転生したら寄生生物なんですけど!? というかち×ぽなんですけど! 作:真喜屋五木路
「ギヒヒッ、良イ光景ダナ」
横たわった主と従者の股間、乱暴な抽送にまだ開きっぱなしになっている秘裂から逆流する精液を眺めて、ホブゴブリンが嗤う。
「コレナラ暫ク愉シメソウダ。二人トモシッカリ飼ッテヤルカラナ」
「「――っ!」」
まだ終わらないのか。更なる凌辱を予期させるその言葉に、脱力してただ荒い呼吸を繰り返すだけだった二人は息を呑んだ。
一度肉の快楽に理性を屈服させられてしまった以上、次はもっと簡単に堕とされてしまうのではないかという予感。
もしそうなら、このまま犯され続けたら自分たちがどうなってしまうのかという不安。
「リズ……」
「姫様……」
にじり寄ってくるそういった恐怖から逃げるように、お互いの名前を呼び手を握るシアとリズ。
しかしそんな健気な光景も、捕食者にとっては肉を更に美味しくするスパイスにしかならなかった。
「ゲヒャッ、見セツケテクレルジャナイカ……」
自分たちを囲むゴブリンたちの下半身が早くも硬くそそり立ち直しているのが目に入り、二人の顔が強張る。
だが、ホブゴブリンがそこでふと思い出したように難しく眉をひそめた。
「ダガ……オ前ラハ魔族ダッタナ……。力モ強イ、長イコト置イテオクノハ危ナイカ……?」
そのまま魔物は考え込むように視線を彷徨わせ、その目に三人目の少女の姿が入る。
「ソウイエバ、モウ一人イルンダッタナ」
ニチャリと口元を引き裂く笑みに、シアとリズもホブゴブリンの見ている先を振り向き、そこで神官の少女がいたことを思い出した。
「ヨシ。魔族ドモ、アノ人間ノ雌ヲ置イテイクナラオ前ラハ開放シテヤッテモイイゾ」
先ほどから一転、手の平を返した提案にリズの口から困惑の声が漏れる。
「な――いきなり、どういうつもりだ……?」
「……リズ、耳を貸しては駄目です。どうせまた、言葉の綾みたいな言い分で騙すつもりなんでしょう」
「ゲヒヒッ、今度ハ本当ニ言葉ノ通リダゾ?」
不審げなシアの視線を楽しむように嗤ってホブゴブリンは続ける。
「オ前ラミタイナチカラノ強イ魔族ヲ長ク置イテオイテ、万一暴レラレデモシタラ危ナイカラナ。ダガ人間ナラソノ心配モナイシ、アノ雌ハソモソモ抵抗シナイダロウカラナ!」
その言葉通り、神官の少女は今まさにゴブリンの悪意を向けられているというのにぴくりとも動かず、虚ろな目を地面に向けたままだった。
仲間の死と凌辱で、完全に心が折れてしまっているのだろう。
リズはそんな彼女の様子を肩越しに見、そしてシアの方を向く。
「姫様……」
どうするのか、と言外に確認を求める呼びかけ。
「ゲヒヒッ、考エルマデモナイダロ? マア人間ハ脆イカラ長ク飼エナイノハ残念ダガ……」
ホブゴブリンも、もう答えは決っているだろうというように嗤い――
「それはできません」
「ハ?」
――想定外なシアの答えに顔から表情を取り落とした。
「ナ……? オイ、ドウイウツモリダ」
「私はこの子を助けに来たんです、だからこの子を置いて自分だけ逃げる訳にはいきません」
明らかに混乱したような魔物の声に対して、シアの答えは真っすぐで迷いがない。
「イヤ……コイツヲ置イテイケバ、オ前ハ助カルンダゾ?」
「それでは、最初から助けに来なかったのと変わりません」
「ソレハソウカモシレナイガ、セメテ一度逃ゲル振リシテ体勢ヲ立テ直ストカ……」
「貴方たちの扱いでは、私たちが離れた間にこの子が死んでしまうかもしれませんから」
一応理屈は通っている。通ってはいるが、しかし。
自分を犠牲にしてまで少女を助けようとするその姿に、ホブゴブリンは苛々と地面を片足で踏み鳴らす。
「クッ……ダトシテモダ! ソモソモ見ズ知ラズノ冒険者ヲ、ソレモ魔族ヲ拒否シテルヨウナ人間ヲ、何デオ前ハココマデシテ助ケヨウトシテンダヨ、シア!」
「……待て、何でお前が姫様の名前を知っている?」
「ア? ……アッ」
リズの指摘にホブゴブリンは一瞬きょとんとし、そして自らの失言に愕然と顎を落とした。
「お前、まさか……」
「ムサシ様、なんですか?」
ずばりと指摘されてしまってはこれ以上誤魔化すこともできないと、ホブゴブリン――もといホブゴブリンに寄生したムサシは、顔を顰めて頭を掻く。
「……ああくそっ、そうだよ」
その声は先ほどまでのしわがれたゴブリンらしいものから一転、面倒くささが強く滲む人間臭い響きであった。
そしてそれに呼応するよう、シアとリズを囲んでいたゴブリン達もゆっくりと二人から距離を取るように退いた。
「もしかして、こいつらも全員ムサシが……?」
「ああ、『群体化』のスキルを取った。細かい指示は無理だが、大体は言うことを聞かせられる筈だ」
実際には下っ端ゴブリンたちに寄生する為、『寄生』スキルのレベルも上げて粘液の接触だけで寄生できるようにもしたのだが、態々言う必要もないだろう。
「ついでに言うなら、こいつらの精液は俺の粘液だからゴブリンの子を妊娠したりはしない。安心しろ」
未だ半ば呆然としていた二人だったが、それを聞いて自分たちの恰好を思い出したのか、開きっぱなしだった脚を閉じて剥ぎ取られた服を引き寄せる。
「……ムサシ、お前、何でこんなことを」
漸く現状を認識できたらしいリズが責めるような目つきをムサシに向けた。
「シアの考え方を変えさせたかったんだよ。変に意地張って人間を助けようとした結果、取り返しのつかないことになる前にな。こんな風に」
「いや、今でも十分酷いことになってるんだが」
「……それは、まあ。何というか、ホブゴブリンに成りきっている内にちょっと興がノってきて……な?」
「……な? で済むかぁああッ! ゴブリンに姫様を襲わせるとか許せるかッ!」
「ぐひゅえッ!? 待て待て待て! リズの握力で首掴まれたら窒息死するぅ!?」
服を整えるのも忘れて、リズはムサシの寄生したホブゴブリンを締め上げる。
青筋を浮かべているのに満面の笑みなのが更に怖い。
「大丈夫だ。死ぬのはムサシじゃなくて寄生されてるホブゴブリンだからな」
「いや感覚は共有してるから苦し――」
――ギリギリギリ。
その間にもリズの手にはどんどん力が増していき、とうとうホブゴブリンは声を出せずに口をパクパクさせるだけになって、
ボキッ、と。
何かが折れる音と共に、ホブゴブリンは昇天した。
それと同時、リズの下半身に慣れ親しんだ違和感が生まれる。
『……ぷはッ! リズ、お前本気で殺す気かッ!』
「何言ってるんだ、あれだけボクや姫様に出したんだから、すぐに寄生し直せるだろ。現にそうしてる訳だしな」
リズは頭の中に響いた必死さ極まる『念話』の声に、冷たく言い放った。
『だからといってマジで殺そうとするなよ、感覚は共有してるんだぞ……。首が徐々に締まって骨が折れる感覚とか知りたくなかったわ!』
「それならムサシの本体の方を蹴り上げた方が良かったか? 本気で」
『良くないわ! リズの本気で蹴られたら比喩じゃなく潰れるから!』
というか下手したら胴体部分が陥没するかもしれない。否、もしかしたら頭まで真っ二つに引き裂かれるのでは……?
嫌な想像をしてぶるりと身震いするムサシに対し、口を開いたのは今まで二人のやり取りを静観していたシアだった。
「リズ、その辺りにしてあげて下さい。ムサシ様も悪意でやった訳ではないのですから」
「ですが、姫様流石に今回のことは……!」
当たり前だが、まだ先程のことを腹に据えかねているリズに対し、シアは落ち着いた口調で続ける。
「そもそも私がもう少し背後への警戒を怠っていなければ、リズが気絶させられることもなかったですし。ごめんなさい」
「い、いえ! それを言うなら何よりボクが気を付けてないといけなかったですから……」
主からそんな風に言われてしまったら、従者であるリズとしてもムサシへこれ以上とやかく言うことはできない。
『まあ兎も角、だ。シアもリズも強いとはいえ、無敵じゃないんだ、だからこれに懲りたら――」
態々敵対してくるような人間なんて守ろうとする必要はない。そんなムサシの言葉を遮るようにシアが割り込んだ。
「――そうですね。相手が弱くとも、不意をつかれればあっという間に窮地に陥る、覚えておきます。リズ、予備のローブを取ってください」
そう言いながら、シアは壁にもたれさせられていた裸の冒険者の少女へローブを掛ける。
それは少女を助けるという意思に変わりがないことの表現であり、そしてムサシの言うことを聞くことはできないという無言の宣言でもあり。
『……あー、くそッ! そうかい、もう好きにしろ!』
ムサシは付き合いきれないというようにそれだけ言い捨て、黙り込んでしまうのだった。
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