好きなのよ?」

 

 その言葉に、俺は一瞬、息を呑んだ。

 

「それは英霊としてだろ?」

 

 俺は自分の心を守るように言ったが、内心では何かがざわめいていた。

 

「……」

 

 伊吹童子は少し残念そうな表情を浮かべ、俺はその反応に何かを察してしまった。

 

「まさか…」

「まさかのまさかよ。英霊として好きなら、あなたのマスターはなんにも気にせずに私のマスターの質問に答えられるはずなのに、はぐらかしたりするし、あなたの話をした時、凄い嬉しそうな表情をしたのよ?」

 

 彼女の言葉は、俺の心に重く響いた。

 

「……」

 

 伊吹童子の言葉をで言葉を失う。

 彼女の言うことが真実であるなら、カナエの行動は全てに意味を持つことになる。

 

「気持ちを確かめたいなら、今夜誘ってみたら?」

 

伊吹童子が意外な提案をしてきた。

 

「ふむ…それもありだな」

 

もちろん俺は無理やりはしたくはない、カナエの気持ちを確かめてから等と色々考え込む。

カナエが俺を好きなら、それは嬉しいことだが、本当にそうなのだろうか。

そうだったのなら、カナエの今朝の反応も、すべてが筋が通るように思えてきた。

 

再び感情に胸が高鳴り、同時に締め付けられるような緊張感を覚える。カナエに気持ちを確かめたいという思いが、心の中で渦巻いていた。

 

「おーい、ナポレオン、帰るぞ」

 

 会話を中断させるかのようにカナエの声が響き、カナエに呼ばれたことで我に返った。

 

「oui、maître…伊吹童子、助言感謝する」

「いえいえ、良い夜になると良いわね」

 

 伊吹童子は微笑み、その表情には温かさがあった。

そして、俺はカナエに向かって歩み寄り、会議室を後にした。

俺の心には期待と不安が入り混じり、カナエとの関係がどう変わるのか

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