※この作品はR-18です。

悪魔に魅せられた乙女   作:翔田美琴

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第7話 地獄の海軍提督と宰相

 万魔殿の中にある宰相の部屋にはルキフグスという地獄の金庫番がいる。

 ルキフグスは見た目はいわゆる髭の生えた初老の男性悪魔に見えるが、彼はルシファーから地獄に送られる金銀財宝の勘定を任されている地獄の宰相だ。

 髪の毛は銀髪、瞳の色は黄金色、服装は裾の長いローブを羽織り、髭は顎髭まで生やした貫禄のある風貌。

 そのルキフグスは今、リヴァイアサンことリヴァスと何やら話し込んでいる。

 リヴァイアサンは水色の軍服姿と軍帽が目印の海軍提督で、どうやら海の戦力の確保の為にルキフグスと話し込んでいる様子だ。

 

「ルキフグス。マモンが暴いている鉱山で、採掘されている鉄の量は把握しているか?」

「一応はな。マモンの奴は金や銀や宝石を欲しがっているだけだから鉄やその他の鉱石は他の魔王に譲るって言っているぞ」

「その鉄やらの鉱石をこちらにも回してくれないか?」

「現在の量では不満なのか?」

「鉄や火薬は多ければ多いに越した事はない。大砲から拳銃から、剣や槍、あらゆる武器に使えるからな。天界を攻め入る計画も徐々に動き出したとあらば、備えだけはしておかないと話にもならん」

「ここの所、毎日のようにマモンが鉱山を暴いてくれているお陰で鉄やらはごまんとある。何なら使ってくれて構わん」

「地獄の宰相は話が早くて助かるよ」

 

 宰相の部屋はどことなく雰囲気的に薄暗い部屋だった。調度品も黒檀の物ばかり。カーテンはビロードで、気高い赤がルキフグスの背後を飾っている。

 リヴァスはその部屋に置かれた高級なソファに座り脚を組んで、腕も組んでいる。

 そんなリヴァイアサンを尻目に、ルキフグスは書類に目を通して淡々と判子を押す様子が見える。まさに書類仕事に特化した悪魔、地獄の宰相と呼ばれる彼の普段の姿だ。

 ルキフグスは書類仕事をしながらも最近、万魔殿にやってきた新入りの女の話をした。

 

「何だか話題になっている女がいるようだね。人間の女って聞いたが……」

「リリアって女性だ。ルシファー様が連れてきた女だよ。ルシファー様はどうやら遂に見つけた様子だね。我々、悪魔にとっての重要な女性が……」

「閣下の眼を疑う訳ではないが、何故、人間の女を万魔殿に連れてきた?」

「ルシファー様の思惑は多分、リリスの事じゃないかな。リリスは今は人間の中に紛れ込んでいる様子だし」

「それが彼女だと……?」

「可能性が高いって話だよ。俺だってね、まだ疑わしいと考えているのだから」

「嫉妬深い貴様らしい見方だ。リヴァイアサン」

「ルシファー様には悪いが、俺は疑り深い悪魔だし、信用も置けるとは思っていない。我々に不利益をもたらしたら即座に殺させて貰うよ」

「その女、ベルゼブブと昨日話したようだな。ベルゼブブは大食の魔王だが、懐が深い奴だ。元天使の名残りを残している」

「俺には大食というよりかは美食に見えるよ。あいつ、常に食べ物は悪くない、悪にしている人間が土台狂っているんだって言ってるよ」

「土台狂っている……か。満更、悪くない言い回しかもな。神の写し身が奴らの姿なら土台狂っているのも納得だよ」

 

 ルキフグスは書類に目を通した後にきちんと揃えて、一箇所へと書類をしまう。

 軽く黒檀のテーブルから立ち上がると、両腕を回して凝りを解す。

 すると……。

 

「ルキフグス様。新しい鉱山の書類です」

「マモンの奴もよく働くよな」

「仕方ないさ。奴には世界中に子供がいるんだ。その為にも金は必要だし、奴も強欲が服を着て歩いているような悪魔だ。どうせ、配下の人間共に鉱山を暴かせているに違いない」

「でも、ルシファー様は貴方を金庫番にしている。やはりマモンに任せると地獄の金を横領しかねないからか?」

「だと思っているよ」

 

 ルキフグスは黒檀のテーブルに置かれた書類に向かうと判子を手にして、マモンがどういう悪魔かを厳しく処断する。

 

「奴が心の底から賛美するのは目に見える金銀財宝と宝石と資産的価値だけ。その他のものは一銭の価値も見出す事もない。そんな奴が地獄の金庫を握ってみろ。全部己の欲の為に注ぎ込みかねん」

「……ロマンもへったくれもないな」

「奴にロマンなどという言葉は虚しいと思うぞ」

「リリアが奴の事を嫌っているのがわかったよ。ありゃあ、確かに彼女が一番嫌いなタイプの存在だ」

「貴様はどう思われているんだ?」

 

 書類に目を通しつつ、少し嫌味な視線を送るルキフグス。リヴァイアサンは軍帽を外していたのをまた被り直して、まるで海の青のような瞳で、こう話す。

 

「どう思われていようと俺のやり方で彼女には触れ合うよ。━━そうだな。リリアがルシファーに嫉妬して俺に縋って来たら理想的な展開かな」

「ふふふ……そうか、嫉妬させるか。貴様らしいよ、リヴァス」

「じゃあ、ルキフグス。鉄と火薬、レアメタルの方はこちらの工廠に送るように手配を頼む」

「わかった。任せておけ」

 

 そうしてルキフグスの部屋から去るリヴァイアサンを彼は興味深そうに眺めていた。

 彼が去った後にルキフグスは独り言を呟く。

 

「そのリリアって女性が本当にルシファー様に嫉妬などするものか見物させて貰うか。何せ、ルシファー様は天下の心を操る達人だからな」

 

 宰相の部屋からは、地獄の火山活動が目撃されるばかりであった。

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