かりんとうばんの効果を終了させた。
僕の家族の役割の交換生活は終了した。
僕の毎日は普通に高校に通って、家に帰って、勉強して寝る。
そういうものになった。
そして僕の予想通り……
家に帰ると、リビングで秋穂が……姉さんが家の掃除をしていた。
悪阻が来て、会社務めが大変になって来たので、産休を取得し。
姉さんはしばらく前から休んでるんだ。
「姉さん、大事な身体なんだからやめてくれ」
僕が鞄を置いて、姉の手から掃除機を取り上げると
「妊婦でも可能な限り動くべきだ……言い伝えでも妊娠してもトイレ掃除は欠かすなとある」
あれは妊娠したからと言って、何もしないと後で困るという意味合いの言葉なのだろうと思うんだ。
運動不足もだろうが、怠け癖が付くとマズいという意味合いなんじゃないか……
そんな自分の予想を口にする。
……この通り、僕に対する態度は普通だ。
自分を妊娠させた男に対するものじゃない。
僕が
「姉さんの子供なら僕の子供も同じなんだから、心配はするよ」
こういう発言をしても
「気持ちは嬉しいが……分かった」
そう言って掃除機を僕に渡してくれる。
そこに何も問題は起きない。
姉さんは全部忘れてしまったんだろうか……?
秋穂のお腹はどんどん大きくなり、やがて臨月を迎えて……
「イタタタタタ!!」
ある日、姉さんがお腹を抱えて苦しみ出した。
……陣痛だ。
すぐに気づいた。
僕は病院に連絡し、義兄に連絡を入れ……
義兄もすぐに駆け付けてくれて。
姉さんは義兄の立ち合いの下、無事に長男を出産した。
赤ちゃんの居る生活がはじまり、育休で休んでいる姉さん。
赤ちゃん……名前は
姉さんは幸せそうだ。
粉ミルクも買ってるんだけど……もっぱら母乳で育ててる。
僕としては嬉しい。
康孝は僕の子供なのは間違いない。
産まれて少し経って、顔の個性が出始めたけど
僕の赤ちゃんのときの写真とそっくりだ。
そこで僕は「康孝は僕の子だ」と確信した。
僕の子供を、この世で一番愛しい女性に母乳で育てて貰ってる……
至福だよ。
でも
もう姉さんは……秋穂は僕の女じゃない。
康孝に吸わせている秋穂のおっぱいは、もう僕のものにはできない。
色々考えたんだが……
かりんとうばんはまだ残ってる。
古くなったかりんとうばんは食べたらお腹を壊す可能性はある。
だけど……多分効果はあるはずなんだ。
かりんとうばんは、効果終了を決断しない限り効果は永続するものだし。
駄菓子としてはダメになっても、食べたときの効果は多分継続してるハズ。
だから、食べればあの夢のような生活が戻って来る。
だけど……
僕は康孝を見た。
康孝も巻き込まれるんだよな……
この子に僕の代役をさせるなんて、無理がある。
知識と能力の下駄は履かせてもらえるとしても、こんな小さな子に……
僕の代役……大学生をやらせるのか?
絶対に無理だ。この子の父親として選べない。
僕は大学生になっていた。
義兄に成り代わっていたときの経験が活きたのか、義兄同様理系の、工学系のそこそこ有名な大学に合格できた。
しかもこの自宅から通える距離で、いいことづくめの結果。
だけど……
そういう学校は毎日本当に忙しい。
いや、自発的にそうしているのかもしれない。
義兄の生活を体験したせいで。
今、やらなきゃという気持ちが強くなってる。
そんな状況で、またかりんとうばんは使えない。
そしてそれは、これからずっとだ。
我が子に自分の代役を押し付けることは、僕には出来ない。
康孝が生まれて、そこでまともに考えて出た結論……。
僕はそんな悲しみを隠して
姉さんに言った。
粉ミルクの缶を片手に。
「姉さん、粉ミルクは使わないの?」
確か赤ちゃんの体重を増やすのはこっちの方が良いらしいって書いてたんだけど。
そう思ったから、訊いた。
すると姉さんは
「母乳だけでも康孝の体重は十分増えてるよ」
授乳を終えて、胸を元に戻し。
康孝にげっぷをさせながら姉さん。
そして
「それに、お前との約束だろ。守」
え……?
と、思った。
それって……
姉さんは笑顔で僕を見つめていた。
おなかいっぱいになって眠っている康孝を抱っこしながら。
「守、一緒に育てような。康孝はお前の子供でもあるんだから」
その言葉を聞いて、僕は思った。
……もう、良いか。
姉さんの頭の中がどうなってるか分からないけど、康孝を僕の子供と認識してくれているなら。
僕は姉さんと康孝のために生きるよ。
<了>
……以上。
単発エロ漫画のキャラ設定を使い、銭天堂の駄菓子を使ったエロ小説。
いかがだったでしょうか?
感想いただけるなら嬉しいのですけども。