明くる日、僕は朝5時に目が覚めた。
僕の隣で秋穂が全裸で寝ていた。
……綺麗だ。
昨日、思う存分愛し合った記憶が蘇って、またムラムラしてきたけど。
僕は思い出した。
あ、そっか。
今日は姉さんの役割の日だ。
多分そのはず。
僕の家族は3人しかいないわけだし。
僕は強い意志を発揮して、姉を置いて部屋を出る。
出る前に大急ぎで自分の寝巻を着用して。
最終的に僕も裸で寝たからね。
で、部屋を出て。
僕の自室に向かう。
今日は義兄はここで寝てるはずなので。
ノック無しで開ける。
ベッドがこんもり盛り上がってて。
寝息が聞こえる。
「義兄さん、時間だよ」
僕がそう声を掛けると、もぞもぞして。
むくり、と起きて来た。
「おはよう……」
事務的に朝ご飯の準備。
まぁ、手は抜かなかったけど。
姉さんも食べるわけだし。
今朝のこの作業は……
幸せは、無い。
脳死で進める。
僕の隣で、義兄の康紀さんが手際よく野菜を切ってる。
……この人は、年齢由来でちょっと中年太りしてること以外、欠点らしい欠点が無い人なんだよね。
姉さんが伴侶に選んだのを「見る目が無い」とは、正直とても言えない人なんだ。
出た大学は有名大学で、院まで出てるし。
それだけでなく、本当に頭が良いのは役割交換で今は実感してる。
馬鹿ではあの仕事は出来ないよ。
……本当に。
姉さんの戸籍上の夫でさえ無ければ、尊敬しているんだけどな。
「守、野菜を投入した鍋に火をかけるから脇にどいてくれ」
なんてことを考えていたら。
義兄がそんなことを言ってきた。
おっと。
食事を終え、身支度。
家を出る時間だ。
義兄は地味目の私服。
僕は……
姉さんの女性用スーツ。
ジャケットに……スカートだ。
正直、メッチャクチャ恥ずかしい。
だけど
「守、今日も頑張ろうな」
義兄が靴を履いてそんなことを。
僕の格好を「変だ」「なんだそれは」なんて言って笑わない。
耐えてるとかじゃない。
義兄は間違いなく、僕の格好を普通の格好だと思ってる。
……こうだから、多分こうしないと役割が果たせない。
必須なんだよ。
6時になって起きて来た姉さんから、運転免許その他は預かってる。
もう、やるしかないね。
「じゃあ行きましょう。義兄さん」
そう言って。
……僕は義兄の唇にキスをした。
メチャクチャ嫌だった。
泥水で唇を洗いたい気分だった。
でも、役割だから……
そして車を使って姉さんの会社に行って、勤務。
姉さんの仕事は会社の総務部で会社のお金の管理をする仕事で。
後輩の女子社員に慕われていた。
まあ、姉さんは面倒見良い上に外見が最高だもんな。
慕われないわけがない。
……ただ、同じ部屋の1人のお局の女性に憎まれているのだけがちょっと気になった。
どんだけ素晴らしい人間でも、嫌う人は居るんだね。
そして次の日はまた僕は自分の役割に戻った。
自分の役割になった日、義兄や姉さんが僕の役割をこなしたときにあったことの記憶が流れ込んで来た。
……なるほどね。
役割をこなすために最低限必要な知識と技能が自動でついてくるっていうのは、僕にも適用されるのか。
記憶の中で、僕の制服のブレザーを着てぱっつんぱっつんになってる義兄や、エッチな身体を僕の制服で包んで電車通学した姉さんの記憶が飛び込んできて。
笑いをかみ殺したり、ドキドキしたりした。
そんな感じで
僕→義兄→姉さん→僕
このローテーションで役割が回って来た。
正直、一番しんどいのは義兄の役割で。
一番幸せなのも義兄の役割だった。
当たり前のようにある長時間労働環境や、技術職の夜勤の呼び出しがザラにある環境は閉口する。
けど、その代わり姉さんとセックスできるんだ。
それだけを糧に、頑張ったよ。
……僕にとって幸いだったのは、姉さんの役割の日に、義兄が夜の誘いをしてこないことだった。
これに関しても僕は覚悟を固めていたんだけど。
何でなのかな、と思ったんだよな。
最初の方は。
今はこう思ってる。
「夫婦間のセックスは、サービスやコミュニケーション目的ではなく、子供を作るためにすることだ。なので男同士の場合は妊娠しない以上役割の意味合いが成立しない」
……多分、これだと思うんだよな。
良かった……
ウホッ! アーッ! は無かったんや……!