※この作品はR-18です。

転生したら寄生生物なんですけど!? というかち×ぽなんですけど!   作:真喜屋五木路

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二度目の救出は……

「はぁッ――!」

 

鋭い風切り音と共に薙がれた大剣により、再びゴブリンが断末魔もなく切り捨てられた。

もうこの光景も何度目か。先ほどから三、四匹ほどの小さな群れで襲ってくるゴブリンたちは、先行するシアにあっさり斬り飛ばされるばかりで、その後ろをついていくリズには出番すらない。

リズに寄生しているムサシとしても、グロ画像を間近で見なくていいので有難いといえば有難いのだが、淡々とした作業のような光景が繰り返されるだけなのも、それはそれで暇なのである。

 

『さっきから本当にゴブリンばっかだな……というか、俺たちはダンジョンを進んでるんだよな? それなのに段々魔物が弱くなっていってないか?』

 

思い出してみれば、シアがスキルを使ったのはヴァナルガンド相手ぐらいではないだろうか。ゴブリン相手は先ほどから、剣だけで数匹纏めて倒している。

それに、ヴァナルガンドだとか、マンイーターだとかを倒した時は一体でも結構なスキルポイントが入ってきたのだが、ゴブリンはもう十何体と倒している筈なのに全然ポイントにならない。

暇を持て余したムサシの独り言じみた問いに答えたのは、同じく暇を持て余したリズだった。

 

「ああ、それも説明してなかったな。このダンジョンは人間領と魔族領の間にある巨大な山脈、紅蓮火山を貫くようにして存在してるダンジョンなんだ」

『へぇ、トンネルみたいになってるってことか。というか火山の中なのに熱くないんだな』

「火山と言っても普通の火山と違って、集まったマナが消えない炎となって山の表面を覆ってるだけだからな」

『つまり年中山火事状態ってことか……? そっちの方が延焼して危ない気もするが』

「ははっ、ムサシは心配性だな。裾の方はマナの密度も低いしちょっと暑いぐらいで平気だって」

 

リズは可笑しそうに噴き出したが、異世界の常識に疎いムサシとしてはイメージがつきづらい光景だ。

 

『そういうものなのか?』

「ダンジョンから出て直接見たら、ムサシにも分かるさ。ただ、山の中心部に行くとマナが濃くなって、それに対応して地下にあるこのダンジョンでも強い魔物が産まれるんだ。で、ちょうどムサシを召喚したのがダンジョンの中間点近く、魔物が一番強い場所だったんだよ」

『なるほどな』

 

ゲームとかだと進むイコール敵が強くなるだったが、原理を説明されれば納得はできる話だ。というか、二人にしてもただ単に敵が強くなる方向に逃げてたらそれはもう、戦いを求めるバーサーカーか何かである。

しかしこれで、二人の目的が改めてはっきりした。シアとリズは一先ず人間の領域へと逃げるつもりなのだ。

 

『有力な魔族に反乱を起こされたから、魔族領に留まるのは危険だったってところか』

「ああ、追手があちこちにいたからな。それに、元々何かあった場合はここを通って逃げるつもりだったんだ」

 

つまり最初に会った時、武器があるのを知っていたのも、いざという時の備えとして隠してあったのだろう。

 

『勢力として拮抗してる人間領に逃げ込めば、魔族側からは簡単に探せないと』

「そうだ。幸い、ボクも姫様も一部を除けば殆ど人間と変わらないからな」

 

リズはそう言って、外套のフードを一層目深に被りなおす。

出発してからすぐ、リズは再びバンダナを頭に巻くと、今度はさらに念を入れてシアと同じように外套を羽織っていた。

これまでの話を元に考えれば、人間領側の出口が近いのだろう。

今までと違いリズに代わってシアが先行しているのも、シアの方がより人間に近いから、冒険者と会った時にバレ辛いようにということなのかもしれない。

だが、出口が近いということは――

 

『――なあシア、本当に考えを変える気はないのか』

 

先行していたシアは足を止め、振り返る。

 

「ええ、例えどれだけ難しくとも、私は魔王になって、戦乱を終わらせ、人間との争いも止めてみせます」

 

相変わらず真っすぐな瞳で、澱むことなくそう言い切るシア。

 

『どうやって……ってのは巻き込まれたくないから聞かないことにするが。あれだけ人間から敵視されてても諦めるつもりはないと』

「はい」

『多分、いや絶対今以上に、色んな奴から恨まれたりするぞ』

「覚悟の上です」

『もう一度言うが、六貴族と妥協して魔王になればこんな風に逃げ回る必要もないんだぞ』

「さっきも言ったじゃないですか、それはできないって」

 

困ったようにシアは苦笑した。

ムサシも、自分が同じようなことを言っているのは理解している。

だが、それでも――と、ムサシが言葉を続けようとした時だった。

 

「! これは、悲鳴……?」

 

うっすらと聞こえた人の声、それも先ほどより余裕のない怒鳴るような調子だ。

シアの目つきが険しくなり、手にした大剣を握りなおす。

 

『おい、まさかまた助けに行こうとしてるんじゃないだろうな』

「そのつもりです」

『ッ~……もう人間領が近いんだろ? だったら相手は十中八九人間だ。また助けたところで魔族と分かれば邪険にされるのが関の山だぞ!?』

「それでも構いません」

 

シアはムサシの忠告を聞き流しながら、周囲を窺い声の聞こえた方向を探している。

ムサシは絶句する。

あまりにもお人好し過ぎる。バカをつけてもいい程に。

 

『ああくそッ! 人間との争いを止めたいのは分かるが、だからって人間を助ける必要はない――』

 

ムサシの言葉は再度悲鳴に邪魔される。今度は声の主が女性だということが分かるほどに明瞭で。

 

「こっちです! 行きますよ、リズ!」

『あ、シア、おまッ――!』

 

止める間もなくシアは悲鳴の方へと駆けだす。

リズもすぐに後を追って走り始め、ムサシは呆れたように黙り込むしかなかった。

 

――――――

 

声がしたのは、主なダンジョンの通路であろう広い空洞から枝分かれした隘路の先かららしい。反響して聞こえてくるしわがれた嗤い声から、またゴブリンの集団がいるのだろう。

ただし先ほどと違って戦闘音は聞こえず、代わりに鉄臭い血の匂いと卵の腐ったような匂いの混じった異臭が漂ってくる。

それでも迷いなくその先へ進む二人の目の前に、大きく落ちくぼんだ穴が現れた。

 

「っ……!」

 

先行していたシアが警戒しながらその下を見下ろし、顔を顰める。

追いついたリズの視界を通して、ムサシにもその理由が分かった。

穴は深さ四、五メートルほどで、教室くらいの広さだろうか。中にはゴブリンがニ十匹ほどいて、一点を中心に集まり、下卑た嗤いのような鳴き声を上げている。

その中心にいるのは一人の少女だった。

 

白い肌を擦り傷と泥とで汚された少女の身体には、かつて服であった残骸が申し訳程度に張り付いているだけで。

ゴブリンたちはそんな彼女の手足を拘束し、グギャ、グゲッといやらしく下卑た笑い声をあげながら股へと代わる代わる黒緑の肉棒を突っ込んでいた。

まるでオナホールで遊んでいるかのような、乱暴で自己本位な暴虐に――だが、少女はもう抵抗する意思も残っていないのか、空虚な瞳が一瞬シアたちへ向いたにも関わらず、助けを求めるでもなくされるがままだった。

そんな凄惨極まる凌辱に意識が奪われ一瞬分からなかったが、すぐに彼女が知っている顔であることにムサシは気付いた。

 

『あいつはさっきの……』

 

間違いない、先程シアとリズが助けた冒険者の一行、神官らしい格好をしていた子だ。

だとすれば――

すぐにリズもそのことに気付いたようで、視線が穴の中を探すように彷徨って。

 

「――ッ!」

 

彼女の仲間は、穴の端の影になっている辺りに”あった”。

乱雑に人型が投げ積まれた小山。彼らの着ている服は、血に染まり切っている点を除けばいずれも先程見たばかりものもので。

その脇には、先程シアたちに向けられた剣が、切断された手に握られたまま転がっている。

シュラン、と隣からシアが剣を抜き放つ音がした。

 

『――シア、まさかお前またあいつを助けようとするつもりか?』

 

シアはこくりと小さく頷く。

 

「勿論です」

『そうかい』

 

今から止めようにも、先程から延々と平行線だった上に、シアの目は既に戦闘モードといった感じだ。勿論、リズもそれに協力するのだろう。

ならば仕方がない。ムサシは密かに溜息をつきつつ、事前に見繕っていたスキルを習得した。

 

「下に下りたらリズはあの子をお願いできますか、私がゴブリンを引き付けますから」

「了解しました姫さ――ま゛ッ!?」

 

答えようとした瞬間、リズの下半身にぞわりとした違和感が走り、彼女は慌てて叫びそうになった口を押さえ込む。

 

「リズ?」

「すみま、せッ――ひめ、さまぁッ……?!」

 

下半身の敏感な部分を左右に捻じりながら徐々に引き抜かれるとでもいえばいいのか。

虚脱感と掻痒感を足したような感覚に、リズは口を押えて丸めた背を震わせながら声を出さないよう耐える。

 

「ん――ッ、はぁっ……! おい、ムサシ……?」

 

違和感が収まったと同時、リズはムサシが自分の股間からいなくなったのに気付いた。

寄生先を移動したのかとも思ったが、今まで移動するときにこのような感覚が襲ってきたことはないし、シアも心配そうにこちらの様子を窺っている。

どういうことだとリズが首を捻っていると、彼女の執事服のズボンの裾から、ぽとりと何かが地面に落ちた。

 

「!?」

 

さっきとは別の意味で大声を上げそうになったリズは慌てて再度口をふさぐ。

そこに落ちていたのは、尺取り虫のようにうねうねと全身を脈打たせて動くち×ぽであった。

 

『ふぅ、寄生してないと視界がどうなるかだけ不安だったが、独立生存スキルに見る能力もあって良かったぜ』

「お、おま――ムサシ……なんだよな? でも、寄生してないと生きていけないんじゃ……」

『まあそうだったんだが、ちょっと”独立生存”っていうスキルを取ってな』

 

単体でうねうねしていたち×ぽは竿をにゅいんと伸ばし、リズの方に鈴口を向けて答える。

 

「そんなスキルが……いや、というか何で今そんなスキルを……」

 

どうやっているのかは分かったがどうしてそんなことを、と言いたげなリズに、やれやれとち×ぽは亀頭を振った。

 

『正直、あそこまで敵視されて尚助けに行こうだなんて俺には理解できないし、巻き込まれたくないんだよ。だからここで傍観させて貰うことにする。ま、終わったらまた寄生させて貰うけどな』

「な、何だよ、そこまでしなくても……」

 

突き放すムサシの言葉にリズは狼狽するが、一方のシアは少し残念そうに目を細めつつも、落ち着いた様子で視線をムサシから眼下の穴の中に向ける。

 

「分かりました、すぐ終わらせますから。行きますよリズ」

「っ、分かりました」

 

数度シアとムサシを交互に見やったリズだったが、最後には何か言いたげに唇を歪めながらもシアの隣に並んだ。

 

「では、先程話した通り――いきますッ!」

 

気勢を上げて穴へと飛びこむシア。

その声にゴブリンたちが顔を上げた時にはもう、大剣が振りかぶられている。

 

「――ストレート・スラッシュ!」

 

中空で刃によって描かれた白い三日月はそのまま高速で飛翔し、冒険者の少女から少し離れたところにいたゴブリンの一体を斬断した。

べしゃり、とその上半身が地面に転がって漸くゴブリンたちは事態に気付く。

ギギャッ!

少女から離れ、慌てて壁際に放り投げられていた武器を取ろうと彼らが散り散りになった隙を狙って、リズが少女の元へ飛び降りた。

 

「姫様、確保しました!」

「分かりました、巻き込まれないように後ろへ!」

 

少女を素早く抱きかかえたリズは、シアの背後側へ逃げたゴブリンを横なぎに蹴り飛ばすと、壁へ背中を預けるように跳躍する。

シアもすぐにその後を追い、ゴブリンから二人を守る様リズの前へ飛び退った。

 

「さあ! 来なさい、私が相手ですッ!」

 

大剣を構えたシアは武器を手に大声で、威嚇しながら近づいてくるゴブリン達の注意を引き付ける。

背後にいたゴブリンはリズが蹴り飛ばしたし、少女の安全も確保した。

後は前方に気を付けていれば――そうシアが考えた瞬間である。

ガッ!

 

「ぐッ……!」

 

突如背後から鈍い音と、リズのくぐもった悲鳴が聞こえた。

 

「っ! リズ!?」

 

シアが視線を後ろに遣ると、倒れ込むリズの隣に、他の個体より一回り大きなゴブリンが立っていた。




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