今日は僕本来の役割の日。
つまり、義兄が秋穂を抱くかもしれない日。
今日が夜勤か泊まり込みならその危険は無いわけだけど……
どうしたものか。
秋穂に僕の子供を産んでもらう。
この目的を達するために、クリアしなければならない課題は……
義兄の精子で受精する可能性をどう潰すか。
これに尽きる。
どうすれば良いんだろうね?
いっそのこと、全員が本来の役割の日に、ピンポイントで夜勤か泊まり込みが発生すればいいのに。
そんなことを思いながら、帰宅していた。
夕方。
いつもの通学路。
前に銭天堂に迷い込んだときと同じ雰囲気を感じた。
いや……
「お困りのようだねェ」
いつの間にか周囲の人が消えていて。
目の前に、1人の和服の少女がいたんだよ。
丈の短い、子供っぽい和服を着た少女が。
和服の色は黒で、柄は彼岸花。
髪型はボブカットで……
顔つきには悪意が見える。
そして、声が老婆。
どうみても小学生くらいの少女なのに。
この子は……
確か、たたりめ堂のよどみ、だ……。
僕にかりんとうばんを売ってくれた紅子のライバル的立ち位置の人物……!
「よどみさんだな?」
僕は先回りして彼女の名前を言っていた。
彼女は少し驚いて
「このよどみさんの名前を知ってるのかい? 話が早くていいさね」
すぐに話を切り出してくれた。
「お前、銭天堂の紅子から買ったかりんとうばんの効果に不満があるんだろう……? このたたりめ堂のよどみさんが配っている駄菓子に興味はないかい……?」
かりんとうばんの上位互換や、それを否定する駄菓子を僕に差し出して、紅子の仕事を否定する。
それがこの少女の目的で。
「見せて貰おうか」
僕はそう言った。
興味はあるさ、一体どういう駄菓子を出そうと言うのか……
腕を組み、僕は堂々を返す。
よどみは僕のそんな態度にクレームを入れたりせずに
「これだよ」
……言って、缶を差し出して来た。
見たところ、飴玉の缶。
「こうかんドロップだ」
こうかんドロップ……
何かを交換する駄菓子だな。
「……効果は?」
当然のことながら、効果の確認。
上位互換くさいからと、飛びつくほど僕は馬鹿じゃない。
僕の言葉によどみは自信満々の顔で、悪意に満ちた言葉で話す。
「この缶には2つの飴玉が入ってる。そして食べた人間同士のあらゆる持ち物を交換するんだ。仕事、才能、財産、家族、恋人までね」
無論効果は永続。
どうだい? 欲しくなってきただろう……?
そんなことをニヤニヤ笑いを深めながら僕に教える。
それを聞いて僕は
フゥ、とため息を吐いて
「アンタ、闇の駄菓子を舐めてない?」
呆れ声でそう一言。
その言葉は、少女の、よどみの目を見開かせ……
驚愕に硬直させていたんだよね……。
次回、主人公がダメ出しをした理由。