※この作品はR-18です。

悪魔に魅せられた乙女   作:翔田美琴

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第9話 色欲の悪魔の罠

 万魔殿の中でアシュタロスが治める部屋がある。色欲の悪魔たるアシュタロスに地獄へと堕とされた人間達が、色欲に塗り潰された地獄を味わっている。

 アシュタロスが疲れて帰ってくると彼女はこの色欲の地獄を味わい、英気を養う。

 その色欲地獄の人間達は貪り合うようにお互いを求めている。

 

「はあっ……はあっ……あうっ」

「はあっ、んふぅ」

 

 男女問わず、お互いの身体を貪り合い、色欲という名の罠に嵌る。

 全裸でお互いの秘部を舐め合って、はしたない声をあげて、白濁液をぶつけ合う。

 この色欲地獄では恐ろしく疲労感に襲われても行為を止める事が出来ない。余りの快楽の方が優ってしまって、腰が無意識のうちに快楽を貪り合う。

 あちこちでは彼らの欲望の塊が飛び散って、女達は恍惚となり、そしてまた色欲地獄の底へとはまっていく。

 そんな地獄にリリアがやってきた。

 傍らにはルシファーが彼女の肩を抱き寄せ、部屋でくつろぐアシュタロスに声をかける。

 

「あら、リリアちゃん、ルシファー様も」

「帰ってきていたのか?」

「ちょっと気になってねえ」

「アシュタ様。この部屋は?」

「リリアちゃんが知らないのは当然よね。ここは私が治める地獄の部屋の一つ、色欲の部屋。この部屋では男女問わずあらゆる者が愛欲を求めてセックスを四六時中するのよ……。例え疲れていようが、ずっと永遠に色欲に溺れて、私にそのはしたない姿を晒し続けるのよ。良い子ばかりよ?」

「みんな、ほとんど全裸ですね」

「どう? リリアちゃん。そこらじゅうがセックスに塗れた所って素敵じゃない?」

 

 だが、この部屋の匂いは好きになれなかった。そこらじゅうから漂う愛液の臭い。飛び散っている白濁液。男性が欲望のままに女を蹂躙するようなセックス、女が無理やり男性の顔に秘部を押し付け快楽を貪り、その行為からは愛情は感じない。

 剥き出しになった獣のようなセックスだけ、そこにあった。

 リリアは返答に困った。

 どう答えたら良いのかわからない。

 こんな獣性を解放したセックスに愛欲があるとは思えない。ここにあるのは獣が欲望のままに欲情をぶつけ合う、気遣いというものが一切ない獣の交尾なのだ。

 人間達を獣と同一視する辺りは色欲の悪魔の面目躍如という感じだろうか。

 アシュタロスからは色欲に溺れる彼らを見下して己の愉しみにしている節を感じる。

 ややあってリリアは言った。

 

「なんかでも、私は加わりたくはない場所です。確かにセックスは好きですけど、私は愛情が伴ったセックスをしたいな」

「そうね。セックスと愛欲は切っても切れない関係ね。ルシファー様はちょっと興奮していらっしゃるけど」

「いやね。欲望のままに相手を蹂躙したいって気持ちはわかるからね。それに……彼らは罪に塗れる姿がとても美しく見えて仕方ないよ」

「━━そう。もっと罪に塗れて地獄に相応しい魂を生み出すんだ。それが、天界の美徳を倒す原動力になる」

 

 周囲では喘ぎ声がまるでBGMのように聞こえてくる。ため息と吐息と粘着質な液の音、舌を絡ませる時の音、下半身の花びらが淫らに濡れる音……様々な行為の音が聞こえてくる。

 リリアは何処へ視線を移して良いのかわからないで、視線を泳がせている。

 周りを観ればセックスだけが埋め尽くす、まるでポルノの世界だ。

 ふと、ルシファーの方を見つめるリリア。彼は周りのセックスを観ながらも、興奮しているとはいえ空気に呑まれていないのは流石だった。興味深いように光景を観覧している様子だ。

 アシュタロスはリリアがこの空気に当てられて彼女が色欲の虜にならないかをテストしているが、リリアは虜になるどころか、呆れた雰囲気さえ出している。

 普通の女性ではないのが、また証明されてしまった感じだ。

 

(なかなかやるじゃないの、リリアちゃん。このような空気に当てられても嫌悪感まで見せるのはなかなか出来ない事じゃないわよ……)

 

「まあリリアちゃんもたまにしたくなったら、地獄の魔王達に頼っても良いのよ。特にルシファー様とか、ベルゼブブ、リヴァス辺りは興味あるから」

「リヴァスってあの青い軍服の魔王ですよね」

「ああ。ただあいつには気をつけてな。嫉妬の魔王と言われるだけに自分のみを興味の対象にさせようとするから。他の魔王にうつつを抜かすと恐ろしい罰が降りかかる」

「それだけ、その人が大好きとも言えるわよね」

「もう、ここから去っても良いですか?」

「ええ。他の万魔殿巡りをなさい」

 

 リリアが色欲の部屋を去るとルシファーがアシュタロスがしようとした事を尋ねた。

 

「てっきりセックス好きだから色欲の部屋に堕としてやろうという魂胆だったろう?」

「でも、あの子は空気に呑まれる事は無かった。只者ではないわね。ルシファー様はまだあの子とは過ごしていないんですか?」

「まあね。あの子とはね。きちんとした所でどっぷりと交わりたいんだ……理性を外して徹底的にね」

「それまでは我慢ですか?」

「禁断の果実は熟らせる程に甘美な果実になるのさ……」

「ルシファー様、でも早めに仕掛けないとベルゼブブやリヴァスに寝取られてしまいますわよ」

 

 そんな茶化しがされるとルシファーはこう返した。

 

「ならば、寝取り返せばいい……だろう?」

「傲慢なルシファー様らしい返し方ですわ」

 

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