秋穂が妊娠した。
僕の子供を身籠ってくれたんだ!
これはとても嬉しいことで、絶対に産んで欲しいと思ってる。
だけど……
問題があるんだよな……
それはセックスができなくなること、じゃない。
秋穂の体調が悪くなり、僕の代役がこなせなくなることだ。
かりんとうばんの効果に、産休の概念なんて無いもんな。
だから……
どこかで、効果を終了させないといけないんだよ。
かりんとうばんの効果を終了させたらどうなるか?
それに関しては説明書には書いて無いんだよな……
終了させたら、一気に全部正気になるのか。
それとも、かりんとうばんの効果の影響下で起きたことは、全部普通のことで拒絶理由は無いと思い続けるのか。
そこが分からない。
でもな……
仮説はあるんだよ。
それはさ、僕が今まで「かりんとうばんで酷い目に遭った」というリアルな話を1つも聞いたことがないってことなんだ。
今までかりんとうばんを食べた人間、僕だけのはずがないからね。
なのに、かりんとうばんのせいでとんでもないことをさせられたという話を聞いた覚えがない。
ここから出る仮説。
それは……
かりんとうばんの効果を終了させても、その効果の影響下で起きたことを正しく認識することは不可能のまま。
つまり、効果を終了させても……
引き続き、秋穂はお腹の子の父親が、弟の僕であることが問題であるとは考えない。
この可能性が高いんだよな。
ただし、かりんとうばんの効果を終了させると、夫の役割が僕に回って来なくなるわけだから
秋穂ともうセックスできない。
義兄の生殖能力を奪いにくくなる。
お腹の子供の父親として振舞うことができない。
……この3つは確実に来るだろうけどね。
どれも辛い。
もしくは困る。
だから、やっぱり決断が問われる選択なんだけど……
やんないと、秋穂が確実に潰れるよな。
今はまだ、お腹が大きく無いけど。
これからぐんぐん大きくなって、動けなくなっていくんだ。
……絶対にどっかで終了させないといけないんだ。
「おえええええ!!」
今、トイレで便器に秋穂が胃の中のものを吐いている。
そろそろ5週経って、とうとう
本当に苦しそうで、秋穂が愛しい気持ちが高まって来るよ。
僕は秋穂の背中を摩りながら
「ありがとう。秋穂。子供のために」
……ちょうど夫の日だったので、そう彼女に言った。
秋穂は
「気にしないでくれ。この子を産むためには避けて通れないことなんだから」
嘔吐がおさまり、自分のお腹に手を当て、そして口を拭いながら秋穂がそんなことを言ってくれる。
女だけが妊娠で苦しい。辛いなんて言わない。
……好きだ。
僕はたまらなくなって、秋穂にキスをする。
秋穂の吐瀉物の味がしたけど、気にならなかったし。
むしろ嬉しかった。
そして僕は
ここで効果の終了を決断した。
さて、どうなるか……?
次回、最終回。