地獄には夜の概念はあるのか疑わしい。しかしルシフェルの仕事が片付くのに合わせて、悪魔達はそれぞれの時間を過ごす。
ルシフェルが地獄、もとい魔界の君主としての職務を終える頃にリリアはアシュタロスに呼び出された。
一体何の用事なのだろう?
アシュタロスの居室に向かうリリア。その廊下の途中でベルフェゴールに出会った。ベルフェゴールは彼女に珍しく声をかけてきた。
「リリアちゃん」
「あ、あなたはベルフェゴール様」
「様付けはいいわよ。普通にベルフェゴールと呼んで? それか呼び捨てが嫌ならサラって呼んでくれてもいいわ」
「サラ?」
「私が人間だった頃の名前なの」
「サラさん、一体どうしたのですか?」
「アシュタに呼ばれたようね?」
「は、はい」
「アシュタは色欲の悪魔だから気をつけてね。もしかしたらアシュタと絡むかも知れないし……」
「それってアシュタさんとセックスを……って意味ですか?」
「まあ、そうとも言うわね」
「彼女は女性も男性も人間も悪魔も等しく愛するのがモットーだから、アドバイスしてあげる」
胸が高鳴るのを感じるリリアは息を呑んだ。ベルフェゴールからのアドバイスは実にシンプルである。
「アシュタに身を委ねてみなさい。大丈夫……彼女のセックスのテクニックはそこらの男性よりも上手よ。熟練と言っても良いわ」
「怖くなったら素直にそう言って? アシュタならきちんと気持ちを汲んでくれるから」
「サラさんもアシュタさんと夜を共にした事があるんですか?」
「……ええ、この世のものとは思えない程だったわ」
リリアは意外に思う。ベルフェゴールは年中気怠るそうなイメージだけど、夜はやる事はやっているんだ。
アシュタロスに会う前に地獄にて相応しい衣装に着替えるよう女性の堕天使に勧められたリリアは着替えを手伝ってくれる堕天使達を物珍しく観察する。
皆、それなりに清潔感が感じさせる雰囲気だ。地獄とは言え不潔な場所はほとんど見受けられない。ルシフェルや他の悪魔達は美しさに敏感な者達。不潔などもっての外だろう。
そうして纏った服は独特の模様の身体の線がハッキリとわかる服だった。露出度はそんなにないが、薄い生地で作られているのか軽く身体に触れられるだけで感覚がわかる洋服だ。
地獄の服には魔法みたいな効果がある。
色欲の悪魔の加護がある洋服は性感を上げる効果がある。リリアの服がまさにそれだった。
アシュタロスの居室に入ると、何故かルシフェルの姿があった。彼はアシュタロスの部屋のソファにゆったりと座って静観している。
「リリアちゃん。待っていたわよ。似合っているわ、その洋服」
「何か凄い身体にフィットして線がハッキリ出て恥ずかしいです……」
「すぐに慣れるわ。まあ、そうね……お酒でも飲む? ルシフェルもどう?」
「そりゃあ君の誘いなら」
アシュタロスの部屋は華美な雰囲気の部屋だ。まるで高級娼婦が好んで使うような極彩色の部屋。主に赤が使われているが、ピンク色や黒、金色も多い。天井にはシャンデリア。アンティークでも特に格調の高い品だろう。
部屋は広く感じる。カーペットも緋色で赤の部屋という言葉が良く似合う。
リリアとアシュタロス、ルシフェルがソファに座りながらワインを開ける。グラスも細かい装飾が飾られている。地上から略奪してきた品らしい。
深い赤のワインがグラスに注がれると3人でグラスを合わせた。ルシフェルの顔は何処かこれから起きることを予見しているように微笑んでいる。
彼の姿は地上の時と変わっていない。漆黒のシャツに黒いズボン、ただ襟は軽く開いていた。
アシュタロスは妖艶なガウン姿。ガウンの下は素肌が見える。雪白に近い白い柔肌だ。胸の谷間は女性でも思わず魅入ってしまうほど、良い形だ。
「乾杯」
「誰に?」
「リリアちゃんに」
「私ですか?」
「リリアちゃんが私達の仲間になってくれたのに乾杯ね」
「まあ、そうだね」
リリアはその地獄のワインを一口飲む。
……とても美味しい。まるで地上のワインとは違う。もっとこう……甘くて、口触りの良いものだ。何杯でも飲めそうなくらいに美味しい……。
すると段々と夢見心地になってゆくリリア。まるで柔らかな夢の中にいるみたい……一体、どうなって?
リリアの瞳が虚な瞳になる。
するとワインが今度は柔らかい唇の感触と一緒に口に流された。
アシュタロスが口移しでワインを飲ませている。ルシフェルはワインを飲みながらただ見守る。極上の席で女同士の絡みを観覧した。
「んんっ……んふっ……」
「リリアちゃん、可愛いわよ……」
「はあっ……はあっ」
キスが激しくなって、アシュタロスが様々なところに優しく愛撫する。
胸をゆっくりと撫でるとリリアがビクンと反応する。アシュタロスはリリアとキスを交わしながら身体中を撫でて性感を高める。
洋服越しに花びらを撫でるとリリアの熱い息が漏れた。
「たまらない……もっと触って……!」
「リリアちゃん、ルシフェルの前で私とする……?」
「ああん……!」
「私……リリアちゃんの初夜を奪いたいな……」
今度は服越しに尖った乳首を噛んだ。
そして大きな胸にアシュタロスの顔が埋もれて身体が重なり合っていく。
ルシフェルはその光景を熱い瞳で見つめた。
ちょっとうっとりしているルシフェルはリリアに囁く。
「いいんだよ……リリア。君の乱れる姿、私に見せてくれ……」
「アシュタさん……抱いて」
「我慢できない……アシュタさんとしたいのぉ」
地獄の宮殿でリリアにとっての快楽の夜が始まる。