※この作品はR-18です。

土曜の朝の小さな恋人   作:上上上上上上上

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第6話 小さな成長(1)

 あの日から俺とみゆちゃんは恋人同士になった。

 大学生の彼氏と小学生の彼女、決して他人には話せない関係だけど。

 不思議なものであらためて互いの恋愛感情を意識すると、今まで程には俺達の関係にエッチというものが必ずしも欠かせないものでなくなってきたような気がする。

 もちろん今までのエッチごっこのように互いに身体を悦ばせ合う行為は続けていた。

 でもそれなしに普通のデートとでもいうのか、散歩したり外食に出かけたり、隣街のショッピングモールでウインドーショッピングしたり、自転車を二人乗りでただまっすぐ土手をサイクリングしたり。

 それだけでも俺達はそれなりに満たされた時間を過ごすことができるようになってきた。

 

 今日のみゆちゃんはいつも通りの時間に部屋にやって来たものの「何か今日はちょっと調子悪いんだよね~」と座り込んでしまった。

 熱があったり頭やお腹が痛かったりといったはっきりした症状ではなく、ただ漠然とちょっとだるくて気持ち悪いと言う。

「じゃあ今日はエッチはお休みにして、ゆっくり休んでなよ」

「うん…あ、今日もママ帰りがおそいから、お昼は外で食べようよ」

 みゆちゃん曰く「お兄ちゃんが土曜日のランチはほとんど毎週あそこのファミレスか牛丼屋に行ってるって聞いたから、ママのお昼の帰りがおそい日はお兄ちゃんに付いて行くことにした」とママに話を通してあるそうで、今やランチデートにあたって人目を憚る必要は一応なくなっている。

 体調の悪さが心細くさせるのか今日のみゆちゃんはいつもよりちょっと甘えんぼで、意味もなく背中からハグしてきたり、胡座をかいた俺の膝の上でうつ伏せに横になったり仰向けになって伸びをしたり、髪を撫でさせたり、その気まぐれな様子は昔実家で飼ってた猫を思い出した。

 そんな風に今日はTVやマンガを見ながらダラダラと過ごしたのだが、やっぱり体調はあまり良くならないらしい。

 それでも正午が近付いてくるとお腹は空くと言うので、みゆちゃんを自転車の後ろに乗せてファミレスに向かうことにした。

 

 しかし……

「どうしたの、みゆちゃん。やっぱり全部食べられない?」

 テーブルの向かいでみゆちゃんはスプーンで皿にこびり付いたご飯粒やデミグラスソースを意味もなく一箇所にかき集めていた。

 サラダはまだ半分以上、大好きな筈のオムライスもあと三分の一ほど残したところで口が止まってしまっている。

「うん……おなかは空いてたんだけど、何だかとちゅうで急に食べたくなくなっちゃった。ごめんなさい」

「いいよ、無理しないで。残りは俺がもらうから」

 だるそうに口の中でドリンクの氷を左右に転がすみゆちゃんの頭を撫でてやった。

 

 食事の会計を済ませて店を出ようとすると、レジの奥からこの店でよく見かける多分50歳前後……うちのお袋と同年代に見える女性店員が俺に声をかけてきた。

「あの、お客様ちょっと……」

 声を潜めてどうしたんだろう。みゆちゃんを入口に待たせておいて、俺はレジ前に戻った。

「差し出がましいとは思いますが、妹さんの服のお尻に血が付いてらっしゃって……」

 そうか、そういうことだったのか!

 ここに至って俺は今日のみゆちゃんの様子に合点がいった。

「あっすいません、それじゃ椅子が汚れてるんじゃ」

「いえ、そちらは私共が掃除するので問題ないんですが……」

 女性店員は顔を近づけてひそひそ話を続ける。

「何分あの年頃の女の子にはデリケートな話題ですので、ご家族でも男性の方とこういう話は嫌がられるかもしれません。お兄さん、妹さんには優しく、慎重に接してあげて下さいね」

「分かりました、どうもありがとうございます」

 やっぱり俺達のことを普通に兄妹と思ってたんだな、店員さん。

 俺は頭を下げてみゆちゃんのところに戻った。

「最近寒くなってきたよね。体を冷やしたらもっと具合が悪くなるかもしれないから、これでも羽織っときなよ」

 返事を待たずジャケットを脱いでみゆちゃんの肩に掛けてやった。

 俺のサイズの上着ならひとまずスカートのお尻の血の染みは隠せるだろう。

 そういえば以前何かの機会にみゆちゃんママから貰った名刺に職場の電話番号が書いてあったはずだ……どこにしまったんだったか。

 すぐスマホに登録しておけば良かったな。

 

 一旦アパートに戻って名刺を探し出し、仕事中のみゆちゃんママに連絡を取って事情を話した。

 スマホをみゆちゃんに渡してママと話してもらって、やっと本人にも今日の体調不良の意味が理解できたようだ。

「おめでとう、みゆちゃん」

 返してもらったスマホをしまって肩を叩きながら言うと、

「ん……ありがと。何がおめでたいのか自分でもピンと来ないけど」

「そのうち分かるよ、きっと」

 みゆちゃんはお腹に手を当てて複雑な表情だ。

 この年頃なら学校の保健の授業で最低限のことは教わって、幾らかの予備知識はあったことだろう。

 だったら今日のところは男である俺にこれ以上出来ることは何もない。

「俺が送ってくから、今日はおうちでゆっくり休んでなよ」

「え~っ、まだ帰りたくないのに~」

とみゆちゃんは口を尖らせたが、何とか宥めて送り帰してやった。

 翌朝には早速みゆちゃんママが世話になったお礼にと、近所の和菓子屋の包装紙に包まれた小さな菓子折りと御赤飯を持ってやって来た。

 ちなみにこれは完全に俺の考えが足りなかったんだが、みゆちゃんは普通にママの緊急連絡先を知っていたそうだ。

 慌てててその可能性が頭からすっぽり抜け落ちてたよ。

 

 そして次の土曜の朝、みゆちゃんは部屋に来るなり

「ほら、お兄ちゃん見て見て~!♥」

と嬉しそうに紺のスウェットパーカーを首元までまくり上げた。

「ママといっしょに私が使う用のナプキン買いに行った時、ブラジャーも買ってもらっちゃったんだ!」

 これがジュニアブラってやつだな。露出度も飾り気も少ない、薄い水色で胸元に小さなリボンが付いた素朴なデザインの子供用ブラジャーだ。

 初潮を機に、改めてみゆちゃんママは娘の成長に思うところがあったようだ。

 服の上からの胸ポチがもう拝めなくなるのは寂しいけど、これも小さな彼女の成長の証だと思うと、胸が暖かくなった。

「でも『初潮』からしばらくは『月経周期』~?っていうのが不安定だから気をつけなきゃいけないんだって」

 それにしてもファミレスの店員さんはデリケートな話題と言ってたけど、みゆちゃんは実にあっけらかんとしたものだ。

「ああそうだね、じゃ今日もエッチはお休みにしとこうか」

「エッチなしでもイチャイチャはできるも~ん!♥」

 頭を撫でてやると、みゆちゃんは俺の腕に抱きついてそう主張した。

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